著者
勝木 将人 成田 徳雄 松森 保彦 石田 直也 渡邊 大海 蔡 嗣錡 冨永 悌二
出版者
The Japanese Society for Kampo Medicine and Neurological Surgery
雑誌
脳神経外科と漢方 (ISSN:21895562)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.1-7, 2022-07-30 (Released:2022-09-26)
参考文献数
31

一次性頭痛に対する急性期治療薬としての漢方薬の有用性を,自験例をもとに検討した。緊張型頭痛223例には葛根湯を,前兆を伴うもしくは伴わない片頭痛93例には呉茱萸湯を,天候に関連するもしくは水毒を伴う片頭痛71例には五苓散をそれぞれ頓用で処方し,1週間後に症状の改善の有無を尋ねた。それぞれ約90%の患者において症状の改善を認めた。非ステロイド性消炎鎮痛剤を処方した162例と症状改善率に有意差はなかった。
著者
三森 経世 細野 祐司 中嶋 蘭
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.101, no.2, pp.488-494, 2012 (Released:2013-04-11)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

多発性筋炎および皮膚筋炎(PM/DM)患者には種々の細胞内・核内抗原を対応抗原とする多彩な筋炎特異的自己抗体が検出される.PM/DMにおける自己抗体の検査は,筋炎の診断のみならず臨床特徴・経過・予後を予測し,治療方針の決定において極めて有力な情報となる.特に抗アミノアシルtRNA合成酵素抗体および抗CADM-140抗体は間質性肺炎の合併が極めて高率である.PM/DMに合併する間質性肺炎は頻度も高く,筋炎とともに治療介入の対象となることが多いが,その予後はこれらの特異自己抗体の種類によって大きく異なるため,治療介入前にできる限り自己抗体を測定することが望ましい.抗Jo-1抗体以外の筋炎特異的自己抗体は,現在のところ一部の研究室レベルでしか測定することができないが,ルーチンの測定法の開発がわが国で進行中である.
著者
髙木 健司 高塚 直能 佐々木 翼 森 香津子 小川 直美 伊藤 慎二
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.69-75, 2018 (Released:2018-02-28)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

【目的】当院は精神科医が非常勤であり,患者の精神状態の評価は各医療者の主観的判断となっていた.そこで,抑うつをスクリーニングし専門医への連携に繋げる目的でPatient Health Questionnaire(PHQ)-9を導入したため,後方視的に検討した.【方法】2016年1月1日〜10月31日までに緩和ケア病棟に入院した全患者を対象とした.入院時にPHQ-9を行い,10点以上を抑うつありとした.精神科医の診断(P)と照合した.【結果】対象期間中に延べ83名が入院し,50名に施行し得た.PHQ(−)・P(-)32名,PHQ(+)・P(-)7名,PHQ(-)・P(+)2名,PHQ(+)・P(+)9名であった.P(+)11名であり,PHQ-9の抑うつに対する感度,特異度は81.8%,82.1%であった.【結論】緩和ケア病棟入院時においても,抑うつのスクリーニングとしてPHQ-9の有用性が示唆された.
著者
鄒 青穎 田口 一汰 佐藤 龍之世 石川 幸男 檜垣 大助 蔡 美芳 五十嵐 光 山邉 康晴
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.142-156, 2023 (Released:2023-06-01)
参考文献数
31
被引用文献数
1

津軽十二湖地すべり地は,白神山地の最西部,青森県津軽国定公園にある約300年前の地震によってできた地すべりである.そこには,流れ山や舌状小尾根地形や巨礫や湖沼群など,十二湖を形成した地すべりの運動やその範囲を示す痕跡が各所に見られる.ここへの来訪者の多くは,推奨散策ルート沿いに1~4時間滞在し,池とブナ自然林の自然風景を鑑賞するために訪れている.来訪者は,地すべりに関連する池の成因や地形と植生との関係への興味が高いが,地学や地生態学的要素に関する情報は来訪者には伝わっていない.そうしたギャップを解消するため,十二湖の地形のできかたとその上に成り立った地すべり地形と植生の対応関係について調査を行い,それらへの理解が深まる散策ポイントを巡る散策マップを作成した.
著者
井土 哲志 大井 あや 三輪田 勤 富貴原 紗侑里 笠井 貴敏 伊藤 雅子 赤羽 貴美子 吉岡 修子 井上 裕康
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.331-338, 2020-05-30 (Released:2020-05-30)
参考文献数
11

【症例】42歳女性【既往】14歳Basedow病(以下GD),35歳 緩徐進行1型糖尿病,40歳 側頭葉てんかん【現病歴】X年2月に歩行時ふらつきを自覚,4月にシックデイとGD悪化で入院.改善し退院したが,6月に眼振と小脳失調症状を認め再入院となった.血清・髄液抗GAD抗体と血清抗グリアジン抗体陽性から自己免疫性小脳失調症と診断した.血漿交換,ステロイドパルス療法及びプレドニゾロン内服,グルテン制限食などの治療により改善し独歩退院となった.プレドニゾロン内服のためインスリンは増量となったが,血漿交換後にGDは改善し抗甲状腺薬は中止となった.【考察】多腺性自己免疫症候群(以下APS)3型の経過中に自己免疫性小脳失調症を発症した貴重な1例で,治療経過と併存症への影響について報告する.自己免疫性内分泌疾患を背景に持つ患者が小脳失調症状を呈する場合,本疾患を疑い早期に精査を行うべきである.
著者
角 美弥子
出版者
北海道教育大学
雑誌
北海道教育大学紀要. 人文科学・社会科学編 (ISSN:13442562)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.65-74, 2020-02

