著者
三宅 雄彦 ミヤケ ユウヒコ Miyake Yuuhiko
出版者
駒澤大学法学部
雑誌
駒澤法学 (ISSN:13476599)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.25-68, 2020-03

2010年から12年に世界経済を揺るがしたいわゆるユーロ危機、それへの、欧州連合、欧州中央銀行などによる対応は多岐に渡った。その際、EU及び共通通貨ユーロ加盟国にして欧州政治をリードするドイツが、莫大な財政出動を嫌い、更にはその連邦憲法裁判所が、その違憲審査で迅速な危機対応を「妨害」したことも記憶に新しい。危機の第1次から第3次まで、様々な対応策に多くの判決が下され、EU法に関心を寄せるわが国でもそれらは詳細に検討されたものの、全体像のみならず、憲法上の各種論点の錯綜も見落とし勝ちである。本稿では、ユーロ危機とそれへの対応、及び連邦憲法裁の諸判決を時系列で整理しつつ、ドイツ基本法とEU第1次法、及び第2次法という二種類の関係に着目しながら、ユーロ危機で基本法上の如何なる問いが議論されたのか、その問題に連邦憲法裁判所が如何なる判断を下したのかを検討し、もって判例法理の概観の獲得を目指す。

1 0 0 0 OA 御仕置例類集

出版者
巻号頁・発行日
vol.[60] 甲類〔第一輯〕 二十六 下 一旦御仕置成候後又者吟味中等ニ悪事いたし候部 敲入墨追放等ニ成候後悪事いたし候類・同罪再犯,
著者
橋本 忠和
出版者
北海道教育大学
雑誌
北海道教育大学紀要. 教育科学編 (ISSN:13442554)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.321-332, 2020-02

本研究は筆者の「ごっこ遊び」と社会情動的スキルとの関連性に基づく研究を基礎に,幼児教育現場で様々な機会に活用され,幼児の豊かな想像性や言語に関する感覚等を育成する手立てとして位置づけられている「絵本」に着目し,保護者と連携した「絵本」の読み聞かせの実践が5歳児の社会情動的スキルを育む上でどのような可能性を有しているのか考察することを目的としている。研究手法としては,絵本「ないた:中川 ひろたか:作」を教材として使用し,主人公の顔を見て母親が涙を流す理由を幼児と保護者が対話を通して考える場面の幼児の発言及び保護者,保育者の反応等を「社会情動的スキル(目標の達成・他者との協働・情動の抑制)」の分類を観点として分析し,絵本の読み聞かせと社会情動的スキルとの接点を考察した。すると,絵本の読み聞かせが幼児の社会情動的スキルの分類の各要素を育成する可能性を見出すことができた。
著者
武 智広 積木 久明 篠田 一孝 吉田 敏治
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.177-182, 1994
被引用文献数
1

発育段階の異なるアズキゾウムシを用いて過冷却点,体重,炭水化物含量,低温下での生存に及ぼす低温順化の影響について調べた。<br>1) 低温順化により幼虫,蛹の低温での生存期間が延長した。幼虫の高齢のものほど顕著であった。<br>2) 幼虫,蛹,成虫の過冷却点はいずれも-20&deg;Cより低かったことから,アズキゾウムシは一時的にかなりの低温に耐えられると考えられる。<br>3) 幼虫,蛹で低温順化開始後グルコース,トレハロースといった糖の蓄積がみられたが,過冷却点はほぼ一定であった。また,低温順化後,0&deg;Cに置かれた幼虫で糖やグリコーゲン含量の減少がみられた。<br>4) 低温順化後,最も長く0&deg;Cで生存したのは15日齢幼虫,次いで7日齢幼虫であった。それら幼虫の生存日数は最長で35日と20日であった。<br>5) 以上の結果から,グリコーゲンや糖の蓄積が多かった老齢幼虫が越冬に適していると考えられる。
著者
織田, 有楽
出版者
伊丹屋善兵衞
巻号頁・発行日
vol.[1], 1823
著者
小谷 凱宣 FITZHUGH W.W 新美 倫子 出利葉 浩司 切替 英雄 西本 豊弘 佐々木 利和 FTIZHUGH William W KENDALL L. POSTER A. G KATZ A. H FITZHUGH W. KREINER Jos POSTER A.G. KATZ A.H. OELSCHELEGER エッチ.デー KREINER J.
出版者
名古屋大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1994

