著者
住家 正芳
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.87, no.1, pp.1-25, 2013-06-30 (Released:2017-07-14)

ナショナリズムはなぜ宗教を必要とするのか。本稿は、その答えの一つを十九世紀後半から二十世紀初頭にかけて世界的に流行した社会進化論の論理に求めるものである。社会進化論の発想からは、社会および国家どうしの関係が社会有機体間の生存競争として捉えられた。その競争を生き残る「強い」国家をつくるためには、国民の強固な統合が不可欠とされ、それを実現し得るものとして宗教が要請された。社会や国家の統合のためには、何らかの価値体系の共有が必要とされ、それを実現することが宗教に求められたのである。本稿はまず、国家神道概念の淵源とされる加藤玄智の宗教論に以上の論理を見出すことができることを示したうえで、同様の論理が清末から民国初期にかけての中国できわめて大きな影響力を持った梁啓超の宗教理解にも見出されることを確認する。
著者
加倉井 真樹
出版者
自治医科大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1998

1 皮膚における神経ペプチドの局在について免疫組織化学的に検討した。アトピー性皮膚炎と乾癬患者の病変部皮膚と健常者について比較した。神経ペプチドはVasoactive intestinal peptide(VIP),サブスタンスP(SP),calcitonin gene related peptide(CGRP)について検討した。抗VIP抗体では、アトピー性皮膚炎および乾癬患者の病変部皮膚において表皮細胞間に蛍光が認められ、健常者との差が見られた。CGRP抗体では、アトピー性皮膚炎、乾癬患者の病変部皮膚の表皮内や、真皮乳頭層に神経線維様の蛍光が認められ、健常者との間に差が認められた。SP抗体では、健常人との差は認められなかった。2 有棘細胞癌株(DJM-1),ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF),ヒト皮膚角化細胞(NHEK)のtotal RNAを抽出し,RT-PCR法により,VIP,VIP receptor 1(VIP1R),VIP receptor 2(VIP2R)の発現をmRNAレベルで検討した。DJM-1において、VIP1R-およびVIP2R-mRNAは認められたが、VIP-mRNAは認められなかった。NHEKでは、VIP1R-mRNAのみ認められた。NHDFにおいては、いずれも認められなかった。3 培養表皮細胞におけるのVIP1Rの発現に対するサイトカインの作用をRT-PCR法により検討した。DJM-1を培養し、培養液中にIL-4,TNF-α,INF-γを添加した。サイトカイン添加培養1,3,6,12,24時間培養後,DJM-1中VIP1RのmRNAの発現を半定量し、比較したが、サイトカイン添加前後において有為な差は認められなかった。今回の検討では、VIPやCGRPがアトピー性皮膚炎や乾癬において何らかの役割を果たしている可能性が示唆されたが、マスト細胞やリンパ球など真皮に存在する細胞から放出されるサイトカインが、表皮細胞のVIP receptorの発現の制御に関わっているかどうかについては明らかにされなかった。
著者
石田 高志 関口 剛美 川真田 樹人
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.53-62, 2018-06-25 (Released:2018-06-29)
参考文献数
57

変形性関節症をはじめとする関節炎は,移動時に痛みが増強するため移動機能障害を招き,患者のQOLを著しく低下させることが問題となっている.関節炎の痛みの薬物療法として消炎鎮痛薬が用いられるが,長期投与による腎臓や消化管への副作用から,関節炎による痛みのメカニズムに基づいた,有効かつ安全な新たな治療法の開発が求められている.関節炎では,滑膜線維芽細胞や軟骨細胞からのIL-1やTNF-αをはじめとする各種炎症性サイトカインの放出が起こり,軟骨の変性や骨増生が起こる.炎症は関節内のみにとどまらず,関節周囲組織にも広範囲に波及する.慢性的な炎症に末梢神経や中枢神経における可塑的変化が生じ神経障害性疼痛の側面も持つようになり,痛みのメカニズムは複合的となる.さらに関節炎患者では,関節内の炎症や骨破壊だけでなく,骨髄内病変の出現により痛みが増強することが知られている.したがって関節炎では,関節・骨・骨髄の病変が相互に作用し,複合的なメカニズムにより痛みが増強する.本稿ではまず関節炎に伴う複合的な痛みのメカニズムを概説する.次いで,痛みのメカニズムに基づいた新たな鎮痛薬・鎮痛法について解説する.
著者
道木 恭子 古谷 健一 牛山 武久 永松 秀樹 堀 達之
出版者
国際医療福祉大学
雑誌
国際医療福祉大学紀要 (ISSN:13424661)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.1-6, 2005

女性脊髄障害者81名を対象として産婦人科的問題に関する後方視的調査を実施した。結果、一般では減少傾向にある「膣感染症」が61名(75%)と最も多く、脊髄障害者において膣感染症が多いことから、膣洗浄による治療効果について検討した。洗浄は10%ポピドンヨード50倍希釈液を用い、2週間に1度の間隔で実施した。その結果5例中4例において、膣分泌物中の細菌の減少傾向が認められ、外陰部の発赤、びらん、悪臭などの自覚症状も軽減した。本研究から、膣感染症に対する洗浄の有効性および女性脊髄障害者の健康問題に関する医療者の理解と当事者に対する知識の普及の必要性が示唆された。
著者
石原 尚志 柳瀬 義男 五十嵐 英夫
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.619-623, 1987
被引用文献数
1

