著者
澤邉 紀生
出版者
日本情報経営学会
雑誌
日本情報経営学会誌 (ISSN:18822614)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.19-30, 2013-09-24 (Released:2017-08-07)

Drawing upon the concept of teleoaffective structure proposed by Schatzki (1996, 2002), the emotional dimension in relation to the teleological dimension of accounting practices is examined in this paper. Utilizing the data obtained from ethnographic field research of a financial institution which assists its clients to turnaround their business, it is found that instrumentally rational activities are systematically connected to the emotionality of the site. While on the teleological dimension, signifying chain links meanings of local activities with the strategic agenda set by the top management, a dilemma between discontinuity from the past and the perceived feasibility of business turnaround is overcome by the social signification generated on the emotional dimension of the site.
著者
河野 忠
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2008年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.179, 2008 (Released:2008-07-19)

四国八十八ヶ所霊場を巡る遍路道は古来重要な道として栄えてきた。この遍路道は時代的な背景によってかなりの変遷がみられ,相当大きなルート変更もあったことであろう。四国八十八ヶ所霊場は弘法大師が設定したことになっているが,遍路道はお遍路が開拓,整備していったものであると思われる。遍路道と湧水の空間的な存在意義は,社会学や民俗学的な観点から研究が行われている。しかし,現在のルートが何故設定されたのかという検討は行われていない。その一つの試論として,実用的および自然地理学的な観点から遍路道の存在意義を考え,八十八ヶ所霊場途中にある水場から検討する。 お遍路は札所を巡っていく際に,道中の水場で休憩し水を補給して旅を続けなければならない。従って,水場の無い遍路道は次第に廃れていき,水場のある遍路道が開拓されていったと考えることができる。この遍路道途中にある水場の中には弘法大師が杖を突いたら水が出たという「弘法水」の伝説が数多く語り継がれており,四国内だけで100ヶ所以上,全国で1400ヶ所前後存在していることが明らかとなっている(河野,2002)。四国では札所の寺院に弘法水が存在している場合が多いが,遍路道途中にも相当数の弘法水が存在している。従って,お遍路は途中に水場のあることを重要な条件として遍路道を策定し,そこに弘法大師の偉大な足跡を後世に残すために路傍にあった湧水に,弘法水の伝説を摺り合わせていったと考えられる。 一方,弘法水の水質は,一般的な湧水と比較してミネラル分が異常に多く含まれていることがわかっている(河野,2002)。遍路道のある四国はほぼ全域が堆積岩地帯であり,そこから湧出する水はミネラル分に乏しい。お遍路のように長距離を歩く人にとってミネラル分の補給は重要であり,そこで,経験的にミネラル分の多い水場が選ばれたのではないかと考えられる。実際,遍路道上の湧水とそれ以外の湧水のミネラル分を比較すると,倍近い濃度差が検出された。従って,四国遍路道における水場はお遍路にとって体調維持のために重要なミネラルに富んだ湧水のある道が淘汰され残されたものと考えることができる。
著者
安部 清哉
雑誌
人文 (ISSN:18817920)
巻号頁・発行日
no.8, pp.246-210, 2010-03-28

語彙史研究に関して、次のことを論じた。①研究史を概観し、理論的研究における課題を明らかにし、それを踏まえて、②語彙研究における研究パラダイムとして の「語彙的カテゴリー」を分類整理し、その体系化を試みた。また、③語彙独自の特性によって語彙史を解明することが有効であるという考えに立ち、語彙独自 の構造的特性と史的特性として、「反作用」「反現象」「中和」の諸現象と「部分語彙の諸特性」に関して論じた。
著者
矢谷 慈國
出版者
追手門学院大学人間学部
雑誌
追手門学院大学人間学部紀要 (ISSN:13418084)
巻号頁・発行日
no.14, pp.103-134, 2002

ブルカニロ図 / 秩序の弁証法的包摂関係 / 」U.P. / Signとsymol / 近代社会の疎外 / ルーティン化 / 部分的自己 / Total Self / 多次元的リアリティの一つとしてのキャンプ学習
著者
鈴木 慎太郎 本間 哲也 眞鍋 亮 木村 友之 桑原 直太 田中 明彦 相良 博典 柳川 容子
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 = Journal of the Showa University Society (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.78, no.3, pp.282-288, 2018-06

