出版者
日経BP社
雑誌
日経アーキテクチュア (ISSN:03850870)
巻号頁・発行日
no.790, pp.16-20, 2005-02-21

畑が点在する郊外に、戸建て住宅が肩を寄せ合って立ち並ぶ一角がある。その間を縫って私道に入ると、突き当たりに小さな空地が開け、新旧2棟の家が姿を現す。新しい方が中村さんの家、古い方は両親の住まいだ。新しい方の敷地には、かつて別の家が建っていた。
著者
大久保 優 梛野 浩司 岡田 洋平 生野 公貴 河口 朋子 岡本 昌幸 松下 祥子 高取 克彦
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.B4P2152, 2010

【目的】パーキンソン病患者の機能障害の一つとして,体軸回旋の減少など体幹機能障害があげられる。体幹機能は,ベッド上の寝返り動作や起きあがり動作,歩行時の方向転換,リーチ動作に重要な要素であり,パーキンソン病患者ではこれらの動作が障害されやすい。体幹機能障害は,Hohen & Yahr (H&Y) stage1~2の発症早期から生じると報告されており,病期が進行したH&Y stage3~4の患者では,円背や脊柱の側彎など体幹の変形が問題となる。パーキンソン病患者のリハビリテーションを効果的に行うためには,その特性を反映する客観的な体幹機能評価が必要である。体幹機能評価として,Trunk Impairment Scale(TIS)があげられ,パーキンソン病患者においても有用であると報告されている。しかし,TISの副項目では天井効果が認められており,項目数が多いため測定に時間を要する。もう一つの体幹機能評価として,座位側方リーチテスト(Sit-and-Side Reach test; SSRT)があげられる。脳卒中患者に対して,非麻痺側のSSRTを行った場合,その信頼性は高く,TISとの高い相関も見られ,体幹機能評価として有用であると報告されている。パーキンソン病患者においても,SSRTは体幹機能やその左右差を捉える上で有用である可能性があるが,そのような報告は見られない。本研究の目的は,パーキンソン病患者におけるSSRTと重症度や他の体幹機能との関係を調べ,その妥当性について検証することである。<BR><BR>【方法】対象は,パーキンソン病患者17名であった(平均年齢69.9±9.2歳,男性11名,女性6名,H&Y stage1:1名,2:2名,3:7名,4:7名,平均罹病期間7.3±5.7年)。全ての対象者は口頭指示を理解可能であった。腰痛や脊柱の手術の既往がある者は除外した。評価項目は,SSRT,TIS,Unified Parkinson's Disease Rating Scale part3 (UPDRS-motor)とした。SSRTは,ハンガーラックを用いて作成したスライド式の測定器と40cm台を用いた。測定方法は,開始肢位を40cm台上端座位,上肢90°外転位とし,側方に最大リーチするように指示した。初め三回を練習とし,その後二回測定を行いその平均値を統計解析に用いた。また,左右とも測定し,値が低い方を障害側の体幹機能を反映する指標と捉え,採用値とした。評価は抗パーキンソン病薬の影響を考慮し,服薬1.5~2時間後に統一した。統計解析は,Spearmanの順位相関係数を用いてSSRTとTIS,SSRTとUPDRS-motorとの関係について調べた。またH&Y stage3の患者群と,stage4の患者群のSSRTの差について,Mann-WhitneyのU検定を用いて調べた。<BR><BR>【説明と同意】全ての対象者には,口頭にて本研究の趣旨を十分に説明し,研究参加の同意を得た。<BR><BR>【結果】SSRTとTISの間には,有意な中等度の相関が認められた(ρ=0.51,p=0.04)。また,SSRTとUPDRS-motorとの間にも中等度の負の相関が認められたが,有意ではなかった(ρ=-0.45,p=0.07)。