著者
加藤 涼太 田中 健一 小寺 正明 船津 公人
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
ケモインフォマティクス討論会予稿集 第42回ケモインフォマティクス討論会 東京
巻号頁・発行日
pp.1P12, 2019 (Released:2019-10-22)
参考文献数
7

化合物の物性を予測する手法の一種に、定量的構造物性相関(QSPR)がある。QSPRでは、物性既知の化合物を用いて化合物の構造と物性値の間の関係を統計的手法でモデル化する。QSPRの入力として化学構造から計算した記述子を用いる場合、多くの記述子の中から最適な組合せを見つけなければならず、その中に予測に必要な情報が十分に含まれているか分からないという問題もある。そこで、本研究では記述子を計算することなく原子の3次元座標値と原子番号および分子のグラフ構造を入力とし、Graph Convolutional Neural Network(GCNN)を用いた予測手法を開発した。記述子を用いる手法と比較した結果、予測タスクによって提案手法が勝る場合も劣る場合もあった。その原因としてモデルの表現力の不足が考えられるため、入力方法やモデル構成を改良することで性能が向上すると考えられる。
著者
佐伯 祐弌 秋田 富士 千葉 博 斉藤 平三郎
出版者
Japan Poultry Science Association
雑誌
日本家禽学会誌 (ISSN:00290254)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.231-237, 1968-10-25 (Released:2008-11-12)
参考文献数
65
被引用文献数
1

白色レグホン (WL, WL-D), 白色ロック (WR) および白色コーニッシュ (WC) の3種を用い, 4月から8月までの間に生産した成熟卵について種々の卵質を調査した。供試卵は産卵後当日夕刻までは室温におき, 午後5時から翌朝9時までは, 23°Cの室温, 65%の湿度の部屋に貯蔵した。1. 各鶏種の平均卵重は, WR (66.6g), WL-D (62.0g), WC (60.8g), WL (58.5g) の順位であった。卵白重量は34.9g (WL) から39.4g (WR) までの範囲で, 卵重に対する卵白重の割合はWCが最低 (57.9%) で, その他の鶏種では大体59%ていどであった。卵黄重は18.1g (WL) から21.2g (WR) の範囲で, 卵重に対する卵黄重の割合は全鶏種とも大差なく31%前後であった。また卵白重に対する卵黄重の割合はWLは52%, 肉用種では54~55%でやや高かった。卵白高は, 5.7~6.2mmであったが卵による個体差がかなり大きかった。H.U. は74.9 (WL) ~76.6 (WL-D) であった。卵殼の平均重量は5.6g (WL) から6.2g (WC) の範囲で, 卵重に対して大体9.2 (WR)~10.2% (WC) であった。卵殼の厚さは0.337mm (WL) から0.378mm (WC) の範囲であった。卵黄色は, 白色卵殼の卵用種よりも有色殼の肉用種の方がやや濃厚であった。血点の平均出現率は2.9%で, 鶏種間に大差はなかった。肉斑の平均出現率は7.2%であったが, WRの14.4%の高い出現率がとくに注目された。2. 各種卵形質相互間の相関係数において, 卵重に対する卵白重および卵短径の間にはいずれもγ=0.8以上の高い値び得られた。卵重と卵黄重との関係は, WRが最も低く (γ=0.52), WLは最高 (γ=0.80) であった。卵重と卵白高ならびにH.U. との間の関係はそれほど密接ではなく, γ=0.26の最高値がみられたに過ぎない。卵白高とH.U. との間にはγ=0.94以上の高い値が得られた。またH.U. の修正効果について論議した。卵白重と卵の短径との間にはWL-Dを除いて0.8の相関値が得られ, また卵白重と卵白高との間にはWRを除いてγ=0.3がみられた。卵殼重と卵殼厚との間にはγ=0.7~0.8の高い値が推定された。3. 卵重, 卵短径および卵白重の反復率 (R) はいずれも0.8をこえる高い値であった。また卵殼重, 卵殼厚ならびに卵白高のRも0.6~0.8が推定された。
著者
河田 志帆 畑下 博世 金城 八津子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.186-196, 2014 (Released:2014-05-29)
参考文献数
33
被引用文献数
1

