著者
合六 強 二松学舎大学国際政治経済学部
出版者
GRIPS Policy Research Center
雑誌
GRIPS Discussion Papers
巻号頁・発行日
vol.18-03, 2018-06

1968年7月に署名が開放され、70年3月に発効した核不拡散条約(NPT)は、国際的な不拡散体制の重要な礎石であり続けてきた。NPTの締結後、その発効の鍵を握っていたのは、西ドイツであった。ソ連は西ドイツのNPT署名を自国の批准の条件としており、米国もソ連との同時批准を求めていたからである。しかし、NPTをめぐり国内が分裂していた西ドイツは、68年7月時点での署名を見送り、最終的に署名を決定したのは69年11月のことであった。本稿は、これまで十分注目されてこなかったNPT締結後の時期に、米国のジョンソン・ニクソン両政権が、西ドイツのNPT署名を得るためにいかなる外交政策を展開したのかを明らかにする。The Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons (NPT), which was opened for signature in July 1968 and entered into force in March 1970, has been the core component of the international nuclear non-proliferation regime. The key to the entry into force was the West Germany’s signature of the NPT. The Soviet Union had been firmly resolved that the FRG’s signature was precondition for its ratification, and the United Stated had pursued the joint Soviet-U.S. ratification. However, West Germany refused to sign the treaty in July 1968, and it took a year before its final decision to join it. This paper examines the U.S. efforts to secure the West Germany’s signature of the NPT, particularly focusing on the last year of the Johnson administration and the first year of Nixon administration.
著者
神作 研一
出版者
大学共同利用機関法人 人間文化研究機構 国文学研究資料館
雑誌
日本古典籍講習会テキスト
巻号頁・発行日
no.15, pp.1-6, 2018-01-16

本テキストは、「第15回日本古典籍講習会(平成29(2017)年度)」(2018.1.16-19:国文学研究資料館、国立国会図書館共催)で使用された資料の一部です。
著者
安田 雪
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.33-46, 2013-12

This paper examines how dissemination by demagogues occurred and how hubs contributed to the rapid and widespread information diffusion in social media, namely Twitter. Examining the 40,711 demagoguerelatedtweets we crawled using TTC, just after the Great East Japan Earthquake, the hubs' role in quick information diffusion was confirmed. Furthermore, we found that powerful information diffusion was causedby those we labeled "ignorant influencers" who have a large number of followers but display little knowledge. At a micro level, ignorant influencers do little harm; yet, at a macro level, when they are aggregated, they can cause serious information distortion in social media.本研究では、東日本大震災発生直後に収集した、「コスモ石油二次災害防止情報関連ツイートデータ」を用い、震災時におけるソーシャルメディア上の情報拡散行動及び情報拡散の状況の分析を行った。その結果、ソーシャルメディア上で個々のユーザーがもつ情報伝播力及び他者に対する影響力は、本人が保持する知識量とは完全に独立であり、ミクロレベルにおけるその差が、マクロレベルにおいてソーシャルメディア上で全体として拡散する情報の正確さや精度に著しい影響を及ぼすことを確認した。ソーシャルメディアを利用する個々のユーザーの影響力と、そのユーザーのもつ情報の正確さや知識量は独立であるにもかかわらず、一部の人々が著しい情報伝播力を持つことが、不正確な情報が膨大に拡散する重要な要因となっている。震災などの緊急時においては、可能なかぎり豊富で正確な知識をもつ人あるいは専門的な判断力を持つ人の直接的、間接的な情報伝播力をいかにあげるかが、ソーシャルメディアの発信する情報の信頼性を担保するために重要であることを指摘できる。結論として、ソーシャルメディア上の情報の拡散及び収束の困難性が、ソーシャルメディアのインフラともいえる人間関係そのもの認識及び統制の困難さに起因することを明らかにする。本研究の実施にあたっては、関西大学震災復興研究費の助成をいただいた。
著者
中村 知夫
出版者
一般社団法人 日本臓器保存生物医学会
雑誌
Organ Biology (ISSN:13405152)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.21-30, 2019 (Released:2020-03-01)
参考文献数
20