またstage4群はstage3群と比較して,有意にSSRTの値が小さかった(stage3群24.6±6.3cm,stage4群14.2±7.6cm,p=0.04)。<BR><BR>【考察】SSRTとTISとの間に中等度の相関が認められたことから、SSRTはパーキンソン病患者の体幹機能評価として有用である可能性が示唆された。また,SSRTとUPDRS-motorとの間に有意ではないが中等度の相関が認められたこと,stage3群と4群の間に有意な差を認めたことから,SSRTはパーキンソン病患者の重症度を反映する可能性もあると考えられた。今後は症例数を増やし,SSRTの長期的な変化や他のH&Y stageとの関係について検証する必要がある。また,パーキンソン病患者のSSRTの左右差や健常高齢者との差異について検証していく必要がある。<BR><BR>【理学療法学研究としての意義】パーキンソン病患者のリハビリテーションを行う上で,長期にわたって体幹機能を維持することは,身体機能やADL,QOLを維持する上で重要である。しかし,客観的で定量的な体幹機能評価は少ない。今回の研究結果より,SSRTはパーキンソン病患者の体幹機能評価として,有用である可能性が示唆された。また,今回の結果より,SSRTが重症度の差異を捉えることができたことと,定量的な評価であることから,長期にわたって継時的にパーキンソン病患者の体幹機能の変化を捉えることができる可能性があると考えられる。
著者
大久保 優 梛野 浩司 岡本 昌幸 千葉 達矢 徳久 謙太郎 松下 祥子 岡田 洋平
出版者
社団法人 日本理学療法士協会近畿ブロック
雑誌
近畿理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.6, 2010

【目的】<BR> パーキンソン病(PD)患者では,発症早期より体軸内回旋の減少など体幹機能障害が起こり,その結果,歩行をはじめとした様々な日常生活動作が障害される。病期が進むと,脊柱の変形が生じ,呼吸機能や嚥下機能にまで問題が波及する症例も多く,体幹機能はPD患者のリハビリテーションを行う上で,非常に重要である。WrightらはPD患者と健常高齢者の体幹回旋の筋緊張を測定し,PD患者では有意に左右差が認められ,体幹筋の固縮に左右非対称性が認められたことを報告している。また,彼らはこの体幹筋の左右非対称性が姿勢や歩行障害に強く関与していると示唆している。これらのことから,PD患者の体幹機能を評価する上で,左右非対称性を捉えることが重要であると考えられる。しかし,PD患者の体幹機能を定量的に評価する指標は少なく,左右非対称性に着目した評価はほとんど見られない。<BR> 我々は定量的な体幹機能評価として,座位側方リーチテスト(Sit-and-Side Reach test; SSRT)を考案し,先行研究において,PD患者のSSRTの併存的妥当性について報告した。SSRTは左右各々の測定が可能であり,体幹機能の左右非対称性を捉えることができる可能性がある。そこで本研究では,SSRTの値およびその左右差を,健常高齢者とPD患者間で比較し,PD患者における体幹機能の特性について検証した。<BR>【方法】<BR> 対象は,PD患者19名(平均年齢69.6±9.0歳,男性12名女性7名,平均罹病期間6.5±5.1年,Hohen & Yahr(H&Y)stage 1:1名,2:2名,3:11名,4:5名)と年齢を一致させた健常高齢者16名(平均年齢68.8±8.6歳,男性5名女性11名)であった。全ての対象者は口頭指示を理解可能であった。腰痛や脊柱の手術の既往がある者は除外した。SSRTは,ハンガーラックを用いて作成したスライド式の測定器と40cm台を用いた。測定方法は,開始肢位を40cm台上端座位,上肢90°外転位とし,側方に最大リーチするように指示した。二回練習後一回測定を行い,その値をSSRTの測定値とした。