著者
熊懐 稜丸
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.126, no.11, pp.1059-1085, 2006-11-01 (Released:2006-11-01)
参考文献数
66
被引用文献数
2 2

This review describes new syntheses of organofluorine compounds taking advantage of the special properties of fluorine compounds as synthones. The main reactions presented are as follows: 1) Trifluoromethylation of aryl or alkyl halides. Application of this reaction for the synthesis of fluorine analogues of nucleic acid bases is discussed. 2) Some syntheses of trifluoromethyl compounds using the Diels-Alder or the 1,3-dipolar reaction, trifluoromethylated carbene, and photoreaction. 3) The Friedel-Crafts reaction of 3,3,3-trifluoropropene, where linear alkylation occurs due to electronic effect of the trifluoromethyl group in good contrast with the Friedel-Crafts reaction of propene. 4) The ene reaction of trifluoromethylated carbonyl compounds, which work as good enophiles. Application of this reaction to the synthesis of trifluoro analogues of terpenes is discussed. 5) The ene reaction of trifluoromethylated imines. 6) Reaction of halothane, which has a highly acidic hydrogen and two halogens adjacent to the trifluoromethyl group and shows interesting reactivities with various bases and metals to give products with unexpected structures. 7) Reaction of 2-bromo-2,2-difluoroacetate with Cu, where the cross-coupling reaction, Michael-type reaction, and radical reaction for different types of difluoroacetates are presented. 8) Reaction of 2-bromo-2,2-difluoroacetate in the presence of Rh catalyst. This reaction provided a new methodology for the introduction of fluoroalkyl substituents to the α-position of α,β-unsaturated ketones. The Rh catalyst solved some difficulties in the introduction of difluoroacetate to carbonyl compounds (Reformatsky reaction). Application of this reaction to imines provided easy access to β,β-difluoro-β-lactams.
著者
水本 深喜
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.111-126, 2018-06-30 (Released:2018-08-10)
参考文献数
36
被引用文献数
8

本研究では,青年期後期にある子が捉える親との関係について「精神的自立」と「親密性」から捉え,それらの父息子・父娘・母息子・母娘関係の差を明らかにした。首都圏の大学生に質問紙調査を行い,まず「親子関係における精神的自立尺度」および「親への親密性尺度」を作成した(分析Ⅰ)。これらの尺度を用いて親子関係差を分析すると,娘が捉える母親との関係は,他の組み合わせの親子関係と比較して信頼関係が高く,親密性が総じて高かった。加えて,娘は父親とは分離した認識を強く持っていた(分析Ⅱ)。精神的自立と親密性との関連をみると,親子関係の組み合わせにより,親との信頼関係の築き方が異なっていた(分析Ⅲ)。最後に「信頼関係」と「心理的分離」の2軸による親子関係の4類型を用い,親との関係が子の自尊感情,自律性,主体性に与える影響について検討すると,父親との関係においては,心理的に分離することが,子の適応や発達を高めていた。自尊感情において性差が見られ,母親と信頼関係を築かないままに心理的に分離している場合の娘の自尊感情は低かった(分析Ⅳ)。総合考察では,これらの検討から明らかになった親子関係の性差について論じた。
著者
田力 正好 水本 匡起 松田 時彦
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.232, 2013 (Released:2013-09-04)

活断層(縦ずれ)の断層崖は,その成長と共に比高を増大させ,重力的に不安定となる.その結果,断層崖では地すべり・崩壊などのマスムーブメントが発生しやすくなると考えられる.縦ずれ断層が多く,新第三紀以降の固結度の弱い岩石が多く分布する東日本(糸魚川-静岡構造線(糸静線)以東)においては,特に高頻度で発生していることが予想される.本発表では,東日本のいくつかの活断層帯において,断層崖に生じたマスムーブメントの実例を示し,その形態や変形の特徴,断層崖の形態に及ぼすマスムーブメントの影響,活断層のマッピング・変位量の測定等の際に注意すべき点などについて述べる.断層崖沿いに重力的な変形(マスムーブメント)が認められることは珍しくない.断層崖に地すべり等のマスムーブメントが生じている場合,重力的な変形の影響を受けてテクトニックな要因のみの変形の場合に比べて低断層崖の位置がずれたり,変位量が大きくなったりする可能性がある.このため,活断層のマッピングや変位量の測定の際には,重力的な変形の影響の有無を検討することが必要である.特に大規模な地すべりや,地すべり地形が不明瞭な場合には,断層近傍の地形のみに着目すると地すべり地形を見落とす可能性があるため注意が必要である.
著者
武藤 教志
出版者
医学書院
雑誌
精神看護 (ISSN:13432761)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.317-327, 2018-07-15

