著者
長谷川 弘忠 山崎 文雄 松岡 昌志 関本 泉
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
地震工学研究発表会講演論文集
巻号頁・発行日
no.25, pp.1097-1100, 1999

兵庫県南部地震による建物の被害状況について, 地震後の空撮映像を利用した複数人による目視被害判読を行い, 判読者の違いが建物被害抽出結果に与える影響について検討を行った. 空撮映像はハイビジョンカメラにより上空から斜め下方を撮影したものを使用した. 結果の評価には, 建物1棟ごとの被災度調査データと, 被害地上写真を利用した. この結果, 被害の有無については, 個人差および判読時間の影響を受けず, 概ね同程度の抽出が可能であることが解った. ただし倒壊建物の抽出を行う場合には, 判読者の個人差の影響が顕著であり, 空撮映像上での倒壊判読基準の統一が必要であることが明らかとなった.
著者
村田 道雄 佐々木 誠 安元 健
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1994

マイトトキシンは、植物プランクトンである渦鞭毛藻が生産する分子量3422のポリエーテル化合物であり、天然物中最大の分子量と非常に強い毒性によって、現在最も注目されている海洋天然物である。われわれは、1993年にマイトトキシンの平面構造とエーテル環が連続している部分の立体化学を明らかにしたが、その他の鎖状部分に関しては未解明の部分が多い。本一般研究Bにおいて、エーテル環をつなぐ部分の立体配座(F-G環の間の2個の不斉炭素とM-N環の間の2個の不斉炭素)を主に有機合成化学的手法により決定することができさらに、C1-C14とC134-C142の側鎖部分に関して立体化学と回転配座を求めた。新たに開発したNMRのスピン結合定数(^<2,3> J_<C,H>と^3 J_<H,H>)と分子力場計算を併用した方法をこの部分に適用した結果、側鎖に存在するすべての不斉炭素を推定することができた。さらに、推定立体構造を有する合成フラグメントと天然物のNMRデータを比較することによって確認作業を進め、同時に、エナンチオ選択的なフラグメントCの合成を行ない、天然の分解物と比較することによって絶対構造を決定することができたので、ここにマイトトキシンの完全構造決定が完成した。
著者
穂積 啓一郎 北村 桂介 田中 喜秀
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.259-262, 1989
被引用文献数
2 2

酸素フラスコ燃焼法は,操作が簡便な特徴を有するが,塩素定量の場合,濾紙の汚染による誤差が問題であり,特に超微量領域で著しい.一方,カリウス湿式封管分解法は,加熱分解中爆発の危険があるうえ,分解後強酸が残留して定量操作に障害となりやすい.そこで,今回酸素を充たした小封管中で試料を完全分解し,この後塩化物イオンを電位差滴定する新しい超微量定量を試みた.1mg以下の試料を一端を閉じたガラス管に取り,管内を酸素で置換した後,開口端を針状に引き伸ばして封じた.これを580℃の電気炉で1時間加熱分解した後,吸収液を入れたビーカー中に針端部を押し付けて割り,浸入した吸収液に分解ガスを30分放置して吸収させて,封管内壁を洗浄し,0.001M硝酸銀-2-プロパノール標準液で電位差滴定を行った.本法を用いて諸種の標準物質の定量を行った結果,標準偏差として約0.2%が得られた.
著者
仲野 敦子 仲野 公一 沼田 勉 今野 昭義
出版者
Japan Audiological Society
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.191-195, 1999-06-30 (Released:2010-04-30)
参考文献数
19
被引用文献数
1

SLEによる自己免疫性内耳障害が, SLE発症初期に出現し, ステロイド治療に反応し聴力の改善を得られた症例を経験した。症例は初診時13歳の男子である。 数ヵ月間に徐々に進行した原因不明の両側性高音漸傾型の感音難聴があり, 当初突発性難聴に準じたステロイド治療が施行されたが聴力は改善せず, 約1ヵ月後, 他の症状が出現してSLEの診断が確定した。 SISIテスト, 自記オージオメトリでは, 内耳障害を示唆する所見であった。 SLE診断確定後, PSL 60mg/日の内服により聴力は改善したが, PSL 40mg/日に減量したところで聴力の再悪化があり, またその後も原疾患の病状と平行する様に聴力は変動した。 発症後, 三年余が経過したが, ステロイド治療の他, 免疫抑制剤, 血漿交換, および高気圧酸素療法を併用し, 原疾患のコントロール及び聴力の改善が得られている。
著者
梶田 叡一
出版者
奈良学園大学人間教育学部
雑誌
人間教育学研究 = Journal for Humanistic Education (ISSN:21889228)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.1-6, 2014-04-01