また左右ともに測定し,左右の差の絶対値(左右差)についても算出した。PD患者の評価は,抗パーキンソン病薬服薬1.5~2時間後に統一した。統計解析は,Mann-WhitneyのU検定を用いてPD患者群と健常高齢者群の右側と左側SSRTの値およびその左右差について比較した。次にPD患者群の中から,既に脊柱の側彎など体幹の変形があるstage4の患者は除外し,stage3以下の患者群と健常高齢者群の右側と左側SSRTの値およびその左右差について比較した。<BR>【説明と同意】<BR> 全ての対象者には,研究の目的に関する説明を口頭にて行ない,自由意思にて研究参加の同意を得た。<BR>【結果】<BR> PD患者群では健常高齢者群と比較して左右とも有意にSSRTの値が低下していた。SSRTの左右差については有意差を認めなかった。stage3以下のPD患者群でも健常高齢者群と比較して左右とも有意にSSRTの値が低下していた。SSRTの左右差は,stage3以下のPD患者群が健常高齢者群と比較して有意に大きかった。<BR>【考察】<BR> Stage3以下のPD患者群と健常高齢者群の比較より,SSRTは軽度から中等度のPD患者と健常高齢者の差異を捉えることができ,比較的発症早期より体幹機能評価として有用であることが示唆された。また,stage3以下のPD患者群のSSRTの左右差が有意に大きかったことから,まだ著明な脊柱の変形がないPD患者では,側方のリーチ動作能力に左右差があり,体幹の可動性を含んだ体幹機能に左右非対称性を認めることが示唆された。<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR> 客観的かつ定量的な評価にもとづき,長期にわたって体幹の可動性を維持することは,PD患者の身体機能やADLを維持する上で重要である。本研究結果より,SSRTはPD患者において,比較的発症早期から使用可能で,体幹機能の左右差を捉えることができる新しい定量的な体幹機能評価になり得ることが示唆された。今後はSSRTの継時的な変化について調査し,体幹の側屈変形の予測妥当性や左右差に影響を与える因子について検証する必要がある。
出版者
日経BP社
雑誌
日経情報ストラテジ- (ISSN:09175342)
巻号頁・発行日
vol.10, no.8, pp.66-71, 2001-09

アパレルメーカーのある工場。出荷するスーツが掛けられたハンガーラックが、ゲート型の装置を次々と通り抜けていく。 ハンガーラックがゲートを通り抜けると、接続されているパソコンの画面にスーツの枚数やサイズ、納入先といった情報が正確に表示される。この情報は商品管理システムに送られて、出荷済み商品として記録される。
著者
宮原聡 飯田龍 徳永健伸
雑誌
研究報告自然言語処理(NL)
巻号頁・発行日
vol.2013-NL-211, no.2, pp.1-7, 2013-05-16

文を談話単位と呼ばれる基礎的な単位に分割する処理は談話関係解析などの前処理として必須である.ただし,談話単位間に論理的な談話関係を想定する場合には,談話単位に適切な粒度で命題が含まれる必要がある.これは,談話単位間で論理的な談話関係を想起する場合に,一つの談話単位に命題に相当する情報が含まれない場合には,関係を人手で付与する場合に解釈が困難になったり,また一つの談話単位に複数の命題が含まれている場合にはどちらの命題と関連させて関係を付与するのかわからなくなるという問題があるためである.本稿では談話単位の認定基準について議論し,談話単位アノテーションの仕様を設計し,日本語書き言葉均衡コーパス (BCCWJ) の一部に人手でアノテーションを行った.さらに,談話単位の境界にどのような特徴が現れるのかを人手で分析し,それらを手がかりとした自動分割の手法を提案する.この手法の有効性を調査するために BCCWJ にアノテーションした結果を利用した評価実験を行った結果について報告する.
