著者
明野 伸次
出版者
北海道医療大学
雑誌
北海道医療大学看護福祉学部紀要 (ISSN:13404709)
巻号頁・発行日
no.11, pp.95-100, 2004
被引用文献数
1

本稿では男性看護師に対する業務評価・役割期待に関しての文献を検討し、今後の研究課題と方向性を得ることを目的とした。その結果、男性看護師に対する業務評価・役割期待は「看護師である男性」と「男性である看護師」との二面性の認識から行なわれていた。「看護師である男性」とは、特に女性患者に村する「羞恥心を伴うケア」は困難として、その業務評価と役割期待は低く、一方、力仕事や機械類に強い、また判断力があるといった、一般的な「男性的イメージ」から男性看護師に対して業務評価と役割期待をしている認識である。「男性である看護師」とは、性別に関係なく「専門職」として男性看護師に対して業務評価と役割期待をしている認識である。以上から、今後の研究課題と方向性に関して、「男性である看護師」という認識からの業務評価と役割期待は、本来看護に求められる「専門性」に関して、十分に検討していく必要がある。また「看護師である男性」という認識からの業務評価と役割期待は、性の違いに関してジェンダーという一方の方向からのみ捉えるのではなく、「セクシュアリティ」という広い視点で考えていく必要があると示唆された。
著者
道前 翔矢 金井 輝人 石井 順久 板谷 治郎 辛 埴 岡崎 浩三 小川 優 岡田 大 鈴木 剛 渡邉 真莉 染谷 隆史 山本 貴士 笹川 崇男 藤澤 正美
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会講演概要集
巻号頁・発行日
vol.72, pp.1583, 2017

<p>従来のARPESでは平衡状態の電子構造について盛んに研究されてきた。近年はさらに発展した実験手法として、非平衡状態に励起された電子系が平衡状態へと緩和していく様子をフェムト秒の時間分解能で観測できる時間分解ARPESが試みられている。本研究発表では高次高調波を用いた時間分解光電子分光を用いてアンチノード方向を含めたBi2212の時間分解光電子分光の結果より擬ギャップの起源について議論する。</p>
著者
今村 栄次 山下 拓史 福原 敏行 長嶋 和郎 郡山 達男 時信 弘
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.172-178, 2009 (Released:2009-05-13)
参考文献数
15
被引用文献数
6 7

症例は76歳女性である.発語の減少,意欲低下で発症し,意識障害の進行と平行して両側耳介腫脹が出現した.発熱,項部硬直をみとめ,髄液細胞数,蛋白,IgG indexの上昇,頭部MRIで進行性の大脳白質病変と脳萎縮をみとめた.耳介軟骨生検の病理所見から再発性多発軟骨炎(RP)と診断した.意識障害と炎症所見は,ステロイド治療にて一時的に改善したが,ふたたび増悪し,多剤による免疫抑制療法をおこなったが改善しなかった.剖検脳では,軟膜および脳実質の血管周囲にびまん性のリンパ球浸潤と炎症性髄鞘破壊をみとめた.RPに関連した髄膜脳炎の剖検例はきわめてまれであるが,病変の主座は炎症性血管周囲炎であることが示唆された.
著者
橋口 凌 渡部 和雄
出版者
一般社団法人 経営情報学会
雑誌
経営情報学会 全国研究発表大会要旨集 2016年秋季全国研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.45-48, 2016 (Released:2016-11-30)

本研究は「SNSを利用して頻繁に情報収集している人」と「そうでない人」の購買意識と購買行動を比較し、企業による顧客へのプロモーションを提案することを目的として、SNSがもたらす消費者の購買意識と購買行動の変化を明らかにする。そのため、男女500人にアンケート調査を行い、統計的手法を用いて、それらを明らかにした。その結果、「SNSを利用して頻繁に情報収集している人」は「そうでない人」よりも、頻繁にインターネットと実店舗を行き来し、商品やサービスを買いやすいと感じていることなどがわかった。
著者
吉川 夏樹 長尾 直樹 三沢 眞一
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.273-280, 2009-06-25 (Released:2010-11-19)
参考文献数
14
被引用文献数
2