Abstract:For promoting the systematic studies of humanistic education, we should make clear themeaning of “Humanistic Education”. We have emphasized 2 important aspects in the conceptof “Humanistic Education”. The first is concerning the aims and objectives of education. In this context,“Humanistic Education” is “Education for Human Grouth”. The second is concerning the method andprocess of education. In this context, “Humanistic Education” is “Humanistic way of Education”. Somepractical tasks are presented..
著者
豊田 弘司
出版者
奈良教育大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
教育実践総合センター研究紀要 (ISSN:13476971)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.5-10, 2005-03-31

本研究の目的は、大学生における異性関係スキルが、異性の友人数と自己判断による異性からの好意度に及ぼす影響を検討することであった。611名の大学生に、異性関係スキルを調べる尺度の各項目について6段階で評定を求めた。因子分析の結果、男子学生では「会話スキル」及び「対人不安」、女子学生では「会話スキル」、「対人不安」及び「対人関係の自信」という因子が抽出された。重回帰分析による検討の結果、男子学生においては「会話スキル」と「対人不安」が異性からの好意度を21%、女子学生においては「会話スキル」、「対人不安」及び「対人関係の自信」が異性からの好意度の24%を予測することが示された。また、異性からの好意度の高群と低群の比較を行ったところ、両群間に差が認められる項目が明らかになり、異性からの主観的好意度の高い人と低い人に行動の違いのあることが明らかになった。
著者
土屋 隆司 八木 雄策 八賀 明
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.41, pp.1-2, 1990-09-04

車両基地内における車両の留置番線決定には、考慮すべき要素が多い。車両基地には専任の計画担当者(以下、専門家)をおいている。機内作業のシステム化には留置番線の自動決定が不可欠である。留置番線を自動決定するには、専門家の知識を獲得し、ルール化しなければならない。知識獲得の方法としてインタビューの手法があるが、効率的でないのが普通である。そこで、機械学習の方法を利用して知識獲得を行なうことにした。そのためには、定常的な作業はもとより異常時のケースも含め専門家が策定した計画の実績データを収集することが必要である。データ収集の手段として、ビデオゲーム風のシミュレータを考えた。専門家が実際にこのビデオゲームを使用し、番線決定を行うと、状況に応じた様々の事例を蓄積できる。その中に含まれる規則を抽出すれば、人間が無意識に利用している専門知識を獲得できるはずである。これまでに、事例獲得のためのビデオゲーム部分が完成したので、ここではシステム機能の概要を紹介し、現在検討中の機械学習についての考え方を述べる。
著者
伊藤 詩菜 松田 康子 加藤 弘通
出版者
北海道大学大学院教育学研究院附属子ども発達臨床研究センター
雑誌
子ども発達臨床研究 (ISSN:18821707)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.5-12, 2015-03-25

本研究では、援助要請行動生起における利益とコストの関係性を検証するため、中岡・兒玉(2011)の援助要請期待尺度の信頼性・妥当性の検討を行うとともに、援助要請不安尺度を元に援助要請行動生起における心理的コスト尺度を作成し、その信頼性・妥当性の検討を行った。そのため、大学生、大学院生208名を対象とし、既存の援助要請期待尺度(中岡・兒玉,2011)と、本研究で作成した心理的コスト尺度を合わせた計46項目を「カウンセリングに対する印象」として質問紙を用いて調査した。その結果、心理的コスト尺度は「スティグマへの懸念」因子、「カウンセラーの対応への懸念」因子、「強要への懸念」因子の3因子となり、中岡・兒玉(2011)と同様の結果となった。一方、援助要請期待尺度については、「内面の安定への期待」因子、「カウンセラーの対応への期待」因子、「知識習得への期待」因子の3因子となり、中岡・兒玉(2011)と異なる結果となった。また、Cronbachのα係数と2つの尺度の下位尺度との相関により、本研究で作成された心理的コスト尺度は十分な信頼性と妥当性が示された。援助要請期待尺度(中岡・兒玉,2011)についても再検討され、因子構造は中岡・兒玉(2011)とは異なる結果となったものの、より多くの項目数からなる、より信頼性・妥当性を有した尺度が作成されたと考えられる。
著者
曹 偉琴
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.39-54, 2009-02-28 (Released:2017-05-01)

本稿では,まず中国の明清時代と現代の胡同名の命名の特徴を分析し,次に,民国時代と文革期及び1990年代以降の改称の特徴を分析した.その結果,胡同名の命名は,どの時代も地物・人物・市場等の表示性の顕著な地名が優勢になり,「表示性重視型」命名法の特徴が現れていると指摘できる.そして,胡同名の改称は,(1)民国時代には,多くの俗称的な地名が表示性の乏しい嘉称・好字地名に改称されていること,(2)文革期には,坂や寺院等の表示性の高い地名が消失し,共産党の歴史や思想等を反映する地名に改称されていること,(3)1990年代以降も,異称化名称の多くが表意性の高い地名に改称されていること,が判明した.このことから,胡同名の改称には,「表意性重視型」命名法の特徴が現れていると指摘できる.また,胡同名の現況は,都市開発により,胡同とともに胡同名が消失するという問題があるが,政府も,改造された住居区や道路等に伝統的な地名を伝承して命名するなどの対策を講じ,市民も胡同名の保存・保護に取り組むようになっている.しかし,現状を見る限り,多くの胡同名が消える一方で,拝金主義的な「金」「銀」の文字の付く地名や流行を追う外来語の名称等が増え,北京住民の地域的,社会的,個人的アイデンティティを脅かしている.今後,北京の胡同名を保存し,住民のアイデンティティを守るための対策が急がれる.
著者
KENT Pauline
出版者
International Research Center for Japanese Studies
雑誌
Nichibunken Japan review : bulletin of the International Research Center for Japanese Studies (ISSN:09150986)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.107-125, 1995-01-01

