著者
陳 效娥
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2020, 2020

<p>1.はじめに</p><p> 大阪の玄関口であるJR大阪駅と地下鉄、私鉄の各梅田駅の周辺には商業施設や業務施設などが密集している。そのため日中は通勤・通学客や買い物客で賑わい、夜はJR大阪駅の東側にある阪急東通り商店街の飲食店を利用する客で活況を呈している。大阪を代表する盛り場の一つである阪急東通り商店街では深夜遅くまで営業する店が多く、若年層を取り込んだ、まさに多様な人々が混じり合う場となっている。その中でも、阪急東通り商店街の「パークアベニュー堂山」界隈には、特殊で多様な性的指向/嗜好、ジェンダー・アイデンティティを持つ人々向けの店が立ち並んでいる。</p><p></p><p>2.研究の目的</p><p> 「パークアベニュー堂山」界隈に立地しているセクシュアル・マイノリティ関連の店の大半は、ゲイ・バーである。その数は160軒を超える。しかし、ゲイ男性向け以外にもレズビアン、トランスジェンダー、異性装者向けの店が混在しており、多様性が受け入れられている場であるといえる。そもそもなぜ、この地域に異性愛規範から「逸脱している」とされる人々が受け入れられたのか。</p><p> 本発表では、「パークアベニュー堂山」が位置している大阪市堂山町に焦点をあて、この地域がどのような歴史的過程を経て異性愛規範から「逸脱している」人々を受容する場となったのか、地理的文脈から解明することを目的とする。</p><p> 研究の対象時期は、堂山町にとって大きな転換期の一つであった戦後に着目し、現在に至るまでとする。地域の変遷をみるため、住宅地図や行政の資料を用いて土地利用、主要業態の変化を追跡する。終戦直後から1950年代までは資料が少ないため、商業雑誌などを含む多様な文献を検討する。</p><p></p><p>3.小括</p><p> 堂山町に位置する東通り商店街界隈の大部分は戦前まで太融寺の寺域で、そこは住宅地に利用されていたが、戦争中の空襲で大半が焼失された。終戦直後、ここは住宅地から商店街へと次第に変わっていった(サントリー不易流行研究所1999)。『北区誌』(1955)によれば、1950年代後半になると、太融寺界隈には連れ込み旅館、ラブホテル、性風俗関連の店が増加し、堂山町界隈は盛り場として賑わうようになった。1960年代〜1970年代には、高級料亭やジャズハウスなども開業し、多様な文化が流れ込んできた(サントリー不易流行研究所1999)。しかし経済成長期の終焉とともに、比較的安価なバー、スナックなどに入れ替えが生じた。戦後の堂山町は、多様な文化が混じり合う場であった。このような背景が今日セクシュアル・マイノリティ向けの店舗立地の誘因に関係しているのではないか。現在阪急東通り商店街は異性愛者向けの店と多様な性的指向/嗜好、ジェンダー・アイデンティティを持つ人々向けの店が共存する遊興空間となっている。</p><p></p><p>参考文献</p><p>サントリー不易流行研究所1999.『変わる盛り場—「私」がつくり遊ぶ街』30-35.学芸出版社</p><p>大阪市北区役所1955.『北区誌』381-384.</p>
出版者
綜合ユニコム
雑誌
レジャー産業資料
巻号頁・発行日
vol.40, no.11, pp.72-77, 2007-11
著者
鈴木 笑子
出版者
金沢文圃閣
雑誌
文献探索
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.573-564, 2003
著者
内野 泰伸 亀谷 恭子 六人部 隆夫 近藤 雄基 吉田 一朗 相原 建人 平野 元久
出版者
法政大学理工学部・生命科学部
雑誌
法政大学理系学部研究集報 = Bulletin of the Science Faculties, Hosei University (ISSN:21888507)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.79-85, 2019-04

