著者
中野 正昭
出版者
明治大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、大正期に流行した浅草オペラがどのような舞台だったかを、オペラ座の検閲台本を基に考証した。従来、浅草オペラは西欧オペラを<簡略化>したものに過ぎないと考えられてきた。しかし、上演台本を調査・分析した結果、実際には、台詞や場面を新たに書き加えたり、興行法に従うために一つのグランドオペラ作品を複数回に分けて上演するなど、当時の日本の観客が既知の演劇文化の文脈の中で享受できるように工夫を凝らした、日本独自の演劇として<再構成>されたものであることを、具体的な作品の上から明かにした。
著者
長谷川 恒雄 LEVY Christi MARIOT Helen 細川 英雄 砂川 裕一 佐々木 倫子 RADKE Kurt W. COOK Haruko M. YUE Kwan Cheuk BEKES Andrej CHEUK Yue K LEVY Christ MARIOTT Hel STEINHOF Pa RADKE Kurt BEKES Andre KWAN Yue Che MARIOTT Hele STEINHOFF Pa RADKE Kurt W BEKCS Andrej
出版者
慶応義塾大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1995

本研究に先行し、本研究組織中の長谷川、佐々木、砂川、細川の4名は平成4・5年度文部省科学研究費補助金(総合研究A)「外国人留学生のための『日本事情』教育のあり方についての基礎的調査研究」(課題番号04301098)を得て、国内の大学等高等機関における「日本事情」教育の教育状況を調査し、「日本事情」教育の向かうべき理論的方向を研究したが、本研究においてはその研究成果をさらに世界的視野に発展させ、世界の諸大学の「日本事情」教育について調査し、その結果をもとに、意見交換を行ないながら、「日本事情」教育の国際比較研究を行なった。その結果、「日本事情」という名称の特殊性、あるいは地域による教育方法の差異が明確になり、従来漠然と指摘されていたこと等が本調査研究によって確認されるとともに、今後の質的研究のための基礎が形成できた。今後はこうした研究をさらに深めるため、「日本事情」教育の内容についての理論・実践を具体的に検討することが必要となる。
著者
石出 猛史
出版者
千葉大学
雑誌
千葉医学雑誌 (ISSN:03035476)
巻号頁・発行日
vol.69, no.6, pp.399-403, 1993-12-01

江戸時代末期において,千葉市内で実施された種痘について書かれた古文書をもとに,当時の予防医学について検討を行った。安政7年佐倉藩の医師2名が,現在の千葉市若葉区平川町に巡回し,近隣の町村の児童に種痘を行った。この佐倉藩医師の巡回による種痘は,慶応3年2月に仮種痘所が設置されるまで行われた。平川町における種痘は,佐倉藩領民のみならず,他領の町村民にまで施された。しかし,この時の佐倉藩領民の受診率は決して高いものではなかった。その理由として,1人当り300文の種痘代の負担が考えられる。その他には,疾病および予防医学に対する,住民の理解不足が推定された。種痘実施のsystemに関しては,村役人を通じての,藩政府からの通達の徹底化,「宗門五人組帳」の受診者台帳としての利用,仮種痘所の設置など,現代の予防接種施行の基礎が,すでにできあがっていたことが推定された。
著者
田崎 直美
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2002