この特集の目的 毎日の看護記録に何を書けばいいんだろう? これで良い看護記録と言えるだろうか? 悩みますよね。精神科は本当に不思議なことに、あらゆる診療科の中で看護記録の独り立ち時期がすごく早い。新人は、数回、数日、看護記録の書き方(と言うより、その施設の記録に関する公式ルールと暗黙の了解)の手ほどきを受け、見よう見まねでやっていくものの、記録の基本形も、良い記録とはどのようなものなのかもわからないままの独り立ちです。
著者
佐藤 和之
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.126, no.8, pp.597-605, 2006-08-01 (Released:2006-08-01)
参考文献数
30
被引用文献数
2 2

Novel fluoroalkylated products where a CF2COOEt group was introduced at the α-position of α,β-unsaturated ketones or the Reformatsky-type products have been obtained selectively by the reaction of BrCF2COOEt and α,β-unsaturated ketones with Et2Zn in the presence of RhCl(PPh3)3 depending on the solvents. Furthermore, the novel α-fluoroalkylated products could synthesize by using various halofluoroalkyl compounds (Rf-X) instead of BrCF2COOEt. On the other hand, this Reformatsky-type reaction by imines gave difluoro-β-lactams or 3-amino-2,2-difluorocalboxylic esters without or with MgSO4•7H2O, selectively.
著者
藤永 壯 高 正子 伊地知 紀子 鄭 雅英 皇甫 佳英 高村 竜平 村上 尚子 福本 拓 塚原 理夢 李 陽子 フジナガ タケシ イジチ ノリコ タカムラ リョウヘイ ムラカミ ナオコ フクモト タク ツカハラ リム / Takeshi FUJINAGA Jeongja KO Noriko IJICHI Ahyoung CHUNG Kayoung HWANGBO Ryohei TAKAMURA Naoko MURAKAMI Taku FUKUMOTO Rimu TSUKAHARA Yangja LEE
雑誌
大阪産業大学論集. 人文科学編
巻号頁・発行日
vol.122, pp.99-123, 2007-06

本稿は,在日の済州島出身者の方に,解放直後の生活体験を伺うインタビュー調査の第4回報告である。かつて私たちは3回分の調査報告を『大阪産業大学論集 人文科学編』第102~105号(2000年10月,2001年2月,6月,10月)に掲載したが,メンバーの就職,留学などの事情でしばらく活動を中断していた。その後,2005年より新しいメンバーを加えて調査を再開させることができ,その最初の成果が本稿ということになる。なおこの調査の目的や方法などは,「解放直後・在日済州島出身者の生活史調査(1・上)」前掲『大阪産業大学論集 人文科学編』第102号,に掲載しているので,ご参照いただきたい。今回の記録は,東大阪市在住の李健三さん(仮名)のお話をまとめたものである。李さんは1937年,大阪市のお生まれだが,ご両親は,韓国・済州道済州市朝天邑新村里(現行の行政地名)のご出身である。また,インタビューには妻の張玉蓮さんが同席してくださった。張さんは1934年,済州道済州市禾北洞(現行の行政地名)のお生まれである。(済州道は2006年7月1日より「済州特別自治道」となり,北済州郡は済州市に,また南済州郡は西帰浦市に統合された。したがって現行の行政地名は,前3回の調査報告時から変更されている場合がある。)インタビューは2006年4月29日,東大阪市の李さんのご自宅で,藤永壯・高正子・伊地知紀子・鄭雅英・皇甫佳英・高村竜平・福本拓・塚原理夢の8名が聞き手となって実施し,これに村上尚子が加わって,テープ起こしと第1次編集をおこなった。李さん,張さんに第1次編集原稿をチェックしていただき,テープ起こしに際しての不明箇所を確認するため,2007年2月19日,藤永が再度李さん宅を訪問した。鄭と伊地知が全体の整理と校正,村上と藤永が用語解説,鄭と高がルビ校正,福本が参考地図の作成,藤永が最終チェックを担当した。なお李さん,張さんご夫妻の三女・李陽子さんには,インタビューに同席していただき,確認作業でも多大なご協力をいただいたため,記録者の一員としてお名前を掲載させていただくことにした。以下,凡例的事項を箇条書きにしておく。(1)本文中,文脈からの推測が難しくて誤解が発生しそうな場合や,補助的な解説が必要な場合は,[ ]で説明を挿入した。(2)とくに重要な歴史用語などには初出の際*を付し,本文の終わりに解説を載せた。なお前3回の調査報告からかなり時日が経過しているため,今回は以前掲載した用語も再掲することとした。(3)朝鮮語で語られた言葉は,一般的な単語や固有名詞などの場合には漢字やカタカナで,特殊な単語や文章の場合はハングルで表記し,日本語のルビをふった。(4)インタビューの際に生じたインタビュアー側の笑いや驚きなどについては,〈 〉で挿入した。
著者
瀬下 卓弥 武川 直樹 湯浅 将英 笠松 千夏 立山 和美
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 60回大会(2008年)
巻号頁・発行日
pp.233, 2008 (Released:2008-11-10)

