著者
山本 哲夫 朝倉 光司 白崎 英明 氷見 徹夫
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.116, no.7, pp.779-788, 2013-07-20 (Released:2013-09-14)
参考文献数
20
被引用文献数
1 2

【目的】札幌周辺や北欧ではシラカバ花粉アレルギーが多く, 交差反応性のため, 果物や野菜に対する口腔咽頭過敏症を有する例が多い. 一方, 原因食物に関しては, リンゴなどの果物は北欧も札幌周辺も多いが, ナッツ類は北欧では多いものの, 日本では少ない. また国内でも, 地域により一部差があり, 花粉飛散や食習慣の差による可能性がある. 今回, 一般成人を対象に, 各食物の摂取歴と過敏症の頻度を調査した.【方法】対象は20歳から67歳の339例で, アンケート用紙を用い, 33種の果物, 野菜, ナッツ類の摂取歴と過敏症の有無を質問した.【結果】摂取歴はブラジルナッツが最も少なく30.1%で, ザクロ80.2%, ヘーゼルナッツ80.8%の順に少なかった. 北海道内の居住歴が20年以上の例は20年未満の例よりプラムの摂取歴が多く, ビワとイチジクとザクロの摂取歴が少なかった. 食物過敏症は53例 (15.6%) があると答えた. 口腔咽頭過敏症が最も多く46例 (13.6%) で, モモ (21例, 6.2%), サクランボ (19例, 5.6%), リンゴ (17例, 5.0%) が多かった. バラ科果物に対する口腔咽頭過敏症は7.7%が有しており, 北海道内の居住歴が20年以上の例では11.0%で, 20年未満の例 (4.2%) よりも多かった. ヘーゼルナッツやブラジルナッツは摂取歴, 過敏症とも少なかった.【結論】食物摂取歴と過敏症に関するアンケート調査を行ったところ, 両者ともナッツ類は少なく, 北海道内の居住歴によって摂取歴や過敏症の頻度に差のある食物があった.
著者
寺田 治 大石 一雄 木下 祝郎
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.166-170, 1960

(1) <i>Trichoderma viride</i>の一菌株がグルコーズ又は澱粉より高収率でクエン酸を生成することが見出された.この菌株は東京上野動物園飼育中の台湾産キョンの糞より分離されたものである.<br> (2) クエン酸の収率は理論値の60~85%に達し,副生酸の生成は認められなかった.又高収率のクエン酸生成には炭酸カルシウムの添加が必須である.<br> (3) 自然界より分離した多数の<i>T. viride</i>についてそのクエン酸生産能を検討した結果,高収率生産菌株がかなり高い頻度で自然界に分布していることが認められた.
出版者
育徳財団
巻号頁・発行日
vol.中, 1938
著者
福山 勝彦 福山 ゆき江 丸岡 裕美 原田 悦子 鎌田 幸恵 細木 一成 矢作 毅 丸山 仁司
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Ca0213-Ca0213, 2012
被引用文献数
2