都道府県では文化財保護法に基づき,文化財保護条例が定められている。無形の文化財は無形文化財と無形民俗文化財に分類され,都道府県間で指定数に差があり,無形文化財については指定がない都道府県もある。この原因について,都道府県の無形文化財の指定状況及び文化財保護条例からの検討を試みた。条例の差異を比較したところ,指定件数との関連性は特に見られなかったが,都道府県における無形文化財と無形民俗文化財の違い及び国の指定文化財との関連性が判明した。また,包括的な保護の必要性に言及し,現在取り組まれている指定文化財以外の文化財の保護の重要性,加えて文化財指定の解除を受けた文化財の視覚化などが今後の文化財保護の方向性として有効であると判断した。2018年に文化財保護法が改正され,文化財のさらなる活用が求められている。今後は無形有形の別に関わらずより包括的かつ効果的,また動的な保護が求められることとなるだろう。
著者
賀 玉辰
出版者
日中社会学会
雑誌
21世紀東アジア社会学 (ISSN:18830862)
巻号頁・発行日
vol.2023, no.12, pp.47-57, 2023-03-01 (Released:2023-03-03)
参考文献数
17

The precedent studies about the Chinese patrilineal kinship insist that ancestors who left more kinship common property become objects of more active ancestor worship and that through the segmentation of lineage, the voice among the kinship is enlarged, the members of the lineage are organized, the common property of the lineage is accumulated, and rituals for specific ancestors are performed. In this way, previous studies have emphasized the economic and political elements of ancestral rituals.However, these studies have focused on large-scale patrilineal kinship organizations in southeastern China. On the other hand, this paper focuses on small patrilineal kinship in northern China. The case in this paper confirms that there is little economic and political element in ancestral rituals, as well as the history of patrilineal family migration. Methods of ancestral rituals have also tended to be increasingly simplified in recent years. On the other hand, the culture of patrilineal relatives has been handed down and reconstructed. This paper attempts to analyze the actual situation of the transmission and reconstruction of patrilineal kinship organizations not from the viewpoint of economic and political factors, but from cultural one.
著者
水足 邦雄
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.101-107, 2023-04-28 (Released:2023-06-01)
参考文献数
23

要旨: 近年世界的に難聴者の増加が大きな社会問題となっており, 世界各国で対応が行われている。本稿では, 音響性聴覚障害の病態に焦点を当てて, 特に急性音響性聴器障害による外有毛細胞障害, および近年注目されている内有毛細胞のシナプス障害である cochlear synaptopathy について概説する。このような蝸牛病態を理解することで, 臨床の現場で患者の訴えをより正確に把握することが可能となり, より適切な対処をすることが出来るようになると著者は考えている。さらに, 聴力が正常であっても聞き取りに問題がある場合は cochlear synaptopathy の病態を理解することで正確な対処の参考になる。また, 近年の研究によって音響性聴器障害の病態と, 他の加齢性難聴の病態が極めて類似していることが明らかとなっている。このことは加齢性難聴の予防に騒音対策が最も重要である事を示唆しているだけでなく, これまでの音響性聴器障害に対して行われてきた研究成果が加齢性難聴に対しても応用可能であることを示している。
著者
Keisuke Seki Atsushi Kamimoto Maki Wada Toshimitsu Iinuma
出版者
Nihon University School of Dentistry
雑誌
Journal of Oral Science (ISSN:13434934)
巻号頁・発行日
pp.23-0096, (Released:2023-05-29)
参考文献数
37
被引用文献数
1

Purpose: Medication-related osteonecrosis of the jaw (MRONJ) is characterized by necrosis of the jawbone with intraoral bacterial infection and has a significant negative impact on oral health-related quality of life. Risk factors for the onset are unknown, and definitive therapeutic approaches have not yet been defined. A case-control study at a single institution in Mishima City was conducted. The purpose of this study was to examine in detail the factors that contribute to the development of MRONJ.Methods: Medical records of MRONJ patients who visited Mishima Dental Center, Nihon University School of Dentistry, during the period 2015-2021 were extracted. Counter-matched sampling design was used to select participants matched for sex, age, and smoking for this nested case-control study. The incidence factors were statistically examined by logistic regression analysis.Results: Twelve MRONJ patients were used as cases and 32 controls were matched. After adjustment for potential confounders, injectable bisphosphonates (aOR = 24.5; 95% CI = 1.05, 575.0; P < 0.05) were significantly associated with the development of MRONJ.Conclusion: High-dose bisphosphonates may be a risk factor for the development of MRONJ. Patients who use these products require careful prophylactic dental treatment against inflammatory diseases, and dentists and physicians should maintain close communication.
著者
岡田 恭一
出版者
愛媛県林業技術センター
巻号頁・発行日
no.26, pp.1-3, 2008 (Released:2011-02-04)

