著者
伊東 卓爾 岩田 隆 緒方 邦安
出版者
園藝學會
雑誌
園芸學會雜誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.223-230, 1972
被引用文献数
3

前報で, むきエンドウおよびソラマメが, 外観的にも食味の点でも低温要求度が強く, 収穫当日から0&deg;C付近の低温下で貯蔵する必要のあることが判明した. 本実験は, 食味からみた品質変化の実態と品質低下に関する成分的要因について調査したものである.<br>エンドウおよびソラマメは収穫後, ただちに, 有孔ポリエチレン袋詰めとし貯蔵した. 温度処理区は, 1&deg;C, 6&deg;C, および20&deg;Cを基本とし, 冷蔵遅延区, 冷蔵解除区, 変温区などを設けた.<br>1. エンドウの食味について対比較嗜好試験を行なつたところ, 20&deg;Cでは1日で明らかな食味の低下がみられた. 6&deg;Cでも食味低下はかなり急速であつた. 冷蔵遅延区, 1&deg;C貯蔵から20&deg;Cへの昇温, 変温 (1&deg;C〓6&deg;C) などはいずれも食味の低下を早めた. ソラマメでもほぼ同様の傾向を示した.<br>2. エンドウおよびソラマメともに1&deg;C貯蔵では, 貯蔵前半において全糖含量の増加の傾向がみられた. これに対して20&deg;Cでは貯蔵後1日で1/4~1/2に激減し, 6&deg;C, 10&deg;Cでも数日のうちに急減した. 初期の低温を少し緩和した区 (6&deg;C2日&rarr;1&deg;C), 冷蔵を遅らせた区 (20&deg;C1日, 2日&rarr;1&deg;C) では一たん減少した糖が, 1&deg;Cに変温されると漸次回復した. 冷蔵を中断した区 (1&deg;C11日&rarr;20&deg;C, 25&deg;C) では昇温後1日で急激に減少した. 変温区 (1&deg;C〓6&deg;C) では初期は1&deg;Cと6&deg;Cの中間の値を示したが漸次6&deg;Cに近づいた.<br>3. 中性および酸性アミノ酸含量を測定したところ, エンドウおよびソラマメともに, アラニン&bull;グルタミン酸区分&bull;パリンなどが多く含まれていた. 20&deg;C区ではほとんどのアミノ酸に急激な減少がみられた. アラニンの例では, 20&deg;C2日でエンドウでは1/12, ソラマメでは1/5となつた. 1&deg;Cでは減少の速度はかなり抑制されたが, 6&deg;Cでは不十分であつた.<br>4. ソラマメ切片に, Sucrose-U-<sup>14</sup>C および Alanine-U-<sup>14</sup>C を吸収させ20&deg;Cに保つと, アルコール不溶残さに急速にとり込まれた. 前者はでん粉, 後者はたんぱく質に変わるものと思われる. この変化の速度は, 前述の全糖, アラニンの減少とほぼ一致した. アルコール可溶性区分にもある程度とり込みがみられた.<br>2. 20&deg;Cでは急速に硬化が起こり, 食味の低下を招いた. 1&deg;Cではかなり長期にわたつて硬化を押えることができる. カード&bull;メーターによる測定値は, エンドウでは食味とかなり平行した結果が得られたが, ソラマメでの相関性はよくなかつた.<br>6. エンドウおよびソラマメの急激な食味の低下は, 糖およびアミノ酸含量の減少ならびに硬化の三要因によるところが大きいと思われる. これを防ぐには, 収穫直後からできうる限りの低温処理が必要である.
著者
浅野 貴博
出版者
日本ソーシャルワーク学会
雑誌
ソーシャルワーク学会誌 (ISSN:18843654)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.1-14, 2017 (Released:2017-10-23)
参考文献数
39
被引用文献数
1

本研究は,ソーシャルワーカー(以下,SWer)が実践活動に伴う不確かさをどう捉え,どのように向き合っているかについて,SWerとしての学びとの関係に焦点を当て明らかにすることを目的とし,10年程度以上の実践経験を持つ26名のSWerに対してインタヴュー調査を実施した.分析の結果,協力者が学びの経験を語る中で述べた,現場で直面する様々な困難が「SWerであることの不確かさ」に関わっており,その不確かさは,1)専門職としての役割の不確かさ,2)価値に基づく実践活動であることからもたらされていることが分かった.さらに「SWerであることの不確かさ」への向き合い方が,1)確かさを求めて,2)不確かさの受入れ,3)確かさと不確かさの間でのバランスの三つのタイプに大別できることが分かった.SWer一人ひとりによって異なる不確かさの捉え方は,彼らの支援のやり方や学び,さらには「SWerとしてのあり方」にも反映され,それぞれが分かちがたく結び付いていた.
著者
平井 菜穂 角田 明良
出版者
日本ストーマ・排泄リハビリテーション学会
雑誌
日本ストーマ・排泄リハビリテーション学会誌 (ISSN:18820115)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.106-113, 2020 (Released:2020-12-01)
参考文献数
15

