著者
畑中 健一郎 木村 浩巳
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2015, 2015

<b>1.はじめに</b><br> 寒冷な気候を特徴とする長野県には、それを活かした伝統的な暮らしや産業が県内各地に存在する。これらの伝統は、地域の象徴となり、観光や地域興しの資源としても期待される一方、地域の気候に密接に関わるがゆえに地球温暖化に伴う気候変動の影響が危惧される。これら伝統を継承し、地域資源として活用していくには、気候変動に適切に対応していくことが重要である。<br> 天然寒天は、かつては農閑期の副業として各地で生産されていたが、現在は全国で数カ所のみである。角寒天に限れば茅野市を中心とする長野県諏訪地域が唯一の生産地であり、「寒天の里」をPRするなど地域の象徴となっている。天然寒天の生産は、冬期の冷涼な気候を利用して野外乾燥させる工程に特徴があり、気候変動の影響がもっとも心配される地場産業の一つである。本報では、諏訪地域の天然寒天生産を事例として、気候変動が地域の伝統産業へ及ぼす影響について調査した結果を報告する。<br><b>2.調査方法</b><br> 茅野市を中心とする諏訪地域の寒天生産者、寒天生産者の組合、茅野市役所等を対象に、ヒアリング調査、アンケート等を2012年~2014年にかけて実施した。その他文献調査等の結果と併せて報告する。<br><b>3.諏訪地域の天然寒天と気候条件</b><br> 諏訪地域の寒天生産は江戸時代末期に始まり、寒冷な気候を活かした風土産業として発展してきた。戦前に生産量のピークを迎え、1970年代以降に急減し、現在の生産者は諏訪地域全体で10者程までに減少している。諏訪地域の家庭では、法事などの際に寒天料理を食べる習慣があり、食文化としても寒天は定着している。また、茅野市では天然寒天の普及拡大を目指す産学官連携プロジェクトが推進されており、寒天には地域の特産品としての期待が寄せられている。学校でも地域学習の素材として活用されており、市民にも地域の伝統産業としての認識が定着している。天然寒天業は経済規模としては小さいが、地域の象徴としての役割は小さくない。<br> 寒天には天然寒天と工業寒天があり、天然寒天はさらに角寒天と糸寒天に分けられる。生産工程のうち、生天(ところ天)を乾燥させて寒天に仕上げる工程を天然の気候条件を利用して行うのが天然寒天である。夜間の低温と日中の晴天を利用して、凍結と融解を繰り返しながら約2週間かけて乾燥させる。角寒天の生産には最低気温が-5℃~-10℃程度まで下がることが望ましいとされる。<br><b>4.気候変動の影響</b><br> 現在、寒天を12月中旬から2月中旬にかけて生産する生産者が多いが、近年は暖冬の年が多くなり、生産可能な期間が徐々に短くなっている。茅野市の最寄りの諏訪の観測データをみると、1990年代以降の日最低気温の高温化の傾向が明瞭に表れている。とくに11月中旬から12月上旬と、2月中旬から3月上旬の高温化が顕著であり、生産期間の短縮と一致している。生産者もこれを敏感に感じており、春の訪れが早くなったこと、冬の訪れが遅くなったことは共通した認識である。また、2月の気温が読みにくくなっており、気象情報を頻繁に確認しながら作業計画を立てる生産者もいる。<br> 生産可能期間の短縮に対して生産量を維持しようとしても、干し場や人手確保の問題があり、規模を拡大するのは簡単ではない。やむを得ず生産量を減らさざるを得ない状況が見受けられる。また、極寒期でも低温の日が連続せず、品質低下を防ぐための作業が必要となっている。このように気温の上昇が生産コストの上昇を招いている。<br><b>5.生産継続に向けて</b><br> 天然寒天の生産継続のためには、気候変動以外にも需要の減少や、都市化の進行による干し場確保の困難化、後継者問題などさまざまな課題がある。これらの課題に対して気候変動がさらに追い打ちをかけている状況にあり、後継者候補がいても事業の継承をためらっている生産者も多い。しかし、天然寒天の生産継続は、地域の伝統産業、食文化の継承の問題とも重なり、地域の象徴をどう維持していくのかということにつながる。今後は、これまでの需要喚起の取り組みに加え、気候変動影響にどう適応していくのか、個々の経営体の問題だけでなく、地域の問題としての検討が必要である。
著者
二橋 依里子
出版者
佛教大学大学院
雑誌
佛教大学大学院紀要. 文学研究科篇 (ISSN:18833985)
巻号頁・発行日
no.45, pp.119-134, 2017-03-01