急性期治療の後に, 医療ケアーや, 医療機器を必要とする子どもが増加している. これらの子どもたちは, 初期そして専門医療やその他の保育, 教育, 福祉, 社会サービスを利用することは容易ではない. そのために, これらの子どもたちは今まで病院や施設のみに存在すると考えられていた. しかし, 今まで高齢者が主に利用していた在宅医療を子どもたちが利用できるようになってきている. 近い将来, これらの医療的ケア児も, 地域包括ケアシステムや地域共生社会の恩恵を受けることができることが期待されている.
著者
稲本 守
出版者
東京海洋大学
雑誌
東京海洋大学研究報告 (ISSN:21890951)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.45-54, 2009-03-27

国連海洋法条約101条は海賊行為を、私有の船舶の乗組員が、私的目的のために行う略奪行為と定義している。しかし歴史上の多くの海賊が、実際には国家によって認可され、植民地の防衛や戦時における海商破壊等の公的目的を果たしていた「私掠船」であったことを考えるなら、「私有の船舶」及び「私的目的」の意味を明確にすることは難しい。そこで本論はまず私掠行為の発生と歴史的展開を考察し、国家が私掠船を奨励、もしくは黙認した歴史的背景と動機の解明につとめることにより、私掠行為の一貫した特長として、一定の国家戦略の存在を指摘した。更に本論は、19 世紀半ばに私掠行為が廃止された経緯を、主に国家による軍事力独占の過程から説明した。言い換えれば国家は、海上における軍事力を独占し、海賊を「万民の敵」とすることによって初めて海上における主権を確立したのである。The article 101 of the United Nations Law of the Sea defines "piracy" as "any act of depredation, committed for private ends by the crew …of a private ship". But it is still hard to make clear what "a private ship" and "private ends" mean, taking into consideration especially the fact that many historical pirates were legally "privateers", authorized by the state, serving the public ends such as the protection of the overseas colonies or commerce raiding in times of war. The following article tries to recognize the presence of a certain national strategy as a consistent feature of privateering, by describing its emergence and development and then examining its historical background and the strategic motives of the state to promote or condone it. The article then explains the process toward the abolition of privateering in the mid-19th century, mainly indicating the monopolization process of the means of violence by the state. In other words the state could finally establish its sovereignty at sea by abolishing privateering and declaring the pirates of any kind as "enemy of mankind".東京海洋大学海洋科学部海洋政策文化学科
著者
長谷川 直子 横山 俊一
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2015, 2015

