著者
松崎 潤太郎
出版者
東京医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究は、初代分離培養した膵外分泌細胞に対して低分子化合物を曝露させ、in vitroでパーシャルリプログラミングを行って膵前駆細胞を樹立し、この細胞に胆汁酸によるストレス刺激を与えることで膵発がん初期の環境をin vitroでモデル化し、膵発がん超初期のバイオマーカーとなるmicroRNAの同定を試みるものである。我々は成熟肝細胞を特定の低分子化合物を含む培地で平面培養することにより肝前駆細胞を誘導することを報告した(eLife 8:4, 2019)。同様に、膵管上皮細胞が膵前駆細胞の由来細胞であることも見出し、この膵前駆細胞は特定の培養環境下においてインスリンを分泌する細胞にも分化し得た。この膵前駆細胞へ、膵管内に存在しうると想定される縫合型胆汁酸を曝露させ、マイクロアレイ解析によってmiRNAの変動を評価した。同定されたmiRNAに対して、その機能解析を進めている。
著者
重松 幹二 大賀 祥治 正本 博士 三島 健一 亀井 一郎
出版者
福岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

菌糸体から水可溶性のβ-グルカンを抽出するために、マキネッタ抽出器の適用を検討した。その結果、漢方薬として用いられるブクリョウや各種食用キノコから効率良くβ-グルカンを抽出することができた。また、カンゾウからグリチルリチン酸、オウレンやオウバクからベルベリン、樹木樹皮からタンニンを抽出することもできた。これら抽出液の活性は高く、特にブナシメジからのβ-グルカンは高い抗腫瘍活性を有していた。
著者
佐藤 三矢 横井 輝夫 岡村 仁 荒木 ゆかり 緒方 紀也 山下 聡子 佐藤 恵 坂本 将德 福嶋 久美子
出版者
吉備国際大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

認知症高齢者を対象としてネイルカラーリング介入を実施し、ランダム化比較試験を通じてBPSDとQOLの変化を検討した。対象者は介護施設に入所中の認知症高齢者77名。対象者を無作為に2群へ割り付けた後、介入群に対しては1週間に2回の頻度でネイルカラーリング介入を3ヶ月間実施した。得られた数値は二元配置分散分析を用いて2群間の比較を実施した。その結果、BPSDとQOLに関する測定項目において有意な交互作用が確認された。本研究では介護老人保健施設に入所中の認知症高齢者を対象として3ヶ月間のネイルカラーリング療法を行なえば,BPSDを軽減できる可能性が示唆された。
著者
飯島 真里子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
文化人類学 (ISSN:13490648)
巻号頁・発行日
vol.80, no.4, pp.592-614, 2016 (Released:2017-02-28)
参考文献数
42

本稿では、フィリピン日系ディアスポラの第二世代による戦後の多様な帰還現象に注目し、帰還経験が当事者の故郷認識に与える影響について考察する。フィリピン日系ディアスポラとは、戦前のフィリピン(本研究では主にダバオを対象とする)に形成された日本人移民社会にルーツをもち、終戦直後の引揚げ政策により離散を強いられた集団とそのコミュニティをさす。日本人家族は祖国に引揚げたが、日本人移民を配偶者としていたフィリピン人妻とその子ども(日系二世)は残留したため、戦前の移民社会は日本とフィリピンに分かれ、それぞれの戦後を経験した。本論文で扱うディアスポラの帰還現象は以下の3つである。まず、第一の帰還現象として、終戦直後の本国への「引揚げ」を取り上げる。次に、第二の帰還現象として、1960年代末から引揚者によって企画されたフィリピンへの「墓参団」を扱う。この墓参団は、戦中に亡くなった肉親の慰霊だけではなく、日系二世や旧友との再会や居住地の再訪など戦前の移民生活の記憶をたどる旅ともなっている。最後に、第三の帰還現象として、1990年代末から始まった「祖国」日本の国籍取得を目的としたフィリピン残留日系二世の「集団帰国」を取り上げる。 これら3つの帰還は、時期、背景、経路も異なる。第一の帰還のように祖国での定住をともなう帰還形態もあれば、第二、第三の帰還のように一時的かつ短期間の帰還形態もある。また、その移動方向もフィリピンから日本(第一、三の帰還)への流れもあれば、逆方向の流れもある(第二の帰還)。本論文では、「帰還」を分析概念として使用することで、3つの帰還的移動を総合的に検討し、これらの継続性と連関性を明らかにする。これにより、「引揚げ」を中心的に扱ってきた日本帝国史研究と「日系人の還流」を扱ってきた移民研究をつなぐ視点を提供できると考える。 さらには、当事者の帰還経験を分析することによって、第二世代の故郷認識の多様性を描き出し、ディアスポラの「故郷」の存在やあり方が一元的でも固定的でもないことを論じる。
著者
伊藤 永悟 藤本 貴之
雑誌
研究報告情報システムと社会環境(IS) (ISSN:21888809)
巻号頁・発行日
vol.2015-IS-132, no.5, pp.1-4, 2015-06-06

