著者
Ling-Chien Hung Sheng-Feng Sung Cheng-Yang Hsieh Ya-Han Hu Huey-Juan Lin Yu-Wei Chen Yea-Huei Kao Yang Sue-Jane Lin
出版者
Japan Epidemiological Association
雑誌
Journal of Epidemiology (ISSN:09175040)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.24-29, 2017-01-05 (Released:2017-02-07)
参考文献数
36
被引用文献数
44

Background: Stroke severity is an important outcome predictor for intracerebral hemorrhage (ICH) but is typically unavailable in administrative claims data. We validated a claims-based stroke severity index (SSI) in patients with ICH in Taiwan.Methods: Consecutive ICH patients from hospital-based stroke registries were linked with a nationwide claims database. Stroke severity, assessed using the National Institutes of Health Stroke Scale (NIHSS), and functional outcomes, assessed using the modified Rankin Scale (mRS), were obtained from the registries. The SSI was calculated based on billing codes in each patient's claims. We assessed two types of criterion-related validity (concurrent validity and predictive validity) by correlating the SSI with the NIHSS and the mRS. Logistic regression models with or without stroke severity as a continuous covariate were fitted to predict mortality at 3, 6, and 12 months.Results: The concurrent validity of the SSI was established by its significant correlation with the admission NIHSS (r = 0.731; 95% confidence interval [CI], 0.705–0.755), and the predictive validity was verified by its significant correlations with the 3-month (r = 0.696; 95% CI, 0.665–0.724), 6-month (r = 0.685; 95% CI, 0.653–0.715) and 1-year (r = 0.664; 95% CI, 0.622–0.702) mRS. Mortality models with NIHSS had the highest area under the receiver operating characteristic curve, followed by models with SSI and models without any marker of stroke severity.Conclusions: The SSI appears to be a valid proxy for the NIHSS and an effective adjustment for stroke severity in studies of ICH outcome with administrative claims data.
著者
森 毅 出口 弘
出版者
一般社団法人 経営情報学会
雑誌
経営情報学会 全国研究発表大会要旨集 2019年秋季全国研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.152-154, 2019-12-25 (Released:2019-12-23)

多品種少量生産が主流になっている日本の製造業で、原価計算における正確な間接費の配賦は深刻な問題となっている。賃借対照表を作成する際に行う標準原価計算よりも正確な間接費の配賦を行うための原価計算手法としては、活動基準原価計算などが提案されているものの、計測コストなどの関係で普及には至っていない。今日IoTの普及によって計測コストの問題が解決される中で、IoT時代に適する新たな原価計算の手法とそれを用いた原価計画のフレームワークが求められている。そこで本研究では人の作業のブレからいかに原価のブレが発生するかをシミュレーションを用いて示し、IoT時代に考えられる新たな原価計算手法の提案とその精度の検証を行う。
著者
宝月 岱造
出版者
日本土壌微生物学会
雑誌
土と微生物 (ISSN:09122184)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.57-63, 2010-10-01 (Released:2017-05-31)
被引用文献数
1

森林では多くの樹木に外生菌根菌が共生しており,宿主樹木の養分吸収能力を高め成長を促進している。樹木によっては,外生菌根菌との共生は生存や成長に不可欠なものと言ってよい。しかし,樹木と外生菌根菌の共生は地下で起こっていることもあり,それが実際の森林でどのように構築・維持されているのか,またその機能がどう発揮されているのか,詳細はよく分かっていなかった。しかし,近年分子生物学やその他の分野の研究技術が飛躍的に進歩するのに歩調を合わせ,外生菌根共生が実際の森林の地下部でどのように始まり拡大し機能しているのかが,少しずつ明らかになってきた。森林林床下では,複数の菌根を繋ぐ外生菌根菌ネットワーク(EMネットワーク)が形成されている。様々な菌種のEMネットワークがパッチ状に割拠しており,しかもそれらは比較的不安定でダイナミックに変動することが,DNA解析を用いた研究によって明らかにされている。これらのEMネットワークは,宿主樹木の養分吸収を助けその成長を促進することを通して,様々な生態機能を発揮している。これまでに,EMネットワークの生態機能に関する仮説がいくつか提案されており,「EMネットワークは,その上に芽生えた実生の菌根共生を促進することにより,実生の定着や成長を助ける」という仮説「異なる樹木が,両者を繋ぐEMネットワークを通じて光合成産物を受け渡し,互いに助け合っている」という仮説が,現在注目を集めている。残されたEMネットワークに関する研究課題の一つは,EMネットワーク間の相互作用である。最後に,EMネットワーク問での菌糸融合により,物質移動の機能単位が拡大することを示す最新の実験結果を紹介する。
著者
米浜 健人
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.59, 2005