<b><u>1. </u></b><b><u>はじめに</u></b> サイエンス・コミュニケーションとは一般的に、一般市民にわかりやすく科学の知識を伝えることとして認識されている。日本においては特に理科離れが叫ばれるようになって以降、理科教育の分野でサイエンス・コミュニケーターの重要性が叫ばれ,育成が活発化して来ている(例えばJSTによる科学コミュニケーションの推進など)。 ところで、最近日本史の必修化の検討の動きがあったり、社会の中で地理学の面白さや重要性が充分に認識されていないようにも思える。一方で一般市民に地理的な素養や視点が充分に備わっていないという問題が度々指摘される。それに対して、具体的な市民への啓蒙アプローチは充分に検討し尽くされているとは言いがたい。特に学校教育のみならず、社会人を含む一般人にも地理学者がアウトリーチ活動を積極的に行っていかないと、社会の地理に対する認識は変わっていかないと考える。 <b><u>2. </u></b><b><u>サブカルチャーの地理への地理学者のコミット</u></b> 一般社会の中でヒットしている地理的視点を含んだコンテンツは多くある。テレビ番組で言えばブラタモリ、秘密のケンミンSHOW、世界の果てまでイッテQ、路線バスの旅等の旅番組など、挙げればきりがない。また、書籍においても坂道をテーマにした本は1万部、青春出版社の「世界で一番○○な地図帳」シリーズは1シリーズで15万部や40万部売り上げている*1。これら以外にもご当地もののブームも地理に関係する。これらは少なくとも何らかの地理的エッセンスを含んでいるが、地理以外の人たちが仕掛けている。専門家から見ると物足りないと感じる部分があるかもしれないが、これだけ多くのものが世で展開されているということは,一般の人がそれらの中にある「地域に関する発見」に面白さを感じているという証といえる。 一方で地理に限ったことではないが、アカデミックな分野においては、活動が専門的な研究中心となり、アウトリーチも学会誌への公表や専門的な書籍の執筆等が多く、一般への直接的な活動が余り行われない。コンビニペーパーバックを出している出版社の編集者の話では、歴史では専門家がこの手の普及本を書くことはあるが地理では聞いたことがないそうである。そのような活動を地理でも積極的に行う余地がありそうだ。 以上のことから,サブカルチャーの中で、「地理」との認識なく「地理っぽいもの」を盛り上げている地理でない人たちと、地理をある程度わかっている地理学者とがうまくコラボして行くことで、ご当地グルメの迷走*2を改善したり、一般への地理の普及を効果的に行えるのではないかと考える。演者らはこのような活動を行う地理学者を、サイエンス・コミュニケーターをもじってジオグラフィー・コミュニケーターと呼ぶ。サブカルチャーの中で一般人にウケている地理ネタのデータ集積と、地理を学ぶ大学生のジオコミュ育成を併せてジオコミュセンターを設立してはどうだろうか。 <u>3.</u><u> 様々なレベルに応じたアウトリーチの形</u> ジオパークや博物館、カルチャースクールに来る人、勉強する気のある人たちにアウトリーチするだけではパイが限られる。勉強する気はなく、娯楽として前出のようなサブカルチャーと接している人たちに対し、これら娯楽の中で少しでも地理の素養を身につけてもらう点が裾野を広げるには重要かつ未開であり、検討の余地がある。 ブラタモリの演出家林さんによると、ブラタモリの番組構成の際には「歴史」や「地理」といった単語は出さない。勉強的にしない。下世話な話から入る。色々説明したくなっちゃうけどぐっとこらえて、「説明は3分以内で」というルールを決めてそれを守った。とのことである(Gexpo2014日本地図学会シンポ「都市冒険と地図的好奇心」での講演より抜粋)。専門家がコミットすると専門色が強くなりお勉強的になってしまい娯楽志向の一般人から避けられる。一般ウケする娯楽感性は学者には乏しいので学者外とのコラボが重要となる。 演者らは&ldquo;一般の人への地理的な素養の普及&rdquo;を研究グループの第一目的として活動を行っている。本話題のコンセプトに近いものとしてはご当地グルメを用いた地域理解促進を考えている。ご当地グルメのご当地度を星付けした娯楽本(おもしろおかしくちょっとだけ地理:地理度10%)、前出地図帳シリーズのように小学校の先生がネタ本として使えるようなご当地グルメ本(地理度30%)、自ら学ぶ気のある人向けには雑学的な文庫(地理度70%)を出す等、様々な読者層に対応した普及手段を検討中である。これを図に示すと右のようになる。
著者
池田 和隆 小林 徹 曽良 一郎
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.97, no.2, pp.124-130, 2002-02-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
10
被引用文献数
1

アルコールが脳に与える影響は, 酔いをはじめとして様々あり興味ぶかくかつ重要である。ここではアルコールの鎮痛作用とイオンチャネルの一つであるGIRKチャネルとの関係を中心に紹介していただいた。また, アルコールは, 人の情動などを脳機能として調べる上でも重要な糸口を与えてくれる物質であるようだ。
著者
木村 毅
出版者
松蔭女子学院大学学術研究会
雑誌
文林 = Bunrin (ISSN:02886170)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.1-22, 1974-03-20
著者
村山 朝子
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.415-424, 2016 (Released:2016-11-16)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

