1 0 0 0 OA 1.Basedow病眼症

著者
廣松 雄治
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.99, no.4, pp.755-762, 2010 (Released:2013-04-10)
参考文献数
12

甲状腺眼症(Basedow病眼症)はBasedow病の25~50%,橋本病の2%にみられる.遺伝因子を背景に環境因子が誘因となり,何らかの自己免疫異常が生じて,TSH受容体や外眼筋抗原などに対する自己免疫機序により発症する後眼窩組織の炎症性疾患である.上眼瞼後退,眼瞼浮腫,眼球突出,涙液分泌低下,結膜・角膜障害,複視,視力低下など多彩な眼症状を呈する.眼症の診察にはCAS(clinical activity score)に加えてMRI(magnetic resonance imaging)による活動性,重症度の評価,QOL(quality of life)の評価が重要である.眼症の専門の医療機関への紹介の基準やMRIによる眼症の診療指針を提案する.
著者
野口 祐二 井上 亮太郎 宮山 勝
出版者
日本結晶成長学会
雑誌
日本結晶成長学会誌 (ISSN:03856275)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.161-168, 2016 (Released:2017-08-23)
参考文献数
40

The photovoltaic (PV) effect in polar materials offers great potential for light-energy conversion that generates a voltage beyond the bandgap limit of present semiconductor-based solar cells. Ferroelectrics have received renewed attention because of the ability to deliver a high voltage in the presence of ferroelastic domain walls (DWs). We report an unusually large PV response induced by ferroelastic DWs — termed ‘DW’-PV effect. The precise estimation of the bulk PV tensor in single crystals of barium titanate enables us to quantify the giant PV effect driven by 90°DWs. We show that the DW-PV effect arises from an effective electric field consisting of a potential step and a local PV component in the 90° DW region. This work offers a starting point for further investigation into the DW-PV effect of alternative systems and opens a reliable route for enhancing the PV properties in ferroelectrics based on the engineering of domain structures in either bulk or thin-film form.
著者
嶋根 克己 玉川 貴子
出版者
専修大学人間科学学会
雑誌
専修人間科学論集. 社会学篇 (ISSN:21863156)
巻号頁・発行日
no.1, pp.93-105, 2011-03

経済成長、家族関係の変化、生活様式の近代化などの社会変動のなかで、葬送儀礼も大きく姿を変えつつある。遺族や親族のみならず地域共同体や職場共同体にとっての共同イベントであった葬儀は、個人主義化の進行や家族の独立化、孤立化の中で、家族主体で行われるようになっていった。その一方で、共同体が担ってきた葬儀実務を肩代わりするために専門的葬祭業者の出現は不可欠であった。しかし家族の絆が弱体化し、地域社会とのかかわりさえも薄れてきた現在、葬儀はますます縮小し家族や親族の中だけにおける私的な儀礼に姿を変えてきた。こうした状況を受けて経済産業省は、個人や家族が個別に解決を迫られてきた医療、介護、看取り、葬送儀礼、遺族の癒しを総合的につなぐことのできる制度作りにむけて検討する機会を持ち始めた。
著者
山口 晴幸 伊藤 洋輔 酒井 裕美
出版者
水利科学研究所
雑誌
水利科学 (ISSN:00394858)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.1-25, 2015

福島第一原子力発電所事故により,大量の放射性物質が大気中に排出された。その影響は東北地方に止まらず関東地方にも及び,ホットスポットやミニホットスポットなどと称される放射線量の高い地点や地域が多数確認された。特に都市生活圏での表層土壌への放射性物質の吸着は,動態性の高い微細土粒子成分の経口摂取による健康への影響や,流失による水系(河川,地下水,下水道,海水等)への影響など,新たな問題を誘発することが懸念された。筆者らは原発事故の発生直後から,勤務地であった防衛大学校キャンパス内(神奈川県横須賀市)をはじめとして,神奈川県三浦半島一円・横浜市街区域,さらには東京都区部を中心に各種土壌の放射線量の実態調査と,サンプリング試料土に関する種々の分析・実験を試みており,その成果について論述している。本研究では,主に,(1) 原発事故地から南方約250~300km以遠の神奈川県三浦半島・横浜市街区域及び東京都区部に飛来・降下した放射性物質の雨樋下土壌や車道側片土砂等への吸着実態,(2) 放射性物質の土壌への吸着性と動態性の高い微細土粒子成分への吸着の優位性,(3) 原発事故後ほぼ3年経過時点での放射線量の減衰状況と未だに潜在するホットスポット的地点の実態,(4) 下水汚泥・汚泥焼却灰に波及的な影響を齎している要因,(5) 汚染土の除染・減容化実験と除去効果の評価などについて検討している。
著者
立花 宏文
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.205-210, 2019 (Released:2019-10-28)
参考文献数
32