1.はじめに<BR>近年、地方都市における中心市街地の衰退が問題として取り上げられるようになって久しく、商業分野においても中心商業地の衰退という形で問題提起がされている。中心市街地活性化法におけるTMO認定団体においても、商工会議所主導型のTMOが高い割合を占めており(山川2004)商業者のこの問題への注目度の高さが伺えよう。一方で、これまでの中心商業地研究では、中心商業地の衰退について一律に捉える傾向があった。中心商業地内での空間的な違いについては、旧来の商店街と鉄道駅前において衰退傾向の相違が見られることを指摘した研究や、地方都市において大型店同士が駅前立地型と郊外立地型で競合することを指摘する研究があったが、一方でどのような来街層が現在でも中心商業地に残り、どのような層が抜け落ちているのかという点を含めた研究が必要とである。<BR> 当研究では群馬県高崎市をフィールドとして、中心商業地に立地する大型店の特定ターゲット向け改装ならびに中心商業地における個人商業者、路面店舗入居者の動向をまとめた上で、中心性の高い地方都市において、中心商業地が若年齢層向けの街として生き残りを図りうる可能性がある点を指摘する。<BR><BR>2.高崎市における大型店の動向<BR> 高崎市における大型店立地は、中心市街地立地から駅前立地へと移行してきた(戸所1986) また、大店法改正後の1995年ごろになると、郊外への大型店進出が目立つようになった。この流れの中で、駅前立地型大型店4店のうち1店が撤退、残りの店舗も業態転換や大規模改装を行なった。<BR> この中でも、GMSの高崎SATYはファッション主体の高崎ビブレへと改装を行い、若年層向けのファッションを扱う店舗へと性格を買えた。ここでは、若年層とくに10代向けのファッションをリードするとされる東京渋谷のSHIBUYA109などのファッション店より積極的に人気店舗を誘致することによって、高崎における10代とくに中高生のファッション情報の発信地としての生き残りを図った。群馬県では唯一の店舗という戦略を取ることによって、県内全域ならびに近隣県からの集客にターゲットを絞った。ビブレの成功に続く形で、駅ビルの高崎モントレーも同様に、改札口直結階を同様にSHIBUYA109からの店舗誘致する大規模改装を行なった。<BR>3.中心商業地に立地する中・小小売店の動向<BR> 近年になって若年層向けのファッション店の中心商業地進出が目立つようになった。ビブレの改装の成功による高崎駅前への商業核の創出が一つの理由となり、駅前ならびに中心商業地への若年層向けファッション店の立地が目立つようになった。これらの店舗は、ビブレからの回遊客を狙う店舗が主だが、ビブレの客層である10代向けの安い古着などを売る店舗と、ビブレを卒業した20代を主なターゲットとするセレクトショプなどの高額な商品を取り扱う店舗となっている。前者は、主に旧来の空き店舗などに比較的小さなスペースで入居し、後者は区画整理事業によって、これまで中心商業地の中では動線ではなかったビブレ裏側の通りに作られた商業ビル群への入居という分化が見られる。<BR><BR>4.まとめ<BR>高崎市においては、高崎ビブレの10代向け業態転換を機会として、中心商業地における若年齢層向け店舗が増加した。ビブレの改装とそれに伴う周辺店の増加は、東京と同じようなファッションを求めたいが、可処分所得などの理由によって東京への距離が遠い中高生をターゲットとして、高崎駅前に「群馬県における渋谷のミニチュア版」的な空間を作り出し、これまでの商圏よりもより広い地域を睨んだ中心商業地へと変貌したといえる。これらのファッション店舗は客のターゲット層を10代から20代前半の若者へと絞っていることから、公共交通機関を使って中心商業地へと集まる層が主にこの年代なのではないかと考えられる。このことは、高崎のように、ある県内でトップクラスの集客力を持つ可能性がある都市の駅前においては、公共交通機関を利用して来街する若年層をにターゲットを絞り、そのニーズに対応した形でのまちづくりに可能性があることを示唆するものである。一方で課題も見られ、駅前立地型大型店についてはこのような形での生き残りが十分に可能だと考えられるが、その周辺小売店については、粗利が決して高くない中高生向けの商店経営が果たして持続できるか否かという、課題も残っている。<BR><BR>参考文献<BR>山川充夫(2004)『大型店立地と商店街再構築』 八朔社<BR>戸所隆(1986)『商業近代化と都市』 古今書院
著者
Takayuki MAEDA Yoichi ONO
出版者
The Iron and Steel Institute of Japan
雑誌
Transactions of the Iron and Steel Institute of Japan (ISSN:00211583)
巻号頁・発行日
vol.25, no.12, pp.1191-1193, 1985 (Released:2006-09-08)
参考文献数
2
被引用文献数
17 18

