著者
仲上 健一
出版者
水資源・環境学会
雑誌
水資源・環境研究 (ISSN:09138277)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.44-51, 2019 (Released:2020-01-24)
被引用文献数
2 2

改正水道法(平成30年法律第92号、平成30年12月12日公布)における国会議論と残された課題を検討する、地方自治体の反応の特徴を整理した。改正水道法の最大の論点は、水道事業へのコンセッション方式の導入であり、コミュニケーション方式のメリット・デメリットについて類型化した。水道事業のコンセッション方式の導入において、浜松市における、 「浜松市水道事業へのコンセッション導入可能性調査業務報告書」(平成30年2月)を対象に、コンセッション導入検討プロセスについて検討するとともに、本報告書における結論は、水道事業を経済性のみでの判断を基本にコンセッション方式の優位性が導き出された結論であり、水道利用者の住民や事業者のコンセッション方式の意向が把握されていないことを指摘した。水道法改正にあたっては、問題解決の方法として、水道事業の経営の視点で議論されており、水道事業の全体環境である行政・労働者・地域住民・社会の視点で問題点を検証し、課題解決の道を探る必要がある。
著者
齊藤 忠彦 田島 達也 岩﨑 博道 岡本 隆太 高橋 幸三 財満 健史 大脇 雅直
出版者
日本音楽教育学会
雑誌
音楽教育学 (ISSN:02896907)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.25-35, 2021 (Released:2022-08-31)
参考文献数
4

2019年12月に報告された新型コロナウイルスの影響は学校教育においても深刻である。特に音楽科では歌唱などの表現活動において飛沫拡散の可能性があるため, その対策を講じることが急務とされているが, 科学的な知見に基づく研究が遅れている。そこで, 本研究では, 飛沫可視化による検証実験を通して, 定量的なデータを得ながら, 歌唱の活動における飛沫感染対策に関わる検討を行うこととした。飛沫可視化によるマスク等の飛沫防護具の比較では, 「不織布マスク」「ガーゼマスク」「合唱用マスク」「マウスシールド」「フェイスシールド」の5種類の飛沫防護具を取り上げ, それらの中で最も飛沫抑制効果が高いのは「不織布マスク」であることを確認した。その他に, 「ハミング」「歌詞唱」「朗読」の比較検討, 「日本語」「ドイツ語」の比較検討なども行った。なお, 飛沫防護具着用による音響的な変化を捉えるために, 音声分析による検証実験を行った。

1 0 0 0 OA 頸部郭清術

著者
上村 裕和
出版者
日本頭頸部癌学会
雑誌
頭頸部癌 (ISSN:13495747)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.346-352, 2015-10-25 (Released:2015-11-26)
参考文献数
10
被引用文献数
2 2

化学放射線療法による根治治療が広く行われるようになった現在でも,頸部郭清術は頭頸部癌治療において重要な役割を担っている。精度と安全性の高い頸部郭清術を行える技術を身につけておく必要があるが,その基礎として解剖学的知識は欠かせない。頸部郭清術は筋膜に囲まれる間隙に存在するリンパ節を脂肪組織等と共に摘出する手術である。筋膜は時として明確に捉え難いことがあるが,頭頸部の骨格や筋肉を理解・把握しておくことで迷走することを回避できる。これらに精通して各手術器械の適切な使用に習熟しておくことによって,安定した手術が提供できるだけでなく,腫瘍切除における困難な状況を克服することが可能になると期待される。そのような観点からは解剖学的構造に沿った合理的で鋭的な手術を行うトレーニングを積み重ねておくことは無駄にはならないであろう。
著者
本多 啓吾
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報 (ISSN:24365793)
巻号頁・発行日
vol.124, no.12, pp.1577-1583, 2021-12-20 (Released:2022-01-01)
参考文献数
5
被引用文献数
1

頸部郭清術は, 頭頸部外科医が主体となる治療 (技) のうち, 最も重要なものの一つである. 頸部のリンパ (脂肪) 組織の多くは, 静脈周囲に存在し, 筋膜によって区分されている. 根治的頸部郭清術に始まった系統的郭清は, 根治的頸部郭清術変法から選択的頸部郭清術へと, 低侵襲化と個別化が進んでいる. 今日では, 症例毎に郭清範囲や切除法 (radicality) の選択と調整が求められている. その際, より戦略性の高い頸部郭清を計画し遂行するためには, 局所指向性の高いリンパ流およびリンパ組織領域の把握が必要である. 本稿では, 頸部のリンパ組織を立体的かつ動的に把握する助けとなる解剖学的事項を整理する.
著者
清成 透子 井上 裕香子 松本 良恵
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
pp.si5-11, (Released:2022-12-01)
参考文献数
26
被引用文献数
1

