著者
水谷 茂章 中川 和治 礒野 禎三 毛利 信幸
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.283-288, 1995-03-25
参考文献数
16
被引用文献数
2

ヘキサミン(1,3,5,7-テトラアザトリシクロ[3.3.1.1<sup>3</sup>,<sup>7</sup>)]デカン)の鞣皮性を研究するために,ヘキサミン溶液での温度と硫酸の添加量がpH並びに皮粉の熱変性温度(T<sub>D</sub>)に及ぼす影響,また,ヘキサミンがクロム鞣液のpH並びにクロムの沈澱形成に及ぼす影響について検討した.得られた結果は次の通りである.1) ヘキサミンの分解反応は比較的容易に始まるが,反応終了までには長時間を要した.しかし,皮粉が共存すると,その時間が短縮された.また,皮粉のT<sub>D</sub>の上昇は非常に遅かった.一方,溶液の温度が高いほど,硫酸の添加量が多いほどヘキサミンの分解反応が促進され,皮粉のT<sub>D</sub>の上昇は速くなった.2) クロム鞣剤は硫酸酸性下においてヘキサミンの分解反応を速めた.すなわち,ヘキサミンの分解反応が終了するまに要する時間は,クロム鞣剤が共存しない場合の1/2以下となり,また,溶液の温度が高いほど,硫酸の添加量が多いほど短縮された.3) ヘキサミンークロム鞣液では,かなり高いpHにおいてもクロムが沈澱しにくい.このことは,ヘキサミンの分解反応による生成物がクロム錯塩に対してマスキング効果を持つことが考えられる.
著者
吉田 由起子 柳瀬 隆史 加藤 孝史 小柳 佑介 浅井 達哉 大堀 耕太郎
出版者
一般社団法人 経営情報学会
雑誌
経営情報学会 全国研究発表大会要旨集 2019年秋季全国研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.70-73, 2019-12-25 (Released:2019-12-23)

選挙候補者の当落を根拠付きで高精度に判定することを目指して、富士通研究所が開発したAI技術「Wide Learning」による選挙当落判定フレームワークを構築した。従来の選挙予測は分析者のスキルや情報源に強く依存する。一方、本研究では AIの入力データとして候補者の公認政党・趣味・主張、選挙区の特性等の公開情報と、有権者からの支持率等の一般的に用いられる調査データを使用することにより、一定の普遍性を有する選挙予測を可能としている。また、高精度の当落予測のみならず当落要因の知識発見も実現している。2016年参院選データで学習したモデルによる 2019年参院選選挙区の候補者の当落判定結果を評価しモデルの有用性について考察する。
著者
広瀬 裕子
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.15-26, 2005

This paper analyses the compulsory school sex education introduced in 1994 in England. This system was instituted at the point when the public-private dualism was losing its effectiveness. Factors this paper examines are the role of the Family Planning Association, the nature of the Parliamentary Debates, and the Moral Right's criticism against 'permissiveness'. The findings are as follows. This system was established as a part of education reforms conducted by the Thatcher and Major governments in the 1980s and 1990s. As effective and practical sex education was required for the new system, the governments appreciated so called progressive sex education methods and contents, which had been supported by the FPA and had been severely criticized by the conservatives, especially by the Moral Right, fundamentalist Christians, for its 'permissiveness'. In spite of the criticism by the Moral Right, polls and researches showed that most parents wished school sex education. Media was also in favor of it. Since 1960s, the liberalization in society had varied people's life styles including their sexual attitudes and behaviors. This generated not only positive but also negative aspects in society including increasing numbers of single parent families, and unwanted teenage pregnancies. The request for Government's initiative to deal with these problems gradually became visible. The fear of spreading HIV/AIDS backed up this trend. The provision of sex education to all pupils was then thought to be the most effective solution to tackle these problems. As sex education is strongly valued, teaching compulsory sex education at schools is actually governmental intervention into people's values. The fundamental rule that the government should not intervene into people's values was losing its effectiveness facing the urgent problems. The reason why this thesis did not function is because its underpinning public-private dualism was losing its powers as this did not, in fact, represent the nature of modern society. The excellent analysis of Foucault's clarified that sex in modern society was not a mere personal factor located in the private world but a key factor for the comprehensive political function. According to Foucault, sex was at the pivot of the discipline of the body and the regulation of the population that constituted the two poles around which the organization of power over life was deployed. The public sphere therefore could never be indifferent to sexuality and sexuality could never function apart from society. The previous rule then should be understood as a means employed to control members of society in the assumption that individuals would voluntarily keep common values, which, of course, has proved to be an illusion. The compulsory sex education introduced in England is a good example to see the nature of sexuality and states. States will intervene into the private sphere when this does not function properly to supply disciplined members.
著者
栗山 圭子 Keiko KURIYAMA
出版者
神戸女学院大学女性学インスティチュート
雑誌
女性学評論 = Women's studies forum (ISSN:09136630)
巻号頁・発行日
no.32, pp.1-23, 2018-03

