著者
長坂 康史 下里 哲弘 田井 政行 玉城 喜章 日和 裕介
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集H(教育)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.35-47, 2019

<p> 鋼橋の維持管理において,適正な点検を実施するためには,その知識と技能が要求される.しかし,現状の学習法は継続的な知識の積上げと実務経験に委ねられる部分が多く,点検技能を効率的,且つ確実に向上させる学習法が必要となる.本研究では,代表的な劣化現象である鋼材腐食に焦点をあて,実橋梁で生じた腐食を3DCGにて可視化し,鋼橋の腐食と点検をデスク上にて擬似体験できる腐食点検学習システムを開発した.本学習システムは,腐食部位にあらゆる角度から自由にアプローチでき,パソコン画面上で,腐食特性や点検技能を効率良く,且つ実践的に習得できることである.アンケート結果より,各橋梁の実腐食データで3DCG化され,自由な可動を特徴とする本学習システムは,腐食点検技能の習得に有効であるとの一定の評価が得られた.</p>
著者
江尻 有郷
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
大学の物理教育 (ISSN:1340993X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.105, 2019

<p>都物懇の思い出を述べます.すでに60余年昔のことで大変懐かしく思います.それは私の4年間の大学生活を鮮やかに彩る存在でした.1955年,東京教育大学理学部物理学科に入学した私には,同級生23名の集団が世界でした.物理学科の控</p>
著者
フロインド ヨアブ シャピリ ロバート 安倍 直樹 Yoav Freund Robert Schapire Naoki Abe
雑誌
人工知能学会誌 = Journal of Japanese Society for Artificial Intelligence (ISSN:09128085)
巻号頁・発行日
vol.14, no.5, pp.771-780, 1999-09-01

以下のような状況を考えよう. ある競馬ファンが, なるべく多くの配当を得ようと, 各馬の過去の成績やオッズ等の情報に基づいて勝ち馬を予測するプログラムを作ろうとした. このようなプログラムを作るために, 彼はまず熟練ギャンブラー(以下, エキスパート)にどのような戦略を用いているのかを説明してくれるように頼むことにした. ところが, 彼は競馬は勘であって, 説明できるような戦略などないと言う. しかし, 具体的にいくつかのレース情報のリストを与えられると, このエキスパートは「最近の勝率の最も高い馬に賭けろ」とか「オッズの最も高い馬に賭けろ」などの経験則を問題なく見つけることができたという. 確かにこのような経験則はおおざっぱであまり高い精度のルールとは言えないが, ただランダムに賭けているよりは少しはましな予測ができると思われる. また, エキスパートの意見をいくつもの異なるレース情報リストについて聞くことにより, 競馬ファンは数多くの経験則を習得できる. さて, こうして得られた経験則を上手に利用するには, 競馬ファンは以下の二つの問題を解決しなくてはならない. 一つめは, エキスパートに提示すべきレース情報リストの集合をどのように定めるかという問題であり, 二つめは獲得された数多くの経験則をどのようにまとめて一つの精度の高いルールを得るかという問題である. 「ブースティング」とは, このような設定の下, 数多くの精度の低いルールを組み合わせて非常に精度の高い予測ルールを得るための, 汎用的かつ理論的な性能保証のある方式である. この解説文では, ブースティングに関する最近の研究成果の中から, 特にこれまで多くの理論的な検証と実験的実証がなされてきた AdaBoost というアルゴリズムを取り上げる. まず3章で AdaBoost アルゴリズムを紹介し, 4~7章でブースティングの理論的な基盤について説明する. ここでは, 特にブースティングがなぜ「過学習」を避けられるかについても議論する. そして, 8章ではブースティングを用いた実験と応用について述べる.
著者
野崎 剛弘 小牧 元 須藤 信行
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.134-141, 2016 (Released:2016-02-29)
参考文献数
6