目的 ヘルスリテラシーの概念分析の結果を基に独自の尺度を作成し,性成熟期女性のヘルスリテラシー尺度の開発を試みた。20~39歳の女性労働者を対象に項目の選定,信頼性と妥当性を検討した。方法 先行研究の概念分析より抽出された要素を基に,内容妥当性および表面妥当性の検討を経て30項目の尺度を作成した。近畿圏および東海圏在住の20~30歳代の女性労働者を対象に,本調査として1,030人,追加調査として424人に自記式質問紙調査を行った。なお,追加調査で実施した再テストは,同意書に署名を得た協力者により実施した。尺度の信頼性の検討は,クロンバック α 係数,再テストにおける相関係数の有意性の検定により行った。一方,妥当性の検討は日本語版健康増進ライフスタイルプロフィール(JLV–HPLPII),成人用ソーシャルスキル評定尺度の下位尺度との相関,子宮頸がん検診受診行動別の尺度得点の比較により行った。結果 本調査の対象者は1,030人で,回収数632人(回収率61.4%),有効回答数622人(有効回答率98.4%)であった。追加調査の対象者は424人で,回収数は86人(回収率20.3%)で,有効回答数86人(有効回答数100%)であった。項目分析および主因子法プロマックス回転による因子分析を行った結果,4 因子,21項目が抽出され,累積寄与率は53.7%であった。4 因子は【女性の健康情報の選択と実践】,【月経セルフケア】,【女性の体に関する知識】,【パートナーとの性相談】と命名した。各因子におけるクロンバック α 係数は α=0.72~0.83,全体は α=0.88であり,再テストでの相関係数は尺度全体で r=0.85(P<0.01)であった。また,開発した尺度と JLV–HPLPII,成人用ソーシャルスキル評定尺度は,有意な正の相関(P<0.01)を示し,子宮頸がん検診受診行動別の尺度得点の比較では,子宮頸がん検診受診群の得点が有意に高かった(P<0.001)。結論 今回開発したヘルスリテラシー尺度の信頼性および妥当性は概ね確保されていた。子宮頸がん検診受診行動と尺度得点との間に有意な関連がみられたことから,女性特有の疾患の予防および早期発見・治療に向けたヘルスリテラシー教育への実用可能性が示唆された。
著者
浅利 美鈴 奥田 哲士 切川 卓也 酒井 伸一
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会研究発表会講演集 第29回廃棄物資源循環学会研究発表会
巻号頁・発行日
pp.161, 2018 (Released:2018-12-03)

被災した住民の方々(災害廃棄物を出したことのある人)を対象に、発災後の災害廃棄物に関する行動や評価の実態を把握するアンケート調査を実施した。結果、精神的なダメージを受けながらも、提示された分別に従おうとするスタンスが伺えた。他方、分別方法の提示はうまくいっているとは言えず、誤解も多い可能性が高いことがわかった。災害時の分別等に関する情報入手においては、コミュニティ(自治会や隣人付き合い)が重要であり、今後、平時のコミュニティ維持・再生も大変重要な側面となると考えられた。
著者
江口 淳子 小原 謙一 渡邉 進 石田 弘
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.481-485, 2008 (Released:2008-10-09)
参考文献数
23
被引用文献数
1 1

