著者
山下 陽輔 田野 聡 高岡 克宜 田岡 祐二 鶯 春夫
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2014, 2015

【目的】平成22年度の国民生活基礎調査によると,高齢者が要支援,要介護に至る要因の第4位は転倒による骨折で約1割を占めるという結果が出ている。加齢による敏捷性の低下が転倒の原因の一つとして考えられるが,敏捷性はトレーニングによって向上が見込めることが報告されている。SAQトレーニングはその代表的なトレーニングであり,速さをSpeed,Agility,Quicknessという構成要素に分けて考案された。その中でも敏捷性の向上を狙って最も多く活用されるのがラダートレーニング(以下,ラダー)である。ラダーは梯子状の器具を地面に敷き,1つの升を1歩ずつ順次進んでいくステップから,サイドステップやバックステップを取り入れたり,身体の捻りを加えたりするものなどパフォーマンスの必要性に応じて様々なバリエーションが活用されている。そこで今回は,ラダーを用いた高齢者の転倒予防プログラムを立案するために,健常成人を対象にステップ難易度を検討することを目的とした。【対象及び方法】対象は,下肢に器質的疾患のない健常成人男性17名(平均身長:171.6±5.3cm,平均体重:66.5±6.7kg,平均BMI:22.6±1.6kg/m<sup>2</sup>,平均年齢:31.2±5.9歳)とした。ステップ課題は日本SAQ協会編SAQトレーニングよりベーシックステップからジャンプ系ステップを除く10種目,ステップ1(クイックラン),ステップ2(ラテラルクイックラン),ステップ3(サイドラテラルラン),ステップ4(カリオカ),ステップ5(パラレル),ステップ6(シャッフル),ステップ7(1イン2アウト),ステップ8(サイド1イン2アウト),ステップ9(サイド2イン1アウト),ステップ10(バック1イン2アウト)を選択して実施した。ラダーはIGNIOトレーニングラダー(8m)を使用し,各ステップ課題を正しく遂行できるまで繰り返させた。そして,ステップエラーがなく,課題と同じように正しく遂行できたときの回数をステップクリア回数とし,ステップクリアできた際には,次のステップに進ませた。なお,実施前には映像を見せてステップを確認させた他,2回連続でエラーした場合には再度,映像を確認させた。そして,統計学的解析は各ステップ課題のステップクリア回数(中央値)をKruskal-Wallis検定を用いて検討し,有意差が認められた場合には多重比較検定を行った。なお,全ての有意水準は5%未満とした。【結果】各ステップ課題のステップクリア回数を比較した場合,ステップ1~3に対してステップ4~10で有意に高値を示した。また,ステップ4に対してステップ7,9が,ステップ10に対してステップ7,9が有意に高値を示した。各ステップ課題の中央値は,ステップ1~3は1回目,ステップ4は3(1-11)回目,ステップ5は4(1-9)回目,ステップ6は3(1-17)回目,ステップ7は7(2-11)回目,ステップ8は3(1-20)回目,ステップ9は5(1-20)回目,ステップ10は3(1-11)回目であった。【考察】ベーシックステップの中でも,特にステップ7のように身体を捻る動作や,ステップ9のように横方向への複雑なステップ課題でのステップクリア回数は多くなった。健常成人でも普段は身体を捻ったり,サイドステップを行う機会は少なく日常の活動では行わないことが原因であると考えた。また,複雑なステップであっても,ステップ7とステップ10のように前後の姿勢が異なるだけの同じステップでは,一度,ステップを経験したことが,その後のステップクリア回数に影響を及ぼしている可能性がある。これらのことから,初めは前向きでステップを正確に行い,正しい動きが身体にインプットされたらスピードを上げて敏捷性を向上させ,さらには横向きや身体を捻るステップを取り入れることがラダーの難易度を考慮したプログラムとなると考える。今後は女性や高齢者を対象に実施し,高齢者の転倒予防プログラムとして有用なラダートレーニングを検討したい。【理学療法学研究としての意義】SAQトレーニングは競技スポーツだけでなく,健康づくりにおいても大きな効果が期待され導入が進んでいる。今後,地域包括ケアシステムが推進され,介護予防事業の拡充が考えられるなかで,集団で敏捷性を向上させる転倒予防プログラムの構築は,理学療法学の研究としての意義があると考える。
著者
初沢 敏生
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.348-367, 2005-12-30 (Released:2017-05-19)

