著者
麦島 剛
雑誌
福岡県立大学心理臨床研究 : 福岡県立大学大学院心理教育相談室紀要 (ISSN:18838375)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.137-144, 2014-03-31

注意欠陥多動性障害(attention deficit hyperactivity disorder:ADHD)は、不注意、多動性、衝動性を主症状とする発達障害の一つである。ADHD治療薬atomoxetineにより阻害されたnoradrenalineトランスポーターが前頭前野のdomapime濃度を上昇させることによってADHD症状が緩和されるとされ、前頭前野ではdopamine 神経終末上のdopamineトランスポーターが少ないために再取り込みの役割をnoradrenalineトランスポーターが代行していると考えられている。事象関連電位は刺激の物理特性のみならず、内因的な認知処理も反映する。その一つのミスマッチ陰性電位(MMN)は、注意を必要としない条件下でも惹起されるため、前注意過程を反映すると考えられる。ADHD児では頭頂部のMMN振幅が有意に低く、頭頂と注意機能の関連が示唆されている。MMNの他、注意機能と関連のあるERPとしてP300、Nd、N2b、paired stimulationへの反応などが検討されている。自然発症高血圧ラット(SHR)を用いたMMNが検討され始め、対照系統で見られる皮質MMN様反応がSHRでは惹起せず、臨床知見がADHDモデル動物で初めて示唆された。またELマウスを用いた行動薬理学・行動経済学研究による衝動性の検討も開始され、今後の進展が期待される。
著者
岡本 能弘 田中 麻優里 福井 貴史 増澤 俊幸
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会総会抄録集 第37回日本臨床免疫学会総会抄録集 (ISSN:18803296)
巻号頁・発行日
pp.78, 2009 (Released:2009-10-21)

プロポリスは、ミツバチが外敵から巣を守るためにハーブの新芽や樹脂から作る物質であり、フラボノイド、各種ビタミン、ミネラルなど、健康維持に有用な成分が豊富に含まれ、抗炎症作用を有することがこれまでに報告されている。従って、プロポリス摂取により関節リウマチの発症やその症状を緩和する可能性が考えられる。しかしながら、プロポリス継続摂取の関節リウマチへの効果についての科学的根拠は皆無である。今回、プロポリス継続摂取の関節リウマチ病態に及ぼす影響についてコラーゲン誘導関節炎モデルマウスを用いて評価した。 プロポリスエキス(山田養蜂場みつばち健康科学研究所より提供)含有飼料を実験期間を通して継続自由摂取させたマウス(DBA/1J)は、対照群に比較し、コラーゲン誘導関節炎の症状の悪化が抑制される傾向が見られた。しかしながら、3群(対照群、プロポリスエキス6.7mg/g含有餌摂取群、20mg/g含有餌摂取群)の間に統計学的有意差は検出できなかった。プロポリス投与群マウスの脾臓細胞、リンパ節細胞のサイトカイン産生能、産生細胞数を解析したところ、対照群に比較し、インターロイキン17((IL-17)の産生が低下していた。従って。プロポリス摂取による関節炎症状抑制傾向はIL-17産生抑制作用に基づく抗炎症作用が寄与していることが示唆された。 なお本研究は2008年度 山田養蜂場 みつばち研究助成基金による研究成果を含んでいる。
著者
福田 アジオ
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.145-162, 1993-11-10

日本の民俗学は柳田國男のほとんど独力によってその全体像が作られたと言っても過言ではない。従って、民俗学のどの分野をとってみても、柳田國男の研究成果が大きく聳え立っており、現在なお多くの研究分野は柳田國男の学説に依存している。民俗学の研究成果として高く評価されることの多い子供研究も実は大部分が柳田國男の見解を言うのであり、柳田以降の民俗学を指してはいない。そのような高く評価され、実証済みの事実かのように扱われる柳田國男の見解を整理し、問題点を指摘し、それに続いて柳田以降の民俗学の研究成果も検討した。柳田國男の子供理解は大きく二つの分野に分けられる。一つは子供の関係する行事や彼等の遊びのなかに遠い昔の大人たちの信仰の世界を発見するものである。子供を通して大人の歴史を明らかにする認識である。これは手段として子供を位置づけていることになる。この子供を窓口にして大人の過去を見る場合は、「神に代りて来る」という表現に示されるように、例外なく信仰、さらには霊魂観と結びつけて解釈している。もう一つの柳田の子供研究の世界は「群の教育」という表現に示される。群の教育は近代公教育を批判するものとして注目され、教育学系統の人々から高く評価される視点であり、柳田以降にもほとんど疑われることなく継承されてきた。しかし、この視点は子供を教育の対象と見るもので、大人にとって望ましい一人前に育てる教育に過ぎない。民俗学はこれら柳田國男の呪縛から解放されなければ新たな研究の進展は見られないことは明白である。子供を大人から解放して、子供それ自体の存在を分析し、子供を理解することによって新たな民俗学の研究課題は発見されるであろう。
著者
Ji-Chen Ho Chih-Hung Lee
出版者
The Biophysical Society of Japan
雑誌
BIOPHYSICS (ISSN:13492942)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.17-24, 2015 (Released:2015-02-13)
参考文献数
70
被引用文献数
12 36