和歌山藩では慶応二年から明治四年にかけて西洋式軍隊導入を目標とした兵制改革が行われた。特に明治二〜四年には、ドイツからお雇い外国人を複数人雇用し、実際に徴兵制が施行されるなど他藩が行った兵制改革と比べると特異性が目立つ。軍隊はプロイセン式に統一され、弾丸や軍服の製造が行われていた。このような和歌山藩の兵制改革は、後の明治陸軍に影響を与えたとされる。本稿では、特に最初のお雇い外国人カール・ケッペン(CarlJosephWilhelmKoppen一八三三〜一九〇七)と、和歌山藩において施行された徴兵制を中心に考察する。その中でも当事者や目撃者である、ケッペンの日記やドイツのヘルタ号乗員の見聞録、村方の記録などを用い、和歌山藩の兵制改革の実態を考察する。和歌山藩兵制改革徴兵制カール・ケッペン
著者
岡 義達
出版者
國家學會事務所
雑誌
國家學會雑誌 (ISSN:00232793)
巻号頁・発行日
vol.66, no.11, pp.611-636, 1953-06
著者
伊藤 絢子 谷 晃 鈴木 款
出版者
日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.51, pp.113-113, 2004

静岡県静岡市井川のウラジロモミ林において、大気中の揮発性有機化合物を採取し、GC-MSにより測定し5種類のモノテルペンとp-シメンおよびイソプレンを定量した。5種類のモノテルペンの日変動のパターンは、2種類に分かれた。
著者
奥村 智憲 谷 晃 小杉 緑子 高梨 聡 深山 貴文 小南 裕志 東野 達
出版者
The Society of Eco-Engineering
雑誌
Eco-engineering = 生態工学 (ISSN:13470485)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.89-95, 2008-04-30

Biogenic volatile organic compounds (BVOCs) emitted by plants play an important role in the atmospheric chemistry of the troposphere. We conducted f ield measurements of monoterpene emissions from leaves of <I>Chamaecyparis obtusa</I>, which is one of the major tree species in Japan. Diurnal and seasonal variations of monoterpene emissions from <I>C. obtusa</I> were measured at the Kiryu Experimental Watershed (KEW) at 34°58′ N, 135°59′ E in Shiga Prefecture, central Japan. In August and October 2006 and in January and April 2007, the monoterpene emission rate (<I>E</I>), together with the leaf temperature, was measured using branch enclosure methods for a branch of two trees. The obtained data sets revealed that <I>E</I> highly correlated with leaf temperature throughout the seasons. The basal emission rate (<I>E<SUB>S</SUB></I>) under the standard conditions of 30°C, calculated using a widely used emission algorithm, ranged from 0.088 and 4.126 μg g<SUP>-1</SUP> h<SUP>-1</SUP>. The estimated <I>E</I> values were consistent with the measured <I>E</I> values within a root-mean-square (RMS) error of 0.005-0.525 μg g<SUP>-1</SUP> h<SUP>-1</SUP>, suggesting that the emission model can be used to determine the monoterpene emission responses of <I>C. obtusa</I> to temperature. However, the <I>E<SUB>S</SUB></I> values were significantly different between the trees and also different between seasons, indicating that a representative <I>E<SUB>S</SUB></I> value must be obtained from more data sets using more branches and trees.
著者
下田 芳幸 黒山 竜太 吉村 隆之
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.171-180, 2011-10

本研究は,共感性が対人ストレスコーピングおよびストレス反応に及ぼす影響について検討するものである。本研究は,多次元的な視点で捉えられた共感性が,対人ストレスコーピングおよびストレス反応に及ぼす影響について探索的に検討することを目的とした。なお共感性,対人ストレスコーピングおよびストレス反応とも,得点に男女差が報告されていることから(共感性については BaronCohen&Wheelwright,2004;植村ら,2008など,対人ストレスコーピングについては加藤,2000,ストレス反応については鈴木ら,1997),関連性に男女差が示される可能性を考慮しつつ検討を行った。
出版者
日経BP社
雑誌
日経コンピュ-タ (ISSN:02854619)
巻号頁・発行日
no.757, pp.102-104, 2010-05-26