緑茶の多彩な生理作用 (抗がん作用, 抗アレルギー作用, 血圧降下作用, 脳血管障害予防作用, コレステロール低下作用など) にはエピガロカテキンガレート (EGCG), エピカテキンガレート, エピガロカテキン, エピカテキンなどのカテキン類が関与している。特にEGCGは緑茶に特有な成分であり, 緑茶の生理作用に深く関係していると考えられている。著者らはEGCGの細胞膜受容体として67-kDaラミニンレセプター (67LR) を同定した。また, EGCGの抗がん作用, 抗アレルギー作用, 抗炎症作用などの生理作用は67LR依存的であること, EGCGの67LRを介した生理作用の発現過程 (EGCGセンシング) にMYPT1, eEF1A, PP2A, Akt, eNOS, sGC, PKCδ, 酸性スフィンゴミエリナーゼ, スフィンゴシンキナーゼ1, cGMPといった分子が関与することを明らかにした。一方, 緑茶と併用摂取する食品因子がEGCGセンシングに作用することでEGCGの生理作用に影響を及ぼすことを示した。
著者
木下 かほり 佐竹 昭介 松井 康素 荒井 秀典
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.221-229, 2019 (Released:2019-10-28)
参考文献数
38
被引用文献数
1

フレイル高齢者でエネルギー摂取とは独立して偏りやすい栄養素を横断的に解析することを目的とした。当院フレイル外来を受診した独歩可能な高齢者270名 (年齢中央値79歳) を対象とし, 中等度以上の認知機能低下やタンパク質制限を要する者は除外した。フレイルはJ-CHS基準で評価した。食事摂取量は簡易型自記式食事歴法質問票で評価し, 推定エネルギー必要量を摂取したと仮定した栄養素・食品摂取量を算出後, 22の栄養素摂取量が日本人の食事摂取基準の推奨量または目安量を満たすかどうか評価した。フレイル有無において基準を満たしていない者の割合をχ2検定で性別に比較し, 差を認めた栄養素を従属変数, フレイルを独立変数, 年齢, BMIを共変量としたロジスティック回帰分析を性別に行った。その結果, 女性でのみ有意な関連を認め, フレイルの亜鉛摂取基準値未満に対するオッズ比 (95%信頼区間) は2.50 (1.23‐5.06) であった。フレイルな高齢女性では亜鉛の不足に留意した栄養指導が必要である。
著者
谷村 隆三
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1528, pp.92-94, 2010-02-15

鳩山由紀夫首相率いる民主党政権は、「コンクリートから人へ」という標語を掲げ、公共事業費を大胆に削っています(編集部注:鳩山政権は2010年度当初予算案で、公共工事費を前年度比18.3%減の5兆7731億円とし、1978年度以来32年ぶりの低水準に抑えた)。 新政権が2009年9月に誕生してから、ここ長崎でも様々な公共事業が見直されています。
著者
大澤 拓未 山本 伸次
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

