著者
五十嵐 中
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.51, no.10, pp.937-941, 2015 (Released:2018-08-26)
参考文献数
7

「日本の医療費(国民医療費)は,平成24年実績で年間39兆円です」…数字が大きすぎて,あまり実感が湧かない.「1人当たりにすると,年間30.8万円です」…今度は小さすぎて,やはり実感が湧かない.「この教室,だいたい150人いますね.1部屋で,年間4,000万から5,000万円ですね.」このあたりの金額を出すと,ようやく「手頃」にイメージできるようになる.年々医療費が増大していくなか,臨床系の学会でも,「〇〇の医療経済」「××の費用対効果」のタイトルを時折目にするようになった.マイナーな分野に陽が当たるようになったのは嬉しいことである.ただ残念なことに,まだまだ誤解されることも多い.このコラムでは,薬剤経済評価・費用対効果評価について,「そもそも何なのか」「どうやって評価するのか」「評価結果をどう使うのか」に分けて紹介していきたい.
著者
服部 芳明 寺床 勝也 藤田 晋輔
出版者
鹿児島大學農學部
雑誌
鹿児島大学農学部学術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
no.50, pp.63-74, 2000-03

環境保全型農林水産業への転換が今日的意味において求められている。木材に関連する業者の環境配慮に関する動向をとらえるため, アンケート調査を行った。森林認証, 木材認証・ラベリングが木材および木材製品の環境保全型への転換において鍵となると思われたため, 本報では, これを中心にまとめた。アンケート調査は, 次の4業種を対象とした。(1)鹿児島県内の林家349名を対象に1998年12月に実施した。回答は92名から得た。回収率は26.4%であった。(2)鹿児島県下の製材業者と木材業者1,001者を対象に1999年2月に実施した。回答は209者から得た。回は20.9%であった。(3)鹿児島県内の工務店562社を対象に1999年3月に実施した。回答は114社から得た。回収率は20.3%であった。(4)鹿児島市内にある336事務所の建築設計士を対象にした。回答は35事務所から得た。回収率は10.4%であった。結果を要約すると以下の通りである。森林認証制度を知りたい(「詳しく知りたい」と「どちらかと言うと知りたい」の和)と答えたものは林家では88%にも達した。FSC(森林管理協議会)による森林認証制度に対する関心度をみると, 関心を持つものは, 林家では58%であった。さらに, FSCによる森林認証制度を「積極的に活用したい」と答えたものが10%, 「活用を検討したい」が53%に達した。このように林家の森林認証制度に対する関心はきわめて高かった。この関心の高さは, 製材業者と木材業者, 工務店, 建築設計士のいずれにおいても認められ, いずれの業種も50%以上が関心を示していた。木材認証・ラベリング制度に対する関心はさらに高く, 関心を持つとするものは, 林家では74%, 製材業者と木材業者では56%, 工務店では62%に及んだ。「日本においても木材認証・ラベリング制度への検討が必要か」という質問では, 林家では75%, 製材業者と木材業者では58%, 工務店では75%, 建築設計士では82%もの多数の者が, 検討が必要であると答えた。また, 「将来, 日本が「森林認証制度」を策定する際に, その認証基準として, 林家では, 「日本独自の基準を盛り込むことが大切だ」という回答が68%と多数派であったが, 一方, 建築設計士では「日本独自の基準を盛り込むこと」は37%, 「国際的な基準と調和とていることが大切だ」とする回答は57%で, 後者の割合が多かった。このことから, 生産者側と使用者側とは関心の持ち方が異なることが知れた。「将来, 認証された木材, 木材製品が諸外国から輸入されることになった時, 国産材が認証されていないと市場から閉め出されることがあると思いますか」という設問に対しては, 林家では41%が, 製材業者と木材業者では35%が, 工務店では42%が, 建築設計士では48%が「はい」と答えた。このように, 認証された木材は, その市場影響力が大きいと見られている。工務店に対して「木材認証・ラベリングのように, 建材に表示する環境ラベリングが必要か」と問うた結果, 75.2%が必要と答えた。木材に環境ラベリングが必要であるというよりはむしろ, 木材も含めた建材製品一般に対して環境ラベリングが必要であると考えているように受け止められた。
著者
宮崎 由美子 下村 泰彦 加我 宏之 増田 昇
出版者
公益社団法人 日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.665-670, 2006 (Released:2007-11-13)
参考文献数
10
被引用文献数
4 4