本報告では機械工学科PBL授業を紹介するとともに,工学分野の他大学におけるPBL関連の授業との調査し比較検討を行った結果を報告する.また,授業改善への取り組みとして自由記述式感想文の計量テキスト分析を行い,分析結果から教育効果の定量的な測定やPBL授業改善に必要な項目の抽出を試みた結果を報告する.
著者
田中 沙耶 江崎 芳子 谷藤 香菜江 藤本 真衣 波田 善夫 西村 直樹 松尾 太郎 小林 秀司
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement
巻号頁・発行日
vol.29, 2013

&nbsp;近年,ニホンジカ <i>Cervus nippon</i>(以下,シカとする )の個体数が全国的に増加しつつある.これに伴い,各地で農林業被害や自動車・鉄道との衝突事故が増加し,自然植生への影響も危惧されている.対策として,これまでは個体の直接駆除や防止柵などによる排除が行われてきた.しかし,猟友会や農山村の高齢化などの問題から,十分な個体数の駆除ができているとは言えない.また,防止柵についても,設置費や維持費がかかること,人の移動まで阻害することなど,さまざまな問題が生じている.そこで岡山理科大学動物系統分類学・自然史研究室では,シカが心理的な圧迫を受けることで,シカ自らが忌避するような移動阻害構造体 (以下,構造体と表記 )の開発を一昨年から試みている.<br>&nbsp;今回は,岡山理科大学内で飼育しているメスの成獣個体2頭を用いて,シカが構造体上を通過する際に,どのような行動がみられるのかを観察した.試験個体は 2011年に岡山県美作市の山中で捕獲されたもので,野生状態での実験結果に近づけるため,山の中で隔離して飼っている.過去のデータより,構造体上で,静止・構造体に鼻先を近づける・檻のフェンスに鼻先を近づけるといった行動や,構造体を前に引き返す・セルフグルーミングをするなどといった行動がみられることがわかっているが,これらの行動と,構造体を設置していない場合にみられる行動を比較することにより,構造体がシカにどの程度の心理的圧迫を与えているか分析した.また,構造体設置による行動の変化の度合いが個体によって異なることや,慣れによってシカの行動が変化することが考えられる.このことより,構造体を通過する際,どのような行動変化がみられるかを,構造体設置後から継続観察することで,行動の変化も調査することにした.そしてこれらのデータを分析し,構造体はどの程度シカに心理的圧迫を与えるのか,どれほどの期間シカに効果があるのかについて評価した.
著者
中堀 博司
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

4年目の2019年度には、研究代表者の中堀が、低地地方の主要都市リルにおいて追加の調査を実施した。リルは、ブルゴーニュ公国の形成から崩壊までほぼ1世紀を通じて北の拠点で(南の拠点はディジョン)、同市にかかわる調査は以下の通りである。①ブルゴーニュ公滞在時の宮廷・都市イベントに関する新たな文献資料調査、②宮廷・都市イベントを記述する年代記の分析(特に重要なのはJ.デュ・クレール『覚書』)、③都市リルの宮廷関連施設についての地誌的検討である。①~③は相互に関連するが、特に③都市地誌の検討が重要である。1450年代以後、第3代ブルゴーニュ公(フランドル伯)フィリップ・ル・ボンは、新たにリウール宮(Palais Rihour)の建設を開始した(その一部遺構のみ現存)。その結果、1460年代から、フランドル伯がそれまで居所としてきたド・ラ・サル館(Hotel de la Salle)は、都市リルに譲渡されたのち16世紀には廃棄された。ところで、このド・ラ・サル館においてこそ第1回金羊毛騎士団総会や名高い雉の誓いの宴、また宮廷貴族の結婚式ほか数々の祝祭イベントが繰り広げられたが、実はその所在地すら謎めいたままである。この点を明らかにするための資料調査・収集を、リル大学附属図書館、ノール県文書館、リル市立文書館および図書館で重点的に実施することができた。その他、研究協力者の畑は、前年度までに収集した史資料の分析に基づき、ホラント・ゼラント都市に関する報告を行った。
著者
大野 悠介
出版者
慶應義塾大学大学院法務研究科
雑誌
慶應法学 = Keio law journal (ISSN:18800750)
巻号頁・発行日
no.41, pp.53-91, 2018-11