著者
梛野 浩司 中村 潤二 三ツ川 拓治 生野 公貴 徳久 謙太郎 岡田 洋平 庄本 康治
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.E3P2206, 2009

【目的】高齢者の転倒・転落は寝たきりの原因となるため重要視されている.転倒に関わる因子は内的因子と外的因子に分類され、さまざまな報告がなされている.近年、Functional Reach Test(FRT)は簡便に使用できるため高齢者の転倒予測ツールとして用いられている.しかし、FRTは前後方向のバランスを測定しているのみである.転倒に関する調査によると、後側方への転倒で大腿骨頸部骨折のリスクが3~6倍になることが示されている.このことから、前後方向へのバランスだけでなく側方へのバランスが危険な転倒を予測する因子として重要であると考えられる.そこで今回、我々は健常高齢者を対象に側方へのバランス指標として坐位での側方リーチ距離を測定し、転倒との関係について調査したので報告する.<BR><BR>【方法】対象はN県U市の転倒予防教室に参加した健常高齢者74名(男性35名、女性39名、平均年齢76.2±5.9歳)とした.全参加者に対して事前に測定の目的を説明し同意を得た上で測定を行った.測定項目は、FRTおよび坐位側方リーチ距離とした.その他、過去1年間の転倒の有無および複数回転倒の有無についてアンケート調査を行った.FRTはDuncanらのスライド法に準じて行った.坐位側方リーチについては、測定機器としてハンガーラックを用いて作成したスライド式の測定器と、40cm台を用いた.測定方法は、開始肢位を40cm台上端座位、リーチ側上肢を90°外転位とし、最大リーチを行うよう指示した.アンケート調査の結果より対象者を転倒なし群、1回転倒群、複数回転倒群の3群に分けFRTと座位側方リーチ距離について比較を行った.また、FRTと坐位側方リーチ距離との関連性についても検討した.統計解析はKruskal-Wallis検定を使用し、有意差を認めた場合には多重比較検定を行った.FRTと坐位側方リーチ距離との関連性についてはピアソンの積率相関係数を求めた.有意水準はp<0.05とした.<BR><BR>【結果】アンケート調査の結果、転倒なし群54名、1回転倒群11名、複数回転倒群7名であった.FRT(p=0.085)では3群間に有意な差を認めなかった.坐位側方リーチ距離(p=0.035)では有意な差を認め、多重比較検定では複数回転倒群が他の2群よりも有意に低値を示した.FRTと坐位側方リーチとの関連性はr=0.123と低い相関関係であった.<BR><BR>【考察】今回の結果では、FRTでは複数回転倒群と転倒なし群で差を認めなかったことに対し、坐位側方リーチ距離では有意な差を認めたことから、複数回転倒する可能性のある高齢者を簡便に抽出することができる可能性が考えられた.身体の平衡機能には様々な要因が関わっているが、FRTと坐位側方リーチ距離において弱い相関関係しか認められなかったことから、坐位側方リーチ距離とFRTとでは異なった機能を評価できるものと考えられた.坐位側方リーチ距離は体幹機能をより反映しているものと考えられ、転倒に対する体幹機能の重要性が考えられた.
著者
三ツ川 拓治 中村 潤二 生野 公貴 徳久 謙太郎 梛野 浩司 庄本 康治
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.A3O3029, 2010

【目的】脳卒中片麻痺患者の歩行能力や日常生活動作(ADL)の獲得には様々な因子が関与している。特に体幹機能は、四肢の随意運動時の身体近位部の固定などに関与するため重要であるといわれている。しかし、歩行能力やADLと下肢機能との関連を報告したものは多いが、体幹機能との関連を報告しているものは少ない。先行研究では、既存の体幹機能評価法であるTrunk Control Test(TCT)とTrunk Impairment Scale(TIS)が、歩行能力とADLに関連していることが報告されており、その中でもTISのほうがより脳卒中片麻痺患者の歩行能力と関連していることが示唆されている。しかし、TISは項目数が多く、評価に時間を要する。