新潟県村上市神林地区では,洪水常襲地区の上流域に広がる水田に「落水量調整板」を設置し,大雨時に水田に意図的に雨水を貯留することで,洪水の緩和を図るという「田んぼダム」の取り組みが行われている.本研究では,この「田んぼダム」の洪水緩和機能を流域スケールで検証した.流出解析を行うにあたり,河川·排水路,山地・集落(市街地),水田の3つのモジュール(構成要素)で流域をモデル化した.山地・集落(市街地)モジュールは,Kinematic Waveモデル,水田は水田水収支シミュレーションにより流出量を経時的に計算し,これらを河川・排水路モジュールに横流入量として入力し,不定流解析によって計算を行った.対象とした降雨イベント(日降水量101.8mm,最大時間降水量20.8mm)の場合,調整板を全水田に設置することにより,排水河川である笛吹川および幹線排水路のピーク時流量が25%~29%減少し,0.17~0.23mの水位低下をもたらすという結果を得た.また,通常,同程度の日降水量では一部の市街地排水路に溢水が見られるのに対し,計算結果どおりに,実際に現況の調整板設置率(80%)でも溢水は確認されなかった.これらのことから,「田んぼダム」の取り組みは,対象地域の洪水緩和に有効であるということが明らかになった.
著者
三木 佳子 法橋 尚宏 前川 厚子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.2_70-2_79, 2013-06-20 (Released:2013-07-04)
参考文献数
52

目的:わが国の保健医療領域者がセクシュアリティのアセスメントに活用できるセクシュアリティの操作的定義を開発することである.方法:Walker & Avantの概念分析の手法を参考に,教科書・辞書に掲載されている定義,原著論文の操作的定義を検討した後,医中誌Webを用いて1995年から2010年までの期間で検索した32件の原著論文を分析した.結果:わが国の保健医療領域におけるセクシュアリティは,個人の性的特性と性的対象者との相互作用であり,個人の性的特性には,性の関心度,性の重要度,男性性・女性性の評価が含まれ,性的対象者との相互作用には,共に過ごすこと,言語的コミュニケーション,スキンシップ,相互の思いやり,性行為のありさまが含まれるとすることができる.結論:開発した操作的定義は実存性があり,保健医療者はセクシュアリティのアセスメントに活用できる.
著者
金子 智紀 武田 響一 野口 正二 大原 偉樹 藤枝 基久
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.92, no.4, pp.208-216, 2010 (Released:2010-10-05)
参考文献数
39
被引用文献数
2 4

スギ人工林の林況および立地環境の違いが流出特性に与える影響を明らかにすることを目的に, 第三紀凝灰岩を地質とする3小流域 (秋田県長坂試験地: 上の沢・中の沢・下の沢) において, 3水年の流量観測と林況および土壌調査を実施した。各小流域は, スギの植栽後およそ40年を経過した林分で, それらの成長や立木密度, 他樹種との混交度合いなどが異なっており, 流域全体の被覆度に差が生じていた。各小流域の年間損失量は724 mm (上の沢), 861 mm (中の沢), 548 mm (下の沢) であり, 流域間で大きく異なっていた。この違いの一部分は, 各流域における蒸発散量の違いによって生じていると考えられた。また, 中の沢流域で観測された年間損失量は, ハモン式から想定される可能蒸発散量 (640 mm) を大きく上回り, 同流域では深部浸透が生じている可能性が示唆された。土壌調査から求めた各流域の保水容量は104 mm (上の沢), 132 mm (中の沢), 121 mm (下の沢) であり, これらの保水容量の大きさは流出解析から求めた各流域の貯留量の大小関係と一致した。また各流域の流況曲線の形状は, 主に蒸発散量や保水容量の違いを反映していると考えられた。
著者
朝倉 京子
出版者
日本保健医療社会学会
雑誌
保健医療社会学論集 (ISSN:13430203)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.82-93, 2000-05-22 (Released:2016-11-16)