本研究は、ドイツ占領下(1940-1944年)のパリにおけるフランス人作曲家の音楽活動を具体的に検証することで、1)政治的要素が音楽製作や上演に与えていた影響、および2)音楽家が選択した文化面での態度、を考察し、当時の音楽様相の一端を明らかにすることを目的とした。1.占領下パリでの音楽活動における政治的影響:国立オペラ劇場連合(RTLN)について報告者はこれまでに、RTLNにて上演された作品とその上演傾向、およびフランス人作曲家による新作の検証と考察を行った。本年度は補足的研究として、RTLNの音楽活動への占領当局の関与について、現在までに収集可能であったフランス国立古文書館所蔵の史料を整理した。これにより、これまで知られていた事実(ドイツ人演奏団体の客演公演、ドイツ人作曲家のための音楽祭)に加えて、特定作品の上演要求、ドイツ人用座席の増加要求、人事への干渉等が行われていたことが判明した。2.音楽家の態度:プーランクとオネゲルを中心に本年度は、作曲家オネゲルのパリにおける音楽活動について、1)楽曲分析(占領下で作曲もしくは上演された作品について)、2)言説の分析(Comoediaに掲載された彼の音楽批評より)、3)作品の上演状況と当時の批評の検証(L' Information musicaleより)、を行った。この結果にプーランクの音楽活動を合わせ考えると、次の点が指摘できる。すなわち、二人の作曲家はこれまで政治的に両極の立場(対独協力およびレジスタンス)を取っていたと考えられがちであったが、作品上演の場は多くが共通していたこと、そして上演作品をめぐる政治的イデオロギー(「国民革命」、「ナショナリズム」)にも類似性が見出されることである。これには同時代人による「解釈」の問題が大きく関わっており、当時音楽と政治権力が切り離しがたい関係にあったことがうかがえる。
著者
中谷 多哉子 近藤 城史 位野木 万里 津田 道夫 堀 昭三 片峯 恵一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. KBSE, 知能ソフトウェア工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.150, pp.25-30, 2009-07-16
被引用文献数
2

多くの要求がプロジェクトの遂行中に変更され,それによる手戻りで納期が遅れることがある.この問題を解決するために,我々はPRINCEモデルと名付けた要求獲得のプロセスモデルを提唱している.このモデルは,要求獲得のプロセスを3+1の型に分類することによって,プロジェクトの全期間にわたって要求を獲得する計画を立案するためのモデルである.要求獲得を立案するためには,過去のプロジェクトで行われた要求獲得の実態を明らかにし,要求獲得プロセスを計画するための指針を導出しなければならない.本稿では,PRINCEモデルの概要を述べた後に,要求を観測する方法をガイドラインとしてまとめた結果を紹介し,ガイドラインを適用した結果を示すことによって,ガイドラインの今後の課題を検討する.
著者
石井 千菊 直江 祐樹 日沖 甚生
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, 2008-04-20

【目的】人工股関節全置換術(以下THA)後の患者においては、術後自覚的脚長差を平成18年11月から平成19年10月まで当院にてTHAを施行し、術後理学療法を施行した10例(女9例、男1例、平均年齢60.4歳)。診断は変形性股関節症9例、股関節高位脱臼1例。手術は全例後側方侵入にて行われた。1例は、大腿骨骨折により術後4週免荷。<BR>【方法】平成18年11月から平成19年10月まで当院にてTHAを施行し、術後理学療法を施行した10例(女9例、男1例、平均年齢60.4歳)。診断は変形性股関節症9例、股関節高位脱臼1例。手術は全例後側方侵入にて行われた。1例は、大腿骨骨折により術後4週免荷。術前、歩行開始時、歩行開始後1週、歩行開始後2週に自覚的脚長差を5mmきざみの板を踏んでもらうことにより測定し、記録は2.5mm単位で施行した。また術前および術後に両股関節正面レントゲンにて涙痕間線を基準として他覚的脚長差を測定した。術側下肢が長い場合を正の値とした。<BR>【結果】術後全例が自覚的脚長の変化を認めた。自覚的脚長差は、術前で平均-8.5mm、歩行開始時で平均14.0mm、歩行開始後1週で平均11.25mm、歩行開始後2週で平均10.5mmであった。他覚的脚長差は、術前で平均-18.1mm、術後で平均11mmであった。歩行開始時から歩行開始後1週の自覚的脚長差の変化は平均3.7mm、歩行開始後1週から歩行開始後2週の変化は自覚的脚長差の変化は平均0.9mmであり、歩行開始時から歩行開始後1週の変化は有意に大きかった(p=0.0013)。歩行開始後全例で脚長差は減少し、歩行開始後2週において10例中8例で自覚的脚長差が10mm以下になり、補高を必要としなかった。10例中2例に歩行開始後2週にて自覚的脚長差と術後他覚的脚長差に30mm以上の差が見られた。その他の8例においては、歩行開始後2週にて自覚的脚長差と術後他覚的脚長差の差は平均0.15mmであった。<BR>【考察】自覚的脚長差の測定は、補高を決定する上で重要である。THA後の理学療法において自覚的脚長差がみられた場合の補高を処方する時期は決められていない。自覚的脚長差の歩行開始時から歩行開始後1週の変化が有意に大きかったことから、補高を処方する場合は、歩行開始早期に行う必要がないのではないかと思われる。また歩行開始1周以降も自覚的脚長差の改善がみられた例がいたこと、歩行開始後2週において10例中8例で自覚的脚長差が10mm以下になり補高を必要としなかったことから補高を処方する場合も段階的に高さを調整出来るようにした方が良いと考えられる。<BR><BR>
著者
鐘司 朋子 相沢 幸一郎 鍋城 武志 蘭 康昭 飯田 哲 品田 良之
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, 2008-04-20