この4月、ウイルス対策ソフトがWindowsの重要ファイルをマルウエア(ウイルス)と誤認識した結果、パソコンが使えなくなる二つのトラブルが偶然にも続いた。4月10日にはソースネクストが、4月22日には米マカフィーが、それぞれ問題を起こした。
著者
宮本 邦男
出版者
Japan Wind Energy Association
雑誌
風力エネルギー (ISSN:03876217)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.11-17, 1979

低風速時のダリゥス風車の自己起動不能は、風車回転径を狭めること、つまりソリディティーを増やすことによつて改善できる。<BR>この狭径ダリゥスは、ゆっくりと始動を開始するとまもなく風に乗って回転スピードを早め、それと共に増大する翼自身の遠心力によって回転径を拡げる。ちょうど良い標準ソリディティーになったところで、この拡径はロックされ、本来の高効率ダリゥス風車となるわけである。<BR>このような作動のための条件としては、(内剛外柔の) プレシキブルな翼構造と、ロック機構があればよい。
著者
車谷 麻緒 寺田 賢二郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A2(応用力学) (ISSN:21854661)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.I_129-I_138, 2012 (Released:2014-01-31)
参考文献数
16

This paper focuses on approximation properties for strong/weak discontinuities in the PU-based finite element methods. The extended finite element method (X-FEM), which is one of the PU-based FEM, enables us to approximate the discontinuous deformation due to crack/interface with the enrichment functions. In contrast, the finite cover method (FCM), which is also one of the PU-based FEM, is capable of representing discontinuous behavior by defining the multiple sets of finite covers (elements) instead of using the enrichment functions. We examine the properties and the effects of these different PU-based approximations for strong/weak discontinuities in this paper. Section 2 shows two types of approximations of strong/weak discontinuities in the PU-based FEM by taking X-FEM and FCM for instance, and explains the equivalence of them. Several numerical examples are presented to examine the analysis accuracy and effi ciency for structures involving a line crack, a branched crack and a material interface in Section 3.
著者
松尾 康徳
出版者
日経BP社
雑誌
日経パソコン (ISSN:02879506)
巻号頁・発行日
no.386, pp.180-185, 2001-05-28

「ハードディスクの交換、5000円で請け負います」——部品代別の交換手数料だけとして、これを高いと感じるだろうか。自分でやれば1〜2時間というベテランはともかく、ことビジネス現場においては、各人の時給単価も要検討だ。失敗してパソコンが起動不能になり、復帰までに丸1日——そんなリスクもあり得るビギナーにとっては、むしろ格安かもしれない。
著者
小宮山 雅樹
出版者
特定非営利活動法人 日本脳神経血管内治療学会
雑誌
Journal of Neuroendovascular Therapy (ISSN:18824072)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.5-15, 2015 (Released:2015-03-31)
参考文献数
31
被引用文献数
2 1

中枢神経系の血管病変の安全・確実な外科的治療や血管内治療に詳細な血管解剖の理解は必須である.そのような解剖の画像データは低侵襲なCT やMR で得られるようになり,今日では診断の第一選択になっている.カテーテル血管撮影には,検査自体の持つ避けることのできない種々の合併症の可能性があるが,今でも多くの症例において重要な診断手段である.著者は中枢神経系の血管系の画像診断,特にCT やMR の3 次元再構成画像に加えカテーテル血管撮影による画像診断における立体視(立体血管撮影)の役割の概説を行った.
著者
吉本 亮子 末松 智子 三野 幸人
出版者
徳島県立工業技術センター企画情報課
巻号頁・発行日
pp.21-25, 2017 (Released:2017-09-04)

タチウオを原料とする魚醤油製造において,酵素剤を用いることによる呈味性への影響について評価を行った。その結果,数種の酵素剤を使用することにより,アラニン,アスパラギン酸,グルタミン酸,グリシンといった旨味や甘味を呈する遊離アミノ酸が増加し,さらに麹を使用することにより糖や有機酸の増加も確認された。味に関して他社製品との比較を行った結果,魚醤油の欠点として敬遠されがちなトリメチルアミン含有量が非常に少ないこと,旨味の先味が強いこと,国外産より旨味コクが弱いことが明らかとなり,あっさりとした旨味のある魚醤油として差別化できることを確認した。