TRP channels are expressed in various cells in skin. As an organ system to border the host and environment, many nonneuronal cells, including epidermal keratinocytes and melanocytes, express several TRP channels functionally distinct from sensory processing. TRPV1 and TRPV3 in keratinocytes of the epidermis and hair apparatus inhibit proliferation, induce terminal differentiation, induce apoptosis, and promote inflammation. Activation of TRPV4, 6, and TRPA1 promotes regeneration of the severed skin barriers. TRPA1 also enhances responses in contact hypersensitivity. TRPCs in keratinocytes regulate epidermal differentiation. In human diseases with pertubered epidermal differentiation, the expression of TRPCs are altered. TRPMs, which contribute to melanin production in melanocytes, serve as significant prognosis markers in patients with metastatic melanoma. In summary, not only act in sensory processing, TRP channels also contribute to epidermal differentiation, proliferation, barrier integration, skin regeneration, and immune responses. In diseases with aberrant TRP channels, TRP channels might be good therapeutic targets.
著者
松信 八十男
出版者
社団法人 日本流体力学会
雑誌
nagare (ISSN:02867540)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.31-44, 1973 (Released:2011-03-07)
参考文献数
6

成人病検査の時に必ず受けなければならないのが血圧の測定である。しかも, その結果がかなり重要視され-喜-憂することになる。生命保険に加入するときにもこの測定値によっては契約条件がかなりきびしくなる。このように大きな決定権をもつ血圧の値とは, 一体何であろうか。また, どのような原理に基づいて測られるのであろうか。もちろん流体力学の立場だけで解決できるわけではないが少しこの問題を考えてみよう。
著者
水沢 直暉 関 優也 Jian Tao 山口 実靖
雑誌
第81回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, no.1, pp.45-46, 2019-02-28

近年の情報サービスの普及に伴い,サーバーの設置スペースや消費電力の増加などの問題が生じており,この解決策として仮想化技術というものがある.仮想化手法の一つであるコンテナは,VMを用いる他の仮想化手法と比べ,ゲストOSが存在しない分,高い性能が期待できる.本稿では,著名なコンテナ手法であるDockerを用いてI/O性能の向上について考察をする.
著者
飯國 隆志 富永 浩之
雑誌
第81回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, no.1, pp.41-42, 2019-02-28

クラウドサービスなどで、コンテナ環境を提供するサービスが増加している。これらのクラウド基盤には、1つのホストマシン内に複数のユーザのコンテナが動作している。そのため、セキュリティの問題から、同一ホストでもコンテナへのアクセスを制限する機構が必要である。本研究では、ロールごとのアクセスを制御する機構として、ホストのグループIDを用いたファイル権限によるアクセス制御を用いる。この機構には、Linuxにおけるケーパビリティとユーザ名前空間を用いて実現する。
著者
住田 宏己 吉本 安男
雑誌
第81回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, no.1, pp.27-28, 2019-02-28

我々は仮想化されたプライベートクラウド環境の運用現場において仮想マシンの稼働状態を識別して資源の無駄遣いを削減する運用方法を開発し実践してきた。特にメモリ資源の有効活用を阻害するアイドルVMを識別することで資源を有効に活用できることが判っている。ただしアイドルVMを識別するためには熟練者の技術が必要であり、そのことがアイドルVM識別技術を多くの環境に適用拡大する際の足かせとなっていた。本稿では機械学習の手法を適用することで熟練者不在の環境でもアイドルVMを適切に識別し資源を有効に活用できることを実環境での運用事例として報告する。
著者
木戸 剛生 大川 猛 大津 金光 横田 隆史
雑誌
第81回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, no.1, pp.53-54, 2019-02-28

Publish/Subscribe通信プロトコルであるDDS(Data Distribution Service)の暗号処理のハードウェア化について検討を行った。Publish/Subscribe通信における暗号処理をハードウェアで高速化し、低消費電力かつセキュアで、応答性の高い通信機能のずつ元を提案する。Raspberry PiとノートPCを用いて、DDS実装であるFast RTPSの暗号処理時間について計測を行った。本研究においては通信フレームワークの暗号処理をハードウェア化することで、セキュアな通信機能を容易にシステムに追加することを可能とすることを目的とする
著者
三木 祐二 芝 公仁
雑誌
第81回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, no.1, pp.33-34, 2019-02-28