本稿では,地理学習において物語や小説などの文学作品を活用することの意義と視点について論じた.話の舞台となる地域の風土や文化,人々の気質を内包する文学作品は,学習者の地理的想像力を刺激し,地域についての豊かなイメージや認識をもたせる資料としての可能性を有する.特に世界を対象とする学習において有用である.また地理的想像力は地理教育が育むべき力の一つである.電子メディアの発達などに伴い断片的で一過性の情報が溢れる今日,文学作品を活用し地理的想像力を鍛えることが望まれる.
著者
小柴 昌俊
出版者
日経サイエンス
雑誌
日経サイエンス (ISSN:0917009X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.110-115, 2009-05

南部陽一郎さんと西島和彦さんは学問のうえでも人生のうえでも約60年にわたって深く尊敬する先輩方だ。 私にとって生涯の師は朝永振一郎先生だが,南部さんと西島さんも私にとってかけがえのない存在だ。
著者
奥村 隆
出版者
三田社会学会
雑誌
三田社会学 (ISSN:13491458)
巻号頁・発行日
no.13, pp.60-78, 2008

特集: 構築主義批判・以後1. はじめに : いくつかのエピソードから2. 相対化とは別の場所へ : 「構築主義批判・以後」報告をめぐって3. 構築主義が作る社会 : 共同性から公共性へ?4. おわりに : もうひとつの問いかけ
著者
藤山 沙紀 江間 琴音 岩宮 眞一郎
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.69, no.8, pp.387-396, 2013
参考文献数
9

黒澤明の映画の一部を用いて,「音と画の対位法」と呼ばれる音楽と映像の印象を対立させる手法の効果を明らかにするために,音楽と映像の調和感の連続評定及び印象の連続記述選択実験を行った。対位法が使われた部分では,反対の印象を持つ音楽と映像が組み合わされており,音楽と映像の調和感は全般的に低かった。対位法が含まれた視聴覚刺激全体の印象は,その印象評定実験からまとまりのない印象を持たれているものの,複雑さや面白さの印象が高く,総合的な良さの評価は高いことが示された。対位法が使われた部分では音楽の音源が映っている場面があるが,これを分からなくなるように操作した映像を用いると,良さの評価は低下する。
著者
辻 稔 宮川 和也 竹内 智子 武田 弘志
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.130, no.2, pp.97-104, 2007 (Released:2007-08-10)
参考文献数
18
被引用文献数
3 3

「行動」とは,生体の生理機能とそれを取り巻く外的要因が複雑に相互作用した結果生じる最終表現型であり,動物が示す多種多様な動きの全てを意味する.したがって,基礎医学研究において,実験動物の行動を基盤として情動や認知といった脳高次機能を評価する上では,評価の指標となる行動(本稿では抑うつ様行動)のみならず,用いる実験動物が元来有する行動特性や感覚・運動機能に基づく一般行動についても幅広く検証する必要がある.本稿では,現在,基礎医学研究の分野で汎用されている「一般行動評価法」と「抑うつ様行動評価法」を取り上げ,これら各試験法の特徴や問題点について概説する.代表的な一般行動評価法としては,(1)オープンフィールド試験,(2)ホールボード試験,(3)自発運動測定試験が挙げられる.これらの試験はいずれも,制約がない自由な環境下で実験動物の様々な行動を幅広く観察することにより,生得的な情動性や基本的な身体機能の変化を検出するものである.また,現在最も汎用されている抑うつ様行動の評価法としては,(1)強制水泳試験および(2)尾懸垂試験が挙げられる.両試験は,実験動物に逃避不可能なストレス刺激を負荷した時に誘発される行動低下を抑うつ様行動として評価するものであり,試験操作が極めて簡便であることから,新規抗うつ薬候補物質の前臨床評価や遺伝子改変動物の表現型の解析に幅広く用いられている.さらに最近では,薬物の抗うつ様効果の検出のみならず,うつ病の病態究明を目的として,臨床におけるうつ病患者の症状や抗うつ薬の治療効果との類似性を念頭に置いたうつ病モデル((3)学習性無力モデル,(4)慢性緩和ストレスモデル,(5)嗅球摘出モデルなど)の開発がすすめられている.今後より臨床的妥当性の高いうつ病モデルが開発されることにより,うつ病の病態生理の解明やより有効性の高い治療戦略の開発が飛躍的に発展するものと考える.