著者
楊 英賢
出版者
国際ビジネス研究学会
雑誌
国際ビジネス研究 (ISSN:18835074)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.131-148, 2015 (Released:2015-10-20)
参考文献数
44

本研究では、台湾の自転車産業における A-Team と最大手メーカージャイアントを研究対象として、 製品アーキテクチャという新たな視点を導入することで、A-Team に関する成立背景と目的、そのパフォーマンス及び新たな能力創造、そして A-Team の特徴と従来型の組織間関係との差異などを明らかにしたい。以下、明らかになった点とインプリケーションについて述べる。第一に、モジュラー型アーキテクチャの典型で、コモディティ化が一方的に進むと考えられてきた自転車産業において、ジャイアントは革新的で高付加価値の製品開発を実現した。これは A-Team における組織間協調や交流を通じた技術開発と知識の共有化・融合化の促進によって可能となった。第二に、A-Team は、企業間に競争関係ではなくコーペティション(CO-OPETITION)関係を導入することで、有形資源の取引だけでなく、無形資源の共有化を実現し、さらにはコスト優位から差別化優位への能力転換などを実現させた。こうしたことが、革新的で高付加価値製品の開発生産性向上に結び付いた。これらは、従来型の中心・衛星工場システムといった取引関係では実現できなかったものである。このような、競争と提携が交錯したコーペティションという経営手法が、台湾の自転車産業独自の強みになっていると考えられる。最後に、台湾の自転車産業は A-Team による新たな能力創造と製品アーキテクチャの変化に依拠して、従来のコスト優位から、差別化優位の戦略や能力の構築をさらに推進していく必要がある。中国はモジュラー型・オープン型アーキテクチャの技術開発を得意とするため、価格競争で優位性を持つ。この分野では、どの企業も中国に勝つための優位性を持つことは難しい。したがって、台湾の自転車産業は、日本型のすり合わせを特徴とする非標準的な付加価値の高いアーキテクチャ分野の製品を開発する必要がある。
著者
古島 大資
出版者
日本健康医学会
雑誌
日本健康医学会雑誌 (ISSN:13430025)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.130-137, 2015

近年,初交年齢の低下やそれに伴った10代の妊娠,人工妊娠中絶の増加が危惧されている。高校生時期における性行動は,友人,家族,学校,メディア等からの性情報に影響を受けており,とりわけインターネットはその影響力が大きいと言われている。昨今の急速な携帯電話の普及により,高校生が日常的にインターネットを通じた性情報へのアクセスや,通話やメールによる性に関する情報交換を行っている可能性が推測される。本研究の目的は,高校生における性行動と携帯電話使用との関連について明らかにすることである。平成26年7月に高校1校を対象として無記名質問紙調査を実施し回答の得られた400人(男子学生305人,女子学生95人)を解析した。性行為経験率は男子学生70人(23.1%),女子学生17人(18.7%)であった。性行為経験の有無別に分け多重ロジスティック回帰分析によりオッズ比(95%信頼区間)を算出したところ,携帯電話の所有開始時期が小学校時期であった場合は,所有開始時期が高校生であった場合と比べ7.19倍(2.27-23.88),1日平均10分以上の通話時間であった場合,10分未満と比べ7.04倍(2.16-26.60),メールの送受信回数が1日50回以上であった場合,50回未満と比べ5.00倍(2.57-10.09),インターネットを利用した性情報の検索・閲覧の経験がある場合は,ない場合と比べ3.91倍(1.97-8.13)と高くなる傾向がみられた。高校生の性行動には携帯電話使用が関連する可能性が明らかになり,携帯電話の適切な使用方法と有害なインターネット情報へのアクセス制限(フィルタリング)等を働きかけていく必要性が示唆された。
著者
立本 英機 天野 佳正 町田 基 相川 正美 藤村 葉子 Dennis GEORGE Sharon BERK 瀧 和夫
出版者
環境技術学会
雑誌
環境技術 (ISSN:03889459)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.357-364, 2007-05-20 (Released:2008-12-25)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