本研究計画に関連するアイヌ・コレクションは、北米と西ヨーロッパに所蔵されている。このほかに、アイヌ資料はロシア各地の博物館に所蔵されていることは広く知られている。平成7年度より、ロシア国内のアイヌ資料調査が千葉大学・荻原眞子教授らのグループにより開始され、その研究成果がまとめられつつある。ロシア資料の調査結果と北米・西欧における研究成果と合わせることにより、海外のアイヌ・コレクションの全体像とアイヌ物質文化に関する新知見が得られよう。この一連の研究はさらに、北方地域の一民俗に関わる博物館資料の悉皆調査という初めての試みであり、現代文明の影響を受けて変容した北方狩猟民文化に関する研究資料の再検討という意味で、優れて現代的意義を有する。本研究計画による研究成果に、とくに北太平洋地域の研究者が一致して注目しているゆえんである。そして、本研究計画は、欧米の北方文化研究者が立案している「ジェサップ2計画」の先駆的役割を果たしつつある。西欧と北米のアイヌ資料との比較の試みを通して、欧米の研究者がアイヌ研究と資料収集に特に関心を抱いた知的背景が明確になってきた。西欧のアイヌ文化の研究者は、広義の自然史学(基礎科学)の枠組みの中で知的訓練を受けていることが指摘できる。このことが、アイヌ文化の伝統が維持されていた時期に調査収集が行われた事実と相まって、学術的に質の高いコレクション収集を可能にした背景である。さらにフランツ・フォン・シ-ボルト以降、「高貴な野蛮人」、「失われたヨーロッパ人」、「消滅しつつある狩猟民」としてのアイヌ民族文化への関心が、アイヌ研究を推進した。19世紀半ば頃から提唱された「アイヌ=コーカソイド仮説」は、欧米諸国民と研究者のアイヌ文化へ関心をいっそう高め、ドイツとアメリカにおけるコレクション収集を加速した。アイヌ文化を含む北方狩猟民文化研究の動きは、第一次大戦勃発とそれにともなう社会変化のために停止した。日本人研究者による本格的なアイヌ文化研究とコレクション収集の努力は、第一次大戦以降にはじまったことが浮き彫りにされてきた。前年までの在米アイヌ資料の調査の遺漏を補うために、シカゴ(シカゴ大学とフィールド自然史博物館)とニューヨーク(アメリカ自然史博物館)で補充調査を実施した。なかでも、シカゴ大学図書館特別資料部所蔵のフレデリック・スターのコレクションにふくまれる映像資料(スライド類)お精査し、さらに、写真類も入手したことにより、スターが収集したアイヌ関係資料の全容がほぼ判明してきた。すなわち、スターは明治末の10年足らずの間に、アイヌ資料を約1,200点、アイヌ関係映像資料を約100点、そのほかに膨大な量の未公表フィールドノートと往復書簡類を残していることが解明できた。スターが収集したアイヌ資料の数は北米の総資料の約40%を占め、世界的にもきわめて大きなアイヌ・コレクションの一つといえる。また、彼の残した未公表資料は貴重な背景資料であり、アイヌ文化研究史においても重要である。スターのアイヌ関係資料の集大成が緊急の課題である。最後に、スミソニアンの極北研究センターにおいて、アイヌ文化に関する特別展覧会の準備が開始されたことは注目に値する。これは本研究計画の成果が展覧会企画の契機になったもので、研究成果の相手国への還元につらなる。また、ジェサップ北太平洋調査開始から百周年を記念する国際学会が1997年秋にアメリカ自然史博物館で開催される予定であり、また、「ジェサップ2計画」(1897-1903に行われたF・ボアズによるジェサップ北太平洋調査時に収集された未公表の諸資料の整理公表の事業)が始まる予定である。新たなる眼で北方諸文化の資料を再整理し、変容しつつある先住民文化の理解の促進とアイデンティティ確立に資するものである。これは、本研究計画、アイヌ資料悉皆調査の目的と一致するものである。
著者
荒田 玲子 仙土 玲子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成28年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.13, 2016 (Released:2016-08-28)

【目的】茨城県の家庭料理を調査する中で、茨城県太平洋沿岸の鉾田市、鹿嶋市、神栖市で昭和30年代に食され、その主材料が入手困難になったり、高価な食材になっても、食べ継がれているイルカ料理と、背黒イワシやサンマで作られるごさい漬けについて、現在の調理法、食べられ方について聞き取り、その調理法と食べられ方を明らかにすることをこの調査の目的とした。【方法】イルカ料理を現在も作り食べている鹿嶋市のHさん、神栖市のIさんにその調理法と食べ方について聞き取りを行う。また、調理をしていただき、写真と筆記で記録する。ごさい漬けに関しても、昔から現在までの調理法と食べられ方についてYさんとIさんに聞き取り調査を行う。また、この地域のスーパーで品揃えを調査し聞き取りも行う。【結果】イルカは現在茨城県沖では漁が行われておらず、冬になるとこの地域の店に並ぶイルカは、『岩手産のいしいるか』であった。味には癖があり、他の肉類より高価で入荷も限られる。イルカ料理の愛好者は年配者に多く、入荷するとあっという間になくなるとの事である。脂肪の層と赤身の層が一層ずつの独特の肉をキューブ状に切り、血抜きをして、牛蒡などと一緒に砂糖と醤油で煮込む方法は素朴で長年の食経験と調理経験に裏付けられた合理的なものであった。ごさい漬けは、昭和30年頃豊富に漁獲した背黒イワシを秋の終わりに大根と共に漬けこみ、正月に食べたものであったが、背黒イワシが手に入りにくくなり、主材料を秋刀魚などに変えて作ったり、昔ほど食塩を多く使わなくなり、本年の冬のように暖冬だと、低塩では上手く保存して発酵させることが難しくなってきているようである。食環境の変化が、料理の形を変えていき、否応なく変化し、廃れていく料理があるという例を見たように思う。
著者
田巻 帝子
出版者
新潟大学法学会
雑誌
法政理論 (ISSN:02861577)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.180-221, 2002-09