【はじめに】人工股関節全置換術(以下THA)における前方アプローチと側方アプローチの股関節外転筋力と膝関節伸展筋力の回復経過について在院日数などとあわせて比較検討を行った.<BR>【対象】2003年11月~2006年12月までに当院整形外科で施行したTHA患者のうち,術後3ヶ月・6ヶ月・1年に評価が可能だった患者で,前方アプローチ79名(以下前方群)で変形性股関節症74名,大腿骨頭壊死5名,平均年齢62.9歳,側方アプローチ65名(以下側方群)で変形性股関節症63名,大腿骨頭壊死2名,平均年齢61.2歳とした.<BR>【方法】両群間で手術から退院までの期間と1本杖歩行開始までの日数の比較,および術前・退院時・術後3ヶ月・術後6ヶ月・術後1年に等尺性の股関節外転筋力と膝関節伸展筋力をアニマ社製 μTasMF―01を用いて測定し術前筋力との比を回復率(%)として算出し比較検討した.<BR>【結果】手術から退院までの期間は前方群は26日,側方群は31日,1本杖開始までは前方群は9日,側方群は14日となり,前方群は側方群に対し有意に短い結果となった.股外転筋力回復率は前方群においてすべての評価時で術前より有意な回復をみせたが,側方群においては術後3ヶ月以降に有意な回復となった.両群の股外転筋力回復率の比較では退院時に前方群は144%,側方群は129%となり,前方群おいて有意に高い結果となった.膝伸展筋力回復率は両群とも退院後からの回復となり,術後3ヶ月で前方群は139%,側方群は125%,術後1年では前方群147%,側方群140%と経過中は前方群の方が有意に高い回復経過となった.<BR>【考察】前方アプローチは股外転筋に侵襲を加えないため側方アプローチに比べて早期に股外転筋力が回復したと思われる.膝伸展筋力において経過中回復率が前方アプローチで高かったのは,前方アプローチは股関節周囲筋への直接的な侵襲が少ないため立位歩行など移動動作が早期に可能で推進筋である大腿四頭筋の筋力回復も高かったのではないかと推察される.<BR>【まとめ】前方アプローチは側方アプローチに比べて筋への侵襲が少ないため筋力回復も早く杖歩行など立位歩行動作が比較的獲得しやすく術後在院期間も短い.THAにおいては術式により筋力回復や術後経過に違いがあり,それを踏まえた上での理学療法の進め方が重要であることが示唆された.
著者
匂坂 勝之助 荒木 忠 大和田 琢二 藤川 清三
出版者
北海道大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1990

プラスチド イニシャル形成と低温度要求性:休眠覚醒後にプラスチド イニシャルの形成が始まるので、休眠覚醒のおこる低温度と覚醒のみられない環境条件下にポプラをおいて比較検討した実験で、休眠覚醒のみられないポプラではプラスチド イニシャルの形成は全く進行しないことがあきらかになった。プラスチド イニシャルは遊離状態で存在すること:ポプラの皮層部から遊離状態のプラスチド イニシャルを得た。プラスチド イニシャルの形成は多年生植物(樹木)で一般的にみられること:ダケカンバ、エゾニワトコ、スグリ、キタコブシ等の皮層細胞に休眠覚醒後にプラスチド イニシャルが存在することを明かにした。草木植物にプラスチド イニシャルが存在することを証明する予備的調査:ジャガイモ魂茎の形成期にアミロプラストの前駆体と思われる構造体の存在することを確かめた。この研究は現在継続中である。プラスチド イニシャル形成は各組織で同時に始まる:リンゴの花芽、葉芽及びシュートの皮層細胞でこのことを明らかにした。成熟プラスチドを経ないプラスチド イニシャルの形成:リンゴの花芽、葉芽及び皮層細胞から成熟プラスチドを経ない新しい形成過程を示す電子顕微鏡像を得た。この実験で、プラスチド イニシャルの形成に小胞体が直接関与していること及び小胞が活発に形成されてプラスチドイニシャルに融合している電顕像を得た。
著者
栗田 真悟 得平 司 内山 匡将 根来 政徳 福井 浩之 岡本 浩明 谷本 武晴 白井 一郎 本田 侑子 住田 幹男 大園 健二 相原 雅治
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, 2008-04-20