【目的】骨盤底筋協調運動障害を呈する便排出障害(骨盤底筋協協調運動障害)に対する肛門筋電計を使用したバイオフィードバック療法(Biofeedback Treatment,BFT)の介入効果を検証する。 【方法】対象は2016年7月~2019年5月に骨盤底筋協調運動障害と診断されBFTを行った患者。BFT施行回数は原則1ヵ月に1回計5回行った。治療効果の評価には、Constipation Scoring System(0-30)(CSS) スコア、Obstructed Defecation Syndrome (ODS) スコア、Patient Assessment ofConstipation Quality of Life(PAC-QOL)調査票を使用した。 【結果】対象者14例の年齢は73歳(58-85歳)で、男性が12例、女性2例であった。脱落例1例を除き13例で効果の検討を行った。CSSスコアはBFT前14(4-18)からBFT後8(3-15)と有意に改善し(p=0.007)、ODSスコアはBFT前16 (7-21)からBFT後7 (0-17)と有意に改善した(p=0.002)。PAC-QOLのOverallはBFT前1.9(1.0-3.6)からBFT後0.8(0.2-2.5)と有意に改善した(p=0.002)。 【結論】骨盤底筋協調運動障害患者を呈する便排出障害には、肛門筋電計を用いたバイオフィードバック療法が、便秘症状ならびに生活の質を有意に改善するため有用である。
著者
武田 雪夫
出版者
日本幼稚園協會
雑誌
幼兒の教育
巻号頁・発行日
vol.37, no.10, pp.29-35, 1937-10
著者
Ryoichi Miyazaki Keita Watanabe Masakazu Kaneko Sho Nagamine Nobuhiro Hara Tomofumi Nakamura Yasutoshi Nagata Toshihiro Nozato Takashi Ashikaga
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
Internal Medicine (ISSN:09182918)
巻号頁・発行日
pp.5502-20, (Released:2020-12-07)
参考文献数
11
被引用文献数
2

An 80-year-old woman with acute posterolateralmyocardial infarction, cardiogenic shock, and acute heart failure was admitted to our hospital. Transthoracic echocardiography (TTE) showed dysfunction of the left ventricular inferolateral wall motion and severe mitral valve regurgitation (MR). Emergency coronary angiography revealed triple-vessel stenosis. We performed transesophageal echocardiography in the catheter room to diagnose the cause of MR. Severe tenting of the mitral valve and no rupture of the papillary muscles were revealed. We considered ischemic MR likely to improve with revascularization and performed percutaneous coronary intervention. Subsequently, the patient's circulatory dynamics rapidly stabilized, and MR was significantly improved on follow-up TTE.
著者
臼井 智子 鶴岡 弘美 石川 和代 町野 友美 増田 佐和子
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.324-329, 2010 (Released:2012-12-28)
参考文献数
19

心因性難聴の診断をきっかけとして,思春期になって不注意優勢型の注意欠如・多動性障害(ADHD)が判明した同胞例を経験した。症例 1(16歳女性)は,14歳時に難聴と診断され補聴器を装用したが効果がなく,当科で心因性難聴と診断した。症例 2(14歳女性)は症例 1 の妹で,幼少時からの滲出性中耳炎改善後も変動する難聴があり,姉と同様補聴器装用効果がなく,当科で心因性難聴と診断した。詳細な問診から 2 例とも聴覚的認知の悪さと能力のアンバランスが判明し,小児神経科での精査の結果不注意優勢型 ADHD と診断された。ADHD に対する薬物療法と介入を行って難聴は改善した。本同胞例は内因子として ADHD を有し,様々な環境因子に適応しにくい状態から二次的に心因性難聴が出現したと推察された。 心因性難聴の診断にあたっては,環境などの外因子だけでなく発達障害などの内因子の存在を念頭におき,小児神経科医などの専門家と協力することが必要であると考えられた。
著者
朝原 秀昭 丸山 俊一郎 本村 暁 田村 潔 三好 甫
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.301-304, 1998-04-01
参考文献数
22
被引用文献数
1
著者
島袋 剛二 宮坂 尚幸 市川 麻以子 遠藤 誠一 坂本 雅恵 尾臺 珠美 吉田 卓功 塚田 貴史 塗師 由紀子 西田 慈子 高木 香織 中村 玲子 服部 早苗
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.815-818, 2016