The reduction behavior of constituent minerals of iron ore sinter has been investigated microscopically by using two kinds of commercial sinter having different basicity and FeO content. The results are summarized as follows:(1) There is a difference in reducibility between hematite and magnetite, and hematite is reduced faster than magnetite.(i) Both hematite and magnetite are reduced rapidly to wustite, but there is a difference in the rate of reduction from wustite to iron.(ii) The reduction of wustite reduced from hematite does not proceed topochemically but homogeneously. Although the reduction of the wustite is comparatively fast in the almost whole period of reduction, part of the wustite becomes surrounded by dense iron and left unreduced in the final stage of reduction.(iii) In the reduction of wustite reduced from magnetite, almost all grains of wustite are surrounded by dense iron from the early stage of reduction, which causes the retardation of reduction.(2) Calcium ferrite is reduced much faster than the wustites mentioned above, which is shown by the fact that many grains of wustite are left unreduced even after calcium ferrite is reduced completely.(i) The reduction of calcium ferrite proceeds topochemically.(ii) Iron produced by the reduction of calcium ferrite is very porous and not sintered, which does not cause the retardation of reduction.(3) In many cases, reduction begins with the surface of mineral grains facing a macro-pore, which serves as a passage of reducing gas to each mineral grain to be reduced.
著者
竹下 温子 松元 圭太郎 立石 百合恵 森中 房枝
雑誌
鹿児島純心女子大学看護栄養学部紀要 = Bulletin of Faculty of Nursing and Nutrition Kagoshima Immaculate Heart University
巻号頁・発行日
vol.15, pp.55-60, 2011-07