本研究では, 湖沼の底泥から溶出する栄養塩濃度を加圧浮上分離 (DAF), MgO散布およびこれらを併用したハイブリッド処理によって抑制することで湖水のTN/TP比制御を試みた. 各底泥処理によるアオコの抑制効果を, TN/TP比とアオコの増殖量を表わすモデルによって検証し, 底泥処理実験の妥当性について検討した. その結果, DAF処理は窒素に対して抑制効果が高く湖水のTN/TP比を減少, MgO散布処理はリンの抑制に対して効果がありTN/TP比を増加, また, DAF処理とMgO散布処理を併用したハイブリッド処理は底泥から溶出する窒素およびリンの濃度を高い割合で抑制でき, 特にリンの抑制が顕著であることからTN/TP比を増加させる効果があることが示された. 各底泥処理を施したときのTN/TP比とアオコの増殖量の関係は, 既存のモデルと高い整合性を示した. 各底泥処理によって湖水のTN/TP比を制御することができるとともに, Chl.a濃度を高い割合で抑制できることがわかった. このことから, 各底泥処理方法は, 湖水のTN/TP比を制御できるという観点から湖沼の富栄養化対策の一手法として期待できる.
著者
可知 悠子
出版者
北里大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

H30年度は、マタニティハラスメントのその母子の健康や退職への影響について、文献調査や関係者へのヒヤリングを行い、その結果に基づいて研究計画書ならびにアンケート調査票を作成し、倫理審査への申請を行った。また、調査対象となる産婦人科にて、調査フローについての相談も行った。文献調査では、国内外においてマタニティハラスメントの母子の健康への影響についての研究は見当たらなかった。職場における心理社会的・物理的・化学的曝露については、数は少ないものの知見があったため、結果を整理した。ヒヤリングでは、NPO法人マタニティネットのメンバーに被害の状況と、マタニティハラスメントの要因と考えられる職場環境について、聞き取りを行った。以前よりも、退職勧奨や配置転換などのわかりやすいマタニティハラスメントは減少し、「もっぱら雑用をさせる」や「情報を共有しない」といった嫌がらせのような立証しにくいケースが増えているとのことであった。また、長時間労働や職場における男女差別が依然としてマタニティハラスメントの要因として存在すること、母性保護に関する法整備が整ってきているにも関わらず、現場の理解が浸透しておらず、裁判に持ちこんだとしても罰則がないため、声を上げる女性が減っているなどの声も挙げられた。なお、倫理審査については、現在結果待ちである。
著者
上條 菜美子 湯川 進太郎
出版者
日本カウンセリング学会
雑誌
カウンセリング研究 (ISSN:09148337)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.11-21, 2016 (Released:2018-05-31)
参考文献数
50

本研究では,ストレスフルな出来事に遭遇したときに生じるネガティブ感情がその後の意味づけ過程に及ぼす影響と,その意味づけ過程がストレスフルな出来事の種類によって異なるかどうかを検討することを目的とし,場面想定法による質問紙調査を実施した。大学生351名を対象に,原因の所在を操作した仮想場面(自己原因場面・他者原因場面・曖昧原因場面)を提示し,仮想場面に対する原因帰属の対象,ネガティブ感情,脅威評価,反すう(侵入的熟考と意図的熟考),意味づけを測定した。多母集団同時分析の結果,出来事の種類によって諸変数間の関連の強さが異なることが示されたが,全出来事に共通して,自己帰属から悔恨,悔恨から意図的熟考,そして意図的熟考から意味づけに,それぞれ正のパスが示された。また,落胆から脅威評価,脅威評価から侵入的熟考にも,全出来事においてそれぞれ正のパスが示された。考察では,本研究で得られた結果に関する基礎的知見,および本研究の限界と今後の展望について議論した。

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著者
能登 宏七 小林 典男 渡辺 和雄
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.649-650, 1990-05-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
13
著者
大門 碧
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第50回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.A04, 2016 (Released:2016-04-22)

発表者自身が、自分の子どもを連れてフィールドワークに向かった際に生じた困難を、フィールドワークという活動が強いる受動性から分析する。「子どもをもつ」ことは、もうひとつの受動性を引き受けることへとつながり、(女性の)フィールドワーカーは二重の受動性を生きることに困難を感じる。しかしこの困難さを脱する手がかりを見つけるのもまたフィールドにおいてなのである。
著者
溝口 文雄
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.10-12, 1973-02-15 (Released:2010-03-11)
参考文献数
4
被引用文献数
1
著者
秋山 高範
出版者
大阪大学大学院人間科学研究科 社会学・人間学・人類学研究室
雑誌
年報人間科学 (ISSN:02865149)
巻号頁・発行日
no.27, pp.153-158, 2006-03-31

Annette Lareau, Unequal Childhoods : Class, Race and Family Life, Univ, of California Press 2003
著者
Won Jae HUH Joseph TE ROLAND Masato ASAI Izumi KAJI
出版者
Biomedical Research Press
雑誌
Biomedical Research (ISSN:03886107)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.113-118, 2020-04-01 (Released:2020-04-19)
参考文献数
19
被引用文献数
14