In this study, we conducted a survey on play park by interviewing three groups that have organized play park activities at urban parks in the Kansai region, in order to find conditions to be required for the implementation of play park activities at urban parks and how they affect the invigoration of city parks. The results showed; 1 The cooperative relations with museums or other citizen groups such as a park cooperative, which could serve as a bridge between administrative authorities and local residents, were quite useful for play park activities at urban parks. 2 The effects to be brought by those play park activities in terms of the urban park invigoration included; the development of urban parks as a core center for local activities, the promotion of local activities, the encouragement for the residents to utilize existing facilities and set up new facilities in urban parks, the active usage of the overall urban parks in the region, and the creation of a new design to be proposed.
著者
柚木 朋也 伊藤 雄一 浜田 康司
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.155-168, 2016-11-18 (Released:2016-12-03)
参考文献数
29
被引用文献数
2 2

この研究の目的は, 中学校においてS霧箱を使用することにより放射線の飛跡を容易に観察できることを実証することである。霧箱を使用する実践については, 様々な霧箱で多くの実践が行われてきた。しかし, これまでの霧箱での実験では, ドライアイスや液体窒素が必要であった。そのため, ドライアイスの入手が難しい学校では, 霧箱の実験は難しかった。そこで, S霧箱を使用することにした。S霧箱は, ドライアイスなどの代わりに融雪剤(MgCl2∙6H2O)などの化学的な寒剤を使用する高性能の霧箱であり, 生徒が作ることも可能である。また, 線源は採取したホコリを使用した。北海道教育大学の部屋で集めたホコリは, 主にウラン系列の222Rnやその娘核種であることが明らかになった。また, 採取後1時間以内であれば十分に線源として使用可能であることも明らかになった。本研究では, S霧箱を実際に中学校で製作し, ホコリの放射線の飛跡を観察した。その結果, 身近にある材料だけで, 放射線の飛跡を観察することができた。そして, それまで観察が比較的困難であったβ線の飛跡を生徒が容易に観察できることが明らかになった。また, 授業前と授業後で生徒の放射線に対する認識の変容が見られた。これらのことから, ドライアイスが無くても, S霧箱と寒剤を使用した授業が中学生にとって有効であることが明らかになった。
著者
一之瀬 巳幸 田口 直彦 山口 光國 黒塚 美文子
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.A3P2113, 2009

【はじめに】ストレス社会と言われる現代において、香りがもたらす心身への効果が注目され、利用されている.しかし、香りが人体にどのような影響を及ぼすのか、古くから研究が行われてきたものの、客観的・科学的な検証は充分とは言えない.今回我々は、香りが心身にプラス効果を与え、臨床に活用できることを期待し、作業能力・ストレスについて香りの有無で比較検討したので報告する.<BR>【対象】健常者20名(男性8名、女性12名、平均年齢32.7歳)、本研究の趣旨に賛同していただけた方を対象とした.<BR>【方法】内田=クレペリン精神作業検査を用いて15分間の作業を5分間の休憩を挟み2回ずつ行い、その作業量と正解率を香り無の群10名と香り有の群10名で比較した.香りは日本人に好まれリラックス効果があると言われているスウィートオレンジ(フィトサンアローム製品)を使用した.芳香方法はディフューザーとコットンに精油を2滴含ませたもので行った.ディフューザーは空気の圧力で精油を小さな微粒子にし、香りを部屋中に広げるアロマ芳香器であり、アロマキャンドルやアロマランプと異なり、熱を加えないため精油成分が変化する心配がない.<BR>【結果】内田=クレペリン精神作業検査では、香り無群の回答数1回目727.7±249.3、正解率99.4±0.80%、2回目823.9±272.1、正解率99.3±0.68%、香り有群の回答数1回目797.5±153.3、正解率99.6±0.48%、2回目879.5±167.8、正解率99.8±0.19%であり、香り無群と香り有群の1回目・2回目の回答数と正解率に有意な差を認めた(P>0.05).<BR>【考察】内田=クレペリン精神作業検査の加算作業の作業量からわかる能力とは、何が出来るか出来ないかなど具体的な能力ではなく、物事を学習したり処理したりする基本的能力のことをいい、日常の学習や動作・行動のテンポやスピードの高低と深い関連があると言われている.この検査の被験者は、単調な思考回転を長時間持続することが求められるため、著しい負担とストレスを受けることになるが、今回、香り無群と香り有群で比較し有意な差を認めた.今回の結果から、香りが身体作業に効果をもたらせているものと推察できる.医療現場に身をおくクライアントは、大なり小なり心身のストレスを抱え、その対応も、臨床上非常に重要となることが多い.今回の結果は、好ましい香りが心身にプラス効果を与え、有意義な作用が存在すると期待され、我々の臨床でも機能障害によるストレスを軽減させたり、運動時の集中力を高めたりなど活用できると考える.近年、医療現場で香りを治療補助として取り入れられるようになりつつある.今後、更なる検討を加え、理学療法における臨床応用への有用性を検証してゆく.
著者
北川 真寛
出版者
智山勧学会
雑誌
智山学報 (ISSN:02865661)
巻号頁・発行日
vol.69, pp.257-277, 2020