そこで我々は、体幹での制御を必要とし、座位での側方へのリーチ距離を測定する座位側方リーチテスト(Sit-and-Side Reach Test;SSRT)を考案した。SSRTはTCTやTISとの妥当性が示されており、脳卒中片麻痺患者の体幹機能を評価することのできる新しい指標であると考えられる。そこで、本研究では新しい体幹機能評価法であるSSRTと 歩行能力やADLとの関連を検討することとする。<BR>【方法】対象は当院回復期病棟及び療養型病棟に入院中の脳卒中片麻痺患者36名(男性15名、女性21名、平均年齢69.3±13.7歳)とした。SSRTの測定は、ハンガーラックを用いて作成したスライド式の測定器と40cm台を用いた。測定方法は、開始肢位を40cm台上端座位、非麻痺側上肢90°外転位とし、側方へ最大リーチするよう指示した。測定中は非麻痺側下肢を床面から動かさないよう注意を促した。初めの2回後の3回を測定し、その平均値を統計解析に用いた。その他の評価項目は、歩行能力としてFIM歩行項目、歩行自立度はFIM歩行項目の6以上を自立群とし、5未満を非自立群として判別した。またADLとしてBarthel Index(BI)を評価した。統計解析は、SSRTと各項目の相関をスピアマンの順位相関係数を用い算出して検討した。また歩行の自立群、非自立群の比較はt検定にて行った。有意水準はすべてp<0.05とした。<BR>【説明と同意】本研究は、研究実施施設長の承認を得て行われた。対象者には文書にて本研究の趣旨を説明し、書面での同意を得た。<BR>【結果】SSRTは全対象者では23.7±6.8cm、歩行の自立群14名では27.6±5.6cm、非自立群22名では21.1±6.4cmであった。SSRTとFIM歩行項目との間では中等度の有意な相関(ρ=0.58,p=0.0002)があった。また歩行の自立群と非自立群のSSRTの間には有意差(p=0.004)が認められた。BIは79.9±17.4点であり、SSRTとBIとの間では高い有意な相関(ρ=0.72,p<0.0001)があった。【考察】SSRTが歩行自立群と非自立群との間で有意差があったことから、SSRTで示される体幹機能が歩行自立度に関係していると考えられた。またFIM歩行項目との間で中等度の相関、BIとの間に高い相関があった。これは先行研究においてTCT、TISが歩行能力、ADLに関連しているとの報告と一致している。このことからSSRTで示される体幹機能は歩行能力やADLの獲得に関連している一つの重要な因子であると考えられた。また今回の結果から、SSRTが今後、臨床現場において有用な一指標となる可能性があると考えられた。<BR>【理学療法学研究としての意義】脳卒中片麻痺患者の歩行能力やADLに体幹機能が大きく関連しており、現在、臨床で使用されているTCTやTISとの相関も報告されている。しかしTCTやTISといった評価法は定量的ではなく客観性に欠けている。本研究で使用したSSRTはリーチ距離にて評価をするため定量的・客観的である。また項目数の多いTISに比べて簡便に評価が可能であり、患者への負担を軽減することができる。そのためSSRTは臨床的な指標であると考えられる。しかし本研究は、横断研究であるため、今後はさらに予測妥当性についても検討する必要がある。
著者
中村 潤二 三ツ川 拓治 生野 公貴 徳久 謙太郎 梛野 浩司 庄本 康治
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.A3O1029, 2010

【目的】近年の報告では脳卒中片麻痺患者において上下肢の障害だけでなく, 体幹屈曲筋・伸展筋・回旋筋等の筋力低下といった体幹機能障害の存在が証明されている。体幹機能は四肢の随意運動時の身体近位部の固定や起き上がり, 歩行などの基本動作の獲得のために重要であると考えられている。脳卒中患者の中で急性期に体幹機能が高い者は, 退院時の日常生活動作得点が高いとしており, 機能的予後を予測する因子としても重要であるとしている。体幹機能を評価する方法には筋電図などの特別な機器を用いた方法があるが, 臨床での使用は利便性に欠ける。簡便に体幹機能を評価する方法には古くからTrunk Control Test (TCT) が知られているが, これは4項目の身体パフォーマンスを3段階で評価しているため段階付けの幅が大きく, 天井効果があることなどが問題とされている。