近年,産業集積地域における革新に関して多くの研究がなされている.これは地域経済を振興するための視点として重要であるが,地場産業産地に関しては,このような研究は十分に蓄積されているとは言い難い.そこで,本小論では益子陶磁器産地と笠間陶磁器産地を事例に,産地の革新の特徴と,それが地域的生産構造に与えた影響について検討した.地場産業産地の革新には,新製品開発と,それを支える技術・技能の習得システムが重要な役割を果たす.益子産地では濱田庄司の来住と民芸陶器の導入という外部からの刺激を産地として受け止め,さらにそのための人材育成システムが産地内部に形成されたことが産地の革新を可能にした.その後,これに対応する形で産地の生産・流通構造が形成され,産地を発展させた.しかし,生活様式の変化などに対応するため,現在,栃木県窯業技術支援センターなどが中心となり,新たな革新が進められつつある.一方,笠間産地では窯業指導所などの公的機関が産地の革新をリードした.ここでは窯業指導所が技術・技能面の研究・開発に加え,製品開発やその普及,人材育成などに関しても大きな役割を果たした.また,行政も産業基盤整備を積極的に行い,陶磁器業の発展を支援した.笠間産地の生産構造は,基本的にこの上に成り立つものである.近年,笠間産地も新たな課題に直面しているが,ここでは公的機関の支援による産地形成という枠組みを維持したまま新たな革新が進められている.産地の革新にあたっては,産地の内外をネットワーク化することが必要であるが,それにあたり,公設試験場の果たす役割が重要になってきている.
著者
上嶋 祐紀 住井 英二郎
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.1_139-1_154, 2009-01-27 (Released:2009-03-27)

C言語サブセットのプログラムを安全なJava言語のプログラムに変換する方式を実装した.そのような変換のためには,C言語独特の操作であるポインタ演算を,Javaプログラムで安全に模倣する必要がある.これを実現するために,まずC言語のポインタやメモリブロックを表現するJavaのクラスを定義した.次に,これらのクラスを利用するようなJavaへの変換規則を定め,規則に従ってトランスレータを実装した.また,C言語ではポインタと整数を相互にキャストすることが可能なので,整数もポインタと同様のオブジェクトに変換しなければならない.しかし,すべての整数をポインタと同様に表現すると大幅に効率が悪化する.そこで,データフロー解析により,ポインタが代入されない基本型の変数は,Javaの通常の基本型変数に変換する,などの最適化を実装した.9個のベンチマークプログラムで実験したところ,最適化前の変換結果コードは元のCプログラムに対し3.3倍~585倍程度の実行時間がかかったが,最適化後は(元のCプログラムに対し)1.3倍~5.9倍程度に改善した.
著者
井上 恭一
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会誌 (ISSN:00214663)
巻号頁・発行日
vol.66, no.7, pp.201-204, 2018

<p>航空自衛隊救難ヘリコプターUH-60Jは,シコルスキー・エアクラフト社製救難専用ヘリコプターHH-60Aの改造機である.本稿では平成2年度から運用が開始されているUH-60Jを母機として,今後の長きに亘る救難任務に対応するために行った装備の近代化について述べる.(平成27年度以降,航空救難団にて運用中)</p>
著者
中溝 昌佳 森嶋 厚行 杉本 重雄 北川 博之
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告データベースシステム(DBS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.72, pp.397-402, 2004-07-14
被引用文献数
5

WWWは社会的に重要なメディアの一つとなったが,その特徴である動的な更新,分散管理などの理由により,WWWコンテンツの一貫性維持は一般に困難である.我々は,WWWのリンク切れやリンク先の内容の変化への対応という,リンクの一貫性維持を支援するシステムの研究開発を行ってきた.我々のシステムのポイントは,信頼度が高いリンクである「リンクオーソリティ」の概念を導入したことである.しかし,これまでに提案したシステムにおいては,リンクオーソリティの利用は,(1)利用者がシステムに明示的にリンクオーソリティを与えた場合,もしくは(2)システムがたまたまリンクオーソリティを発見した場合,に限定されていた.リンクオーソリティはリンク一貫性維持のための有力な手がかりであるため,これを積極的に利用するためにリンクオーソリティの発見を支援する仕組みが必要と考えられる.本稿では,リンクオーソリティを利用者に提供するリンクオーソリティサーバと,リンクオーソリティを発見するためのアルゴリズムを提案する.WWW has become one of the important media in our society, but it is difficult to maintain the integrity of its contents in general. We have been developing a system to maintain the integrity of links, which can cope with dead links and changes of the page contents of link destinations. The point of our system is that we introduced the concept of link authority, which means a well-maintained link we can depend on. In the previous works on our system, however, link authorities are used only when (1) they are explicitly specified by users, or (2) the system happens to find them. Since link authorities are effective in maintaining the integrity management of links, a mechanism to automatically find link authorities would be beneficial. This paper proposes a link authority server, which provides users with information on link authorities, and explains an algorithm to find link authorities.
著者
清水 智恵 山中 沙織 西田 雄太 田中 淳 普後 一 島田 順
出版者
日本蚕糸学会
巻号頁・発行日
vol.83, no.1, pp.33-37, 2014 (Released:2014-09-03)