アカマツのマツノザイセンチュウ抵抗性苗生産の効率化を目的として、さし木による増殖方法を検討した。県営抵抗性アカマツ採種園(愛媛県喜多郡内子町)から採取した、自然交配種子から育苗した2年生の実生個体から穂木を採取し、さし木を行った。その結果、二酸化炭素を添加し、蛍光灯を光源とした条件下での発根率が73%と他の条件に比べて高くなった。
著者
安達 修介
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.73, no.6, pp.199, 2023-06-01 (Released:2023-06-01)

今日,科学研究分野・学術コミュニケーションでは,特に自然科学分野において,英語を用いて研究成果の発表をすることが主流となっています。しかし,英語が「共通言語」となっていることから生じている問題もあると考えられます。Science誌によると,カリフォルニア大学バークレー校の博士課程の学生が英語を母語としない49名のコロンビア人生物学者に対して調査をした結果,英語での論文執筆はスペイン語よりも12日以上多くかかること,約半数が英語の文法を理由に論文を却下されたこと,1/3が英語の発表に不安があり学会参加を諦めたことなどが明らかになったとされており1),日本でも同様の問題が生じていると推察されます。そこで,今号では科学研究分野・学術コミュニケーションにおける言語問題の現状や,問題への対応策について特集しました。まず,天野達也氏(クイーンズ大学)に,科学研究分野において英語が共通言語になっていると同時に,そのことが障壁を生み出している現状について紹介していただきました。環境科学分野における近年の研究を中心に,3通りの言語の障壁について紹介していただいたうえで,それぞれの問題解決のための解決策についても提示していただいています。次に,田地野彰氏(名古屋外国語大学)に,言語問題を大学英語教育研究の視点から整理し,その解決・改善に向けた方策について論じていただきました。研究を重視する大学の一つである京都大学の全学的な英語教育の取り組みを中心として,大学英語教育に関連する研究を紹介していただいています。続いて,米澤彰純氏(東北大学)に,人文社会科学の分野における,研究成果の国際発信の取り組みについて紹介していただきました。教育学分野での英語論文執筆を通じた国際発信を題材として,日本から人文社会科学の国際発信を推進していくための現状・課題・展望を取り上げていただいています。さらに,柳瀬陽介氏(京都大学)に,言語問題を解決するための方策として,AIを活用して英語論文を執筆する方法について紹介していただきました。AIが不得意としている領域の作業に執筆者が最善を尽くして最終成果物の質を上げること,論文の執筆者とAIが相互補完的に作業を進めることなど,作業の際の留意点を取り上げていただいています。最後に,今羽右左デイヴィッド甫氏・清水智樹氏(ともに京都大学)に,学術コミュニケーションの例として,効果的な研究広報について論じていただきました。広報のストーリーを立て,そのストーリーに基づいて,日本語と英語を駆使し,国内外に向けて研究成果を広報する方法について紹介していただいています。研究のグローバル化やオープン化の進展により,共通言語としての英語の重要性はますます高まっています。英語が第一言語でない研究者にとってこの状況は障壁となりますが,本特集が,そうした状況を正しく認識したり,克服・解決したりしていくための一助となれば幸いです。(会誌担当編集委員:安達修介(主査),尾城友視,鈴木遼香,水野澄子)1) “Science’s English dominance hinders diversity—but the community can work toward change”. Science. https://www.science.org/content/article/science-s-english-dominance-hinders-diversity-community-can-work-toward-change (accessed 2023-05-04)
著者
天野 達也
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.73, no.6, pp.200-205, 2023-06-01 (Released:2023-06-01)

科学研究における共通言語としての英語は,国際的なコミュニケーションを容易にすることで,科学の発展に対して大きな便益をもたらす一方で,いくつかの大きな障壁ももたらしている。本稿では,(1)英語が第一言語でない研究者に対する言語の障壁,(2)科学的知見の応用に対する言語の障壁,(3)科学的知見の集約に対する言語の障壁,という3種類の障壁について,環境科学分野における近年の研究を中心に紹介する。またそれぞれの問題解決のために,研究者個人や学術誌,学会などが実行できる解決策についても紹介し,学術界における言語の障壁という問題について認識を高め,国内外で問題の解消に向けた動きを促進することを目的とする。
著者
田地野 彰
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.73, no.6, pp.206-211, 2023-06-01 (Released:2023-06-01)

学術研究活動における英語の重要性は広く認められている。たとえば,学術会議での研究成果発表や学術論文の執筆などは一般に英語を用いて行うことが期待されている。こうした研究活動における英語の使用が,近年,英語を母語としない非英語圏の科学分野の研究者にとっての「英語の壁」として問題視されている。本稿では,この「英語の壁」問題を,大学英語教育研究の視点から整理し,その解決・改善に向けた方策について考察する。具体的には,研究重視型大学の一つとされる京都大学の全学的な英語教育の取り組み(「学術研究に資する英語教育」)を中心に関連研究の一部を紹介する。