目的近年,個食の増加が人の様々な面に影響する問題として指摘されている.解決策として共食を推奨するが,その根拠を検証する必要がある.人の食事行動を映像分析し,共食の効果を検証することを目的とする.方法会話分析,行動分析の手法を援用し,共食中の人の行動を撮影して映像分析する.分析材料として,二人が横並びになってラーメンを食べながら会話する設定を用いる.食事中のコミュニケーションを,視線の方向(だれが何を見ているか),食行動の状態(スタンバイ:手が食器から離れている/レディー:手に箸や容器をもっている,麺をつかんでいる/ゴー:口に入れた,咀嚼中)によって分類し分析する.分析は,食状態,発話を時間にそって記述し,定量的な分析をするとともに,人の食べたい,話したいなどの気持ちを読み取る.結果2名3組の共食シーンを収録し,約3分間の行動を書き起こし,発話,食行動,視線量の頻度などを測定した.その結果,実験協力者Aはスタンバイ状態の表出が90秒以上に対し,Bが10秒ほど,Aはレディー状態からゴー状態へ遷移するとき相手へ視線を送る回数が4回に対し,Bは1回以下であった.また,Aの発言量は73秒に対し,Bは26秒であった.これらの数値からこの3分間のコミュニケーションにおいて,Aは会話に対する意欲がBよりも高く,Bは食べる行動の意欲が高いといえる.このような分析は,食行動におけるルールや個性,癖など,人の食事中のコミュニケーションの仕組みを明らかにし,味の評価だけでなく,コミュニケーション満足度の評価指標の確立にも寄与すると考える.今後,分析対象データを増やし,視線配分量や食行動配分量などの行動と共食の満足度との関係を明らかにする.
著者
飯塚 一郎
出版者
山形大学
雑誌
山形大學紀要. 農學 (ISSN:05134676)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.795-801, 1969-03-20

冬季の温州みかんの落葉防止として葉面散水を行なうため,先ず葉の吸水について水温および界面活性剤添加との関係を調査した.実験結果の要約されたものは次のようである.1.温州みかんの切葉は乾湿いずれも浸水後10分間では急激に吸水を行ない,乾いた葉は湿った葉より急速に吸水を行なった.2.葉の上下面にワゼリンが塗布されたとき,葉の全面よりの吸水が最も高く,下面よりの吸水量は全面よりの吸水量と上面よりのそれの中間に位した.3.O℃~5℃の水温に浸された葉の吸水は殆んど行なわれなかったが,10℃~20℃の水温の吸水はかなり行なわれ,25℃で最高に達し,30℃ではかえって低下した.界面活性剤を添加された水は添加しない水より著しく吸収され,また温度上昇に伴って増加の傾向を示した.4.界面活性剤を添加された水は0.1%の濃度で最も早く吸収され,その吸水量は20℃で浸水後1時間で添加されない水の吸水量の約5倍であった.
著者
豊国
出版者
魚栄
雑誌
源氏後集余情
巻号頁・発行日
1857