著者
川上 央 三戸 勇気
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. MUS,[音楽情報科学] (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.143-148, 2004-11-05
参考文献数
16

Rauscher(1993)のモーツァルト効果とはモーツァルトのピアノソナタの第一楽章を聴いた場合,空間課題の得点が上がったというものやあるが,この研究ではモーツァルトとサリエリの作品での効果の違いを,3分間の計算課題を行った前後の心拍,血圧,血流量,発汗,脳波を指標に検討した.その結果,モーツァルトとサリエリの作品において,顕著な生理反応の違いは見られなかったが,脳波パワスペクトルのβ1帯域において,楽曲による有意差が見られた.このことより,モーツァルト効果は脳波の一部の周波数に影響を及ぼすのではないかと考えた.
著者
山根(田野) 由美恵
出版者
広島大学大学院文学研究科
雑誌
広島大学大学院文学研究科論集 (ISSN:13477013)
巻号頁・発行日
vol.69, pp.59-71, 2009-12

Haruki Murakami "Barn Burning" is a short story announced in January 1983. But it was rewritten in September 1990, collected to "Haruki Murakami complete works (1979-1989)". The change in the theme is seen in two "Barn Burning", and individual era (the 1980's and the 1990's) property is reflected. The purpose of my study is to describe the change in the story intention of Murakami in two "barn burning".The feature of "Barn Burning (1983)" was vagueness, in a word, the concurrent world. As for it, the sensibility in the era of the 1980's was reflected. However, Murakami was intent on "Story" in 1990, and vagueness is cut out at this time. The intention of Murakami who go from the concurrent world (vagueness) to "Story" appears remarkably in two "Barn Burning".
著者
齋藤 伸郎
出版者
国士舘大学日本史学会
雑誌
国士舘史学
巻号頁・発行日
no.22, pp.109-171, 2018-03
著者
小川 容子 嶋田 由美
出版者
岡山大学大学院教育学研究科
雑誌
研究集録 (ISSN:18832423)
巻号頁・発行日
no.161, pp.87-94, 2016

本研究は,大学生を対象に,短い旋律を記憶再認する際にどのようなリズム変容がおこるのか信号検出理論に則って検討したものである。実験に用いた旋律は,リズム(等拍・ぴょんこ)×歌詞(促音,撥音,拗音を含んだもの・促音,撥音,拗音を含まないもの)×歌詞のイメージ(動的・静的)×旋律構造(順次進行・跳躍進行)に配慮して作成した6種類の新規旋律である。実験1では音楽専攻学生と非音楽専攻学生を対象とした再認実験を,実験2では音楽専攻学生を対象に直後再認と遅延再認実験を実施した。実験1の結果から音楽専攻学生の方が非音楽専攻学生に比べて強い確信度を保持し高い正答率を獲得していること,両者とも「ぴょんこ」リズムの記憶が等拍リズムよりも不安定であることが明らかにされた。実験2の結果からは,直後再認の結果が遅延再認の結果を上回ること,直後再認時の「ぴょんこ」リズムの記憶が等拍リズムよりもきわめて不安定であることが認められた。音楽専攻の有無に関わらず,等拍リズムに比べて「ぴょんこ」リズムの記憶がかなり曖昧になることから,我が国の明治後期以降の唱歌調全盛期にみられる唱歌のリズム変容との関わりが,示唆された。
著者
筒井 淳也
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.301-318, 2011-12-31
被引用文献数
1

計量社会学でも用いられることが多くなっているマルチレベル分析には, 何らかのデータのまとまり (同一個人に属する複数のデータ, 同一の国に属する複数の個人など) の情報を利用して, 通常の回帰モデルに比べてバイアスの小さい点推定を可能にし, また文脈効果の推定において適切な区間推定を可能にするというメリットがある. この特性を活かすには, 典型的には階層化されたデータ (パネルデータや国際比較可能なクロスセクション・データ) を用いるのが一般的であるが, 本稿では通常のクロスセクション・データにもマルチレベル分析が柔軟に適用可能であることを示すために, 家族関係についての豊富なデータをもつNFRJ (全国家族調査) を使った分析例を示す. 具体的には親との関係良好度の分析を行うが, (最大) 4人の親との関係良好度のデータは個人ごとのまとまりをもっている可能性があり, マルチレベル分析に適している. 分析の結果, 親との居住距離については同居・遠居よりも近居で, 金銭的援助関係については「中庸」である場合に関係良好度が高いということがわかった. これにより, 家族依存の福祉体制であるとされる日本で, 過度の援助関係が感情的なコンフリクトを高めていることが示唆される. 手法の面では, 入手が容易であるクロスセクション・データにもマルチレベル分析が適用可能であることを示すことで, データのより有効な活用を促すことができると思われる.
著者
藤川 吉美
出版者
千葉商科大学
雑誌
千葉商大論叢 (ISSN:03854558)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.23-39, 2006-03-31