他の評価法としてはTrunk Impairment Scale (TIS) があり, 構成概念妥当性, 併存的妥当性, 高い再現性が報告されている。TISは静的座位バランス, 動的座位バランス, 協調性について評価しているが, 順序尺度であり項目数が17項目と多いため測定に時間を要する。そこで我々は定量的な評価が可能な座位での側方リーチテスト (Sit - and - Side Reach Test : SSRT ) 考案した。SSRTはTCT, TISとの併存的妥当性が確認されているがその再現性は報告されていない。そこで本研究の目的はSSRTの検者内・検者間再現性と測定誤差を検討することとした。<BR>【方法】対象は当院回復期病棟及び療養型病棟に入院中の脳卒中片麻痺患者32名 (男性17名, 女性15名, 平均年齢67.6± 16.4歳) とした。重篤な脊柱の変形を有する者, 高次脳機能障害等により指示を理解できない者は除外した。SSRTの測定にはハンガーラックを用いて作成したスライド式の測定器と40cm台を用いた。測定は開始肢位を40cm台上に端座位をとり, 測定器を非麻痺側肩峰の高さに合わせた後, 非麻痺側肩関節90°外転, 手指伸展位とし, 非麻痺側へ最大リーチするように指示した。測定中は非麻痺側下肢を床面から動かさないように注意を促した。SSRTは初めの2回を練習とし, その後3回測定し, 各測定値及びその平均値を統計解析に用いた。検者間再現性を検証するために測定は2名の検者で合計2セッション行った。2セッション目の測定は最初の測定より1~2日以内に測定した。また他の検者の測定結果を測定終了時まで教えないことで, 先入観に基づく測定バイアスを排除した。検者内再現性の検討には測定値間の級内相関係数 (Intraclass Correlation Coefficient: ICC) を求め, 検者間再現性の検討は各検者の測定平均値の差を対応のあるt検定にて確認し, そのICCを求めた。また測定の精度を検証するために測定標準誤差 (Standard Error of Measurement: SEM) , 最小検知変化 (Minimal Detectable Change: MDC) を算出した。有意水準は5%とした。SEMは測定値に生じる誤差を表し, MDCは検知可能な変化の最小値を表す。<BR>【説明と同意】本研究は, 研究実施施設長の許可を得て行われた。全ての対象者には文書にて本研究の趣旨を説明し, 書面での同意を得た。<BR>【結果】SSRTの測定値は平均22.8± 7.5 cmであった。各検者の測定平均値の間に有意な差はなかった (P > 0.05)。SSRTの検者内再現性は検者AにおいてICC = 0.97 (95%信頼区間 (CI ): 0.94-0.98) , 検者BはICC = 0.97 (95%CI: 0.95-0.99) であった。また検者間再現性はICC = 0.91 (95%CI: 0.82-0.96) で, SEMは2.3 cm, MDCは6.4 cmであった。<BR>【考察】今回の結果からSSRTは良好なICCを示し、検者内・検者間再現性が高いと考えられる。またSSRTを用いた場合には測定結果に2.3 cm程度の測定誤差が生じることが明らかになった。その測定誤差はSSRTの平均値の約10%程度であった。MDCは一症例のSSRTを経時的に測定し, その変化が統計学的に有意と認められる最小値であり, 1回の測定で6.4 cmの改善または悪化がないと真の変化とは言えず, それ以下は測定誤差の範囲内であることが示唆された。これらのことからSSRTは優れた再現性, 測定の精度を有していると考えられる。<BR>【理学療法学研究としての意義】脳卒中片麻痺患者において体幹機能の重要性が報告されている。体幹機能を評価する方法にはいくつかの方法が報告されているが評価の天井効果や項目数の多さ, 定量的な評価ができないといった問題点がある。SSRTは評価方法の特性上, 簡便かつ客観的で連続尺度による定量的な評価が可能である。今回の結果からSSRTは優れた再現性, 測定の精度を有しており, 脳卒中患者の体幹機能の経時的な変化を評価することも可能であると考えられる。今後はさらにSSRTの測定特性について検討していく必要がある。
著者