産む、授乳する、育てる、教育する、PTAや学校行事への参加などで保護者役割を代表する等、「積みすぎた」現代の母とは異なり、日本中世においては、母役割は複数の人間によって分担されていた。本稿では、安徳天皇「母」を事例に、中世における多様な「母」とそれぞれの母役割について論じる。安徳天皇には8人の「母」が存在した。それらは、国母(こくも)/乳母(めのと)/准母(じゅんぼ)に類型される。第一に、国母とは、天皇の産みの母である。天皇に対する日常的奉仕や養育というよりも、特に、天皇の務める公務や儀式など公的空間における扶助を行うことが求められた。次に、乳母は、授乳をはじめ、養君の人生全般に寄り添い、もっともその身体に密着して、養育・教育・しつけを行った。第三の准母は、院政期(平安時代末~鎌倉時代初頭、ほぼ12世紀の100年間)に特徴的な「母」である。国母が上記した本来果たすべき公的空間における天皇の後見を行い得ないときに、准母はその代替を行うべく設定された。安徳天皇の4人の准母の変遷を分析すると、誰が・どのタイミングで准母に選定されるかは、後白河院(安徳父方祖父)と平清盛(安徳外祖父)との抗争という、時の政局と連動していることがわかる。つまり、天皇に付された後天的な「母」である准母は、いかなる勢力が安徳の後見主体であるのかを明示するものであった。准母をはじめとする中世における多様な「母」の在り方は、まさに当該期の社会構造の中から生み出されたものなのである。
著者
本谷 裕子
出版者
慶應義塾大学法学研究会
雑誌
法学研究 = Journal of law, politics and sociology (ISSN:03890538)
巻号頁・発行日
vol.93, no.1, pp.23-47, 2020-01

1 はじめに2 問題の沿革3 マヤ先住民女性による社会運動 3-1 織りと装いの文化をめぐる現状 3-2 Movimiento Nacional de Tejedoras (女性の織り手たちの全国運動) 3-3 マヤ先住民による社会運動の沿革4 創造品の集団的知的所有権保護に向けた取り組み 4-1 織りと装いの文化の盗用と剽窃 4-2 法改正案5 運動の主旨 5-1 声明文 5-2 運動の主旨6 むすびにかえて小林良彰教授退職記念号
著者
佐藤 令奈
出版者
社会学研究会
雑誌
ソシオロジ (ISSN:05841380)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.19-34,185, 2013

This study clarifies how the problem of atopic dermatitis in Japan developed criticism of modernity or modern medicine using discourse analysis of mass media and discussing the consequences and significance of this criticism. Atopic dermatitis initially emerged as an illness with causes attributed to modern lifestyles and was commonly referred to as a 'civilization disease. 'Although difficult to treat, many treatments recommended diet control for patients. Conversely, citing risks associated with diet control, some physicians recommended pharmacological treatment, in particular, the use of corticosteroids. However, pharmacological treatments were criticized since they present the risk of side effects. Consequently, patients developed critical views toward modern medicine from the viewpoints of lack of informed consent and the adequacy of using corticosteroids. Physicians countered this criticism against modern medicine by advocating "discussion of atopic dermatitis as a medical business", which is a discussion of the confidence trick against the patients of atopic dermatitis and prepared the standard treatment. Recently, patients seem to be accepting the physicians' claims. It is evident from this discussion that the criticism of modern medicine in the context of the physician–patient relationship, like the lack of informed consent or interventional pharmacological treatments, is losing effectiveness. Now is the time for proper criticism of modern medicine in order to restructure its effectiveness by revising the significance of the self-transformation of the modern physician.
著者
吉田 金彦
出版者
訓点語学会
雑誌
訓点語と訓点資料
巻号頁・発行日
no.60, pp.1-6, 1977
著者
OHRI Richa
出版者
お茶の水女子大学日本言語文化学研究会
雑誌
言語文化と日本語教育 (ISSN:09174206)
巻号頁・発行日
no.26, pp.27-40, 2003-12