近年,コンピュータは高機能かつ多機能なものとなった.開発環境も洗練されたため,多様なプログラムを低労力で実現することが可能である.しかし,プログラミング初心者にとっては,開発環境を整えること自体が大きな障害となる.また,短い記述で多くの処理を実現可能であるため学習のために求められるプログラムが複雑化しやすい.初心者向けに広まっているビジュアルプログラミング言語は,あくまで記述を視覚化して直感的にしたに過ぎない.この問題を解決するため,本研究では単純な計算を機械式計算機のメカニズムを用いて多くの段階を経て計算させることで,単純なプログラムを通じたプログラミング教育を可能とするシステムを提案する.
著者
服部 真一 杉田 明史 平賀 伸夫
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.28, no.8, pp.1-4, 2018 (Released:2018-04-07)
参考文献数
1

小学校5年生理科「電磁石の性質」の単元末に,既習の知識を全て活用して,課題を解決できる教材の開発を行った。それを用いて,実際に授業を実践し,授業記録や授業中に書いたワークシートから,知識が活用できたか分析した。その結果,本教材は知識活用できる電磁石教材の1つとして効果があることが確かめられた。
著者
杉森 伸吉 北山 忍
出版者
東京学芸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

近年の文化社会心理学が示してきたところを加味した本研究仮説によると、日本人の場合は所属集団の持つ集団基準から見て恥ずかしくないところに、自己を定位することに動機づけられているため、失敗したときには、自尊心回復よりも集団内の高地位に再定位するように、自己改善の動機が喚起されるため、比較対象として選ぶのは、自分より下位のものではなく、むしろ最高位の他者が選ばれやすくなること、そして自分の努力不足に原因が帰属されやすくなることを確認した。さらに、自己不確実感が高い個人ほど、こうした傾向が強いことも示された。また、選択行動の直後に、親しい他者が異なる選択をしたことを知ると、自己不確実感が高まり、不協和低減行動が生じた。以上の諸結果から、研究3についても、選択後の認知的不協和について、他者との関係性の観点から、検討を加えた。研究1における自己不確実感と成功・失敗の原因帰属および社会的比較の関連と、研究2の選択後の自己不確実感について検討した。従来の欧米の理論では、人間は自尊心維持に動機づけられており、失敗した場合は自己防衛の動機が高められて、失敗の原因を課題の困難さなどの外部要因に帰属することで、自尊心が傷つかないようにしたり、自分より成績の悪かったものと社会的比較をおこなうことにより、自尊心をあげるように試みたりすることが指摘された。他者の選択情報を与えた結果、自分の選んだ商品の魅力が増し、自分の選ばなかった商品の魅力が減少するという「認知的不協和」現象は、日本においては後者の条件においてのみ見られるだろう。ここでの研究仮説を検証し、仮説を支持する結果が得られれば、集団よりも個人を社会の一次的ユニットと見なす欧米における研究では説明できなかった重要な過程に光を当てることができ、実験社会心理学の研究はもとより、教育心理学、臨床心理学に対しても有意義な貢献ができるであろう。
著者
中川 早苗 武井 敦子
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.174-182, 1984-04-25 (Released:2010-09-30)
参考文献数
2