兼松 大和 徳久 謙太郎 宇都 いづみ 鈴木 敏裕 大成 愛 三好 卓宏 藤村 純矢 高取 克彦 庄本 康治
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.A0680, 2007

【はじめに】<BR>ファンクショナルリーチ(FR)テストは臨床や研究場面、介護予防事業などで広く用いられている動的バランスの臨床評価指標である。先行研究によると健常成人や高齢者におけるFRテストの再現性は良好であると報告されている。しかし、脳卒中片麻痺患者においてその再現性を検討した報告は少ない。また、一症例の継時的な動的バランス変化の有無を評価する際には、測定値にどの程度の測定誤差が生じるかを知ることは有用である。本研究の目的は、脳卒中片麻痺患者におけるFRテストの検者内再現性と測定誤差を明らかにし、実際の臨床での評価場面において有用な情報を提供することである。<BR>【対象及び方法】<BR>対象は2施設に入院中の脳卒中片麻痺患者のうち、立位保持が20秒以上可能で、指示理解良好な者31名(男20名・女11名、平均年齢69.2±10.8歳)である。FRはハンガーラックにメジャーを貼り付けて作成した自作の測定器にて測定した。靴を履いた状態で測定すること、肩峰の位置から前方リーチによる最大到達点までの距離を測定し、上肢長を引いてFR算出すること以外はDuncan等による原著の方法に従った。測定は同一検者により行われ、2回の練習後、3回の測定を1セッションとし、2セッション実施した。セッション間隔は1~2日とした。<BR>【分析】<BR>検者内再現性の検討には、異なるセッションの測定値間の級内相関係数(ICC)を求めた。測定誤差の分析は一般化可能性理論により行った。セッションと反復を要因とする2要因完全クロス計画の下、主効果と交互作用の分散成分推定量を求めた。この情報を基にセッション回数や反復回数を変更した測定条件下での測定の標準誤差standard error of measurement(SEM)および最小検知変化minimal detectable change(MDC)を求めた。<BR>【結果】<BR>異なるセッションの測定値間のICC(1,1)は0.975であった。SEMとMDCは1回の測定では1.7cmと4.8cmであり、測定反復回数を変更すると2回の平均値では1.4cmと4.0cm、3回の平均値では1.3cmと3.7cmに減少した。測定セッション回数を変更すると、2回の平均値では1.4cmと3.8cmに減少した。<BR>【考察・まとめ】<BR>異なるセッションの測定値間において優秀な級内相関が得られたことから、脳卒中片麻痺患者のFRテストの検者内再現性は良好であるといえる。原著の方法と同じく2回の練習後、3回測定の平均値を使用した場合、1.3cmのSEMが生じることが明らかになった。MDCは一症例のFRを継時的に測定し、その変化が統計学的に有意と認められる最小の値であり、原著の方法では3.7cm以上の変化がないと真の変化(改善・悪化)とは言えず、測定誤差範囲内であることが示唆された。<BR>
著者
瀧田 愼 大熊 浩也 森井 昌克
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J103-D, no.4, pp.291-300, 2020-04-01

キャッシュレス決済の手段としてQRコードの利用が進められている.QRコードは高い認識率を誇るものの,人は保存された情報をデコーダなしで知ることができない.悪意のあるものが偽装したQRコードを作成し,利用者の不用意な操作により悪性サイトに誘導することや不正送金させることが問題となっている.QRコードを利用した決済が広まりつつある中で,その安全性を十分に検証する必要がある.本研究では誤り訂正符号の性質を用いて,二つの情報を出力するQRコードを開発している.提案QRコードを悪用すると,通常は正常なサイトに誘導するが,稀に悪意のあるサイトに誘導する偽装QRコードを作成することができる.悪意のあるイベントの再現性が低いため,偽装QRコードの存在を検知することは困難である.本論文では,消失訂正を用いて二つの情報を出力するQRコードの構成方法を与える.提案手法により,正規のQRコードとの差異が小さい偽装QRコードを構成可能である.更に,偽装QRコードの具体的な対策について述べる.