COVID-19のパンデミックは,行動免疫システムと感染予防行動や態度などの関係を検討する格好の機会である。本研究は,感染拡大の鍵を握る若年層(大学生)を対象に身近にCOVID-19の罹患者がいる群とそうではない群を比較し,行動免疫システムから予測される通り身近に迫る感染脅威が予防行動を実際に引き出しているかを検討した。調査は2021年7月5日から21日の期間にオンラインで実施した。有効回答のうち,感染経験者あるいは検査中の回答者(13名)を除外した456名を分析した結果,予測に反して身近有感染群(152名)は無感染群(304名)と比較すると全体として感染回避反応が低く,予防行動を行っていないことが明らかにされた。若年層では病原体曝露によるリスクと人間関係維持による利益間にトレードオフが生じている可能性が示唆された。
著者
浮村 理 藤原 敦子
出版者
一般社団法人 日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会
雑誌
Japanese Journal of Endourology and Robotics (ISSN:2436875X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.86-91, 2022 (Released:2022-05-02)
参考文献数
11

限局性前立腺癌の治療には癌制御と生活の質 (QOL) 維持の両立が望まれる. 近年, 限局性前立腺癌に対するFocal Therapyは, 低侵襲でQOLが維持でき, oncological outcomeも良好であることが報告されている. 癌病巣のみを治療の対象とする癌病巣標的化治療のmodalityとしての凍結療法とマイクロ波熱凝固療法について概説する. 本治療の成功に重要なポイントは, 適切な患者選択である. MRIで可視でき, かつ超音波でも確認可能な病変は確実な穿刺がしやすい. また, 機能温存と合併症回避のためには, 尿道括約筋や神経血管束から離れた腫瘍がよい適応である. 凍結療法では前立腺の背側に位置する (直腸に接する) 腫瘍も治療適応があるが, マイクロ波では直腸に近接する病変は, 直腸損傷のリスクがあり現状では適応外である.
著者
成田 結香
出版者
法政大学大学院理工学研究科
雑誌
法政大学大学院紀要. 理工学・工学研究科編 (ISSN:21879923)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.1-7, 2019-03-31

Laparoscopic surgery is a difficult surgical procedure as compared with open operation. Therefore, training is necessary for surgeons before conducting laparoscopic surgery clinically. In this paper, improvement and extension of the training system which has been developed by our group was carried out. First, effectiveness of the evaluation method for trainee's hands movement was verified through the past measurement data obtained for operation of ligation. Second, in order to make it easy to perform ligation under Para-axial position, camera position of the training box was improved. Third, former sensor module which was attached to the forceps was downsized so as not to collide to other objects. Finally, the proposed evaluation system for hands movement and the evaluation system for angle of the wrists which was developed in our previous study were merged. Then, the evaluation results of trainee's angle of the left and the right wrists, hands movement and operation time in comparison with those of the excellent skilled surgeon are displayed on the monitor screen.
著者
中田 行彦
出版者
一般社団法人 経営情報学会
雑誌
経営情報学会 全国研究発表大会要旨集 2019年秋季全国研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.34-37, 2019-12-25 (Released:2019-12-23)

イノベーションの創出のためにはリスクマネーの供給が必要である。このリスクマネーの供給源の一つが、主に政府の出資等により設置されたのが「官民ファンド」である。その一つである産業革新機構が、出資し3社の中小型液晶事業を統合しジャパンディスプレイ(JDI)が設立された。しかし、JDIは頓挫し、当初も技術流失防止の目論見から外れ、台中連合の金融支援で生き残ろうとしている。「官民ファンド」は、JDIの事例のほか、シャープへの出資、ルネサスの経営陣交代、産業革新機構の組織脱皮等で失敗を繰り返している。これらの事例から「官民ファンド」の功罪を分析した。
著者
國谷 貴司 須部 明香 金村 典哉 渡辺 直之
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.137-141, 2014-02-20 (Released:2014-03-20)
参考文献数
27

後肢の不全麻痺を呈し,CT検査において大動脈血栓塞栓症(ATE)と診断した犬4例の臨床症状と臨床病理学的所見の特徴について検討した.初診時に跛行を呈した11~14(13.0±1.4)歳齢の高齢犬が,14~30(18.0±8.0)日の慢性経過で不全麻痺あるいは全麻痺への臨床症状の悪化を認めた.血液検査ではD-ダイマーの上昇(4例),AST,CK及びALTの上昇(3例),血小板減少(3例)を認めた.慢性進行性の跛行を呈する高齢犬において,D-ダイマーの高値がATEと関連性が高いことが示唆された.D-ダイマーと他の臨床検査の組み合わせにより犬のATEの診断に有用であることが示された.