Although Ruth Benedict's The Chrysanthemum and the Sword did not contain a bibliography when published, it has been possible to build one up from the notes she left on her research of the Japanese. A list of references used during her wartime research on the Japanese is provided here, along with a list of the people she worked with, in a team effort to fathom the wartime Japanese morale, at the Foreign Morale Analysis Division in the U. S. Office of War Information.
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.56, no.10, pp.890-891, 2020

ミニ特集:専門・認定薬剤師を知る<br>ミニ特集にあたって:今回,ミニ特集「専門・認定薬剤師を知る」を企画するに当たって,様々な意見を委員の先生方よりいただき,専門・認定薬剤師制度は薬剤師の専門性の質を確保する手段の1つに過ぎないことを改めて強く感じている.乱立する専門・認定制度に対する懐疑的な見方もあるが,認定を取得した各個人が考え行動することで,のちにその認定制度が評価されるのではないだろうか.本ミニ特集では,初めに日本薬剤師研修センター,日本病院薬剤師会,日本医療薬学会,認定薬剤師認証機構としての認定・専門薬剤師制度の考え方について,さらに保険薬局薬剤師・病院薬剤師のどちらも取得できるという観点と,近年のニーズを踏まえ,日本腎臓病薬物療法学会,日本緩和医療薬学会,日本臨床腫瘍薬学会,日本薬局学会が認定する認定・専門薬剤師ついて,そのねらいや認定条件,今後の展望などを寄稿していただいた.専門・認定薬剤師制度についての理解を深めるきっかけになれば幸いである.<br>表紙の説明:薬用植物と家紋シリーズは明智光秀の桔梗紋から始まっている.大河ドラマ「麒麟がくる」は8月末に放送再開となった.波乱万丈なドラマのクライマックスは本能寺の変だが,その戦いの彼方では,秀吉が毛利家と最後の戦いを演じていた.その毛利家は,沢鷹紋も家紋として用いていた.電子付録では,毛利家を取り巻く歴史物語とオモダカ属など水辺の植物を紹介する.写真のオモダカには薬効はなく,類縁のサジオモダカが漢方に用いられる.
著者
大島 忠平
出版者
公益社団法人 日本表面科学会
雑誌
表面科学 (ISSN:03885321)
巻号頁・発行日
vol.26, no.8, pp.441, 2005-08-10 (Released:2007-09-13)
参考文献数
1
著者
永井 久美子 佐藤 塁 纐纈 雄三
出版者
明治大学農学部
巻号頁・発行日
no.140, pp.9-23, 2004 (Released:2010-04-05)

本研究の目的は、滞在型の農業動物介在教育(FAAE)による体験が、都市生活を営む農学部学生の農業動物への認識や意見、そして気分や生理指標に及ぼす影響について検証することであった。このFAAEは、明治大学農学科の畜産実習・学生実験の一部として行われた。豚約50頭と他に肉牛と羊を持つ明治大学付属農場で実施されたFAAEの前後で2回、履修学生を被験者として調査をおこなった。FAAEは、大学寮での2泊3日で飼料給与、豚の体重測定や行動観察等を行った。さらに無作為に選ばれた学生については、血圧、体験の前・中・後で心電モニター図、脳波、気分を検査した。自己記入式質問紙法のPOMSで、6つの気分尺度、すなわち、活気、抑うつ?落ち込み、混乱、緊張?不安、怒り?敵意、疲労を測定した。有効被験者97人のうち、体験前後で農業動物が好きという回答が51.5%から62.5%に増加し、約75%が畜産に興味を持ったと回答した。彼等の農業動物と畜産への認識は体験で変化した。90%以上の学生がFAAEは農業と食育の重要性の理解、人格の形成に役立つと回答した。POMSでは体験前後と比較して、積極的な気分を表わす「活気」が体験中に上昇した。否定的な気分を表わす他の尺度は体験中に減少したが、体験後も変化はなかった。血圧と脳アルファ波占有割合は体験前後で変化しなかった。心電モニターからのR-R間隔は変化した。これらの結果から、FAAEは農業動物への認識、気分や生理にも影響があることが示唆された。