【目的】全人工股関節置換術(以下THA)の術後,中・長期後の合併症で最も問題なのはコンポーネントの弛みである.この原因には、コンポーネントの設置不良や,感染,外傷などと,ポリエチレン摩耗粉によって生じる骨溶解による無菌性の弛みと言われている.今回この無菌性の弛みに影響する因子について調査検討を行った.<BR>【対象と方法】対象は,当院において初回THAを施行され2002年10月~2006年12月までの間に,再置換術を施行した19名26股のうち,複数回再置換術を施行した症例を除き,調査項目(年齢,初回THA手術日,再置換術日,再置換術前JOAscore,関節可動域,筋力,身長,体重,職業歴,Life-Space Assessment,1日の歩行時間,移動形態,趣味,再置換に対するきっかけ)が得られた女性9例11股(初回THA平均年齢は53.0±4.0歳,再置換平均年齢65.82±8.32歳)である.項目はカルテによる調査と電話での聞き取り調査を行った.方法は初回THA手術から再置換術までの経過期間の平均値より早期に再置換に至った症例(以下短期群)と,平均値よりも遅く再置換に至った症例群(以下長期群)と定義し,この2群間における調査項目について比較検討した.統計処理はt検定を用い,有意水準を5%未満とした.<BR>【結果および考察】THA再置換術までの日数の平均値は12.9±5.45年であり,短期群6名の平均年齢61.1±3.6歳,長期群5名の平均年齢74.8±8.0歳,再置換までの平均年数はそれぞれ8.9±1.98年,17.6±4.32年で有意差がみられた(p<0.008).術側JOAscoreにおいて短期群74.7±19.66点,長期群46.4±10.16点であり,短期群で有意に点数が高かった(p<0.016).また,JOAscoreの疼痛の項目に関して短期群31.7±9.83点,長期群19.0±5.48点,車・バスの乗り降りの項目に関して,短期群3.0±1.10点,長期群1.2±1.10点,ADL合計点においても短期群16.0±3.58点,長期群10.4±3.29点と各々の項目で短期群で有意に高かった(p<0.012, p<0.024,p<0.025).術側屈曲筋力MMTにおいて短期群4.5±0.55,長期群3.2±0.84,術側外転筋力MMTにおいて短期群4.3±0.82,長期群3.8±0.84であり,短期群で有意に筋力が高かった(屈曲p<0.031,外転p<0.003).移動形態では独歩,一本杖,二本杖で分類し検討した結果,短期群で有意に補装具が少ない傾向にあった(p<0.047).趣味では毎日スポーツジムに通う,毎日の散歩,年に数回の旅行に分類し検討した結果,短期群で有意に活動量において多い傾向がみられた(p<0.045).しかし,Gunnarらによる研究とは異なりBMIにおいて2群間で有意差はなかった(p<0.367).これらの結果から,短期群では疼痛が軽く筋力も長期群より強いため,ADL能力も高かったと考えられる.また仕事や趣味,さらに移動形態では,より独歩に近いことからも短期群の活動性の高さが伺える.すなわち,今回の調査では活動性が高いことが弛みを助長し,再置換のリスクを高める要因のうちの一つであることが示唆された.<BR>
著者
相澤 純也 小山 貴之 塩田 琴美 高梨 晃 磯崎 弘司
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, 2008-04-20