I はじめにII 本稿の観点III 諸判例の検討IV 近年の判例についてV 補遺 : 弊害と目的・手段審査VI おわりに論説
著者
田仲 紀陽 藤原 功一 古賀 伸彦
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.1273-1283, 2004-05-28 (Released:2010-03-16)
参考文献数
22
被引用文献数
3 1
著者
高山 茜 成川 衛
出版者
一般社団法人 レギュラトリーサイエンス学会
雑誌
レギュラトリーサイエンス学会誌 (ISSN:21857113)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.119-126, 2016 (Released:2016-05-31)
参考文献数
4
被引用文献数
1

本研究では, わが国の薬価算定における補正加算などの適用状況を提示し, 有用性加算および営業利益率の加算的補正の取得に影響を与え得る要因を検討した. 2004年10月から2014年12月の期間に, 464の新薬が薬価収載され, うち285医薬品 (61.4%) が類似薬効比較方式で, 135医薬品 (29.1%) が原価計算方式で薬価算定された. 類似薬効比較方式で算定された285品目のうち, 89品目 (31.2%) が有用性加算を取得した. 原価計算方式で算定された135品目のうち, 33品目 (24.4%) が営業利益率の加算的補正を受けた. 類似薬効比較方式 (Ⅰ) で算定された品目において, 新規の作用機序を有する品目では, その他の品目と比べ, 有用性加算を取得した品目割合は大きく (p<0.0001), さらに, 実薬を対照として優越性が検証された品目では, 非劣性が示された品目 (p=0.0013), プラセボを対照として有効性が検証された品目 (p=0.0046) と比べ, 有用性加算を取得した品目の割合は大きかった. 同様に, 原価計算方式で算定された品目において, 実薬を対照とし有効性が検証された品目では, 単群試験のみが実施された品目と比べ, 営業利益率の加算的補正を受ける品目の割合は大きかった (p=0.0021). 一方, 適用された加算率および加算的補正率の大きさについては一定の傾向はみられなかった.
著者
白鳥 実 上月 康則 島田 佳和 橘田 竜一 佐藤 塁 村上 仁士
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G (ISSN:18806082)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.262-275, 2008 (Released:2008-09-22)
参考文献数
33
被引用文献数
2 2

本研究では,付着藻類群集に着目して,ダム下流減水区間の自濁作用の実態把握とメカニズムについての考察を行なった.ダム上流と減水区間で付着藻類群集を比較したところ,夏季において違いが顕著であった.ダム上流では,出水の有無によらず藍藻優占の現存量の少ない群集が形成されていたのに対し,減水区間では,珪藻優占の群集が形成され,現存量もダム上流より有意に多かった.さらに,減水区間では,付着藻類群集の一部が剥離する現象が見られ,付着藻類の生産した有機物が河床に蓄積されるだけでなく,流水中にも負荷されていることが明らかとなった.このような自濁作用は,出水頻度の低下のみならず,平常時におけるアユ等の摂餌圧の低下によって生じているものと推測された.
著者
新井 馨
出版者
大学美術教育学会
雑誌
美術教育学研究 (ISSN:24332038)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.17-24, 2017

<p>アール・ブリュットを基軸に現在の美術・美術史を改めて振り返ることで,芸術,美術をどのように捉えるのか,といった問いが浮かび上がる。そして,この問いは,美術教育が指す「美術」の捉え方にも繋がる問題であると考えられる。これまでの考察で,正規の美術史とは交わらないもう一つの「人間の造形」なる一群があることを示してきた。制度化した近代以降の「美術」は,造形物に「美術」「非美術」と想定することで,「美術」なる概念の定まり方をつくってきた。交わることのなかった並行する二つの線は,「美術」が「人間の造形」を取り入れ「美術」としたことで,「美術」そのものの矛盾と乖離が生まれたのである。本論では,これまでの成果を踏まえ,アール・ブリュットを通して,制度としての「美術」を総合的・俯瞰的に考察を深めたものである。そして,これは美術教育が考えるべき問題と同根のものである,との考えのもと考察を進めている。</p>