シロヘリクチブトカメムシを室内で省力的に増殖することを目的に,人工飼料による飼育方法の開発を試みた。クチブトカメムシの一種であるP. maculivientrisおよびP. sagitta用に開発された飼料(De Clercq and Degheele,1992)にカイコガ蛹乾燥粉末を加え,パラフィルムで密封処理した飼料片を作製した。冷凍保存したこの飼料片を用い,高い生存率でシロヘリクチブトカメムシを飼育することができた。また,16L8Dを長日,8L16Dを短日として若虫期,成虫期を飼育したところ,雌成虫に産卵を誘導するためには,成虫期の長日のみならず若虫期にも長日が必要であることが明らかとなった。1齢若虫期のみの長日条件でも成虫期が長日であれば産卵個体を得ることができるが,若虫期の長日期間が長いほど産卵個体が多くなることが示唆された。25℃飼育下における本種の生殖休眠は,成虫期の短日条件,あるいは全若虫期を通した短日条件で誘導されることが判明した。
著者
佐々木 恵 山崎 勝之
出版者
一般社団法人 日本健康心理学会
雑誌
健康心理学研究 (ISSN:09173323)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.1-9, 2004-06-25 (Released:2015-01-07)
参考文献数
19
被引用文献数
2 7

The primary goal of the present study was to investigate the mediational function of situational coping in the causal relationship between hostility and health status. In addition, the factorial validity and reliability of the situational version of the General Coping Questionnaire (GCQ) were tested. The dispositional version of GCQ has been standardized by Sasaki and Yamasaki (2002). The Buss-Perry Aggression Questionnaire, the General Health Questionnaire, and the GCQ were administered to 454 university students. The results indicated the factorial validity, internal consistency, as well as the normal distribution of scores in the situational version of the GCQ. Furthermore, a positive causal relationship between hostility and situational emotion expression, as well as a negative relationship between hostility and situational cognitive reinterpretation and problem solving were demonstrated. Moreover, the detrimental influence of hostility on health was confirmed. The results also suggest that there are certain positive causal relationships between situational coping and ill health, although situational coping did not improve ill health. Differences between the findings of previous and current study are discussed.

1 0 0 0 OA 家庭お伽文庫

著者
吉岡向陽, 高野斑山 編
出版者
春陽堂
巻号頁・発行日
vol.第十九篇, 1912
著者
明石 昇二郎
出版者
金曜日
雑誌
金曜日
巻号頁・発行日
vol.26, no.9, pp.16-21, 2018-03-09
著者
古川 雅英 赤田 尚史 卓 維海 郭 秋菊 楢崎 幸範 床次 眞司
出版者
日本エアロゾル学会
雑誌
エアロゾル研究 (ISSN:09122834)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.306-312, 2005 (Released:2007-01-12)
参考文献数
19
被引用文献数
2

In order to investigate the characteristics on natural radioactivity of loess, desert sand and eolian dust origin soil distributed in East Asia, analyses for 238U, 232Th and 40K concentrations by ICP-MS and ICP-AES, and for major chemical composition, SiO2, Al2O3, K2O, etc., by XRF have been performed on 48 samples collected from the wide area of China and three prefectures of Japan. The results for loess samples indicated that the concentrations of natural radioactive elements and major chemical composition are almost homogeneous over Chinese Loess Plateau. Also the results suggested that the basic material of the red soils developed on Quaternary limestone in Okinawa prefecture, southwestern part of Japan, is not weathering residual from the base rock, but the eolian dust from the high background radiation area in the southeastern part of China. These observations could give important keys to understand the origin place of the eolian dust in East Asia during the Quaternary.