[目的]運動時間の違いによるジムボールを用いた脊柱可動性運動の効果を検討することである。[対象と方法]健常男性48名を運動時間60秒群,30秒群,15秒群,コントロール群の4群に無作為に分けた。60,30,15秒群はボール上で腹這位をとらせる脊柱可動性運動を行い,コントロール群は静止立位を15秒間保持させた。介入前後に脊柱可動性を計測した。各群での介入前後の比較と変化率の群間比較を行った。[結果]60,30,15秒群では体幹傾斜角と仙骨傾斜角の脊柱可動性運動後の値が運動前と比較して有意に大きかった。変化率の群間比較では60秒群の体幹傾斜角がコントロール群に比べ有意に大きい値を示した。[結語]ボールを用いた脊柱可動性運動は60秒間行うことで脊柱可動性が有意に変化することが示唆された。
著者
白濱 龍興
出版者
公益財団法人 日本学術協力財団
雑誌
学術の動向 (ISSN:13423363)
巻号頁・発行日
vol.10, no.6, pp.69-73, 2005-06-01 (Released:2009-12-21)
参考文献数
3
被引用文献数
2 2
著者
竹内 靖博
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.4, pp.658-666, 2016-04-10 (Released:2017-04-10)
参考文献数
10
被引用文献数
1

高カルシウム血症と低カルシウム血症は,いずれも症候性であれば適切な緊急対応が必要な病態である.意識障害と急性腎障害の場合は高カルシウム血症を,テタニーと痙攣の場合は低カルシウム血症の可能性を想起することが大切である.また,低カルシウム血症の原因として低マグネシウム血症が潜在する可能性にも配慮する.
著者
神野 雄
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
pp.27.2.2, (Released:2018-06-01)
参考文献数
53

本研究では,先行研究で知見が一貫していない恋愛関係の嫉妬傾向と自尊感情との関連について,自己愛的観点に着目することで知見を整理し直すことが目的であった。交際経験のある大学生160名を調査協力者として質問紙調査を行い,相関分析の結果,自尊感情は嫉妬の三次元すべてと明確な直線的関係にないことが示された。また階層的重回帰分析の結果から,特に嫉妬の情動的側面に対して自尊感情と自己愛の誇大性に相当する変数を同時に投入した場合は自尊感情が負の,「有能感・優越感」が正の有意な影響を示し,先行研究の知見の混乱は自尊感情が自己愛的な自己評価の高さと弁別して測定されていないために生じた可能性を見出した。さらに自己愛の過敏性に相当する変数と「注目・賞賛欲求」を投入すると,「注目・賞賛欲求」「自己愛性抑うつ」の影響が強く示されたため,自己評価の過敏さ・脆弱さが青年の情動的な嫉妬深さを規定しうることが示唆された。
著者
岩垣 博巳
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.613-620, 2007-11-01 (Released:2008-05-23)
参考文献数
7

担癌悪液質モデルマウスを用いて、脳内モノアミン神経活動、末梢ヒスタミン代謝、消化管セロトニン代謝について解析した。非担癌マウスに比し、悪液質マウスの脳内モノアミン代謝は、ドーパミンについては低下、セロトニン、ヒスタミンについては有意に増加し、それぞれ、運動量の低下、うつ的傾向、食欲不振に関与していることが示唆される。また、癌悪液質マウスでは、非肥満細胞におけるヒスチジン脱炭酸酵素が強く誘導されており、この結果、招来される末梢組織におけるヒスタミン代謝の亢進は、癌悪液質状態における交感神経の過緊張とともに、細胞性免疫の抑制を助長するものと考えられる。悪液質マウスの消化管において好クロム親和性細胞数の増加、並びに、セロトニン合成酵素活性の増加に伴うセロトニン含量の有意の増加が認められ、このことが求心性腹部迷走神経を活性化させ、癌悪液質にみられる嘔吐・悪心という臨床症状を引き起こすものと推定される。
著者
中村 朋朗 山根 寛司 山本 圭彦 浦辺 幸夫 福原 千史
出版者
公益社団法人 広島県理学療法士会
雑誌
理学療法の臨床と研究 (ISSN:1880070X)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.25-27, 2015-03-31 (Released:2018-02-14)