マントル内部物資循環において海洋地殻、大陸地殻が海洋プレート沈み込みによりマントル内へリサイクルし、マントル対流を通して地殻物質がマントル内に混染している可能性が指摘されているW.Xu et al.,(2008)。しかしその実態は不明であり、マントル-地殻鉱物大循環の解明のためリサイクル地殻鉱物を用いた物質科学的制約が急務である。北海道日高山脈に位置するマントル由来造山帯かんらん岩の幌満かんらん岩は蛇紋岩化していない新鮮なかんらん岩として知られ、メルトマントル反応による交代作用からレールゾライト、ハルツバージャイトの顕著な層序構造を示す。近年、Li et al.,(2017)により幌満かんらん岩からジルコンやルチル、低い炭素同位体比を有するダイヤモンドの産出が報告されており、幌満かんらん岩中に地殻由来鉱物が存在することが示唆されている。しかし問題点としてかんらん岩中の地殻鉱物は回収例が少なく、その起源に関しても不明確であるため、かんらん岩中に残存する地殻鉱物分離技術の改善・分離回収された鉱物の記載を目的とする。本研究では、東邦オリビン工業(株)の採石場より採取したかんらん岩試料、ハルツバージャイト 764㎏、レールゾライト 954㎏、それぞれを板状に切断し移送したものを用いた。ジョークラッシャーおよび連続式粉砕機を用いて0、1㎜大まで粉砕した後、粒度分離、比重分離、磁選処理を行い、ハンドピッキングおよびエポキシ樹脂への包埋、研磨を行った。レールゾライト内からジルコン6粒、ルチル(TiO₂) 1粒が回収された。一方で、ハルツバージャイト内から非磁性鉱物を濃集させた粒子を樹脂に包埋し、EPMA(YNU機器分析評価センター)を用いた鉱物探査・鉱物同定を行った結果、コランダム(Al₂O₃) 12粒が分離回収され、包有物および付着鉱物が共生している様子が観察された。コランダム6粒子のSEM-EDS分析から、これらは①Si-Al-Kに富む珪酸塩相 ②Ti-Zr酸化物 ③Si-Ti合金 からなる包有物が確認された。Morishita et al.,(1998; 2000)より幌満かんらん岩体ポンサヌシベツ川流域のハンレイ岩転石中から微量のCrを含むコランダムの産出が報告されている。本研究で得られたコランダムは、①Crがほぼ含まれない、②TiO2を最大で2.3 wt%程度含む、③Ti-Zr酸化物やSi-Ti合金といった特異な包有物を含む事などから異なる起源のコランダムであることが考えられる。世界中のコランダムの産出を比較した結果(Griffine et al.,2016; 2018)よりイスラエルMt.Carmelのアルカリ玄武岩由来捕獲鉱物中コランダム内に特異な包有物として(Ti-Zr酸化物、Si-Ti合金)が報告されている。また高いTiO2濃度(最大2,6wt%)、捕獲結晶としてダイヤモンドの産出も報告され、リサイクル海洋地殻玄武岩由来であると考えられている。以上より本研究で幌満ハルツバージャイトから分離回収されたコランダムとGriffine et al.,(2016; 2018)で報告されたコランダムは組成も共存鉱物も非常に類似していることから同様の起源を持つことを意味し、幌満ハルツバージャイト中コランダムもリサイクル海洋地殻由来コランダムであり、幌満かんらん岩中に鉱物レベルで地殻鉱物が存在することを示唆する。引用文献Griffin1,William L. (2016) “Deep-earth methane and mantle dynamics: insights from northern Israel, southern Tibet and Kamchatka,” JOURNAL & PROCEEDINGS OF THE ROYAL SOCIETY OF NEW SOUTH WALES, VOL. 149,PARTS 1 & 2, 2016, PP. 17-33Yibing Li. The mineralogical and chronological evidences of subducted continent material in deep mantle: diamond, zircon and rutile separated from the Horoman peridotite of Japan. AGU. FALL MEETING 2017. AGU Contact Technical Support AGU Privacy Policy. https://agu.confex.com/agu/fm17/meetingapp.cgi/Paper/222963 [2019/02/19].Morishita, T., 1998, ”finding of corundum-bearing gabbro boulder possibly derived from the Horoman Peridotitie complex, Hokkaido, northern Japan, ”JOURNAL OF MINERALOGY, PETROLOGY AND ECONOMIC GEOLOGY, 93(2), 52-63.
著者
小高 敏郎
出版者
俳文学会
雑誌
連歌俳諧研究 (ISSN:03873269)
巻号頁・発行日
vol.1966, no.30, pp.41-43, 1966-03-15 (Released:2010-08-25)
著者
堤 恵志郎 大重 匡 瀬戸口 佳史 大勝 祥祐
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.A3P1096, 2009

【目的】慢性呼吸不全患者は呼吸困難・息切れ時に呼吸の回復を目的として、上半身を前傾させ、上肢を肩から垂らすことなく、ものの上に置く肢位をとる.しかし、運動によって呼吸循環反応が亢進した後の回復過程を、座位姿勢で比較している報告は見当たらない.そこで今回、前傾座位姿勢によって生じる影響を明らかにすることを目的とし、健常者を対象に呼吸循環反応亢進後の回復過程を、自然座位と前傾座位とで比較し検討した.<BR><BR>【対象】対象者は健常若年男性12名(22.2±0.9歳、174.7±6cm、66.2±9.2kg)とした.各対象者には本研究の目的、方法を説明し同意を得た.なお、本研究は鹿児島大学研究倫理委員会にて承認を得ている.<BR><BR>【方法】まず対象者には、椅子座位にて5分間の安静座位を取らせる.この安静座位には、背もたれにもたれずに上肢を体側に垂らした座位(自然座位)、体幹を前傾させ両肘を各膝につけた座位(前傾座位)の2条件とした.その後、5分間のトレッドミル歩行を行わせ、それぞれ5分間の安静座位と同じ姿勢で回復過程を測定した.測定パラメータは、安静座位時、回復過程の0、3、6、9分時における心拍数、血圧、SPO<SUB>2</SUB>、RPEとした.統計学的処理は、安静時・回復過程0分値において、対応のあるt検定を用いて比較した.そして、2条件間における回復過程を比較するために2元配置分散分析を行い、交互作用の有無を検定した.その後の検定としてTukey法による多重比較を行った.<BR><BR>【結果】両条件間の安静時・回復過程0分では、いずれの値においても有意差は示されなかった.回復過程では、心拍数において両条件間に交互作用が認められ、回復過程3、6、9分時時点の値は、それぞれ自然座位と比較して前傾座位で有意に低値であった.しかし、SPO<SUB>2</SUB>、血圧、RPEでは、いずれも両条件間で有意差は示されなかった.<BR><BR>【考察】前傾座位で心拍数の回復が早かったのは、呼吸パターンが深くなり、酸素の取り込み量を高く維持し得る状況下にあったためと考える.これは、体幹を前傾させ上肢を支持することで、肩甲骨の固定がなされ、呼吸補助筋である肩甲帯挙上筋群の緊張が解かれたためと考える.また体幹を前傾することにより、腹壁の緊張を解き、横隔膜の降下を容易にすることで呼吸を整えることができたためとも考える.そして、静脈還流量は筋ポンプ作用に加えて胸腔内圧の陰圧による呼吸ポンプ作用によって維持されており、この深い呼吸パターンがこの呼吸ポンプ作用を増し、Frank-Starling機序によって1回心拍出量が増加したと推察される.つまり、前傾座位をとることで、深い呼吸パターンとなり1回心拍出量が増加し、心拍数の回復を早めるにもかかわらず、血管にかかる負担やRPEが自然座位と差がないということが示唆された.
著者
Weina Gao Jianquan Wu Jingyu Wei Lingling Pu Changjiang Guo Jijun Yang Ming Yang Haiji Luo
出版者
SOCIETY FOR FREE RADICAL RESEARCH JAPAN
雑誌
Journal of Clinical Biochemistry and Nutrition (ISSN:09120009)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.7-10, 2014 (Released:2014-07-01)
参考文献数
48
被引用文献数
15 47