著者
土屋 潤
出版者
日本建築仕上学会
雑誌
Finex (ISSN:09156224)
巻号頁・発行日
vol.15, no.91, pp.46-47, 2003
著者
古庄 知己 福嶋 義光 籏持 淳 松本 直通 三宅 紀子 涌井 敬子 森崎 裕子 渡邉 淳
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

エーラスダンロス症候群(Ehlers-Danlos症候群;EDS)は、皮膚・関節の過伸展性、各種組織の脆弱性を特徴とする先天性疾患の総称です。現在、6つの大病型およびその他の病型に分類されていますが、これらの分類には当てはまらない患者さんも少なくありません。本研究では、全国からEDSを含めた遺伝性結合組織疾患疑い患者さんを収集し、詳細な臨床的分析と次世代シーケンスを用いた網羅的遺伝子解析により、新たな病型を探索しました。結果、COL5A2遺伝子変異に基づき、乳児期より顕著な皮膚過伸展性・脆弱性、重篤な後側彎症を発症する重症古典型サブタイプなどを発見することに成功しました。
著者
白井 克憲
出版者
関西学院大学
雑誌
人文論究 (ISSN:02866773)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.p15-30, 1993-12
著者
千田 益生 堅山 佳美 兼田 大輔
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.53, no.12, pp.928-933, 2016-12-18 (Released:2017-02-14)
参考文献数
11
被引用文献数
1

肩関節の運動では,肩甲上腕関節,肩鎖関節,胸鎖関節,肩甲胸郭関節などの関節および肩峰下滑液包などが関与している.正常の可動域の獲得には肩甲上腕関節のみならず,肩甲胸郭関節,および脊柱の動きが重要である.肩甲上腕関節を動かす筋群としては,内在筋として肩腱板を形成する棘上筋,棘下筋,小円筋,肩甲下筋があり,外在筋としては三角筋,大胸筋,広背筋,大円筋などがある.肩関節のリハビリテーション(以下,リハ)の基本として,疼痛管理,肩甲上腕関節や肩甲胸郭関節の自動・他動運動の行い方,肩腱板の筋力エクササイズについて記載した.また,日常よく遭遇する肩関節疾患について,疾患の概要とリハについても記載した
著者
Tomohiro OKA Osamu WADA Tsuyoshi ASAI Hideto MARUNO Kiyonori MIZUNO
出版者
Japanese Society of Physical Therapy
雑誌
Physical Therapy Research (ISSN:21898448)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.143-148, 2020-12-20 (Released:2020-12-20)
参考文献数
31
被引用文献数
16

Background: We investigate the association with knee flexion range of motion (ROM) during the acute phases and that at 12 months after total knee arthroplasty (TKA). We also clarified the cut-off ROM during the acute phases in predicting the goal of knee flexion ROM at 12 months. Methods: In this retrospective study, 193 patients with knee osteoarthritis (female:144 patients, age:73.2 ± 7.7 years) who underwent unilateral TKA at an orthopedic clinic were recruited. They underwent assessments of knee flexion ROM at 5 days, 1 month, and 12 months after TKA. The goal of knee flexion ROM at 12 months after TKA was set at 120°. Single and logistic-regression analyses were performed with the dependent variables including the outcome of the goal of knee flexion ROM at 12 months, and the independent variables included knee flexion ROM at 5 days and 1 month, separately. We calculated the cut-off ROM at 5 days and 1 month for predicting the goal of knee flexion ROM at 12 months with receiver operating curve analysis. Results: Knee flexion ROM at 5 days and 1 month were significantly associated with the goal of that at 12 months (p < 0.01). The cut-off ROM were 85° at 5 days and 105° at 1 month separately. Conclusions: Our results suggest the importance of early improvement in knee flexion ROM after TKA, and that at 1 month postoperatively indicates the likelihood of achievement of the goal of knee flexion ROM at 12 months after TKA.
著者
赤瀬 浩
出版者
長崎市長崎学研究所
雑誌
長崎学 (ISSN:24328480)
巻号頁・発行日
no.3, pp.23-41, 2019-03-31