昨今,日本の教育の中で,食育が重要視され,小さいころからの食生活の育成に力を入れているが,その食育の一環として,地産地消と地場の活性をテーマに鹿児島県薩摩川内市の甑島で非常に豊漁である「きびなご」と,薩摩川内市の食材を使った特産品を作ろうと,鹿児島県薩摩川内市にある医療法人九十九会 関小児科医院の管理栄養士さんが立ち上がり,川内きびなご鮨という,鹿児島の郷土料理である酒寿司をアレンジした特産品を考案した。この「川内きびなご鮨」は「食&アグリ・マッチングフェア」コンテストに入賞し,高い評価を得た一品である。 我々はそのきびなご鮨の製造工程のひとつである,きびなごの昆布締めの保存日数(発酵過程)における味の変化について研究依頼を受け,食品の味を決める遊離アミノ酸の測定と発酵過程における微生物の変化について調べることを目的とし,16S rRNA遺伝子による菌の同定を行っている。本研究は,その目的の中の一つとして,きびなごにもともと存在していると考えられる海洋性の菌について,保存日数における菌変化の有無を菌数およびコロニー観察・グラム染色にて比較・検討した結果を報告する。 保存日数における菌の変化を調べるため,味付けをせず,食塩水に浸漬後,真空保存したきびなご(サンプル①),調味後真空し1週間冷蔵保存したもの(サンプル②),調味後真空し2日間冷蔵保存後,チルドにて60日間保存したもの(サンプル③),調味後真空し1晩冷蔵保存後,チルドにて90日間保存したもの(サンプル④)の4サンプルを提供して頂き,段階希釈後,一般海洋性細菌用培地であるZobell培地にて菌の培養を行った。 その結果,①は100CFU/mlの菌が増殖し,④は面白いことに希釈倍数の高い10-4のみに30万CFU/mlの菌が増殖した。何かの影響を受け,希釈倍率が高くなってから菌が増殖してくることもあるため,このプレートからも50株釣り菌した。④については海洋性の菌でない可能性もあり,発酵食品に非常に多く存在する乳酸菌の可能性も示唆されたため,GYP白亜寒天培地にて刺針による培養を行った。その結果,非常に弱いが,クリアゾーンを形成しており,酸を作り出す菌であることがわかった。②,③については,Zobell培地に菌を観察することができなかった。標準寒天培地による生菌数については,保存期間が長いものほど,菌が増殖していることがわかった。 真空後のチルド保存が90日の④は試食にて非常に美味しいと評判のあった昆布締めであり,生菌数や海洋性の菌数からみても一番菌が増殖していた。次に,60日間チルド保存の③についても生菌数は非常に多かったが,海洋性の菌は増殖されてこなかった。これらのことより,海洋性の菌以外のものが優勢的に増えてしまった③より,海洋性の菌も増殖することができる環境下であった④の方が旨味や風味が増していると考えられ,海洋性の菌が水産食品の発酵に重要な役割を与えている可能性が示唆された。Dietary education has been regarded as important, and lays emphasis on upbringing of child's eating habits in recent years in Japan. Under the theme of local production for local consumption and local promotion, a plan to make a special product, used Kibinago (Spratelloides gracilis) that was able to capture it abundantly on Koshiki-Island and other cooking ingredients in Satsuma-Sendai city, was carried out as a part of the dietary education."Sende Kibinago Sushi"arranged the "Sake Zushi"which was local cooking of Kagoshima, was developed by a registered dietitian in Satsuma-Sendai city as the special product, and won prizes in food contests and got high evaluation in Kagoshima. We are investigating that the effect of saving day of Kibinago, sandwiched between sheets of kelp that is one in process of manufacture of the Kibinago-sushi, on change of the taste. In this study, we investigated the change of the number of marine bacteria in four samples; vacuum-packed Kibinago without seasoning (sample①), vacuum-packed seasoning Kibinago after 1-week cold storage (sample②), vacuum-packed seasoning Kibinago after 2-day cold and 60-day chilled storages (sample③), vacuum-packed seasoning Kibinago after 1-night cold and 90-day chilled storages (sample④), with Zobell nutrient medium for general marine bacteria. The colonies of general marine bacteria cultured with the Zobell medium were observed in sample①and sample④(100 and 300,000 cfu/mL, respectively). No colony was observed in the Zobell medium of sample②and③. The colonies of sample④were observed only in the most diluted sample (dilution ratio:10-5). On the other hand, the viable cell number cultured with standard agar nutrient medium was increased with the extension of the save days. Fifty colonies in the Zobell medium of sample ④ were picked up and cultured in glucose-yeast extract-peptone (GYP) chalk agar medium. All colonies cultured in the GYP medium formed clear zone slightly. The result suggested that the marine bacteria in sample④have acid production capacity. The bacteria identification by 16s ribosomal RNA gene analysis has been not finished, therefore, it was attempted to speculate the bacterial strain based on a classification by colony's shape in reference to previous reports identified marine bacteria in "Syuto (dish of pickled skipjack tuna entrails)" by 16s ribosomal RNA gene analysis and classification by colony's shape. The bacteria in sample④were speculated to belong to the genus Staphylococcus. The Kibinago sandwiched between sheets of kelp of sample④obtained highest evaluation by the tasting. The bacteria in the genus Staphylococcus were reported to be concerned with formation of Umami and fragrance, therefore it was considered to be indispensable to marine fermented foods. Therefore, it was speculated that the marine bacteria in sample ④is concerned with formation of Kibinago-sushi's taste. However, further investigations are needed to identify the marine bacteria in sample④and to confirm the mechanism of the effect of the marine bacteria on the taste of Kibinago-sushi.
著者
吉岡 伸也
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

鳥の羽根の構造性発色の物理機構を調べるため、ドバトやクジャクなどの数種類の鳥を対象にして、羽根内部の微細構造の観察と光学特性の評価を行った。特にドバトの首の羽根においては、羽根の構成要素である羽枝や小羽枝の構造とその光学的な特徴を明らかにし、異なるサイズの構造が総合的に生み出す発色機構を解明した。また、反射スペクトルの形状と色覚とが対応することで、独特な視覚効果が得られていることが分った。
著者
松本,眞
雑誌
日本統計学会誌. シリーズJ
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, 2006-03