本論文は、犯罪者への警告の機会に犯罪の被害者らが同席して行われる、新しい形式の警告に関する調査研究を模索するものである。この警告のやり方は、ジョン・ブレイズウェイトの再統合のためのシェイミング(Reintegrative Shaming)理論と「修復的司法」の考えの影響を受けている。エイルズベリーではいまだに「旧式の」警告が残っている一方で、この修復的警告の試みが言うまでもなく警察実務において重要かつ期待される発展形態であると論じている。
著者
土佐 信道
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会誌 (ISSN:13405551)
巻号頁・発行日
vol.141, no.7, pp.399-402, 2021

<p>1.はじめに</p><p>2009年,(株)明和電機は「音符型電子楽器オタマトーン」を発売した。オタマトーンの構造は,尾部の「リボンコントローラー」による発振回路の変調と,頭部の口を開閉することで音声の響きを変える「フォルマント」から成る。このフィジカルな演奏方法とかわいらしい形状が受</p>
著者
小川 剛志 大西 隆 石川 允
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.265-270, 1988-10-25 (Released:2020-08-01)
参考文献数
6

This paper analysed the recent tendency of the location of the electronic date processing division in the big companies the head quarter of which are now located in the heart of Tokyo. In addition to the secondary date analysis, a questionnaire survey was done to about a hundred companies to identify their behavior and the relating problems. Finally, the possibility of the reagglomeration of the divisions and the information processing industries to the suburban core cities are also discussed.
著者
安藤 孝敏
出版者
横浜国立大学教育人間科学部
雑誌
横浜国立大学教育人間科学部紀要. III, 社会科学 = Journal of the Faculty of Education and Human Sciences, Yokohama National University. The social sciences (ISSN:13444638)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.1-10, 2008-02-28

Importance of pets in old age has been gradually acknowledged. However, a few studies focusing on this issue have been conducted in Japan. The purpose of this study was to examine the effects of emotional interaction with pets on well-being among the elderly. Subjects were pet owners (dog and/or cat), ranging in age from 60 to 74 years, living in Metropolitan area. Mail surveys were carried out in 2000 and completed for 552 persons. The response rate was 92.0%. The demographics of pet ownership and quality of emotional interaction with pets (Human-Animal Bonding Scale) were inquired. Well-being was measured by the Japanese version of Geriatric Depression Scale and AOK Loneliness Scale. Multiple regression analyses showed the emotionally close relationships with pets had significant negative effects on depressive states and loneliness when the effects of socio-demographic variables, health status, and social support network were controlled. The results suggested the importance of emotionally close relationships with pets for quality of life in old age.
著者
久保田 雅也 木村 育美
出版者
一般社団法人 日本臨床神経生理学会
雑誌
臨床神経生理学 (ISSN:13457101)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.124-131, 2018-06-01 (Released:2018-06-01)
参考文献数
23
被引用文献数
1

ヒトの顔, 表情は豊富な意味を内包し, (1) 個体の識別と存在の象徴であり, (2) 感情の表出の場としても機能し, (3) 社会的交通の窓口でもある。アスペルガー症候群 (AS) の顔認知に関しては相対的に顔の同定・記憶・表情判断力において劣ること, 特に「眼」の表情のよみとり障害が顕著であることが知られる。また, 6歳以降の小児で顕著になる倒立顔効果が, 自閉症児では乏しいこと等が知られている。これはASの認知特性としての全体よりも細部にこだわるweak central coherence (弱い中央統合性) 仮説で説明される。今回顔認知課題を脳波–脳磁図測定およびアイトラッキングを用いて解析し, ASでは定型発達の「顔認知に特化されたシステム」とは異なる領域を用いていた。すなわちAS小児は顔という豊富な意味を有する対象を同定・理解するのにholistic & configural processingを経ずに視覚認知における背側経路を主に用いて分析的に見ることで表情認知という論理的分析にはなじまない対象を了解しようとしている可能性がある。