Clinical interest into the function of tuft cells in human intestine has increased in recent years. However, no quantitative study has examined intestinal tuft cells in pathological specimens from patients. This study quantified tuft cell density by using a recently identified marker, specific for tyrosine phosphorylation (pY1798) of girdin (also known as CCDC88A or GIV) in the duodenum of pediatric patients. Deidentified sections with pathological diagnosis of acute duodenitis, ulcer, or celiac disease, and age-matched normal control were analyzed under double-blind conditions. Immunostaining for pY1798-girdin demonstrated the distinct shape of tuft cells with and filopodia-like basolateral membrane structure and a small apical area, which densely expressed gamma-actin. As compared to normal tissues, the specimens diagnosed as celiac disease and duodenal ulcer had significantly fewer tuft cell numbers. In contrast, acute duodenitis showed varied population of tuft cells. The mucosa with severe inflammation showed lower tuft cell numbers than the specimens with none to mild inflammation. These results suggest that loss of tuft cells may be involved in prolonged inflammation in the duodenal mucosa and disrupted mucosal integrity. pY1798-girdin and gamma-actin are useful markers for investigating the distribution and morphologies of human intestinal tuft cells under healthy and pathological conditions.
著者
横山 友子 杉本 吉恵 中岡 亜希子 田中 結華 高辻 功一
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.24-33, 2014-01-20 (Released:2016-07-08)
参考文献数
30

洗浄剤を使用せずナノミストシャワーを用いた洗髪 (NMS) の有用性について,洗浄剤を用いた洗髪 (TS) と比較するため,健康な成人35名 (31±9歳) を対象に,NMSとTSの両方を実施した.有意水準は5%とした. ATP値では,NMSは洗髪前7381±7171RLUから洗髪後4317±3236RLUに,TSは7763±9977RLUから5921±1782RLUに有意に低下した.皮脂量では,NMSは洗髪前66±30から洗髪後11±9に,TSは93±2から4±2に有意に低下した.ATP値と皮脂量ともに両洗髪間に有意な差はなかった.洗浄感は,両洗髪間に有意な差はなかったが,NMSは「音」「爽快感」「におい」においてTSより有意に劣っていた.所要時間は,TSが8分45秒±1分22秒に対し,NMSは3分52秒±34秒で有意に短かった.使用湯量は,TSが18.5±2.2Lに対し,NMSは4.4±0.8Lで有意に少なかった. 以上より,NMSはTSと同程度の洗浄効果があり,少量の湯と短時間で洗髪できるため臨床での有用性が示唆された.
著者
富田 裕
出版者
日経BP
雑誌
日経アーキテクチュア = Nikkei architecture (ISSN:03850870)
巻号頁・発行日
no.1155, pp.38-40, 2019-11-14

同じ造成地に立つ複数の戸建て分譲住宅が不同沈下し、集団訴訟に発展した。売り主の不動産会社は「近隣工事の影響だ」と主張したが、裁判所は基礎選定に問題があったとして慰謝料を含む高額賠償を命じた。建物の不同沈下が判明した直後の対応は大…
著者
岡本 道孝 北本 幸義 吉田 輝 大野 進太郎 岡村 昭彦
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集C(地圏工学)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.158-173, 2020

<p> ジオテキスタイルを始めとする面状補強材(シート材)を軟弱地盤の表面に敷設して地盤を補強する表層安定処理工法がある.筆者らは筒状織物にモルタルを充填して形成する補強材(ジオジャケット)を格子状に配置し,これによってシート材を補強する格子状補強シートを用いた表層安定処理工法を新たに開発した.従来のシート材を用いた表層安定処理工法では局所荷重によるシート材の破断が課題となっていたが,新工法ではジオジャケットの曲げ剛性によってそのリスクを軽減できる.また当シート上に施工された覆土層は,格子枠のせん断変形抑制効果によって従来のシート材を用いる場合より高い支持力を発揮できる.本報では,この格子状補強シートを用いた表層安定処理工法の特徴と適用事例について述べる.</p>
出版者
日経BP
雑誌
日経コンストラクション = Nikkei construction (ISSN:09153470)
巻号頁・発行日
no.728, 2020-01-27

国土交通省が整備を進める西九州自動車道の松浦佐々道路(延長19.1km)の事業費が、約110億円増えて907億円となることが分かった。軟弱地盤への対応などでトンネルの補助工法や橋の基礎形式を見直したことが主な要因だ。国交省九州地方整備局が2019年11月26日に開…