漸化式を用いて乱数のように「見える」数列を発生し,乱数として利用することを擬似乱数発生という.真乱数発生に比べて高速・低コストであるほか,初期シードと漸化式を記録すれば誰でも再現可能であるため追試を行いやすいなどのメリットがある.しかし,現在科学技術計算ライブラリなどで通常利用されている擬似乱数の多くに無視できない欠陥があり,擬似乱数ユーザを混乱させている.一方で,これらの欠陥を考慮して筆者と西村拓士が97年に開発し普及が進んでいるMersenne Twister法では,周期が2^<19937>-1で623次元空間に均等に分布しているなどの数学的な保障があり,大規模な統計的検定にも合格している上,実際に数兆個単位でシミュレーションに利用されている.本稿は,ユーザに届きにくい擬似乱数開発者側の情報,すなわち漸化式・既知の欠陥・評価方法などを解説することにより両者の距離を縮め,研究成果を共有し刺激しあうことを目的とする.
著者
川田 隆士
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.140, 2006

【はじめに】<BR> 介護予防マネジメントの中で生活機能向上に対する意欲の引出し、生活のイメージ化が求められている。今回当ユニットに入居した1事例を通じ、OTの関わりと実生活に則した施設環境の重要性を紹介する。<BR>【事例紹介】<BR>81歳女性、俳句の同人詩で活躍。H15年より胸椎検査のため二ヶ月程入院。H16年1月、胸椎化膿性脊椎炎圧迫骨折両下肢麻痺にて手術。歩行器にて歩行可能となり8月退院。9月自宅にて転倒し右脛骨骨幹部骨折にて再び入院。物忘れ、昼夜逆転、夜間せん妄憎悪し、当ユニット入居。転院時状況は全般的に廃用性筋力低下著しく、食事(食欲低下)、寝返り一部介助以外全介助レベルで尿便失禁認める。疎通比較的良好。リハに意欲を示すが、帰宅願望強く、長谷川等の検査や車椅子座位での簡易な家事、俳句に対し参加拒否。表情硬く、白髪。親族は面会熱心で、激励や句会参加を強調する場面見受ける。<BR>【リハ治療プログラム】<BR>訓練は病前の活動を意識させないものから導入 1.下肢ROM訓練2.下肢運動機能向上訓練3.バランス訓練4.起立、歩行訓練を毎日実施<BR>【フロア、親族との連携】<BR>2.4を午前午後に分け1回ずつ、週3日実施。チェック表記入。OT指示が出るまで激励、句会等の会話はせず、できた事を賞賛するよう助言<BR>【当ユニットの特徴】<BR>1.12対5の小ユニット為、事例の心身状況を把握し易く、伝達が早い2.居住空間が狭く、近位監視が可能。家具の配置が密集され、参照点が多く、実生活に則した歩行が早期から可能3.個浴、家具類持込みに加え、生活パターンが個人基盤である事から退所後のイメージ化を促進4.開設からOTが関わっており、スタッフのリハビリに対する連携意識が強い5.完全カルテ開示にて、随時親族との打ち合わせ可能<BR>【経過】<BR>チェック表定着。訓練の調整可能。10日後歩行器歩行中等介助にて60m可能。2ヶ月後、歩行器歩行監視100m可能。テーブル支持にて移動可能。車椅子除去。食事(全量摂取)、排泄、更衣、整容動作修正自立。髪を染め、句集を目にし始める。3ヶ月後監視シルバーカー100m、伝い歩行60m可能。長谷川検査にて非認知症判定。他者への配膳、食事介助をされる。フロア、親族への助言解除。4ヶ月で移動は修正自立レベル。俳句作成、家事実施。5ヵ月で退所。通所リハへ移行。現在、移動完全自立。APDL修正自立。排句会の行事参加等多忙な生活を送っている<BR>【考察】<BR>事例は長期不活動による廃用だけでなく、自宅復帰時の転倒骨折にて退所後のイメージ化ができにくく、抑うつをベースとした仮性認知症症状を来たしていたと考えられる。短期間で劇的に改善を認め、再復帰に至った背景には小規模単位による早期連携の定着化、実生活に則した環境因子による在宅イメージの容易化が考えられる。しかし、これらを短期間に事例の生活機能に反映していけた背景には事例の心身両面の改善に対し、早期よりOTがスタッフ、親族との連携に積極的に関われた事が挙げれれる