【目的】人工股関節全置換術(以下、THA)後の爪切り動作では術後合併症である脱臼の回避と、足先の目視が必要であり、代償的な動作が限定されるため、動作獲得には良好な股関節可動域(以下、ROM)が不可欠となる。動作獲得に向けた効果的な介入には、客観的なROM評価と、動作自立に要するROMの詳細情報が重要な根拠となる。本研究目的は、THA後の爪切り動作自立に要するROMの一水準を得ることである。<BR>【対象と方法】対象はTHA後患者34名の48下肢、年齢64.3±10.5歳、身長152.9±6.3cm、BMI23.0±4.2kg/m<SUP>2</SUP>であった。原因疾患は変形性股関節症46肢、大腿骨頭壊死2肢であった。手術アプローチは後外側が44肢、前外側が4肢であった。ROMは、同一検者が日本リハビリテーション医学会・日本整形外科学会制定法に従い、東大型角度計(TTM-KO)を使用して測定した。測定項目は股関節屈曲、外転、外旋角度とし、無作為順に測定した。対象動作は坐位、膝関節屈曲位で、単純股関節屈曲位もしくは、股関節屈曲・外転・外旋位での爪切り動作とした。動作自立度の判定は、検者による動作観察と、被験者の主観的評価によりa.不可能、b.かろうじて可能、c.容易に可能、の3段階で行った。統計学的分析は、群別に各データの平均値及び標準偏差を算出した後、一要因分散分析及び多重比較(LSD法)を用いて、群間での各データの有意差をみた(5%水準)。<BR>【結果】年齢、身長、BMIに群間での有意差は認めなかった。各群(N:a群12、b群21、c群15)の角度平均値及び標準偏差は、屈曲a群72.3±11.8、b群88.3±13.2、c群96.2±12.0度、外転a群7.7±9.1、b群10.6±6.0、c群15.4±5.3度、外旋a群14.8±8.4、b群21.4±8.5、c群20.8±10.1度、屈曲+外転+外旋a群94.7±24.8、b群120.4±19.2、c群132.4±17.4度であった。a群と比較して、b群において屈曲、外旋、屈曲+外転+外旋が有意に高値を示し、c群においては屈曲、外転、屈曲+外転+外旋が有意に高値を示した。b群とc群の比較では、c群で外転のみ有意に高値を示した。<BR>【考察】THA後の爪切り動作の自立には屈曲と外旋のROM増大が特に重要であると示唆され、容易な動作遂行に要するROMとしてc群の角度データが一水準になると考えられた。また、b群と比較し、c群での外転が有意に高値を示したことから、安楽な動作遂行には外転ROMの増大が重要になると考えられた。爪切り動作のような足部へのリーチ動作において、多軸関節である股関節では、屈曲、外転、外旋各々のROM不足を相互に代償しうる特性を持つことから、3つの角度の総和も動作自立に要するROMの一指標になりうると考えられた。<BR>
著者
平塚 志保
出版者
看護総合科学研究会
雑誌
看護総合科学研究会誌 (ISSN:1344381X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.25-36, 2007-12-31
被引用文献数
1

