著者
瀬川 昌久 川口 幸大
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

宗族という古典的研究テーマの有効性について再考すべく、本研究課題では20世紀初頭以来宗族が直面した社会変化と、その間の研究者たちの視座の変遷という、2つのレベルの変化に焦点を当てた。そして、宗族の現状に関する客観的検討を通じ、今日の文化人類学者の多くが親族関係を極めて私的で局所的社会現象とみなす傾向があるのに反し、依然として現代中国社会の中でそれは重要な役割を果たしていると結論づけた。宗族こそは、親族関係が社会の公的な領域においてなおも効力と価値をもち得ることについての再考へとわれわれを導く重要な鍵なのである。なお、本研究課題の最終成果としての論文集が、2015年度中に刊行される予定である。
著者
木戸 彩恵
出版者
日本質的心理学会
雑誌
質的心理学研究 (ISSN:24357065)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.79-96, 2011 (Released:2020-07-08)

本論文の目的は,女性の化粧行為の形成と文化移行による変容について,その過程とダイナミズムを捉えることである。調査では,定常的に化粧行為をする/しない選択をおこなった日本と米国の大学に通う女性 9 名の調査協力者に対して,半構造化インタビューを実施した。インタビューによって得られた調査協力者の化粧行為にまつわる語りに対し,文化心理学の記述モデルである複線径路・等至性モデル(Trajectory and Equifinality Model:TEM)を用いて,時系列に沿ったモデルを作成した。さらに,個人の選択を方向づける社会・文化的影響についての分析をおこなった。結果として,①女性の化粧を促進する社会・文化的影響が強い日本では,化粧行為形成に至るまでに,「受身的化粧」「自発的化粧」という 2 つの種類の経験をすること。②文化的越境を通じて異文化に身をおくことは自文化で培われた行為を相対化して見なおし,新たな習慣の形成と変容のための契機となり得ることが明らかになった。
著者
一杉 正仁 山内 忍 長谷川 桃子 高相 真鈴 深山 源太 小関 剛
出版者
一般社団法人 日本交通科学学会
雑誌
日本交通科学学会誌 (ISSN:21883874)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.50-57, 2016 (Released:2018-03-01)
参考文献数
11
被引用文献数
1

職業運転者における健康起因事故予防のために行うべき指導および啓発内容を具体的に明らかにするために、栃木県タクシー協会に所属する全タクシー運転者2,156人を対象に、無記名自記式のアンケート調査を実施した。844人から調査用紙が返送され(回収率は39.1%)、平均年齢は60.7歳であった。所属事業所の保有車両台数は30台未満(中小規模)が60.4%、30台以上が39.6%(大規模)であった。乗務前に体調が悪くても運転したことがある人は有効回答の28.5%であり、この割合は大規模事業所の運転者で有意に高かった。運転した理由として、運転に支障がないと判断したこと(59.0%)、収入が下がること(57.9%)が多かった。運転中に体調が悪くなったことがある人は有効回答の32.6%であり、その時、会社に申告して運転をやめた人が55.3%、しばらく休んでから運転を続けた人が26.5%、そのまま運転を続けた人が14.6%を占めた。体調が悪い時は運転を控えるよう指導された人は有効回答の76.0%、体調が悪い時に言い出しやすい職場環境であると回答した人は83.9%であり、いずれも事業所の規模による差は認められなかった。また、自身の健康と運転について、会社でしっかり管理してほしいと回答した人が34.0%を占め、27.2%の人がより頻回の健康診断受診を希望していた。健康起因事故の背景と予防の重要性が会社の規模によらずタクシー業界に十分浸透していないこと、厳しい労働環境がタクシー事業所全体に共通しているため、健康起因事故の予防を推進する経済的余裕がないことが分かった。健康起因事故を予防できるように、運転者自身が体調不良によるリスクを認識し、健康管理に対する意識の持ち方・知識を高めていくこと、これを事業所がサポートするシステムを構築することが重要である。
著者
呉 志良 Wu Zhiliang
雑誌
日本工業大学研究報告 = Report of researches, Nippon Institute of Technology (ISSN:21895449)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.83-99, 2017-02

The humanistic spirit of the Confucianism is a rich resource. The loyalty and filial piety is the important meaning and catagory of the Confuciansist theory and the most comprehansive thinking to the Chinese anciant people. The article analyses the loyalty and filial piety and the Bushido which is valued highly by the Japanese and the filial piety and other Confucian concept and phenomenon, and views the difference of the culture and nationality of the two countries from the historical and social aspects.
著者
織田 隆三
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.135-141, 1993-09-01 (Released:2011-05-30)
参考文献数
2
被引用文献数
1