生理中にタンポンを使用していた16歳女性が, 高熱, 咽頭痛を訴え, さらに典型的なToxic shocksyndromeの症状を呈した. 迅速な治療により患者は徐々に改善し, 第12病日までには急性期の症状は消失した. 体幹の枇糖様落屑と四肢末端部の膜様落屑が回復期に認められた.使用したタンポンと膣分泌物より黄色ブドウ球菌が分離された. この分離株はtoxic shock syndrome toxin-one産生性で, コアグラーゼVII型であった. 本症例は生理中のタンポンと膣分泌物から毒素産生性黄色ブドウ球菌が証明された本邦第1例と思われた.
著者
高 興和 古屋 正貴
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会(日本)講演会要旨 平成28年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
巻号頁・発行日
pp.11, 2016 (Released:2016-08-31)

タンザナイトの色の評価については、タンザ ナイトファウンデーションが提唱する"Tanzanite Quality Scale"などが知られている。青系、紫 系と分けているところにタンザナイトならではの 特徴があるが、他の色石同様色の強さ(彩度)が高いものが良いとされている。 この研究ではタンザナイトの色の評価となる 青、紫の強さがどのような要因で決定されるか考察し、色に影響をするものとしては、1)色の 原因であるVの含有量、2)加熱の有無、3)結 晶の方向(オリエンテーション)が考えられた。 実験の結果、非加熱のものでは V の含有量 と色の間に相関関係は見られず、加熱のものでは図1のように V の含有量と色の強さに相 関関係が見られた。また、結晶の方向は色の 強さには関係せず、青か紫かを決定するよう に考えられた。この結果は加熱によって含有 される V による色が十分に発現したことによる と考えられる。また、逆にその V が含有量から 推測されるほどに発現していないことは、非加熱であることを示唆するとも考えられた。 また、市場で"ファンシーカラー・タンザナイト"とも呼ばれるピンクやオレンジ、また緑色のも のについてもその色の原因を調べた。 ピンクやオレンジのものからは青、紫系のもの には見られない高い Mn の含有が確認された。 また同時に V の含有も確認され、加熱によってはより紫になったものも確認された。また、緑のものからは比較的高い濃度の Cr が検出 された。またサンプルの多くは加熱されており、 V の含有量が少ないこともあって加熱後も緑 色のままだった。 このように青、紫系のタンザナイトは加熱の有 無と V の含有量によって、ピンク系のゾイサイ トは Mn、緑系のゾイサイトは Cr による着色であり、それらが複雑に影響し合い、色が発現していることが確認された。 また、今年5月にブロック D の鉱山を視察し た。ブロック D では 100 人規模の大規模な採 掘が行われていたが、機械化はされておらず、 手作業による採掘によってすでに坑道が長さ 800m、深さ 450m に達するまで採掘が進められている。前年に報告を行った、ブロック B で はその半分程であったことから、ブロック D の 採掘の活発さが分かる。 ブロック D から産出するタンザナイトはブロック Bのものに比べ色が強く、また透明度の高いものも多く、その高い品質から上記のような活発 な採掘が行われているものと考えられる。

1 0 0 0 OA ほまれ

著者
教育研鑽会 編
出版者
学海指針社
巻号頁・発行日
vol.月の巻, 1912
著者
プルターク 著
出版者
国民文庫刊行会
巻号頁・発行日
vol.第1巻, 1915
著者
塚本 明 Tsukamoto Akira
出版者
三重大学人文学部文化学科
雑誌
人文論叢 : 三重大学人文学部文化学科研究紀要 (ISSN:02897253)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.15-34, 2010-03-28

「神仏分離」の歴史的前提として、近世の伊勢神宮門前町、宇治・山田における神と仏との関係を分析した。仏教を厳しく排除する原則を取る伊勢神宮であるが、その禁忌規定において僧侶自体を嫌忌する条文は少ない。近世前期には山伏ら寺院に属する者が御師として伊勢神宮の神札を諸国に配賦したり、神官が落髪する事例があった。神宮が「寺院御師」を非難したのは山伏らの活動が御師と競合するためで、仏教思想故のことではない。だが、寺院御師も神官の出家も、幕府や朝廷によって禁止された。宇治・山田の地では、寺檀制度に基づき多くの寺院が存在し、神宮領特有の葬送制度「速懸」の執行など、触穢体系の維持に不可欠な役割を果たしていた。近世の伊勢神宮領における仏教禁忌は、その理念や実態ではなく、外観が仏教的であることが問題視された。僧侶であっても「附髪」を着けて一時的に僧形を避ければ参宮も容認され、公卿勅使参向時に石塔や寺院を隠すことが行われたのはそのためである。諸国からの旅人も、西国巡礼に赴く者たちは、伊勢参宮後に装束を替えて精進を行い、一時的に仏教信仰の装いを取った。神と仏が区別されつつ併存していた江戸時代のあり方は、明治維新後の「神仏分離」では明確に否定された。神仏分離政策は、江戸時代の本来の神社勢力から出たものではなかった。
著者
池田 信
出版者
日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科学会雑誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.15, no.12, 1963-10

