著者
中村 仁志 中野 真志
出版者
愛知教育大学
雑誌
愛知教育大学教職キャリアセンター紀要 (ISSN:24240605)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.1-8, 2017-03-31

本稿では、教科横断的なカリキュラムに関する議論の源流について論じるにあたり、ジョン・デューイ(Johon Dewey)を取り上げ、彼の学際的カリキュラムの思想形成に影響を与えたシカゴ大学付属小学校、通称「デューイ実験学校」での教育実践に着目する。デューイの学際的教育学の検討から導出される、断片化された知識の再接続と諸学問分野間の接続という二つの主題を分析視角とし、先行研究では十分に焦点が当てられていなかった「総合的な歴史」の具体的な学習および活動に検討を加え、その実態を明らかにする。その際、1900~1901年度のグループ8とグループ9の「実験学校ワークリポート」を分析対象とする。本稿の結論は次の2点である。第一に、デューイ実験学校における総合的な歴史の実践は、知識の起源の諸発見の再創造および諸学問分野とそれらが対象とする歴史的・社会的事象との関係から「相関」を問い直すことによる各教科内容の選択・組織化という点で意義をもっていることである。第二に、デューイ実験学校における総合的な歴史の実践は知識の起源の諸発見の再創造が強調された結果として自民族中心主義的な側面をかかえてしまっているという課題を指摘できることである。これらの結論が持つ含意は、知識の起源の諸発見の再創造と自民族中心主義的な側面の克服の両立を図りつつ、教科横断的なカリキュラム全体の知識の構造化の基盤となる歴史学習のカリキュラムをいかに創造するかを問うことである。
著者
加藤 直志 KATO T
出版者
名古屋大学教育学部附属中・高等学校
雑誌
名古屋大学教育学部附属中高等学校紀要 (ISSN:03874761)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.117-124, 2013-02-01 (Released:2013-04-08)

2008年の学習指導要領では、小学校においても伝統的な言語文化についての学習を重視するという方針が打ち出された。これを受けて、小学校の国語教科書でも、古典に関する教材がこれまで以上に配置されることになった。本稿は、それらを概観することで、各教科書の特徴を明らかにすることを試みたものである。また同時に、中学校・高等学校の国語科教員が、小学校でどのような古典教育が行われるのかを知る一助とすることも目論んだ。
著者
津田 洋子 内山 隆文 塚原 嘉子 西村 繁 塚原 照臣 野見山 哲生
出版者
信州公衆衛生学会
雑誌
信州公衆衛生雑誌
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.64-65, 2007-08

長野県木曽地域に伝わる“すんき漬"にはⅠ型アレルギーに関与するIgE抗体を抑制する植物性乳酸菌が含まれていることが報告されている。すんき漬の抗アレルギー効果を調べるための自記式調査票による調査を王滝村に実際に居住する全村民(910人)に実施した。回収率88.2%であり、回答者の76.6%が冬季にすんき漬を食し、64.1%がすんき漬を好んでいた。冬の間のすんき漬摂取の有無、煮大豆、・みそ(味噌汁として)・豆乳・乳酸菌飲料・ヨーグルトの摂取、飲酒、喫煙を説明変数としてロジスティック解析を行った結果、食物アレルギーの有無には豆乳の摂取(p=0.02)、アレルギー疾病の有無には煮大豆(p=0.03)・乳酸菌飲料(p=0.02)・ヨーグルトの摂取(p<0.00)が有意に関係している結果であった。冬の間のすんき漬の摂取は食物アレルギーの有無(p=0.10)、アレルギー疾病の有無(p=0.14)の両方に関して有意な関係はみられなかったが、オッズ比がそれぞれ1.81、1.38であった。
出版者
北海道大学法学部 = Hokkaido University, School of Law
雑誌
北大法学論集 (ISSN:03855953)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.185-192, 1999-05
著者
山本 真也
出版者
京都大學人文科學研究所
雑誌
人文學報 = The Zinbun Gakuhō : Journal of Humanities (ISSN:04490274)
巻号頁・発行日
vol.100, pp.145-160, 2011-03