多言語化・多文化化していく日本社会の目指す言語的な方向性を築く手がかりを探ることを最終的な目標とし、本稿では、コミュニケーションストラテジーとして使われているスピーチレベルシフトを例に取って接触場面における共生日本語の一側面の解明を目指した。共生日本語とは、接触場面において参加者の協働の結果新たに生み出される「内容」を言語的に担うものであるとされている。本稿では、接触場面におけるスピーチレベルシフトが実現するものを「内容」と捉え、その「内容」の解明を試みた。会話データの分析の結果、接触場面における非母語話者のスピーチレベルシフトの要因として、(1)「アドレス」、(2)「心的態度」、(3)「力関係」の三つが示され、それぞれが、(1)「オンステージの明示」、(2)「心的距離の短縮」、(3)「母語話者への感謝の気持ちの表示」や「日本語・日本文化の教示の要請」を実現していることが分かった。共生日本語は、接触場面において定住型非母語話者がとるコミュニケーションストラテジーの側面を持つことから、母語話者のそれへの理解や受容していく姿勢が望まれることを指摘した。
著者
内藤 政人 茅野 真男 堀川 宗之 名越 秀樹 中村 芳郎 小野 泰志 宇田川 宏之
出版者
Japan Heart Foundation
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.7, no.10, pp.1159-1164, 1975

狭心症や発作性不整脈の診断には,発作中およびその前後の心電図記録が必要である.<br>Holterらの装置は長時間連続記録であり,しかも高価である.また発作と同時に患者にスイッチを押させて心電図を記録する装置もあるが,発作前からの連続記録がぜひ必要と思われる.<br>われわれはエンドレスカセットテープを用いて,発作と同時に患老に押させたスイッチによるトリッガー信号で発作前後の制御を行ない,発作中およびその前後の心電図記録が連続して得られる装置を開発した.<br>電源は乾電池を使用し,約12時間の連続使用が可能で発作前後3分間ずつ計6分間,2回の発作まで記録ができる.<br>この装置により,狭心症のある例では自覚症状発現前よりST-T部分の変化が始まっていることがわかり,また狭心症と思われた例が,単なる頻脈発作であることがわかるなど,非常に有用と思われたので,装置の概略と使用成績を報告する.
著者
田村 和彦
出版者
関西学院大学
雑誌
エクス
巻号頁・発行日
no.1, pp.119-133, 2000
著者
西城 浩志
出版者
社団法人 日本写真学会
雑誌
日本写真学会誌 = Journal of The Society of Photographic Science and Technology of Japan (ISSN:03695662)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.496-498, 2005-12-25

学会などの口頭発表で用いられて来たスライド映写がOHPとなり, さらにはノートパソコンで作ったディジタルファイルをビデオプロジェクターで直接投影するようになって, 事前準備は迅速かつ容易になり, 時には発表数分前まで推敲可能になった. そのかわり, 真っ暗な部屋でのスライド投影と比べると, 画面のコントラストや解像度は著しく低下した. 大ホールの幅10mのスクリーンではビデオプロジェクターが投影する画面の1ピクセルが1cmにもなり, ピントが合っていてもはっきりとは見えない, という事態が生じた.
著者
永田 昌子 堤 明純 中野 和歌子 中村 純 森 晃爾
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
pp.1111230078, (Released:2011-11-28)
被引用文献数
2