人に於て精子免疫に基ずく不妊が存在するか否かを検討するために, 先ず成熟モルモットを用い4群〔1群, モルモット睾丸乳剤+Freund's Adjuvant(F. Adj.)注射群. II群, モルモット肝乳剤+F, Adj, 注射群. III群, F. Adj. のみ注射群. IV群, 無処置群〕の実験を試みた. 法射後約3週後に, i) 抗原としてモルモット精子乳剤(蛋白含量0.6g/dlの0.5ml)を注加して, 剔出子常によるSchultz-Dale試験, ii) モルモット精子乳剤(蛋白含量0.6g/dlのものを原液抗原)を抗原として血清による沈降反応, iii)血清や頚管, 腟分泌液のモルモット精子に対する精子不動化作用等を検べた. I群はSchultz-Dale試験で14例中12例(85.7%)陽性, 沈降反応では6例中4例陽性であった. 精子不動化作用はI群では対照に比し顕著な不動化作用がみられた. 更にI群及び馬, 牛, 豚等の血清附加 F. Adj. で感作した成熟雌の子宮を腟と共に剔出し, 当該抗原を子宮腟部, 子宮内にのみ注入するに子宮収縮はみられなかったが, 子宮漿膜面に接触させると, 顕著な収縮がみられた. 又I群のSchultz-Dale試験で精子乳剤抗原の微量を用いると反応は陰性であり, 陽性となるためにはある一定量以上の抗原の量が必要であった. I, II, III, IV群を成熟雄と同棲せしめ最長6ヵ月にわたり観察した所, I群では10例中2例, II群では10例中6例, III群では6例中4例, IV群では6例中5例妊娠し, 明らかに有意差を示した. かくの如くモルモットでは免疫を強化することにより, 人工不妊を起し得るが, これは精液が子宮腟部, 子宮内壁に接触して攣縮が起り不妊を起すと考えるよりも, 寧ろ子宮内, 頚管, 腟等の分泌液中の抗精子抗体のため精子の不動化が起り, 不妊が起きると考える方が妥当であろう. 次に人の精子免疫に基ずく不妊が存在するならば上述の成績から, 血清, 頚管粘液の精子に対する作用を重視すべきであるから, 原因不明不妊, 経産, 十代の未婚の婦人の血清をとり, 人精子に対する作用を比較検討したが, 不妊症21人と対照の各々20人との間に差を認め得なかった. 又不妊症と経産婦人の排卵期の頚管粘液を採り人精子に対する作用を検べたが有意差はなかった. 更に健康人の精液をとり, 生理食塩水を加え, ガーゼで濾過し, 遠沈, 沈渣で浮游液を作り, 凍結融解し, 蛋白含量12γ/mlに稀釈し不妊症, 経産, 十代の未婚婦人の皮内に0.05ml宛注射し, 15~20分後に反応を検べたが有意差はなかった. 故にモルモットでは免疫を強化することにより人工不妊を起し得たが, 人では自然性交時には性器より吸収される精子量が微量なため, 精子に対する抗体の産土量が少いためか体液中には不妊を起す抗精子抗体は証明されない. 従って体液内抗精子抗体による不妊症の存在は, 人に於ては考えられない.
著者
村上 太一
出版者
日経BP社
雑誌
日経マネー (ISSN:09119361)
巻号頁・発行日
no.353, pp.104-106, 2012-04

25歳になりたての2011年12月、東証マザーズにリブセンスが上場し、最年少上場社長となった村上太一さん。 早稲田大学1年生で起業。主力事業であるアルバイト求人サイト「ジョブセンス」は企業から広告掲載料を取らず、採用された求職者には祝い金を出すという超ユニークなビジネスモデルで、業界のガリバー、リクルートをも追随させた。
著者
高橋 憲一
出版者
九州大学大学院比較社会文化学府
雑誌
比較社会文化 (ISSN:13411659)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.23-32, 2008

Today scientists, in their research, are not or less concerned with religious belief. But today's common senseis not simply true for those who were engaged in scientific research at the early phase of the Scientific Revolution. Especially as for the motives of their study of the universe, we can detect religious motives and their reflections in their theoretical contents. In this essay the author takes up representative cases -- Copernicus, Bruno, Kepler and Galileo -- and tries to investigate relationships between their theoretical setups and the creation doctrine of the Bible. For all of them it was, so to speak, the major premise that the universe was a work of God the creator. Consequently the scientific personality of each scientist may be clarified by looking at where to find God's hands of creation in this universe, or in other wordsm, at what aspect of God's attributions was to be emphasized: for instance, His beauty, infinity, trinity, or His mathematical intellect.

1 0 0 0 OA ペスト病実習

著者
坪井次郎 著
出版者
村上書店
巻号頁・発行日
1900