著者
米澤 旦
出版者
福祉社会学会
雑誌
福祉社会学研究 (ISSN:13493337)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.28-41, 2016-05-31 (Released:2019-06-20)
参考文献数
26

本論の目的は,サードセクター研究におけるサードセクター組織と規範性の関係性をたどることである.サードセクター研究は規範的なものとなりがちである.これは,サードセクター組織自体が何らかの規範的目的を追求し,研究もサードセクターの規範的立場に自らを重ねあわせてきたためである.多くの場合,サードセクターが体現する規範性は一元的なものと想定された.しかし,セクター境界の曖昧化とセクター内部の多元化により,そのような前提の揺らぎは顕在化している.本論では,サードセクター研究の変化をたどることで,柔軟な組織形態と規範性を分析する枠組みを検討する.本論の主張は,サードセクター研究における組織形態と規範性の結びつきは3 つのステージに分けることができるというものである.1990 年代までの研究は,セクター本質主義を前提とする考え方(本論では「第一ステージ」と呼ぶ),原理の媒介をサードセクターに見出す考え方(本論では「第二ステージ」と呼ぶ)に区分でき,さらに,近年では,制度ロジックという枠組みを用いた,サードセクター研究の「第三ステージ」とも呼べるような研究がみられている.組織形態と規範性を柔軟に分析することに,「第三ステージ」の研究の意義がある.これらの検討は,社会給付のサービス化が進行するなかで,福祉にかかわる組織のより良き理解に貢献するものであり,福祉社会学の規範的課題を解くうえでも重要な作業である.
著者
麻喜 幹博 山森 温 内田 香名 竹内 誠人 加納 誠也 増田 崇光 三木 靖雄
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.717-721, 2022-08-31 (Released:2022-08-31)
参考文献数
9

初期波形VT・VFの心停止における体外循環式心肺蘇生(ECPR)は一定の効果が報告され,近年多くの施設で導入されつつある。初期波形PEAは原疾患が多岐にわたるためECPRの有効性は未確立であるが,肺血栓塞栓症に限れば予後良好である報告が散見される。 当院で救命に至った2例の肺血栓塞栓症ECPR症例は,呼吸困難の先行と肺雑音がないことを救急隊が認識できており,初期波形PEAで二次救命処置により自己心拍再開と心停止を繰り返す状態にあった。両症例とも救急隊からの第一報を的確に得ることで,病着前からECPRを準備し,病着後,心臓超音波検査で心タンポナーデを否定したうえで肺血栓塞栓症を念頭に置いてECPRを実施できたことで社会復帰に至った。目撃やbystander CPRがある心停止のうち,呼吸困難先行と肺雑音なしを確認した初期波形PEA症例はECPRを実施できる施設への搬送を考慮し,超音波検査で心タンポナーデが否定された場合は積極的にECPRを検討することが重要である。
著者
加藤 誠之
出版者
一般社団法人 日本人間関係学会
雑誌
人間関係学研究 (ISSN:13408186)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.1-10, 2003-11-08 (Released:2017-11-01)

Japanese juvenile law system is based on (1) "paternalism" in which juvenile delinquents are considered as immature persons who need the protection of public authority and (2) "education-principle" in which education is provided instead of punishment in order to bring them up into self-directing persons. Nevertheless, Japanese juvenile law system is related also to responsibility/retributivism-principle. This statement is based on the following observations; the Japanese juvenile criminal policy bureaucrats certainly promoted paternalrism/education-principle as a guiding spirits of Japanese juvenile law system. But they also argued with institutionalists who believed in pure paternalism/education-principle and adopted the responsibility/retributivism-principle in some degree and elaborated Japanese juvenile law as a eclectic legal system. This paper elucidates these facts by tracking the history of the Japanese juvenile law system, from the prison law issued in 1872 to the old juvenile law issued in 1922.
著者
鈴置 高史
出版者
亜細亜大学アジア研究所
雑誌
アジア研究所所報
巻号頁・発行日
vol.137, pp.6-7, 2010
著者
木戸 眞美
出版者
International Society of Life Information Science
雑誌
国際生命情報科学会誌 (ISSN:13419226)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.552-560, 2004-09-01 (Released:2019-05-03)
参考文献数
7

養生気功の1つである六字訣における中国人、日本人気功師による発声の音声解析を行った。その結果、14.8kHz 以上の高い周波数成分があることが分った。基本周波数は2次に倍音が基本だったが、どちらの六字訣の発声音かにより構造に違いが見られた。さらに、六字訣の気功師による発声音を聴くことによりどのような生理物理的変化が経絡に現れるかを、15人の被験者で単一矩形パルス法により測定した。六字訣による経絡間の順位変化の平均値は系統的な傾向を示した。つまり、これまで六字訣の実践は嘘、呵、呼、〓、吹、〓の6音韻を発声して体に響かせることにより対応した臓器を強化できると考えられてきたが、実際に特定の内臓や経絡に影響すると考えられる。
著者
大山 要 曽良 一郎 小澤 寛樹 竹林 実 今村 明 上野 雄文 岩永 竜一郎 福嶋 翔 酒井 智弥 植木 優夫 川尻 真也 一瀬 邦弘 山口 拓 縄田 陽子 中尾 理恵子 小川 さやか
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2021-04-05