モグサの製造に用いる石臼について調査し, 実態の概要を知ることが出来た。すべての工場は「ひき臼」を用いている。この臼の大きさは直径約70cm, 厚さは上臼下臼とも各20cm前後である。臼の面は6分画とし各分画に6~7本の溝を刻んでいるものが多い。回転は1分間30~50回である。下級モグサの製造には1回, 高級品では2回又は3回反覆して石臼にかて粉砕後次の工程 (筋過) に移る。モグサ用石臼の原石は新潟県糸魚川市の早川から産出する角閃石安山岩又は紫蘇輝石角閃石安山岩である。なお文献にもない特殊な形態の石臼を使っている工場があったので併せて報告する。
著者
近藤 洋輝
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会誌 (ISSN:09151389)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.59-74, 2010-01-05 (Released:2010-01-27)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は,第4次評価報告書(AR4)を2007年2月に公表した.進展した観測事実などから,「気候システムの温暖化には疑う余地がない.」と温暖化が現実化していることを初めて明記し,その原因特定に関しても,「20世紀半ば以降に観測された世界平均気温の上昇のほとんどは,人為起源の温室効果ガスの増加によってもたらされた可能性が非常に高い」と確実性を高めた.将来予測に関しては,モデルや実験も質・量とも進展し,最良の見積もりや可能性の高い範囲(予測幅)も出している.また,炭素循環のフィードバックにより温暖化は従来の予測より更に進むことを定量的に示し始めた.上記のほか,自然災害に関連する「猛暑,熱波,大雨などの極端現象は,今後ますます頻度が増加する可能性が非常に高い.」と近年の状況がさらに激化することを示している.また,「将来の熱帯低気圧(台風,ハリケーン)の強度は増大し,最大風速や降水強度は増加する可能性が高い」 ことが指摘されている.温暖化への適応策のためには,地域的により詳細な予測情報などが求められている.
著者
向井 貴彦 Padhi Abinash 臼杵 崇広 山本 大輔 加納 光樹 萩原 富司 榎本 昌宏 松崎 慎一郎
出版者
一般社団法人 日本魚類学会
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.81-87, 2016-11-05 (Released:2018-06-01)
参考文献数
20

The North American channel catfish Ictalurus punctatus, an invasive freshwater fish introduced to Japan for aquaculture in the 1970s, has become established in several rivers and lakes, with subsequent detrimental effects on local fisheries and other freshwater fauna. The origin and invasive distribution of channel catfish in Japan was assessed from the geographical distribution of mtDNA haplotypes of channel catfish populations, utilizing partial (412 bp) nucleotide sequences of the mtDNA control region from 174 individuals collected from 7 localities. A total of 12 haplotypes (J01–J12) were found in Japanese freshwater systems. Populations in eastern Japan (Fukushima and Ibaraki Prefectures) and a fishing pond in Aichi Prefecture were characterized by many haplotypes, shared among those localities. However, the haplotype compositions of populations in western Japan (Yahagi River, Aichi Prefecture and Lake Biwa water system, Shiga Prefecture) differed from the former and also from each other. A phylogenetic analysis using Japanese (nonindigenous), Chinese (non-indigenous) and United States (indigenous) haplotypes indicated that all of the Asian haplotypes were included in "Lineage VI," distributed over a wide area of the United States, confirming that lineage as the primary source of introduced Asian populations. However, the introduction of channel catfish into Japan occurred on at least three occasions (in eastern Japan, Yahagi River and Lake Biwa water system).
著者
鈴木 宏尚 SUZUKI Hironao
出版者
名古屋大学大学院法学研究科
雑誌
名古屋大學法政論集 (ISSN:04395905)
巻号頁・発行日
vol.260, pp.253-275, 2015-02-25

本論文は、平成23-26年度科学研究費補助金基盤研究(A)(課題番号23243026)「日米特殊関係による東アジア地域再編の政治経済史研究」の助成を受けた研究成果の一部である。
著者
鈴木 宏尚
出版者
名古屋大学大学院法学研究科
雑誌
名古屋大学法政論集 (ISSN:04395905)
巻号頁・発行日
no.260, pp.253-275, 2015-02

本論文は、平成23-26年度科学研究費補助金基盤研究(A)(課題番号23243026)「日米特殊関係による東アジア地域再編の政治経済史研究」の助成を受けた研究成果の一部である。
著者
石井 盛次
出版者
高知大学
雑誌
高知大学研究報告 自然科学 (ISSN:04506197)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.103-123, 1952-03