症例は38歳男性.自家製のお好み焼きを食べている最中から喉頭違和感,呼吸困難,眼球結膜の充血などを訴え救急搬送された.アナフィラキシーの診断で加療し,後日当科へ精査目的で来院した.患者には著しいダニ・ハウスダストによるアレルギー性鼻炎の既往があった.お好み焼きの具材に対する抗原特異性IgEによるアレルギー検査とプリックテストを行ったが全て陰性だった.問診上,開封後密封せずに常温で6か月以上経過した市販のお好み焼き粉を用いて調理したことが判明し,お好み焼き粉に混入したダニによるアナフィラキシーを強く疑った.お好み焼き粉を鏡検した結果,多数のコナヒョウヒダニが検出され,さらに,Dani Scan?(生活環境中のダニアレルゲン検出を目的とする簡易型検査キット)を用いた検査においても強陽性を示した.近年,お好み焼きやパンケーキ等の小麦粉製品に混入したダニを経口摂取して生じるアナフィラキシーの報告が急増している.診断のためには,調理に用いた小麦粉製品の保管状況の聞き取りと,感作が成立した同種のダニを発症前に摂取した調理材料中に証明することが求められる.今回,使用したDani Scan?は,一般家庭においても食品中のダニ汚染を検知する簡便なキットであり,本病態の診断や発症の予防に一定の効果が期待できるものと推察した.
著者
建内 宏重 谷口 匡史 森 奈津子 市橋 則明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.AcOF2020, 2011 (Released:2011-05-26)

【目的】 腹臥位での股関節伸展運動は、股関節伸展筋のトレーニングとして一般的に用いられている。しかし、股関節伸展運動には、骨盤・脊柱の前傾・伸展や回旋、および脊柱伸展筋群の過剰な筋活動を伴うことが多い。このような代償的な運動や筋活動は、腰痛のリスクにもなり得ると考えられる。したがって、股関節伸展運動時の運動パターンおよびそれに影響を与える要因について分析することは重要である。我々は、股関節伸展運動時の骨盤運動や体幹筋群の筋活動に影響を及ぼす要因として、股関節周囲筋の筋活動バランスを仮定した。すなわち、伸展運動時の同時活動(屈曲筋群の活動)や股関節伸展筋群内での筋活動優位性が運動パターンに影響を及ぼす可能性があると考えた。本研究の目的は、股関節伸展運動における股周囲筋群の筋活動バランスと運動時の体幹筋筋活動や骨盤傾斜との関連性を明らかにすることである。【方法】 対象は、整形外科的および神経学的疾患を有さない健常若年成人16名とした(男性9名,女性7名;年齢,24.3 ± 5.2歳)。測定課題は、ベッド上腹臥位での右股関節伸展運動(屈曲30度から伸展10度まで)とした。下肢の挙上位置を各被験者および各試行で一定にするために、伸展10度で大腿遠位部背面にバーが接するように予め設定した。1秒間でバーに大腿部が接するまで股関節を伸展し、その肢位を3秒間以上保持させた。骨盤・脊柱の固定は行わなかった。測定前には、課題に慣れるために複数回の練習を行った。 測定には、Noraxon社製表面筋電図と、Vicon社製3次元動作解析装置を用いた。筋電図の測定筋は、右側下肢の大殿筋(Gmax)、半腱様筋(ST)、大腿直筋(RF)、大腿筋膜張筋(TFL)、および両側の脊柱起立筋(腰部)、多裂筋(腰部)、外腹斜筋、内腹斜筋・腹横筋混合部の計12筋とした。各筋とも、股関節伸展位で保持している時の3秒間の平均筋活動量を求め、各筋の最大等尺性収縮時の筋活動量で正規化した。加えて、正規化した筋活動量から、RF/(Gmax+ST)、TFL/(Gmax+ST)、ST/Gmaxの各比を算出し、筋活動バランスの指標とした。なお、先行研究に基づいて、最大筋活動量の5%以上の筋活動を意味のある筋活動と定義し、活動量が5%未満の筋は分析から除外した。動作解析では、反射マーカーを両側の上後腸骨棘と腸骨稜頂点に貼付し、安静腹臥位の骨盤肢位を基準として股関節伸展位における骨盤の3平面の角度を求めた。筋活動量、骨盤角度ともに、5試行の平均値を解析に用いた。股関節伸展筋の個々の筋活動量、筋活動バランス指標と体幹筋筋活動量、骨盤角度との相関関係を、Spearmanの順位相関係数により分析した。【説明と同意】 倫理委員会の承認を得て、対象者には本研究の主旨を書面及び口頭で説明し、参加への同意を書面で得た。【結果】 Gmaxの筋活動量が高いと反対側の脊柱起立筋の筋活動量が高くなる傾向を示した(r = 0.58, p < 0.05)が、骨盤傾斜との関連はなく、右側STの筋活動量はどの変数とも有意な関係を認めなかった。伸展運動時のRFの筋活動量は、最大筋活動量の5%未満であったためRF/(Gmax+ST)は分析より除外した。TFLの筋活動量は最大筋活動量の5%以上であり、TFL/(Gmax+ST)が高いと骨盤の前傾角度が増加する傾向を示し(r = 0.52, p < 0.05)、同側の内腹斜筋・腹横筋混合部の筋活動量が増加する傾向を示した(r = 0.51, p < 0.05)。しかし、内腹斜筋・腹横筋混合部の筋活動量は最大筋活動量の5%未満であった。また、ST/Gmaxが高いと同側の脊柱起立筋筋活動量が高くなる傾向を示した(r = 0.57, p < 0.05)。【考察】 本研究の結果、股周囲筋の筋活動バランスが骨盤の前傾角度や脊柱起立筋の筋活動量に影響を与えることが明らかとなった。股関節伸展時に股屈曲筋であるTFLの過剰な同時活動があると股関節の伸展運動が制限されるため、代償的に骨盤前傾が増加したものと思われる。また、運動学的機序は明確ではないが、ST優位での股関節伸展運動は、同側の脊柱起立筋の筋活動増大につながる可能性も示された。股関節伸展に関わる筋のモーメントアームは、股関節伸展域ではSTよりもGmaxの方が大きくなるため、ST優位での股関節伸展運動は効率の悪い運動になると思われ、そのことが脊柱起立筋の筋活動増大を引き起こしているのかもしれない。【理学療法学研究としての意義】 本研究は、股関節周囲筋の筋活動バランスが骨盤の前傾角度や脊柱伸展筋群の過活動と関連することを示しており、臨床で多用される股関節伸展運動の注意点について重要な示唆を与えると考えられる。
著者
田中 康雄 菊崎 泰枝 中谷 延二
出版者
日本食品化学学会
雑誌
日本食品化学学会誌 (ISSN:13412094)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.67-76, 2002
参考文献数
32