アプリケーションはシステムコールを発行することでカーネルが提供する機能を使用する.システムコールの発行はユーザモードとカーネルモード間でのモードの遷移を伴い,発行から結果を受け取るまでの間アプリケーションはブロックされる.本稿では,システムコール並列処理機構を提案し,本機構がモード間の遷移回数を削減し,また,システムコールでアプリケーションをブロックしない非同期な処理を実現することを示す.また,本機構をシステムコールが集中的に発行されるアプリケーションに適用し,システムコールを並列に処理させることによって,マルチコア環境においてアプリケーションのスループットが向上することを示す.
著者
奥園,誠之
出版者
地盤工学会
雑誌
地盤工学会誌
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, 2008-04-01

In this paper, four case studies are reported in which the embankments of highway made on sloping ground have failed after completion of the road construction works. Relationship between the rainfall and the groundwater was presumed to be the main cause of such failures. Furthermore, some important points aimed at the maintenance, such as the inspection and the reinforcement of slopes, are discussed in this paper.

1 0 0 0 OA 6.COPDの予後

著者
三嶋 理晃
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.104, no.6, pp.1115-1121, 2015-06-10 (Released:2016-06-10)
参考文献数
19

我が国のCOPDの死亡数は増加の一途をたどっているが,高齢化の影響が大きい.生命予後を左右する因子として,気流閉塞の程度,身体活動性,気腫病変の程度,増悪の頻度などが挙げられる.また,循環器疾患,糖尿病,骨粗しょう症などの併存症の存在も予後因子として重要である.予後を改善する治療法として,ワクチン,気管支拡張薬などの薬物療法,在宅酸素療法,非侵襲的陽圧換気,肺移植,包括的リハビリテーションなどが挙げられる.
著者
水野 淳太 後藤 淳 大竹 清敬 川田 拓也 鳥澤 健太郎 クロエツェー ジュリアン 田仲 正弘 橋本 力 奥村 明俊
雑誌
情報処理学会論文誌コンシューマ・デバイス&システム(CDS) (ISSN:21865728)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.106-120, 2016-05-24

我々は,災害時にTwitterに投稿される膨大な情報を効率良く検索するために対災害SNS情報分析システムDISAANAを開発し,スマートフォンおよびPCで誰もが利用可能なWebアプリケーションとして試験公開している.本稿では,まず先行システムについて説明し,その問題点についてまとめる.次に,それらの問題をDISAANAがどのように解消するかを説明する.特に,不適切な回答候補の抽出を回避するために導入したモダリティ解析について詳述する.評価実験では,東日本大震災時のツイートに対して,人手で構築した192問の質問とその回答からなる評価セットを用いて本システムの評価を行った.評価の結果,先行システムに比べてF値が7ポイント改善した.エラー分析結果に基づいて,今後の改善方針について考察する.さらに,自治体で実施したDISAANAの有用性検証実験の結果についても報告する.
著者
水野 淳太 後藤 淳 大竹 清敬 川田 拓也 鳥澤 健太郎 クロエツェー ジュリアン 田仲 正弘 橋本 力 奥村 明俊
雑誌
研究報告コンシューマ・デバイス&システム(CDS) (ISSN:21888604)
巻号頁・発行日
vol.2015-CDS-14, no.14, pp.1-13, 2015-09-24

我々は,災害時に Twitter に投稿される膨大な情報を効率よく検索するために対災害 SNS 情報分析システム DISAANA を開発し,誰もが利用可能な Web アプリケーションとして試験公開している.本論文では,これまでに行ってきたシステムの改善ならびに不適切な回答候補を抽出する事を回避するために新たに導入したモダリティ解析,ツイート属性判定,予報表現抽出について議論する.その上で,これまで東日本大震災関連の災害情報のみで行われてきた本システムの評価を,台風や大雪といった一般的な災害にまで拡張し評価を行う.その結果,さらなる改善の余地が残されているものの,実用可能な性能に達していることを確認できた.
著者
木村 眞人
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.553-557,a1, 1991-05-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
5

土壌は固相, 液相, 気相よりなり, 固相は岩石, 一次鉱物, 粘土, 植物遺体, 腐植等より構成されている。これらの成分がさらに団粒を形成し, 微生物環境として土壌は極めて多様な世界をもたらす。ここでは土壌の環境を微生物の生育の場としてとらえ, その特徴を考察する。すなわち, 固相を構成する土壌成分, 団粒と微生物の分布の関係, さらには土壌空気や土壌pHとそこに生育する微生物の関係を述べる。