<p> 高野山(南山)では、『釈摩訶衍論』に関する論義が法会として現在でも続けられているが、総合的な学術研究はほとんどなされていない。論義とは、問答などによって諸宗の教学と真言教学、あるいは真言密教の諸流派や諸山の法門の義理を分別するものであるが、問答を通して自宗の教学がいかなるものかを学ぶ、一種の学修システムとしての側面もある。</p><p> 本論で取り上げる「報身報土」の論義は、釈論西方論義十條中の一題であり、阿弥陀の身土が報身報土か化身化土かを論じる論題である。阿弥陀の仏身仏土論については、すでに中国仏教界において論じられていて、日本においても浄土宗では報身報土、天台宗では化身化土を主張している。</p><p> 真言宗においても、古義・新義を問わず阿弥陀の身土を報身報土と規定しているが、その理由として『釈論』自身や浄土門の教説に依ること、そして天台宗との対弁を主張していることも考えられる。</p>
著者
西本 優樹
出版者
北海道大学大学院文学院
雑誌
研究論集 (ISSN:24352799)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.17-33, 2019-12-20

ジョン・サールは,『社会的世界の制作』において,一枚の紙片が一万円札であることのような制度的事実は「宣言」と呼ばれる言語行為の一類型により創出され,それは我々を当該の事実の内容に従った仕方で行為させる義務論的力を持つと主張している。本稿では,サールの議論に提起されてきた,行為者が制度に従う際の行為の動機づけを十分に説明できていないという批判に対して,サールの議論を言語行為の規範性に基づきそうした動機づけを説明する,言語論的な合理主義として特徴づけることを通じて応答する。その上で,そのように言語論的な合理主義として理解されるサールの議論が,彼の本来の目的である制度的世界と自然科学的な世界を整合的に説明するという試みと緊張関係にあることを,同じく言語論的な合理主義として理解される推論主義の視点から指摘する。
著者
久保田 眞矢
出版者
じほう
雑誌
調剤と情報 = Rx info (ISSN:13415212)
巻号頁・発行日
vol.7, no.9, pp.1383-1385, 2001-09
著者
黒澤 龍平
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌 (ISSN:00047120)
巻号頁・発行日
vol.17, no.9, pp.477-482, 1975-09-30 (Released:2010-04-19)
参考文献数
24
著者
古明地 勇人
出版者
Chem-Bio Informatics Society
雑誌
Chem-Bio Informatics Journal (ISSN:13476297)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.12-23, 2007
被引用文献数
9

ブルームーンアンサンブル法 (Carter et al., 1989, <I>Chem. Phys. Lett.</I> <B>156</B>, 472; Sprik & Ciccotti, 1998, <I>J. Chem. Phys.</I> <B>109</B>, 7737)は、指定された反応座標に沿って、自由エネルギー変化を計算する方法の一種である。ここでは、「粒子間距離」および「粒子間距離の差」を反応座標に取る場合についてブルームーン法のアルゴリズムを導出した。アルゴリズムの実装は、任意のプログラムに実装可能なように、フォートラン様の擬似コードを用いて説明した。
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1785, pp.78-83, 2015-03-30