サラリーマンの服装に対する意識や行動を実証的に把握し, 現代のサラリーマンにとって服装がどのような意味をもっているのかを明らかにするために統計調査を行った.その結果次のようなことが明らかになった.1) 職場での仕事が中心のサラリーマンにとって, 服装は個としての自己表現よりも社会的信用や好感を得たり, 組織の一員として仲間との連帯感を得る手段として重要な意味をもっており, 半ば制服化している“背広・ネクタイ”スタイルが, その最も無難なパターンとして支持され愛好されていることが明らかになった.2) 服装に対する規範意識・ファッション意識への反応パターンをもとに, 数量化理論皿類によってサンプルを5つの主要なタイプに分類することができた.3) 各タイプの差異が, 年令や職業, 職場での地位, 余暇のすごし方や生活関心, 職場での服装規制などによって大きく規定されていることが明らかになった.
著者
望月 麻紀 宝田 雄大 友添 秀則 大坂 昇
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4-5, pp.283-287, 2014 (Released:2014-05-10)
参考文献数
14

Generally, conservative treatment is performed at the initial stage of Osgood-Schlatter disease (OSD) to decrease pain. When this conservative treatment is no longer effective, surgery will be performed to decrease OSD pain by removing a tibial tuberosity avulsed bone and a synovial capsule. We reported a time-series change of pain before and after the OSD surgery on a wrestling athlete. The present subject was a 20-year-old male wrestler (height 183 cm ; weight 90 kg), who received OSD surgery on the left knee. Numerical rating scale (NRS) was used to determine pain before and after the OSD surgery. NRS was measured by three positions : resting position (RP), sitting with knee extending position (SKEP), squat with knee flexing 90° position (SK 90 P) and pressure pain (PP). Immediately after the OSD surgery, NRS at the RP, SKEP, SK 90 P, and PP decreased from NRS 3 to NRS 0, NRS 5 to NRS 1, NRS 8 to NRS 6, and NRS 8 to NRS 1, respectively. Three weeks after the OSD surgery, pain at the SKEP and PP decreased to NRS 0. Eight and eleven weeks after the OSD surgery, pain at the SK 90 P decreased to NRS 2 and NRS 1, respectively. The present case study suggests that OSD surgery may progressively decrease pain. Further studies are needed to clarify the effect of OSD surgery on pain.
著者
牛沢 勇
出版者
緒方医学化学研究所医学生物学速報会
雑誌
医学と生物学 (ISSN:00191604)
巻号頁・発行日
vol.94, no.3, pp.p251-254, 1977-03
著者
竹田 陽子
出版者
一般社団法人 経営情報学会
雑誌
経営情報学会 全国研究発表大会要旨集 2018年秋季全国研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.69-72, 2018 (Released:2018-12-25)

本研究では、技術者、ビジネス企画者、クリエイティブ職種が創造プロセスの8段階(Sawyer, 2012)において、思考モード(各種の言語化、イメージの内的表象、他者視点取得など)をどのように使い、業績への貢献、革新性、ユーザーの評判等の成果にどのような効果を及ぼしているのかを、質問票調査(3職種合計n=800)に基づき探索した。その結果、各職種、各プロセス段階で使われる思考モードには大きな違いが見られ、パフォーマンスを向上させる思考モードは、技術者では問題認識段階でユーザー視点の思考が効果的であることなど、実態としてあまり使われていない思考モードが数多く有意に働いていた。
著者
Choviwatana Palin 木内 俊克 岡 瑞起 橋本 康弘 小渕 祐介 隈 研吾
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.90-101, 2019-10-25 (Released:2019-10-28)
参考文献数
16

本研究では,近年のコミュニティサイクル事業で非接触式ICカードや携帯端末等を用いた認証決済システムが多く利用されていることに着眼し,GPSデータのみから自転車による回遊行動の実態を推定する指標策定を試みた.具体的には,1)迂回度,2)進行方向の変化度,3)滞在時間分布を表す移動速度の3指標を定義し,大局的な目的地経由のみでなく,GPSデータの特徴である面的で網羅的な特徴を生かした細かな回遊行動の連なりを可視化し,移動過程の部分ごとの移動の質についての評価を可能にする点で新規性のある指標を提示した.また,提案指標を用いた自転車利用者の傾向分析への応用例として,自転車利用者が感じる都市への関心度合いに関するアンケートを実施し,回遊特性指標を用いた自転車利用者のクラスタ分析結果とアンケート回答の照らし合わせ,回遊特性指標と都市への関心の関連性の分析の二例を示した.

1 0 0 0 OA 大菩薩峠

著者
中里介山 著
出版者
第一書房
巻号頁・発行日
vol.第1冊, 1939