精油50種類及びオレオレジン24種類について咽頭上気道細菌、<i>Streptococcus pyogenes</i>、<i>Haemophilus influenzae</i>、<i>Moraxella catarrhalis</i>に対する抗菌試験を行った。精油の中ではシナモンリーフ、セージ、クローブ、カルダモン、タイムに効果がみられ、オレオレジンではイチョウ、甘草、ナツメグに抗菌性が見られた。さらに代表的な精油成分より45種の揮発性化合物を選択し抗菌活性を調べた。精油成分の中ではcarvacrol、methyl chavicol、bornyl acetate、menthyl acetate、α-terpinyl acetate、viridiflorolに効果がみられた。カルダモン、ローレル、メリッサ精油と同様に3種の主要な成分geranyl acetate, menthyl acetate, α-terpinyl acetateは上気道微生物に対して有効な抗菌性成分となり得ることが示唆された。抗菌活性を示したシナモンリーフ油およびクローブ油の主成分eugenolは単独ではほとんど活性が認められなかったが、β-Caryophylleneに対してeugenolは優れた相乗効果を示すことが認められた。
著者
フランス近代法研究会 江藤 价泰 瓜生 洋一 荻原 貞正 貴田 晃
雑誌
大東法学 (ISSN:02870940)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.327-335, 1996-03-30

本稿は、引き続き第二部「人と家族」のうち、立法委員会が提案し、憲法制定議会が1792年に制定したデクレについて詳述する。すなわち、そこには三種類の離婚原因が明記された。第一は法定原因である(心神喪失、有罪判決、虐待、遺棄など7項目が定められた)。第二は双方の同意(協議離婚)である。第三は性格の不一致である。第三の原因の場合には、親族または友人による会議が3回開催され、申し立てが認められても少なくとも1年はかかるようにされた。また待婚期間は男女共に1年とされた。さらに、1794年デクレでは、第一の法定原因については六ヶ月の不在または遺棄のみとなり、第三の原因についても短期間で離婚が可能となった。さらに待婚期間は女性のみ10ヶ月とされ男性については廃止された。
著者
松尾 博一 山田 幸雄 増地 克之 松元 剛
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.353-367, 2019-06-17 (Released:2019-06-25)
参考文献数
31