This article reviews the literature on the concept of sexuality and questions the dominant paradigm in Japanese health science and medicine. Furthermore, it discusses the several underlying problems of the concept. A study of the literature suggests the following issues. 1) The vague conceptualdefinition of sexuality specified by SIECUS about 35 years ago has been used without critical examination. 2) Many researchers and practitioners adopt the mind and body dualism of this definition. 3) They seem to support the idea of essentialism that the sexual desire is an instinct. 4) The definition can lead to discrimination and human rights violations against sexual minorities.
著者
長峰 孝文 中澤 宗生 古谷 修 伊藤 稔 小堤 恭平
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.78, no.3, pp.331-338, 2007 (Released:2008-02-25)
参考文献数
17

645の堆肥について,食中毒の原因となる代表的な細菌であるサルモネラおよび志賀毒素産生性大腸菌(STEC)O157の検出を行った.堆肥化の過程によって損傷を受けたそれらの細菌を賦活化させるため,選択培地による試験の前に,堆肥サンプルを緩衝ペプトン水とともに37℃にて18~24時間インキュベートした.サルモネラが検出された堆肥は8件(1.2%)であり,3件から分離された株が公衆衛生上問題のある血清型であった.STEC O157は,検出されなかった.堆肥からサルモネラが検出された原因は,堆肥生産の際の低い処理温度もしくは堆肥化後の原料の混入が考えられた.
著者
関口 篤
出版者
詩学社
雑誌
詩学 (ISSN:13425595)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, 1961-01
著者
本山 覚望 望月 愼介 竹内 聡 赤山 由起 山辺 晋吾 丸尾 猛
出版者
Japanese College of Surgeons
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.61-65, 2000-02-29 (Released:2009-08-13)
参考文献数
20

目的 : 人工造腟術として, 酸化セルロース製の組織代用人工繊維布 (TC7) を新腟腔へ添付し, 腟本来の扁平上皮粘膜の新生誘導を検討した。方法 : 6例の先天性腟欠損症に対し, 腟前庭粘膜の十字切開により解剖学的腟経に沿い子宮下部に達する新腟腔を形成した。切開で生じた4点の腟前庭粘膜縁を新腟腔内壁へ縫合後, TC7で包まれた膣型を新腟腔へ充填し手術を終了した。成績 : 平均手術時間は25.8分, 平均出血量は14.2ml, 入院期間は2日, 合併症発生率は0%であった。全例において, 術後2~5カ月で添付TC7膜下で腟前庭粘膜縁より新生した重層扁平上皮で新腟腔全域は被覆された。また, 新生腟扁平上皮粘膜は正常腟粘膜と同様に卵巣周期に呼応した分泌能と形態の変化を示した。結論 : 本法は現行造腟法と比較して低侵襲性でDay Surgeryも可能であり, また, 本法の腟粘膜は腟本来の自然性を示すため, 患者QOLの向上に役立つものと思われる。
著者
谷川 寿郎
出版者
日本経営学会
雑誌
經營學論集 第87集 日本の経営学90年の内省と構想【日本経営学会90周年記念特集】 (ISSN:24322237)
巻号頁・発行日
pp.G11-1-G11-10, 2017 (Released:2019-09-26)

本稿は日本の大企業の所有と支配について,伝統的な実証調査の方法である持株比率別分析と所有主体別分析を行い,現在における日本の株式会社の所有と支配について明らかにしようとするものである。会社支配論と経営者支配論については,日本においても,多くの実証研究が行われてきた。それらの研究は,日本の大企業は経営者支配であるという一定の結論をみた。また,日本の株式所有構造の特徴として,大株主の機関化と,それらに対する高い集中度を指摘する。本稿の実証調査の結果においても同様に,それらの特徴が確認された。しかし,大株主の主体の属性は大きく変化した。大株主として君臨した都市銀行や生命保険会社にかわって,現在では,資産管理専門銀行と外国人機関投資家が多くを占める。また,経営者支配の企業は対象200社のうち130社を占める。この約20年間で日本の大企業の所有と支配は大きく変化した。