著者
河合 大介
出版者
美学会
雑誌
美学 (ISSN:05200962)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.1-12, 2012

After "The Intentional Fallacy" (1946/54) by W. K. Wimsatt Jr. and M. Beardsley, the role of the artist's intention in the interpretation of artwork has been one of the central topics in analytical aesthetics. Recently, this issue has been mainly debated between moderate actual (MAI) and hypothetical intentionalism (HI). In this paper, I demonstrate some difficulties of MAI, comparing it with HI. First, I survey Carroll's version of MAI and point out its main arguments: accessibility to "actual intention" and the reliance on private documents. I examine them and show that the discrimination of MAI from HI is unclear. Additionally, I insist that, against Hans Maes' arguments, MAI has no advantages in interpreting contemporary art, because MAT overlooks the distinction between "semantic" and "categorial" intention, which Levinson draws. Since contemporary art employs diverse materials which have no code to mean something, semantic intention cannot play any role in making such artwork. Instead, categorial intention is the precondition for making it art and tells us how it is to be conceived or approached. Through this examination, I argue that there is no reason to maintain MAT, at least in Carroll's version.
著者
野口 美幸 飯島 啓太 野呂 文行
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.163-173, 2008-05-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
2

本研究では、特定不能の広汎性発達障害と診断され、攻撃的行動を示す児童を対象として機能的アセスメントに基づく介入を行い、その効果を検討した。対象児は介入開始時7歳9か月の男児であった。機能的アセスメントの結果より、1)友人の注目を得るために攻撃的行動を行う、2)欲しいものや状況を得るために攻撃的行動を行うという仮説を立てた。そこで、攻撃的行動の代替行動によって注目を得られるように代替行動分化強化を実施した。また、攻撃的行動による強化の獲得機会を低減するためにタイムアウトを行った。その結果、べ一スライン期には、攻撃的行動が15観察単位以上観察されていたが、代替行動分化強化を行った週は13観察単位観察され、その後タイムアウトを導入した後、徐々に観察単位数が低減した。本研究の結果から、攻撃的行動を示す特定不能の広汎性発達障害児に対して機能的アセスメントに基づく介入が有効であることが示唆された。
著者
村田 勉 柳田 敏雄
出版者
日本神経回路学会
雑誌
日本神経回路学会誌 (ISSN:1340766X)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.139-146, 2001-12-05 (Released:2011-01-31)
参考文献数
18
被引用文献数
1 1

視覚的意識のダイナミクスを明らかにするため, 人間被験者における知覚闘争の生起時間の統計的分布を精密に解析したところ, 意識にのぼる見えの切替りの背後に量子的(不連続)な脳の状態とその間の確率的遷移過程が存在することがわかった. その神経メカニズムのてがかりを得るため, 機能的磁気共鳴法により脳の関連賦活部位を調べたところ, 大脳皮質の広域的ネットワークが関わっていることがわかった. 統合された知覚像が意識されるために, システムとしての脳がいかに動作すべきなのかという点についてもダイナミクスの観点から議論したい.

6 0 0 0 OA 官報

著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1920年01月29日, 1920-01-29

6 0 0 0 OA 煮くたれて

著者
河東碧梧桐 著
出版者
双雅房
巻号頁・発行日
1935
著者
岡村 正幸
出版者
佛教大学福祉教育開発センター
雑誌
福祉教育開発センター紀要 (ISSN:13496646)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.13-31, 2017-03-31