Aging weakened innate and adaptive immunity both quantitatively and qualitatively. Some components in propolis could stimulate immune function in young animals or cultured immune cells in vitro. Few studies had been carried out in the aged. The present study was to evaluate the effects of Brazilian green propolis supplementation on the immunological parameters in aged mice. Eighty Kunming mice, aged 15–18 months, were randomly assigned to the control and three experimental groups supplemented with different doses (83.3, 157.4 and 352.9 mg/kg.bw respectively) of Brazilian green propolis. The experiment lasted for 4 weeks. Contents of total polyphenol, flavonoid, cinnamic acid and artepillin-C in Brazilian green propolis were analyzed. Splenic NK cytotoxic, T lymphocyte proliferation and antibody generation cells, as well as the phagocytosis of peritoneal macrophages, ear swelling, and serum contents of IgG, IgM, hemolysin and cytokines were measured. After 4 weeks of treatment, the phagocytosis of peritoneal macrophages was enhanced in 157.4 mg/kg and 352.9 mg/kg groups. Ear swelling increased in all propolis treatmented groups. Antibodies specific to sheep erythrocytes were higher in the groups receiving 157.4 and 352.9 mg/kg.bw than that of control group. IgG level dramatically increased in the groups receiving 83.3 and 157.4 mg/kg.bw in comparison to the control group. These results indicate that administration of Brazilian green propolis have a positive effect on innate and adaptive immunity in aged mice.
著者
田中 敬子
雑誌
人間文化研究 (ISSN:13480308)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.125-138, 2007-06-23

フランク・キャプラは、アメリカ合衆国の善性を謳い上げる監督として知られるが、1941年制作の『毒薬と老嬢』は他愛ないブラック・コメディとして扱われることがほとんどである。しかしこの映画は、同年制作の『群衆』の直後に撮られ、アメリカ社会の理想の行き詰まりを示した『群衆』の後遺症というべきキャプラの幻滅を隠している。ポピュリズム政治と個人の自由、メディアと全体主義の危険な関係は、『群衆』に明らかである。ナチスと戦うべきアメリカ自体に、全体主義、帝国主義化の傾向がある。『我が家の楽園』に見られるようなキャプラの理想的な家族は、『毒薬と老嬢』ではパロディ化されて変質している。キャプラは『毒薬と老嬢』で不安を笑いで紛らわせ、既存体制の秩序をかろうじてつなぎ止め、第2次世界大戦後の『素晴らしき哉、人生!』で、再び理想的家父長を取り戻したように見える。彼はイタリア系移民のアメリカ人として、第2次世界大戦を挟んでアメリカ民主主義の理想を追求した。しかしキャプラは、強力な父権を警戒する一方、平等な市民たちの政治的団結を信じ切れず、ヘテロセクシュアルな家族制度の家族愛に頼らざるを得ない。『毒薬と老嬢』は、彼が抑圧した懐疑をグロテスクなコメディに変えているが、この論文は、キャプラのアメリカ社会ならびに家族観に入った亀裂を、ジェンダーと国民国家の視点から探るものである。

1 0 0 0 OA 円朝全集

著者
三遊亭円朝 著
出版者
春陽堂
巻号頁・発行日
vol.巻の二, 1926