日本語の「責任」と「義務」の概念は,意味が曖昧であり,かつその根拠が漠然としている。そこで本稿では,上記タイトルの下に「責任」(obligation)と「義務」(duty)の概念を明確に区別するとともに,あわせて「公正な社会」(fair society)の安定的な維持にとって不可欠な西欧古来のnoblesse obligeの新しい解釈とその意義について論じたいと思う。論文の構成は全6節からなっており,1.最初に本稿の趣旨について述べ,2.において「公正原理」と「責任概念」を定義し,両者が不可分の関係にあることを指摘した。3.においては,伝統的なnoblesse obligeの定義を与え,J.ロールスによって試みられたその新しい解釈を紹介するとともに,それが公正な社会的協力・分業において奏するところの効果について哲学的な検討を加えた。4.以降は,自然的な6つの「義務の原理」とそれに由来する6大義務(正義の義務,相互尊重の義務,相互扶助の義務,礼譲の義務,フェアプレイの義務,そして,他者に対し損害や危害や不条理な苦痛を与えない義務,または遵法の義務)およびその意義について論述し,5.以降で順次,次のような6大義務の詳細な説明を与えている。5.正義の義務6.相互尊重の義務7.相互扶助の義務8.礼譲の義務9.フェアプレイの義務10.他に損害・危害・不条理な苦痛を与えない義務(遵法の義務)以上である。ただし,5〜9を積極的な義務,また,10を消極的な義務と称している。こうした「義務」の概念は,人間理性の求める「自然的な義務」の概念とされ,すでに述べた「責任」の概念と違って,公正な社会を前提としないし,そこから利益を得ているという条件も,与えられる機会を自分の利得に活用するという条件も充たす必要のない概念であるということに特徴がある点を指摘し,その理由についても考察を加えた。こうした責任と義務の定義によって,公正な社会における個人の責任と義務がはっきりと理解され,より正しい社会の確立と維持に寄与するに違いないと考える。
著者
善積 京子
出版者
追手門学院大学
雑誌
追手門学院大学社会学部紀要 (ISSN:18813100)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.169-191, 2008

子どもの最善 / 共同養育権 / 養育規程 / 家族法事務所 / スウェーデン
著者
南風原 朝和 芝 祐順
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.259-265, 1987-09-30

Three probabilistic indices were proposed for interpreting major types of statistical results obtained in behavioral research:the probability of concordance as an index of correlation, and two versions of the probability of dominance being indices of mean difference in the case of randomized and paired data, respectively. Charts for finding confidence intervals for their population values were provided. The relationships of these indices with certain nonparametric statistics were also noted.
著者
殷 志強
出版者
新潟大学
巻号頁・発行日
2012

第六章では、関東軍の主宰により作られた大奉天都市計画の実行や満洲国期における瀋陽の社会変容を取り上げる。とくにその時期の奉天市政発展の成果や問題を総括的に考察した。まず奉天の特別市制問題や治外法権の撤廃問題など奉天市の発展に関する重要な問題を考察し、日本と満洲国側の微妙な相違点を明らかにした。満洲国の成立により、奉天市の発展は日本の意志に従属せざるを得なかったが、傀儡の立場にいた閻市長を中心とする一部の満洲国官吏は一定の自主権を求め、日本と協力しながら奉天の発展をはかろうとした。そのような傀儡政権の中に一定程度の自立を求めることは満洲国期の奉天都市発展のもう一つの重要な特徴である。また、満洲国期における大奉天都市計画の施行の実態を考察し、道路の敷設、奉天市内交通の整備、水道の進展の状況を検討した。これらの考察を通してさらに奉天の社会変容を明らかにした。第七章では、これまでほとんど利用されていなかった『日本関東憲兵隊報告集』といった資料を分析しながら、民衆の日常生活の角度から都市の発展を検討する。満洲国期における奉天民衆の生活状況がどのように変化したかを考察し、とりわけ関東憲兵隊が押収した通信に隠された日中戦争期における奉天市民生活の実態を解明した。戦争の拡大により、多くの物資が日本に徴収され、奉天ではますます物資不足の状況が深刻化した。米や小麦粉の配給はなくなるのみならず、高粱、粟など代用食糧の配給も徐々に少なくなった。市民はやむを得ず闇市場の高価な食糧に依存した。しかも、餓死を待つという最悪の状況に陥った市民も数少なく存在した。市民の困窮した生活と異なり、一部の日本軍人は贅沢な生活をしていたことも資料から読みとれる。とにかく、本論文は近代奉天市の都市発展と市民生活を三つの段階に分けて、それぞれの時期の特徴を明らかにしつつ、日露戦争から終戦までの奉天市の発展図を描いた。
著者
林 紀男
出版者
産業用水調査会
雑誌
用水と廃水 (ISSN:05135907)
巻号頁・発行日
vol.59, no.11, pp.846-854, 2017-11
著者
大賀 郁夫 Ikuo OGA 宮崎公立大学人文学部 Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 = Bulletin of Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities (ISSN:13403613)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.1-26, 2018-03-09

幕末期の一連の政治史において、薩摩・長州・土佐・越前各藩など雄藩が、重要な役割を果たしたことは言うまでもないが、藩全体の八割を占めた九万石以下の小藩はいかにして幕末期を乗り切り、維新を迎えたのだろうか。本稿では、日向延岡藩七代藩主であった内藤政義が記した自筆『日記』から、元治~慶応期に譜代小藩である延岡藩の動向を考察した。政義の交際は、実家の井伊家、養子政挙の実家太田家、それに趣味を通じて交流のあった水戸徳川家など広範囲にわたる。元治元年七月の禁門の変以降、二度に及ぶ長州征討に政挙が出陣しているが、江戸にいる隠居政義は高島流炮術や銃槍調練に励む一方、政局とはかけ離れた世界に居た。政義は梅・菖蒲・桜草・菊観賞に頻繁に遠出し、また水戸慶篤と品種交換や屋敷の造園に勤しんだ。在所からの為替銀が届かず藩財政は破綻に瀕しており、慶応三年末、薩摩藩邸の焼き討ちを契機に政義は在所延岡への移住を決断する。六本木屋敷に養母充真院を残したまま、翌慶応四年四月、政義は奥女中や主な家臣家族ともども品川を出船し延岡へ向かった。幕末期の譜代小藩の動向を窺うことができる。