日本糖尿病学会は, エビデンスに基づく糖尿病診療の推進を目的に, 『科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン』を発行している (初版は2004年, 最新版は2013年版). また, 同学会は上記ガイドラインをベースに, 最新の知見を糖尿病現場に幅広く普及させることを目的に, 『糖尿病治療ガイド』も発行している. 一方, 日本糖尿病療養指導士機構から『糖尿病療養指導ガイドブック』が発行されているが, これは糖尿病患者の心理・行動に関する記述に大きくページを割いている. 本稿では, これら糖尿病の診療ガイドラインの最新の内容を紹介するとともに, 糖尿病の心身医学的側面がガイドラインにおいてどのように位置づけをされているかを概説する.
著者
三原 俊彦 平田 幸正
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.11, pp.965-973, 1978-11-30 (Released:2011-08-10)
参考文献数
8

1958年に日本糖尿病学会が設立されたのを契機として, 全国各地の病院に糖尿病専門外来がつくられ, 糖尿病患者が長期にわたって管理を受けることができるようになった.1958年発足以来1976年まで18年間にわたって糖尿病患者の治療・管理を行っている糖尿病センターに通院している患者をみると, 糖尿病罹病期間の長いものが多数みられる.現在当センターを受診している糖尿病患者の実態を明らかにする目的で, 1976年1月1日より12月31日までの1年間に当センターを受診した糖尿病患者について一定の形式で問診, 診察, 諸検査を施行した.所定の調査項目の結果がすべて明らかとなった糖尿病患者1,629名の臨床像はつぎの通りであった.患者の男女比は1.23であり, 調査時年齢のピークは60歳代, 糖尿病推定発症年齢のピークは50歳であった.糖尿病推定発症より調査時までの推定罹病期間は, 従来の報告に比し長いものが多く, 10年以上の罹病歴をもつものが38.4%をしめた.糖尿病の家族歴を有するものは39.3%にみられ, 従来の報告に比し高い頻度を示した.糖尿病罹病歴の長いものが多かったこともあり, 糖尿病性合併症の頻度も高く, 糖尿病性神経障害、網膜症, 蛋白尿の頻度は, それぞれ, 53.0%, 39.4%, 33.5%であった.今後ますます糖尿病性合併症を有する糖尿病歴の長い患者の割合が増加してくることが予想される.
著者
石黒 慎
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.59, no.11, pp.983-984, 2018-10-15

リアルタイム人口情報から,タクシーの移動需要を予測するシステムを開発した.提案システムでは,Stacked denoising Autoencodersを用いることで,エリアや時間帯によって相関の仕方の異なるタクシー乗車数と人口,雨量,時間情報などの関係を学習し,将来の乗車数の予測を行う.Stacked denoising Autoencoderによる予測では,特に乗車の多い時間帯・エリアにおいて,人口を用いることでタクシー乗車需要の推定精度が向上することを紹介する.
著者
山田 紀代美 西田 公昭
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.4_85-4_91, 2007-09-01 (Released:2016-03-31)
参考文献数
26

本研究の目的は,介護スタッフが認知症高齢者に対して用いるコミュニケーションスキルの特徴とそれらに関連する要因の検討を行うことである。対象は,介護老人福祉施設および同系列の通所サービスの介護スタッフ47人で,調査内容は,介護スタッフの性,年齢等の属性,コミュニケーションスキルに対する使用認識,疲労感等である。結果は,介護スタッフが使用するコミュニケーションスキルは,受容的会話の配慮では,「親しみを込めた話し方をする」,発話の配慮では「大きな声で話す」「ゆっくり話す」が,根気強さでは「相手の話に関心を持って相槌をうつ」がよく用いられていた。 介護スタッフのコミュニケーションスキルに関連する要因として,介護職歴が長いスタッフは,受容的会話,発話の配慮,根気強さの全ての要素を用いており,また仕事への満足度が高いスタッフほど,発話の配慮を行っていた。
著者
坂本 政臣 小浦 由紀夫 畑中 憲児 石森 富太郎
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.7-11, 1990-01-05 (Released:2009-06-19)
参考文献数
4

