著者
趙 宇
出版者
法政大学地理学会
雑誌
法政地理 = JOURNAL of THE GEOGRAPHICAL SOCIETY OF HOSEI UNIVERSITY (ISSN:09125728)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.61-82, 2020-03-20

纏足とは女性の足の指を幼児期から足の裏に曲げて布で固く縛り成長させない慣習のことをいう。中国で纏足は,宋代から始まり,明清時代には女性の理想像とされ,20世紀初期に農村地域の庶民にまで広がった。民国時代の纏足禁止令と中華人民共和国成立後の社会変化によって,纏足は徐々に廃れていったが,雲南省通海県の村落社会では,取り締まりから逃れ,纏足を行おうとしていた家が多かった。筆者は通海県六一村と長河村で,計8名の民国生まれの纏足女性に対し,聞き取り調査を行うことができた。纏足に関してはすでに数々の研究が蓄積されているが,古代から近代の民国時代までの歴史研究が圧倒的に多く,毛沢東時代および改革開放以後の纏足女性の生活についてはほとんど調査報告がなされていない。本稿では,民国時代以後,とりわけ現代の纏足女性の社会生活に焦点をあて,家庭内外の労働,地域文化への参与および貢献,老後の新しいライフスタイルといった三つの側面から,近現代の中国社会における纏足女性の生活の変化を検討したい。本稿は,地域社会の纏足女性の社会生活について,近現代の中国社会における通時的な変化という新しい視点から考察を行い,家庭内外の経済活動ばかりでなく,地域の民俗文化にも纏足女性が主体的に役割を果たしていたことを新たに提示した。また,毛沢東時代と改革開放後の通海県六一村と長河村における纏足女性の実態を記録することができたことにも本研究の意義や価値があると思われる。
著者
梅津 大雅 中田 和秀
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会第二種研究会資料 (ISSN:24365556)
巻号頁・発行日
vol.2023, no.FIN-030, pp.45-50, 2023-03-04 (Released:2023-03-04)

資産運用において,単一の銘柄に投資を行うことは非常にリスクのある行動とみなされている.そのため資産運用を行う際は,複数銘柄に分散投資を行うことが求められる.このように市場に存在する様々な金融資産に対して,どの資産にどれだけ投資するかを決定する問題はポートフォリオマネジメントと呼ばれている.ポートフォリオマネジメントの代表的なモデルとして,ポートフォリオの期待収益率の最大化と分散の最小化を行う平均分散法のような最適化のアプローチの手法が知られている.しかし,最適化の手法は,主に特徴量として平均と分散を使用しており,強い定常性を仮定している点が問題である.これらの問題に対して本研究では,強化学習の枠組みを用いてポートフォリオマネジメントを行う.強化学習は機械学習の分野の1つであり,コンピュータ上のエージェントが環境と相互作用を繰り返すことで,タスクの報酬を最大化する意思決定の方策を学習する.また定常性を仮定せず,長期的な依存関係を考慮した学習を行うため,資産運用と相性が良い.一方で,強化学習には2つの問題が存在する.その1つが金融市場のデータ不足である.強化学習を行う際は,多量の訓練データを必要とするが,金融時系列は時間に対して1対1にしかデータが増えない.また強化学習に入力する特徴量は,基本的に行動を決定する時点の情報のみを使用するが,資産運用に関しては将来の状態を考慮することが重要である.本研究ではこれらの問題に対処するために,CSDIによるデータ生成とLSTMによる予測を用いた強化学習フレームワークを提案する.CSDIはDiffusion Modelを基としたデータ生成手法の1つであり,金融時系列の分布を模した人工データを生成することが可能であるため,データ不足の問題を解消できる.また時系列予測の分野で高性能を記録しているLSTMによる予測特徴量を入力とすることで将来の状態を明示的に把握させた.これらの提案手法の性能を検証するために,ダウ・ジョーンズ工業株価平均の30銘柄を用いて定量評価を行い,提案モデルはベンチマーク手法よりも優れていることを確認した.
著者
下澤 嶽 シモサワ タカシ Takashi Shimosawa
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要 = Shizuoka University of Art and Culture bulletin
巻号頁・発行日
vol.16, pp.17-26, 2016-03-31

戦前、戦後の日本赤十字社と共同募金の歴史と展開システムを詳細に調べるとともに、寄付回収の中心的役割を果たしている自治会・町内会等と募金システム、行政府との関係を詳細に見ることで、日本の寄付回収文化の特徴を分析する。
著者
今西 龍
出版者
東洋文庫
雑誌
東洋学報 = The Toyo Gakuho
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.96-104, 1912-01
著者
今西 龍
出版者
東洋文庫
雑誌
東洋学報 = The Toyo Gakuho
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.282, 1912-05
著者
大柿 高志 吉仲 亮 山本 章博
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第28回 (2014) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.4A15, 2014 (Released:2018-07-30)

近年、古典和歌のテキストデータベースがWebやCD-ROMで公開されてきている。それにともなって、マイニングの技術が文学研究においても利用され始めている。これまでの古典和歌の文学研究は自立語による語句の分析が主だった。しかし、和歌は朗詠の文化を持ち、音が重要な意味をもつことも十分考えられる。和歌を音素の記号列に変換し、テキストマイニングを行うことで、新しい和歌の分析手法を提案する。
著者
滝本 多恵 和田 由美子
出版者
九州ルーテル学院大学人文学部心理臨床学科
雑誌
心理・教育・福祉研究:紀要論文集
巻号頁・発行日
no.22, pp.37-51, 2023-03-31

精神科看護師における幸福感とワーク・ライフ・バランス(WLB)の関係について検討するために,精神科看護師81名を対象に無記名のweb 調査を実施した。協調的幸福感の得点には,性別やその他の属性による有意差は見られなかった。協調的幸福感の得点を目的変数,WLBの5つの下位尺度の得点を説明変数とするステップワイズ法による重回帰分析を属性別に実施した結果,性別の分析では,男性では「仕事のやりがい・職場の支援」のみが,女性では「家庭での過ごし方・家庭の支援」「仕事 のやりがい・職場の支援」の両方が正の説明変数として選択された。また,同居の子の有無では,いずれも「家庭での過ごし方・家庭の支援」が正の説明変数として選択され,同居の子なしの者では2つ目の変数として「仕事のやりがい・職場の支援」が,同居の子ありの者では「時間の調整」が選択された。精神科看護師の幸福感にWLBが正の影響を与えていたことから,属性差および属性差の背景を踏まえた適切なWLBの支援策をとることにより,精神科看護師の幸福感が向上する可能性が示唆された。
著者
紫野 正雄 林 繁利 市原 伸恒
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.331-333, 2005-05-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
8
被引用文献数
2 2

チワワ種雌犬が, 難産の末3匹を初産分娩したが, その後のX線検査によって子宮外に2胎のミイラ化胎子が認められた. その後無処置の状態で分娩後2回日の発情でふたたび妊娠した. 妊娠末期にX線検査を行ったところ, 4胎の正常胎子とともに2胎のミイラ化胎子が確認された. 正常胎子の摘出のための卵巣子宮全摘出を行い, さらに腹腔内ミイラ化胎子の摘出も行った. 摘出右子宮の先端に脱出跡と思われる組織学的所見が得られた. また, 摘出ミイラ化胎子についてX線検査による骨格測定を行ったところ, 妊娠末期の胎子と一致した. 以上の結果から, このミイラ化胎子は前回の分娩時の難産のおりに子宮破裂口から腹腔内に脱出し, 長期間腹腔内に遺残し, その後の子宮修復に伴い重複妊娠した事が示唆された.