本稿では主として大学における社会福祉教育とそのもとでの社会福祉専門職教育とともにその中核をなすソーシャルワーク教育の相互関係を福祉臨床論の視点から取り上げる。とくにわが国の大学教育としての社会福祉教育の歴史的な蓄積は、1987 年及び1997 年の両国家資格制度の導入以後、職業教育としての社会福祉専門職教育が「読み替え」を通し、大学教育の中核に導入されることによって大きな変容を見せている。そこでは国家試験出題基準を強く意識した指定テキスト教育の強化によりあたかもテキスト科目の知識の取得がカリキュラムを通してソーシャルワーカーになるかも知れない学生の唯一の目標になりかねない危惧を見せている。そこには歴史的に形成発展してきた社会福祉の社会的機能やそれらの基礎となる社会福祉の哲学、思想や社会や人への理解を深める学問の軽視がある。ここではそうした現実を踏まえ、特にわが国での「不幸な出会いともいえる社会福祉教育とソーシャルワーカー教育」1)のもと、いかに大学での社会福祉教育の一環としてのソーシャルワーク教育を進めていくのか、ソーシャルワークプロセス構造を取り上げ検証する。その際、「物語の中のソーシャルワーク」という視点、方法をとる。物語(ナラティブ)ソーシャルワークプロセス福祉臨床論福祉援助専門職教育
著者
中村 大輝 松浦 拓也
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.21-24, 2022-03-06 (Released:2022-03-03)
参考文献数
14

多くの先行研究が幼少期の自然体験と将来的な学業変数の関連を指摘しているが,そのほとんどは観察研究のデザインを採用しており,因果効果を検討する上での重要な問題を抱えている.因果効果を検討する上で最も望ましい研究デザインはランダム化比較試験だが,自然体験を行うか否かをランダムに割り付ける研究は実施困難である.このような状況における次善策として,本研究では傾向スコアを用いた因果推論の技法に着目し,観察研究のデータから幼少期の自然体験が持つ因果効果を推定することを目指した.東京大学社会科学研究所とベネッセ教育総合研究所が実施している縦断調査である「子どもの生活と学びに関する親子調査」の公開データを用いて,小学校1年生までの自然体験が小学校4年時の理科学習への態度に及ぼす因果効果を検討した.傾向スコアを用いた分析の結果,単発的な幼少期の自然体験の効果は認められない一方で,日常的に習慣化された幼少期の自然体験は,小学校4年時の理科学習への好意的な態度を向上させることが示された.
著者
朴 沙羅
出版者
社会学研究会
雑誌
ソシオロジ (ISSN:05841380)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.89-104,173, 2010-02-28 (Released:2015-05-20)
参考文献数
18

The purpose of this article is to examine what actually happened in the Suita incident, a well-known political riot in postwar Japan, and how the incident was told and reconstructed after it took place. The Suita incident is famous in the history of Japanese social and political movements for its nonviolence, cooperation with Korean Japanese, and the victory in a trial which lasted for 20 years. However, even though this incident is well known and often recounted, and although it critically influenced the Japanese Communist Party, which organized the incident, there are few studies which clarify “what happened”, and “how events are narrated” by whom, how and why. Therefore, using documentary resources and interviews with the participants, this article first looks at “what happened” in the Suita and Hirakata incidents, and then examines how these two incidents have been recounted and their images have been molded by three component entities, namely the Japanese Communist Party, Korean Japanese, and the Japanese government. The “Suita incident” was, in a sense, very useful for all three, and all three profited from it by making partisan speeches on this political riot, slanted in a particularly favorable way for each.
著者
吉田 幸一
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.308-315, 2019

<p> 保湿剤や食物の早期摂取によるアレルギー疾患の発症予防に関する研究結果が報告され, 医療機関での診療だけでなく, 離乳食の開始など一般的な生活にも大きな影響を与え始めている. </p><p> 高緯度地域にアレルギー疾患をもつ患者が多いという横断的疫学調査の結果から, ビタミンDはアレルギー疾患の発症に関連がある因子の1つとして以前から考えられていた. その後, ビタミンDが免疫や肺の発育にも影響を及ぼすことやビタミンD欠乏症がアレルギー疾患発症のリスクになることが報告され, 最近では, 妊娠中のビタミンDサプリメントによる乳幼児の喘鳴抑制効果を示したランダム化比較試験の研究結果が報告されている. しかし, 食物アレルギーやアトピー性皮膚炎など他のアレルギー疾患に対する抑制効果を示す研究は少なく, 現段階ではアレルギー疾患の発症予防のためにビタミンDサプリメントを使用するエビデンスは十分ではなく, 推奨されない. 臨床応用までにはさらなる研究が必要である. </p>