子宮脱に対して平易で有効な術式として, 腹腔鏡下円靭帯小腰筋腱固定術を考案したので術式の要点と短期成績について報告する。 術式: 骨盤リンパ節廓清時の要領で後腹膜を切開し大腰筋を展開する。この際に大腰筋前面を走行する細い帯状の小腰筋腱を明らかにしておく。円靭帯にまず針糸を1針かけておき, それで小腰筋腱をすくい縫合固定する。対側も同様の操作を行なう。この操作で子宮の牽引が不十分であれば第1針結紮の頭側にさらに第2針を追加固定する。固定後は後腹膜を縫合閉鎖する。 症例: 39歳 (完全子宮脱), 63歳 (子宮下垂), 43歳 (不全子宮脱) の3症例に本術式を施行した。3症例とも容易に手術を完逐でき, 術後10~24か月のフォローアップ検診で子宮脱の再発を認めていない。術後早期に1例で鼠径部痛, もう1例で大腿内側違和感の訴えがあったが軽快した。 今後, 症例数を蓄積してこの術式の有効性と安全性について検討していきたい。
著者
森 章司
出版者
日本印度学仏教学会
雑誌
印度學佛教學研究 (ISSN:00194344)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.521-529, 2019-03-20 (Released:2019-09-20)

The Suttapiṭaka and the Vinayapiṭaka record the historical achievements of Śākyamuni. Nevertheless, “who” did “what” to “whom” “where” were written in detail, but “when” was not specified. Why so?Also, when this “when” is dated as ekaṃ samayaṃ (a certain time) in the Suttapiṭaka, the Vinayapiṭaka distinguishes it by expressing it as tena samayena (then). Why so?Śākyamuni had a consciousness that he became Buddha as result of following the ancient road that was travelled by the various Buddhas of the past, attaining enlightenment that the various Buddhas had attained, and of preaching the teachings that the various Buddhas of the past had preached. Based on this awareness were the suttas preached. Therefore, the contents of the Suttapiṭaka are universal, and it is not good to be caught in time.Meanwhile, Śākyamuni had the recognition that the dhamma was extinct because the Buddhas of the past did not preach the Pātimokkha. Under this awareness, he established the Vinayapiṭaka, legislative documents that he originally established for maintaining and developing his saṅgha. Time is an extremely important factor for the law, because the same act becomes a crime or not depending on when the law was enacted.The Suttapiṭaka and the Vinayapiṭaka are canonical records. The Buddha’s disciples edited the suttas in a form not limiting time using ‘ekaṃ samayaṃ,’ and edited the rules in a way that limits “time” using ‘tena samayena’. This is a poor measure of trying to solve two conflicting requests at the same time. Tena samayena does not mean “when”. Therefore, there were no biographies of Buddha in Buddhism.
著者
箕作 佳吉
出版者
東京動物學會
雑誌
動物学雑誌
巻号頁・発行日
vol.1, no.8, pp.271-276, 1889
著者
古井 秀法
出版者
人体科学会
雑誌
人体科学 (ISSN:09182489)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.1-10, 2020-07-15 (Released:2020-07-23)
参考文献数
30

近年、坐禅に興味のある人が増え、実際に坐禅指導を受けようとする人も増えているが、坐禅を行う際に適切な指導者を見つけることは比較的困難である。これでは、潜在的な坐禅体験希望者に対応できない状態である。本研究では、このような問題を解決するために、ICT (Information and Communication Technology) を活用することによって坐禅を遠隔指導することが可能であるかについて検討する。従来の対面による坐禅指導とビデオ通信システムを利用した遠隔指導を比較し、検証を行った。被験者の生体反応を記録し、心拍変動( HRV) と脳波( EEG) を指標として分析を行った。結果として、対面指導と遠隔指導に、有意な差はなく、坐禅を遠隔によって指導することが可能であることが確認できた。さらに、坐禅の熟達者における心拍変動と脳波における相互関係についても検討を行った。その結果、熟達者の坐禅に於いては、心身はリラックス状態であるが、脳は活動的になっていることが解析結果によって明らかとなった。