日本において,看護師等による産婦への内診を含む助産行為は,2002年,2004年,2007年に出された行政通知によって禁じられている。本研究は,助産師の社会的需要はますます増大しているという観点から,以下について論じる。1. 医療法指定規則に定めのない助産師の需要は,助産行為を誰が担うのかに依拠する。とくに診療所では助産師を積極的に採用する方策が十分なされてこなかったために,無資格者による助産行為をせざるを得ない状況となった。2. 未就業助産師のなかで就業を希望する者は一定数存在する。3. 助産師の偏在は就労環境に依拠し,単に勤務条件,労働条件のみならず,継続教育の保証,助産師としての専門性が発揮できる環境,安全に助産業務が遂行できる人的環境,医師,看護師との役割分担とパートナーシップが重要である。4.現在,医療化された出産現場において助産師は,専門職としてのアイデンティティを取り戻し, 実践能力を高める努力が必要とされる。In Japan, the practice of midwifery, including pelvic examination, by registered nurses, licensed practical nurses, and nursing assistants is prohibited under administrative notifications issued in 2002, 2004, and 2007. This study addresses the following issues in the light of increasing social demand for midwifery. 1. As the Medical Practice Act does not designate the roles and regulations for nurse-midwives, the demands for these professionals depend on who has been charged with the responsibility for delivery. There has not been effective strategies to employ nurse-midwivesactively at matemal clinics; as a result, unlicensed persons have had to assist with deliveries. 2. There is a constant number of qualified nurse-midwives who are not currently working, but wish to start practicing. 3. The structure of the current work environment is responsible for the uneven distribution of nurse-midwives. Therefore, it is important to provide a clinical environment in which nurse-midwives can use the full extent of their training and a personal environment in which they can safely accomplish their statutory duty at delivery. It is also important to guarantee continuous education and training, clearly defining the roles of physicians and registered nurse under these conditions will help establish a partnership among them and improve employment and labor conditions. 4. Currently, nurse-midwives are routinely confronted by hospitals at delivery as to their function and responsibilities. Nurse-midwives need to regain an acknowledgement of the role of their profession in childbirth and continue to enhance their practical abilities to fulfill that role effectively.
著者
住吉 広行 山根 宏文 益山 代利子 建石 繁明 SHIRINASHIHAMA Hiroyuki MINEGISHI Yoshio
出版者
松本大学松商短期大学部
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

今回の申請は、安曇野が持っている豊かな自然環境や文化的な土壌を活かして、グリーンツーリズムあるいはエコツーリズムという視点で観光産業を発展させ、地域の活性化を図ろうとするものであった。特に、この地域では多くの方々が同じ思いで、独自の取組をされているが、それらがなかなか有機的に結びついていないという欠点を持っていた。それを大学という学術的な面での拠点を活かして、人と人とを結びつけ、新たな事業展開を図ることを一つの大きな目標にしていた。この点に関しては、2度の集いを開催し、各回70名を越える参加者を得ただけではなく、参加者自らが情報ネットワークを構築して、互いの情報交換を頻繁に行おうというところまで進展させることが出来た。参加者同士での知識や技術の交換も行われ、こうした方向性に参加された多くの方々が意を強くされた集会となった。一方で、安曇野が持つ観光資源をさらに広い視野で捉えようと、国内においては、産地直送や安全安心をテーマとした都市と農村の交流を活性化させることや、ユニバーサルデザイン化された観光地という視点での問題点洗のい出し、さらには環境を重視した世界的な取組などを、地域の方々と連携しながら学ぶ中で、これからの安曇野観光を共に考える機会が持てたと思われる。また、行政との連携という視点では、安曇野観光ネットワーク推進協議会やそれがさらに発展した、安曇野ブランドデザイン会議の進展などの成果があり、その後も大学と国営アルプスあづみの公園などが連携して、地域住を巻き込んだ健康づくりの活動も進んできている。また団塊の世代を対象とした、エコツーリズムのプランも旅行業者や地元観光業界などとの提携で、順調な足取りを踏み出して来ている。
著者
笹田 直
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学會誌 (ISSN:00214728)
巻号頁・発行日
vol.76, no.651, pp.439-444, 1973-03
被引用文献数
2
著者
石田 和人 浅井 友詞 水口 静子 堀場 充哉 野々垣 嘉男 吉田 行雄 大藪 直子 和田 郁雄
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.21, no.5, pp.340-346, 1994-09-30
被引用文献数
4

変股症でTHRを施行し長期経過した症例が, 生活の場において実際にしているADLの実態をとらえる目的で, 短期群(THR術後経過年数が1〜3年)10例, 中期群(5〜8年)9例, 長期群(10〜20年)9例の3群に分類し, ADLにおける諸動作の特徴を撮影したVTRより分析し検討した。結果, 術後のADL能力は比較的良好に保たれており, 高い満足が得られているが, 長期群では加齢に伴う活動性の低下から立位歩行能力等に問題が生じる例もあった。また, 術後経過の期間と無関係に, ADL上問題となる内容は, 立位歩行, 靴下着脱, 腰を床に降ろすの3点に集約された。変股症患者のADL能力は長期にわたり, その時点での股関節機能(特に可動性)に影響されるが, 加えて, 加齢にともなう活動性の低下なども影響しうる。よって, THR後の長期経過はX線学的問題のみならず, 生活の場で行っているADLの実態把握が重要である。
著者
對馬 均 舘山 智格 川嶋 順蔵 片野 博
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.51-56, 1989-01-10
被引用文献数
1

