著者
竹澤 公美子
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.320-325, 2013

  筆者は 2 歳時に原因不明の両側高度感音難聴になり,幼少期から補聴器と読唇,口話,筆談を主なコミュニケーション手段として活用してきた。それらの方法は遊びの中から習得し,また読書の習慣により語彙が増えた。幼稚園から高校まで普通校に通い,2001年に医学部に入学した。大学 2 年の後期から講義の内容を理解することが困難になったため,2003年に右人工内耳埋込術を受けた。まず音が入るようになり,次に言葉が,そして会話が理解できるようになった。それには長期間を要し,今でも十分な聞こえであるとは言えない。しかし,聞こえそのものの獲得はもちろん,コミュニケーションの方法が広がり,会話を楽しむことができるようになったこと,そして何よりも社会の中の自分という視点を得ることができるようになった。幼少期に失聴し,長い失聴期間を経て人工内耳を装用した耳鼻咽喉科医として,経験を報告する。
著者
今泉 光雅 松井 隆道 大槻 好史 菊地 大介 佐久間 潤 室野 重之
出版者
一般社団法人 日本耳科学会
雑誌
Otology Japan (ISSN:09172025)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.245-251, 2019

<p>聴性脳幹インプラント(auditory brainstem implant: ABI)は,蝸牛神経に障害を受けた際に,中枢側である脳幹の蝸牛神経核に電気刺激を加え,聴覚を獲得させることを目的とする人工聴覚器である.今回我々は,両側の聴神経腫瘍術後,高度難聴に至りABI埋め込み術を施行した症例を経験し,術後1年間の経過観察する機会を得たので報告する.症例は44歳,女性.両側の聴神経腫瘍術後,高度難聴に至ったためABI手術を脳神経外科と共同で行った.ABI術後1年を経過し語音明瞭度検査は,術前が単語0%,文章0%,読唇併用の際は単語32%,文章46%であったものが,単語4%,文章0%,読唇併用の際は,単語68%,文章43%と改善を認めた.ABI単独での会話は困難な状態であるものの環境音の聴取は可能となった.両側聴神経腫瘍術後症例に対するABI埋め込み術は,聴覚獲得の一手段になり得ると考えられた.</p>
著者
鏡味 徳房
出版者
第二地方銀行協会
雑誌
リージョナルバンキング (ISSN:13435302)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.4-9, 2005-06
著者
中井 由佳 徳山 絵生 吉田 都 内田 享弘
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.24, no.6, pp.1175-1182, 2009 (Released:2009-12-21)
参考文献数
19
被引用文献数
2

本特集では、種々の配合変化の中から、FDAからALERTが出されている、注射用セフトリアキソンナトリウム製剤とカルシウム含有製剤との配合変化に着目して、(1)カルシウム濃度、(2)温度、および(3)振とうの度合いが与える影響について、肉眼的・実体顕微鏡下の観察および光遮蔽型自動微粒子測定装置を用いた不溶性微粒子数 (以下、微粒子数と略す) 測定により評価した成果について述べた。10mg/mLの注射用セフトリアキソン生理食塩溶液10mLに最終のカルシウムイオン濃度が0.5、1、1.5、2、2.5mmol/Lとなるよう2%塩化カルシウム注射液を加え、薬剤が均一になる程度に緩やかに振り混ぜた後、20℃、25℃、30℃の温度条件下に保存した。混合溶液中の微粒子数を光遮蔽型自動微粒子測定装置により計測したところ、微粒子数はカルシウムイオン濃度と経過時間に比例して増加する傾向を認めた。混合直後では、すべてのサンプル中の微粒子数は日本薬局方 (以下、局方と略す) の許容範囲内であったが、混合1時間後では、すべての温度で、カルシウムイオン濃度2mmol/L以上で局方の許容微粒子数を超えた。配合変化に及ぼす温度の影響については温度が高いほど大きい粒子径の不溶性微粒子を実体顕微鏡下確認できた。逆に温度が高いほど微粒子数は少なかった。また、この事実は、沈殿物重量の測定結果と矛盾しなかった。また、振とうを与えることで微粒子数は有意に増加した。体内濃度を想定した1,000μg/mLの注射用セフトリアキソン生理食塩溶液10mLに最終のカルシウムイオン濃度が1.25mmol/Lとなるよう2%塩化カルシウム注射液を加えた溶液中の微粒子数の検討では、微粒子は有意に増加した。上記結果より、カルシウム濃度だけでなく、保存温度や振とうもセフトリアキソンとカルシウムの沈殿に影響を及ぼした。
著者
金井 豊 三田 直樹 竹内 理恵 吉田 信一郎 朽津 信明
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1-2, pp.1-15, 2006-04-21 (Released:2015-12-11)
参考文献数
34
被引用文献数
1 1