2010年に三木谷氏が突如こう宣言してから丸5年が経過した。日本の大手企業では例のない施策に「何を考えているのか」「日本で根付くはずがない」と、当初から批判は多かった。社内でも不安視する声が相次いだが、現状はどうなっているのだろうか。
著者
里形 理興 妹尾 卓磨 福地 庸介 今井 倫太
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第34回 (2020)
巻号頁・発行日
pp.3Rin446, 2020 (Released:2020-06-19)

従来のユーザインタフェースの操作方法は,単一のデザインでユーザ評価を平均的に向上させることを志向して設計されてきた.しかし,操作に対する解釈を固定せず,システムがユーザ操作に適応し,個々人に合った応答をできるようになれば,より多くのユーザに使いやすいシステムが実現できる可能性がある.本研究では,ユーザ操作に適応的に解釈を獲得するためのアルゴリズムとして,行動価値関数の出力するQ値を利用する手法Q-Mappingを提案する.また,Q-Mappingを組み込んだシステムを実際にユーザに操作させるケーススタディを行い,ユーザの反応を検証することで,ユーザ操作に適応するシステムの要件を検討した.

1 0 0 0 IR 仰げば尊し

著者
南澤 孝夫
出版者
公益財団法人 大阪公衆衛生協会
雑誌
大阪公衆衛生
巻号頁・発行日
no.53, pp.1, 1988-01

回転扉
著者
瀬尾 政雄
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.1-13, 1982-07-24 (Released:2017-07-28)

点字を常用する視覚障害者は、日本語が漢字仮名交り文を正書法とするため漢字・漢語の理解特に同音異義語の理解に困難がある。点字使用者のこの不利を明らかにするため同音異義の漢字を想起させてその結果を比較した。被験者は一般学生28名、弱視学生39名、点字使用学生28名。想起数の平均値を点字群と漢字群とで検定した結果0.1%水準で有意差が認められたが各群内の正眼と弱視、先天盲と後天盲では有意差は認められなかった。しかし、漢字群(正眼≒弱視)〉点字群(後天盲〉先天盲)の関係がすべての結果においてみられた。想起された漢字の出現順位は使用文字に関係なく、漢字使用経験の有無にも関係なく一致した傾向にあった。特に漢字経験のない先天盲グループの漢字の理解度も解答頻度から十分に理解したうえで解答していることが確認された。なお漢字・漢語の理解度は今後に予定している文脈における理解力の程度とその影響に関する調査により更に正確なものとすることが今後の課題である。
出版者
日経BP社
雑誌
日経パソコン (ISSN:02879506)
巻号頁・発行日
no.571, pp.14-16, 2009-02-09

「とにかくITを規制するというのは、あまりに雑。世界的に見ても、時代錯誤も甚だしい」──。こう憤りをあらわにするのは、楽天の三木谷浩史社長だ。三木谷氏がここまで鼻息を荒くしているのは、2009年6月1日に施行される予定の「薬事法の一部を改正する法律」(通称、改正薬事法)の一部を危惧してのこと。
著者
張 榮博 岩堀 正俊 西澤 誠剛 山内 六男 長澤 亨
出版者
社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会雑誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.868-875, 1994-08-01 (Released:2010-08-10)
参考文献数
24

The aim of this study was to investigate the radiopacity of composite core materials.Radiopacity of composite core materials, filling materials and base cements were measured by densitometer. The elemental analysis of fillers were made by using an electron probe microanalyzer, and the filler substances were identified by a powder X-ray diffractometer.Radiopacity of composite core materials, except for some resin materials, showed low radiopacity. Silicate glass or crystal silica was found in all fillers. Zr or Yb was identified in some fillers, and Ba ions were detected in the glass fillers. Composite resin core material including Zr showed the highest radiopacity.These results suggest that the filler including Zr ion would be preferable for increasing the radiopacity of composite resin.