カリウム,ルビジウム及びセシウムを含む混合溶液から,これら三者を分離することなく同時定量することを検討した.すなわち,テトラフェニルホウ酸ナトリウム(Na[TPB])及びテトラ(p-フルオロフェニル)ホウ酸ナトリウム(Na[F4TPB])を沈殿剤に用いて,M[TPB](M=K,Rb,Cs)及びM[F4TPB](M=Rb,Cs)として沈殿させ,それぞれの沈殿の648℃及び380℃での熱分解生成物の初期重量に対する重量パーセント(空気気流中,昇温速度:5.6℃min-1)と沈殿の総重量とから三者の定量を行った.その結果,溶液50cm3中に存在する各アルカリ金属が5mg以上のとき,10%以内の誤差で定量可能であった.
著者
田中 崇恵
出版者
京都大学大学院教育学研究科
雑誌
京都大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13452142)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.221-231, 2012-04-27

This paper aims to discuss illness from the viewpoint "Otherness" and "Identity" through an overview of the literature and a case study. Illness is often thought of as a bad thing and meaningless. In addition, the act of diagnosis emphasizes the otherness of the illness. On the other hand, the illness is thought to have a deep relation with the person who has the illness, and it therefore has an important meaning. In addition, it was shown that illness becomes a part of a person's identity, or essence of identity. Illness is thoght to wave between "Otherness" and "identity", and it brings transcendence and transformation to the person who has illness. In the case study, the dynamics of the opposite elements "Otherness" and Identity and the aspect of the transcendence that it brings were demonstrated by the client’s dream and the progress of the case. It is important that the psychotherapists support advancement to the road of transcendence and the transformation of the clients without stopping the dynamics of illness.
著者
福井 幸太郎 菊川 茂 飯田 肇 後藤 優介
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.77, 2014 (Released:2014-10-01)

はじめに 2014年5~6月,立山カルデラの温泉の池「新湯」で湯枯れが発生し湖底が干上がった.6月13日なると温泉が再び湧出して水位が上昇,6月15日にはもとの温泉の池にもどった.新湯が一時的に干上がることは数十年前から富山県内の山岳関係者の間で指摘されていた.しかし,写真などの記録は無く,現地で確認できたのは今回が初である.本発表では,湯枯れの発生と温泉の再湧出による水位回復の経過について報告する.新湯について新湯は立山カルデラ内を流れる湯川左岸に位置する直径約30 m,水深約5 mの円形の火口湖.もともと冷水の池であったが1858(安政5)年の安政飛越地震(M7.3~7.6)の際の激しい揺れによって熱水が湧き出したとの伝承がある.現在も約70℃の湯が湧出している.希少な玉滴石(魚卵状蛋白石=オパール)の産出地で2013年10月17日に国の天然記念物に指定された. 湯枯れと温泉再湧出の経過・2014年4月15日:立山砂防事務所撮影の航空写真から新湯では温泉が湧出しており水位も平年通りであることを確認.・5月13日:博物館撮影の航空写真から新湯が干上がっていることを確認.このため,新湯は4月15日~5月13日の間に干上がったと考えられる.・6月11日:現地にて新湯が完全に干上がっていることを確認(図1a).池の最深部(水深約5 m)に直径1 m程の凹みが3つあり活発に湯気を噴き上げていたが温泉の湧出はなかった.・6月13日:立山砂防事務所より新湯で再び温泉湧出がはじまったとの連絡が入る.・6月15日:現地にて池の最深部付近から温泉が湧出しており水位が元のレベルまで回復していることを確認(図1b).水位は6月13日~15日の3日間程で元のレベルで回復したといえる.湯温は池の切れ口付近で72.6℃と干上がる前と同程度だった.謝辞今回の調査は国土交通省立山砂防事務所の協力・支援によって実現しました.お礼申し上げます.