洞窟内の沈殿物や河床に生成する沈殿物に棲息する微生物などを日本各地から採取し,その中の微生物のマンガン酸化活性を調べた.更にマンガン酸化能を持つ微生物の分離を行い,その分離株について分類や16S rDNA による同定を試みた.また,予察的にボーリングコア中のマンガン酸化細菌の調査を行った. その結果,洞窟や河床からの沈殿物からはグラム陽性桿菌の Bacillus や Curtobacterium,グラム陰性桿菌の Burkholderia 等が分離された.ボーリングコアでは 20 m以深においても微生物の存在が確認され,堆積性の地下環境でも微生物研究が重要であることが示された.更に,微生物生態学的に様々な条件下における微生物のマンガン酸化活性についての実験を行い,最適環境条件等を調査した. 微生物は核種移行に関わる化学環境に直接・間接的な形で影響を与えるため,微生物の総量,種類とその特質,生存環境と活性の有無とが重要な課題である.このようなデータは微生物の種類ごとに相違すると考えられるため,系統的にデータを収集してデータベース化を進める必要がある.
著者
ナロック ハイコ
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.1, no.3, pp.108-122, 2005-07-01 (Released:2017-07-28)
被引用文献数
1

自立語または統語構造が付属語化,接尾辞化していくという形態的過程が文法化論の出発点となっているが,現在行われている文法化論はむしろ意味・機能面に集中している。そして,特に形態変化が豊富な日本語においては,形態変化のあり方,とりわけ形態変化の規則性は明確に記述されているとは言えない。本稿は,日本語の文法化における形態的側面に焦点を当て,動詞活用・派生体系の形態変化に基づいて四つの原則,つまり(1)(自立語の)接尾辞化,(2)形態的統合,(3)音韻的短縮,(4)活用語尾化が働いていると指摘する。こうした原則を特定するために音韻的にも厳密な形態論を使用する必要があると論じる。また,最後に,原則に反する形態変化の例を取り上げ,そこに「外適応」と「類推」のプロセスが働いていることを示す。
著者
井上 さつき
出版者
愛知県立芸術大学
雑誌
愛知県立芸術大学紀要 = The bulletin of the Aichi Prefectural University of Fine Arts and Music (ISSN:03898369)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.3-22, 2006-03-31

Though the 1889 Paris Universal Exposition is famous for Javanese gamelans and annamite dancers, which attracted many French musicians, the official musical events of great size, Auditions musicales, were also mounted during the Exposition. This paper discusses the process of the programming of the Auditions musicales through documents that the author discovered at the Archives Nationales de France. There was friction between the organizers of the Exposition and the committee of the events concerning the content of the events. Georges Berger, one of the general directors of the Exposition, reduced the budget for the official grand orchestral concerts and planned a competition of musique pittoresque, i. e. French and European folk music, according to the proposal of a republican deputy for Bouches-du-Rhone with a view to curry favor with the constituency. (Berger was himself elected as a republican deputy shortly afterward.) Although it seems to be irrelevant to politics, the official musical events of the 1889 Exposition were influenced by the republican's power.