ゲーム依存はゲームへの没頭で不登校、家庭内の暴言・暴力、昼夜逆転や引きこもりなどの健康・社会生活障害をきたす状態である。ネットとゲームの利活用は今後も拡大するため、脳への影響を多角的・統合的に評価し、健康使用から依存症となる境界線を知る指標が必要である。本研究では、患者脳画像情報・患者情報、そして患者検体から得られるタンパク質変動情報からなる多次元情報を人工知能解析することで依存バイオマーカーの特定を目指す。本研究の進展でゲーム依存の実効的な対策研究を進められる世界でも例を見ない研究基盤が形成される。
著者
森田栄著
出版者
NGS
巻号頁・発行日
1996
著者
渋井 宏美 佐野 雄三
出版者
一般社団法人 日本木材学会
雑誌
木材学会誌 (ISSN:00214795)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.107-116, 2022-07-25 (Released:2022-07-30)
参考文献数
30
被引用文献数
1

軟X線写真法は,木材の密度プロファイルの取得をはじめとして,木材科学および関連分野において広く用いられてきた。しかし,樹皮の構造解析には汎用されてはいない。そこで,北海道産12樹種の樹皮組織の軟X線写真撮影を行い,樹種ごとの特徴を調べた。高コントラストの軟X線透過像が得られた。各樹種の濃淡パターンは,樹皮の解剖学的な特徴とともに,カルシウム(Ca)結晶の偏在を反映していることが明らかになった。この結果から,軟X線写真法は植物全般に普遍的に存在するCa結晶の樹皮組織における集積場所を可視化するのに有効であると言える。光学顕微鏡観察では,同一の樹皮組織内に複数の形態タイプのCa結晶が存在する場合でも,厚壁組織にはもっぱら菱形結晶が随伴することが明らかであった。菱形結晶は,他のタイプのCa結晶とは機能が異なり,厚壁組織の力学的な機能を補強する役割をもつことが示唆される。
著者
戴 競択 吉見 真聡 岡田 浩希
雑誌
第83回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2021, no.1, pp.13-14, 2021-03-04

近年、物体の遠隔操作や高画質Web会議などのリアルタイムコミュニケーションの需要が高まっている。特に、ストリーミングデータをクラウド上にあるメディアサーバを通させて、コンピュータービジョンや画像認識などの高付加価値のあるサービスを提供する形態が増えている。一方、データがパブリッククラウドを経由することで、遅延の増大をはじめとして様々の問題が生じる。本研究では、メディアサーバをデータソースに近いエッジ側に設置し、コンテナ技術を用いて接続数やトラヒックに応じてメディアサーバを動的に配置するという負荷分散手法を検討する。
著者
有井 敬治 橋 逸郎 大脇 裕子 三ツ井 貴夫
出版者
独立行政法人国立病院機構徳島病院(臨床研究部)
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

パーキンソン病関連疾患では構音・嚥下機能障害は予後を左右する極めて重要な因子であるものの、特別な対策は取られていないことが多い。我々は同疾患に対する独自のリハビリテーションとして、気功の要素を取り入れることで喉頭機能の増強を介した呼吸機能の向上を目的にした、発声を伴う太極拳を新たに考案した。本研究では、パーキンソン病の種々の運動症状、特に発声・嚥下・呼吸機能に対する効果を検討した。具体的には5週間のリハビリテーション入院したパーキンソン病患者について、専門のインストラクターを招いて週1回、1時間の太極拳運動を導入した。その結果、太極拳を導入した群では4週間後にパーキンソン症状は著明に改善した。
著者
牧野 青希 橘 直雪 大越 匡 中澤 仁
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2022-OS-154, no.4, pp.1-8, 2022-03-07

クラウドサーバ型コンピューティングの普及に伴い,アプリケーションプログラムの実行にサーバレスアーキテクチャ(Function as a Service, FaaS)を採用できるようになった.この FaaS プラットフォームでは,一つの物理マシンの上で複数のユーザアプリケーションをホストし,アプリケーション同士の隔離のために Docker 等の Linux コンテナ環境や仮想マシンを用いることが多い.しかし,コンテナや仮想マシンの構築処理(コールドスタート)によるオーバヘッドは大きく,AR/VR/MR,自動運転車など,常に低遅延性を要求する用途で問題となる.その対処としてコンテナ・仮想マシンを常に準備状態にすることは,より多くのメモリ空間を消費し続け,ホスト可能なアプリケーション数の減少につながる.この問題の回避のために,コンテナに代わって WebAssembly を採用する試みがあるが,コンテナに比べて処理速度に劣る.そこで本研究では,準備状態のコンテナ環境を減らしながら短い応答時間を安定して実現する方式として,コンテナと WebAssembly を切り替えながら処理を行う手法を提案する.提案手法では,構築を含めたコンテナの処理時間,WebAssembly の処理時間をそれぞれ記録し,より早く応答できる方式を推測・選択する.これにより,コンテナのコールドスタートの問題,WebAssembly の処理速度の問題を同時に解決する.この提案手法のプロトタイプ実装における評価実験では,コンテナのみ・WebAssembly のみでの実行方式に比べて,常に適切な切り替えを行えること,応答時間に対するコールドスタートによる影響が減少すること,また準備状態で待機するコンテナ数が減少することが確かめられた.
著者
Akio SEINO
出版者
THE LEPIDOPTEROLOGICAL SOCIETY OF JAPAN
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3-4, pp.121-125, 1981-02-20 (Released:2017-08-10)

The genus Bacotia was erected by TUTT (1899) for a single European species, Fumea sepium SPEYER. DIERL (1966) described a second species of this genus, B. nepalica DIERL, from Nepal. No further species have been known in the world. In this paper I will describe a third species from Japan, with brief notes on biology.

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出版者
文楽社
巻号頁・発行日
vol.(9月號), no.19, 1938-09