「目的」高齢者の姿勢変化で最も多いのは脊柱後弯変形である。変形に伴い背筋筋力が低下し、日常生活動作に支障をきたす傾向がある。現在、高齢者の体幹伸展筋力エクササイズの効果を検証した研究はいくつかあるが、長期的に効果をみた研究は少ない。 「方法」本研究では、平均年齢 76.6±5. 5歳の高齢者女性21名を円背群10名と非円背群11名に分け、6ヶ月間の体幹伸展筋力エクササイズを行い、エクササイズ開始時と6カ月後の体幹伸展筋力を測定し、変化を観察した。 「結果」円背群・非円背群共に体幹伸展筋力に向上を認めた。 「結論」脊柱後弯変形を呈する高齢者でも体幹伸展筋力エクササイズにより、長期的に筋力が向上することが示唆された。
著者
Aryung NAM Taewon KIM Qiang LI Robert B. REBHUN Hwa-Young YOUN Kyoung-Won SEO
出版者
JAPANESE SOCIETY OF VETERINARY SCIENCE
雑誌
Journal of Veterinary Medical Science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
pp.19-0043, (Released:2019-10-22)
被引用文献数
4

The Hedgehog-GLI signaling pathway is activated in human and canine osteosarcoma (OSA) and represents a potential therapeutic target for cancers, including OSA. Arsenic trioxide represses GLI expression. Melarsomine, an arsenic compound–containing drug, has been approved for the treatment of canine heartworm disease. Hence, we hypothesized that melarsomine inhibits GLI signaling in canine OSA cell lines. The present study aimed to assess this hypothesis. Cell viability and colony formation were decreased in the canine OSA cell lines Abrams and D17 after treatment with melarsomine. Melarsomine-induced apoptotic cell death was assessed via cell cycle analysis using propidium iodide staining. Quantitative real-time reverse transcription polymerase chain reaction and western blot analyses revealed a downregulation of genes downstream of the Hedgehog signaling pathway, including GLI1, GLI2, and PTCH, after melarsomine treatment. The present results suggest that melarsomine exerts antitumor effects and serves as a GLI inhibitor in canine OSA cells. Additional studies are required to evaluate and confirm the anticancer effect and relevant therapeutic dose of melarsomine in vivo.
著者
李 娥英 冨士田 裕子 五十嵐 博
出版者
植生学会
雑誌
植生学会誌 (ISSN:13422448)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.65-80, 2016 (Released:2016-12-25)
参考文献数
47

湿地生態系における生物多様性は,湿地周辺での農業活動や都市化のような様々な人為攪乱によって脅かされている.湿地の農地開発前後の植物相調査データを比較することにより,湿地の荒廃に伴う植物相の変化の特徴を明らかにすることを本研究の目的とし,北海道南部の静狩湿原で植物相調査を実施し,植物リストを作成した.リストでは,さらに開発以前に実施された植物リストと我々が作成した植物リストに出現する植物種を,湿地性在来植物種/非湿地性在来植物種/湿地性外来植物種/非湿地性外来植物種の4つの属性に区分し,絶滅危惧植物種と準絶滅危惧植物種も区別した.開発以前の植物リストと比較したところ,開発以後の方が維管束植物種の全体種数は増加していた.その内訳をみると,湿地性在来植物種の出現数は減少し,一方,非湿地性在来植物種,湿地性外来植物種,非湿地性外来植物種は増加していた.次に,開発以前の植物リスト,開発以後の残存湿原部植物リスト,湿原周辺部(湿原を道路,排水路,植林地に変えたところ)植物リストごとに,科別,属性別の種数を算出した.開発以後に残存湿原部で顕著に減少したのは,カヤツリグサ科とイグサ科の湿地性在来植物種であった.残存湿原部で多くのカヤツリグサ科とイグサ科の湿地性在来植物種が消失していたことから,これらの植物種は人為撹乱に敏感であり,生態的耐性が低いことが示唆された.一方,湿原周辺部では,キク科,イネ科,バラ科の湿地性在来植物種以外の属性の植物種が多く出現した.特に,湿原周辺部で新たに出現したキク科とイネ科の植物種は,人為撹乱に対して強い耐性を持ち,湿原域へ侵入しやすいことが示唆された.また,湿原面積の減少は希少植物種の消失につながることが示唆された.