The purpose of this study was to extract current issues associated with the understanding of tackling techniques taught by college football coaches in Japan. The goal was to acquire fundamental information for a coaching method that would promote safe and effective tackling techniques. A total of 99 college football coaches from Japan (mean age 36.7±0.5 years) took part in the study. A questionnaire was conducted in order to understand key points that were considered important in their coaching methods. The results and observations can be summarized as follows. 1. Tackling techniques taught by football coaches in Japan often lead to concussions. This is due to coaching methods that focus heavily on tackling techniques with high concussion risks, and placing no importance on HUT-based tackling. In addition, their understanding of the “Hit” phase and “HUT” varies, leading to a greater possibility of teaching tackling with a high risk of concussion. 2. Regardless of factors such as age, the position taken as an active player, the instructor’s income, and coaching qualifications, coaches who do not have much player or coach experience have an increased tendency to teach tackling techniques associated with high risks of concussion and injury. 3. In order to prevent concussions and promote safer tackling coaching in Japan, it is crucial for coaches who have little experience in playing or coaching to have access to appropriate information and education opportunities, and for coach certification programs to be improved.
著者
木戸 久美子 内山 和美 北川 眞理子 林 隆
出版者
山口県立大学看護学部
雑誌
山口県立大学看護学部紀要 (ISSN:13430904)
巻号頁・発行日
no.9, pp.31-40, 2005

本研究は、学齢期の子どもを持つ母親を対象とし、フォーカスグループインタビュー法を用いて子どもの成長とともに変化する育児の内容と母親が希望する育児支援のあり方を明らかにすることを目的とした。 母親が子どもに対して否定的な感情を持つ要因として、新生児期から就学期までは子どもの数や子どもとの相性が重要であると思われたが、子どもが学齢期になり母親が子どもと意志疎通可能になると、単なる子どもとの性格の不一致といった母親の主観に基づく認識のみで子どもに対する否定的な感情は芽生えにくくなることが推察された。
出版者
日経BP社 ; 1992-
雑誌
日経情報ストラテジー (ISSN:09175342)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.35-37, 2015-04

とはいえ、どれだけVOCを蓄積しても商品開発や品質改善にフィードバックできなければ、宝の持ち腐れになる。そこでVOCの活用に向けては「入力」に着目し、2つの仕掛けを用意した。 1つはVOCを6分類し、システムに登録したことだ。
著者
越智 敏夫
出版者
日本政治学会
雑誌
日本政治學會年報政治學 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.1_93-1_112, 2011

How and why do nation-states require loyalty from its people? In the discourse of "liberal nationalism", nation building is considered a necessary condition for the construction of liberal democracies. While it is widely believed that the nation-state as a political unit is an important framework underpinning political stability, throughout history one can find many examples of nationalism that has deconstructed democracy. It is for this reason that the actual relationship between nationalism and democracy should be examined. To consider this relationship, in this paper, we will first discuss the moment when loyalty is required of the people, especially the political dynamism surrounding the notion of philanthropy in the United States. Within the concept of philanthropy, the rich and successful seek to support the next generation and new immigrants. However these social ethics are located within efforts of the elite to reduce the national budget dedicated to social welfare. It is here that the state uses the citizen's loyalty for its own benefit. Secondly, we will demystify the discourse of the leftwing nationalists in the US, especially that of Richard Rorty, who emphasizes aspects of the democratic function of American nationalism, but whose theories also rely upon a complicated and subtle form of ethnocentrism. His arguments are seen as problematic when used to support democratic theories, because the people demonstrate loyalty to the state via ethnocentrism.
著者
岩本 真理子
出版者
北九州市立大学文学部
雑誌
北九州市立大学文学部紀要 (ISSN:13470728)
巻号頁・発行日
no.89, pp.57-73, 2019-03

日本およびドイツ、オーストリアの古本に残されていた書き込みから見えてくる世界に関するエッセイ。