人工股関節全置換術を目的として入院となったものの, 疼痛, ROM 制限, 筋力低下, 不良姿勢, などの機能的諸問題により手術施行が延期された慢性関節リウマチの一症例を経験した。この症例に対して7週間に渡り術前訓練を徹底して行った結果, 手術-術後訓練と良好に経過し, ADL 自立にて自宅退院させることができた。本症例に対する理学療法を通じて, 術前訓練の意義として, (1)術前に機能状態を高めておくことが, 術後の機能状態を大きく左右する, (2)術前から起居動作・移動動作を習熟させておくことによって, 術後早期離床・部分荷重歩行へのスムーズな移行が可能となる, (3)術前訓練の励行によって達成された身体的効果が, 手術や術後機能に関する心理的問題に好影響を及ぼす, (4)全人的理学療法という観点からも術前訓練は重要である, などの点を再確認した。
著者
宮城 新吾 豊田 輝 寺村 誠治 脇元 章博 高木 康臣 吉葉 崇
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, 2008-04-20

【目的】<BR>人工股関節全置換術(以下THA)後の靴下着脱動作方法には,一般的に臨床で用いられている股関節屈曲・外転・外旋を伴う方法(以下外旋法),長坐位で体幹屈曲し行う方法(以下長坐位法),立位で膝を屈曲し行う方法(以下立位法)などがある.THA後にこれらの靴下着脱動作方法を指導する際,短期間に複数の方法を試し,安楽に動作可能な方法を理学療法士が経験的な要素から選定しているため,理解力に欠けている患者では困惑し,誤って危険な方法をとろうとしてしまうことがある.そこで本研究では,靴下着脱方法の外旋法,長坐位法,立位法の3つの動作方法の指標となる股関節関節可動域(以下ROM)を明らかにし,臨床における指導方法選定の参考角度を求めることを目的とする.<BR>【対象および方法】<BR>対象は,当院整形外科にて初回片側THA(全例セメントレス,進入方法は後側方アプローチ)後に理学療法を施行した52例.なお,関節リウマチ患者は対象から除外した.<BR>方法は,術後14病日の時点で,股関節屈曲・外転・外旋のROMを測定した.また,担当理学療法士が外旋法・長坐位法・立位法を指導後,対象がそれぞれの動作方法を実施し,最も安楽に靴下着脱可能と答えた動作を獲得方法として選定した.選定された動作方法ごとに,測定で得られた3方向の股関節ROMの各平均値を算出し,靴下着脱動作における必要可動域について検討した.併せて,選定された動作方法ごとに,3方向の股関節ROMの総和の最低値と最高値,平均値を算出した.<BR>【結果】<BR>術後14病日の時点での靴下着脱動作獲得率は100%であった.動作獲得方法別にみると,外旋法67%,長坐位法8%,立位法25%であった.外旋法における股関節屈曲角度の平均値は86.8度,外転27.1度,外旋28.2度であった.総和の最低値は105度,最高値は170度,平均値は137.5度であった.長坐位法における股関節屈曲角度の平均値は88.8度,外転20.0度,外旋16.3度であった.総和の最低値は120度,最高値は130度,平均値は125.0度であった.立位法における股関節屈曲角度の平均値は71.9度,外転17.3度,外旋20.0度であった.総和の最低値は95度,最高値は125度,平均値は110.0度であった.<BR>【考察】<BR>今回の対象においては,術後14病日の時点で,上記のような股関節ROMの参考角度が示された.外旋法や立位法では,総和の最低値と最高値の差が大きく,股関節ROM以外の要因の関与が予想された.複合動作である靴下着脱動作には,肩甲帯や体幹の柔軟性,腹部と大腿部の軟部組織量などの股関節ROM以外の身体的要因が靴下着脱動作獲得に与える影響は大きいことが推察される.今後は,身体的要因を含めた指導方法選定の検討を行っていく必要があると考えられた.<BR>