チンパンジーはヒ卜に最も近縁な進化の隣人である。生物学的にも「ヒト科チンパンジー」と分類される。筆者は,このようなチンパンジーとヒトを比較することにより. 「こころ」の進化について明らかにすることを目指してきた。本論文では,比較認知科学研究者の立場からこれまでの研究を概観し,チンパンジーとヒトの共通点と相違点について論じてみたい。長い間ヒトに特有と考えられてきた行動や特性の多くはチンパンジーでもみられることが明らかとなってきた。道具使用や文化の存在などである。社会的知性にかんしても同様である。たとえば利他行動では,自分には即時的な利益がなくても,チンパンジーが同種他個体の手助けをすることが実証的に示された。しかし,ヒ卜との違いも指摘されている。ヒ卜では他人が困っているのを見ると自発的に助けようとする心理が働くこともあるが,チンパンジーではこの自発的な手助けが稀だった。相手の要求に応じて手助けする。これがチンパンジーの特徴だと言えるかもしれない。チンパンジーとヒ卜でこのような違いがみられる理由に,それぞれの社会や生息環境の違いがあげられる。それぞれの種がそれぞれの環境に適応して進化してきた。その種にみられない知性や能力は,たんにその種にとって不必要だっただけかもしれない。主に植物性食物を食べるチンパンジーは,基本的に自分の食べ物は自分ひとりで確保することができる。それに対し,動物性食物に頼るようになったヒトでは,協力して狩りをし,獲物を分配する必要があったと考えられる。このような違いが手助け行動の自発性の違いにも表れているのではないだろうか。どちらが優でどちらが劣だという問題ではない。種を比較することで,それぞれの特徴を浮き彫りにする。その結果,自己および他者のアイデンティティーを尊重することにつながればと願っている。
著者
中野 良明
巻号頁・発行日
2001-03

Supervisor:野中 郁次郎
著者
岩出 亥之助 福住 俊郎 柳川 林八
出版者
東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林
雑誌
東京大学農学部演習林報告 (ISSN:03716007)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.111-126, 1952

シイタケは或る種の木材腐朽菌に対して抗菌現象を示し,特にカミウロコタケに対して明瞭である。その状態は培養基の組成によつて違つてくる。また培養基のpHもこの現象に対して影響があり,pH3.6に於いてシイタケは他菌に対して最高の抗菌力を現わす。
著者
西川 絹恵 生島 博之
出版者
愛知教育大学実践総合センター
雑誌
愛知教育大学教育実践総合センター紀要 (ISSN:13442597)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.225-231, 2010-02

ギャップの典型例は,支え喪失(強力な支えがなくなった),自己発揮機会喪失(自分を発揮する機会が持てなくなった),脆弱性露呈(関係維持の潜在的な脆さが徐々にあらわれた),課題解決困難化(課題解決が徐々に困難となり不満や不安を募らせてきた),友人関係展開困難化(仲間関係を広げていくことができず徐々に孤立した)があるといわれている。しかし発達障害児(グレーゾーンの生徒も含む)の特徴と「中1ギャップ」の5つの典型例はよく似ている。発達障害児は小学校から中学校入学という環境の変化において,変化を好まない,適応が困難であることなどの障害特徴から,二次的障害としての不登校を誘発しやすい状況となっていることが多いと思われる。よって発達障害の子どもたちの多くにも中1ギャップが影響している可能性は非常に高いと思われる。発達障害と不登校の関連性については多くの研究が指摘するところであり,したがって発達障害児に対しては,さらにきめ細やかな中1ギャップに対する対応が必要であると考えられる。本研究では「特別支援教育」の観点から,そのギャップの解消につなげるためのスクールカウンセラー(以下 SC と表記)の小学校から中学校へつなげるための取り組みについて,広汎性発達障害児とのかかわりを通して「小学校から中学校への変換期を支える特別支援」について検討した。