職域における広汎性発達障害者の頻度と対応:産業医経験を有する精神科医を対象とした調査:永田昌子ほか.産業医科大学産業医実務研修センター-目的:近年,産業保健スタッフが対応するメンタルヘルス不調者の中に広汎性発達障害を抱える,もしくは疑い例に遭遇する事例が報告されている.本研究は,産業医経験を有する精神科医を対象に,職域で広汎性発達障害の事例対応に遭遇する頻度や広汎性発達障害を抱えるメンタルヘルス不調者に対して行われている就業上の配慮について,職域での実態調査を行った.対象と方法:産業医科大学精神医学教室員および同門医師122名に対して,記名式の郵送法調査を実施した.回答者の産業医経験,臨床経験,臨床場面での広汎性発達障害の経験,産業医活動のなかで広汎性発達障害の診断を受けているメンタルヘルス不調者の事例対応をした経験の有無,また,事例対応開始時に主治医より受けている診断名は広汎性発達障害ではないが,回答者自身が広汎性発達障害を疑った事例の経験の有無,事例対応の経験があるものには,職場で行った具体的な配慮,困難だった事例,成功した事例等について自由記述形式で回答を求めた.結果:56名から回答が得られた.そのうちメンタルヘルス不調者の職域での事例対応経験のある医師35名の回答を分析した.広汎性発達障害の「診断」を受けているメンタルヘルス不調者の経験を有するものは7人(20.0%),広汎性発達障害の「診断」を受けてないものの回答者自身が広汎性発達障害を疑ったメンタルヘルス不調者の経験を有するものは15人(42.9%),両方の経験を有するものが3人(8.6%)であり,どちらかの経験も有するものが19人(54.6%)であった.今回報告された40例のうち,事例対応開始時に診断名がついていたものが12例,回答者が疑った事例が28例,そのうち調査票回答時までに診断に至っていたものが7例であった.広汎性発達障害の「診断」を受けてないものの回答者自身が広汎性発達障害を疑った理由として多かったのは,職場での対人関係のトラブルを起こすというエピソードであった.「診断」を受けている事例は,産業医が疑った事例より具体的な配慮が行われていた.また,就業上の配慮として上司に対しての障害特性についての説明や業務内容の変更などが実施されていた.地域の社会資源の活用状況として,広汎性発達障害の診断を受けている,または疑った事例対応経験のある回答者19人のうち,発達障害支援センターや地域障害者職業センターの利用した経験を有する回答者は2人(10.5%)であった.考察:調査対象となった産業医経験のある精神科医の半数に広汎性発達障害の診断がついたもしくは疑った事例の対応の経験があり,職域で広汎性発達障害を持つ労働者の事例対応をすることは稀ではないことが示唆された.産業保健スタッフは,広汎性発達障害の知識,職場での適切な配慮の仕方,利用出来る社会資源についての理解を深める必要があると考えられた.
著者
増沢 力 米井 祥男 松本 多恵子
出版者
日本海水学会
雑誌
日本海水学会誌 (ISSN:03694550)
巻号頁・発行日
vol.29, no.5, pp.199-208, 1976

韓国天日塩の品質およびかん水, 結晶池母液組成について検討し, 次の結果を得た.<BR>1. 韓国天日塩は, 塩化ナトリウム純度88~91%, 水分6~7%, 不溶解分0.3~0.5%, マグネシウム0.3~0.4%, カルシウム0.09~0.17%程度であり, メキシコ, ナーストラリア産の天日塩の品質に比較してかなり劣っている.<BR>2. 韓国天日塩は, 1~2mmの空隙の多い結晶で, 結晶内に多量の母液を含み, 同時に一辺5~20μm程度の液泡を多数含んでいる.<BR>3. 成績が悪いといわれる蘇莱塩田のかん水, 結晶池母液および塩について検討した結果, かん水はほぼ海水濃縮線上にあるが, 結晶池母液は30~32°Beと一般の他の塩田より濃縮がかなり進んでおり, 海水濃縮線からMgSO<SUB>4</SUB>の組成点の方向へずれていた.<BR>4. 韓国天日塩の品質が劣る原因は, 結晶を30~32°Beと濃縮の進んだ結晶池母液から晶出させるため, 結晶内部に液泡が多いこと, 結晶池は10mm程度の浅い水深とするため, 結晶は {111} の方向に急速に成長し, 空隙が多く, その間に母液が多く含まれることおよび1~2日の短期採塩を行なうため, 結晶粒子が1~2mmと小さいことであると推定された.<BR>5. 韓国天日塩の見かけ密度は粗0.7~0.8g/cm<SUP>3</SUP>, 密1.0~1.1g/cm<SUP>3</SUP>と他の天日塩の値より小さかった.
著者
松林 哲也
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.47-60, 2016

有権者を取り巻く投票環境の変化は投票率にどのような影響を及ぼすのだろうか。本稿では投票環境として市町村内の投票所数とその投票時間に注目し,それらの変化が市町村内の投票率に与える影響を推定する。2005年から2012年の3回の衆院選における34都府県の市町村パネルデータを用いた分析によると,1万人あたり投票所数が1つ増えると投票率は0.17%ポイント上昇し,また市町村内の全ての投票所で投票時間が2時間短縮されると投票率が0.9%ポイント下落する。これらの効果は市町村の人口規模や人口密度にかかわらず一定である。投票環境の制約を少しでも取り除き投票の利便性を高めるためにこれまでにもさまざまな制度の変更が提案・実施されているが,本稿の研究結果は投票所の設置数や開閉時間を見直すだけでも投票率が上昇する可能性があることを示唆している。