【はじめに、目的】 近年、足趾が床面に接地せず、歩行時に趾先まで体重移動が行われない「浮き趾」についての報告を散見する。これまで浮き趾例では足趾把持力の低下や前方重心移動能力低下、床面からの感覚入力の低下がみられることを報告してきた。また浮き趾の状態が継続されることで歩行時において体幹のアライメントの崩れや傍脊柱筋、大殿筋などの筋活動の乱れが生じ、腰痛の出現につながる可能性があることも示唆されている。我々はこの浮き趾の抽出、評価として、自作のPedoscope撮影による画像から「浮き趾スコア」による点数化を試み検討している。これは左右10本の足趾に対し,完全に接地しているものを2点,接地不十分なものを1点,まったく接地していないものを0点とし,20点満点で評価するものである。しかしこれらの方法による信頼性、再現性については検討されていない。本研究ではPedoscopeを使用し、浮き趾スコアの検者間、検者内の信頼性について確認することを目的とした。【方法】 下肢に整形外科疾患の既往のない健常成人98名を対象とした。男女の内訳は男性48名、女性50名、年齢は22.3±2.9歳であった。足底画像を自作のPedoscopeにて撮影した。Pedoscopeは、床面から30cmの高さのステージ上面に強化ガラスを固定し、この上に被検者を起立させる。ステージの側面に斜めに固定した鏡で足底を反映し、デジタルカメラで撮影する構造になっている。被検者をステージの強化ガラス上に、開眼で2m前方の目の高さに設定した目標点を注視した状態で起立させた。足幅は両足内縁が5cm開くように枠を用いて開脚した。趾先に力を入れたり重心を移動したりせず安楽な姿位を保持した上で、身体の動揺が落ち着いている状態での足底画像を撮影した。初回の撮影に引き続き、その1時間後、1週間後の同じ時間帯で同様の撮影を行なった。得られた画像を前述した方法で10本それぞれの足趾に対し、完全に接地しているものを2点、不完全なものを1点、接地していないものを0点とし20点を満点とする「浮き趾スコア」を求めた。初回時の画像に関しては3人の経験者(これまでの研究に参加し画像評価していた者)と3人の未経験者、計6人の評価者で評価した。3人の未経験者については、事前に評価の方法を説明、サンプルを用いて採点の練習を行なった。1時間後および1週間後の採点については筆者が行なった。初回時のデータから評価者6人全員による検者間信頼性ICC(2,1)、経験者3人、未経験者3人それぞれの検者間信頼性ICC(2,1)を求めた。また初回、1時間後、1週間後のデータから検者内信頼性ICC(1,1)を求めた。【倫理的配慮、説明と同意】 すべての被験者に対し、事前に本研究の趣旨および方法を説明、また本研究への協力は自由意志であり辞退、途中棄権しても何ら不利益がないこと、得られたデータは個人が特定できないよう管理し本研究以外に用いないことを説明し同意を得た。【結果】 全評価者のICC(2,1)は0.858、経験者3人のICC(2,1)は0.895、未経験者3人のICC(2,1)は0.829であった。初回、1時間後、1週間後のICC(1,1)は0.927であった。【考察】 我々が用いている浮き趾スコアの評価者間における信頼性は、Landisの基準から経験による差は若干あるものの、Almost perfectの結果が得られた。不完全接地1点の評定にばらつきがあるのではないかと思われたが、完全接地趾、足根部、踵部との接地画像の比較により近似した値を得ることができると考える。また検者内信頼性についてはかなり高い信頼性を得ており、それぞれの被検者の足趾接地の再現性が確認できた。我々は本スコアをもとに、18点以上かつ両側第1趾とも2点のものを「正常群」,10点以下のものを「浮き趾群」と分類し、正常群と浮き趾群における機能の比較研究を行なっており、その基礎となる群間分類上の信頼性が得られたものと思われる。しかし接地画像の形やどの趾が接地していないかという分類はできず、今後検討していく必要がある。【理学療法学研究としての意義】 最近「浮き趾スコア」は、他の研究者の間にも導入されており、Pedoscopeでの撮影以外にフットプリントやフットスキャンなども使用されている。いずれも床面と足底の接地状態を反映するものであり、自作によるPedoscopeやフットプリントの使用は比較的安価で簡便なものである。この信頼性が得られたことは「浮き趾」の抽出、分類、理学療法の効果判定に役立つものと思われる。
著者
高久 健二
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.151, pp.161-210, 2009-03-31

朝鮮民主主義人民共和国の平壌・黄海道地域に分布する楽浪・帯方郡の塼室墓について,型式分類と編年を行い,関連墓制との関係,系譜,および出現・消滅の背景について考察した。その結果,楽浪塼室墓の主流をなす穹窿式塼天井単室塼室墓については,四型式に分類・編年し,実年代を推定した。さらに,諸属性の共有関係からその他の塼室墓との併行関係を明らかにした。これらの変遷過程をみると,穹窿式塼天井単室塼室墓1BⅡ型式が成立・普及する2世紀後葉~3世紀前葉に大きな画期があり,その背景としては公孫氏による楽浪郡の支配と帯方郡の分置を想定した。これらの系譜については,中国東北における漢墓資料との比較検討の結果,典型的な穹窿式塼天井塼室墓は,とくに遼東半島とのつながりが強いことを指摘した。塼併用木槨墓については,木槨墓から塼室墓へと変化する過渡的な墓制ではなく,塼室墓の要素が木槨墓に導入された墓制であることを指摘した。これに基づいて塼併用木槨墓が造営された1世紀後葉~2世紀前葉に,すでに塼室墓が出現していたのではないかという仮説を提示した。石材天井塼室墓と横穴式石室墓については,いずれも穹窿式塼天井塼室墓と併行して造営された墓制であり,とくに石材天井塼室墓は塼天井塼室墓から横穴式石室墓への過渡的な墓制ではなく,横穴式石室墓の天井形態が塼天井塼室墓に導入されたものと考えた。さらに,これまで不明確であった楽浪・帯方郡末期~滅亡後の状況について,穹窿式塼天井塼室墓・石材天井塼室墓・横穴式石室墓の分布状況や銘文資料などから検討した結果,3世紀中葉以降は平壌地域から黄海道地域へ在地豪族が移動し,これに代わって平壌地域へ新興勢力が流入しており,郡県体制が大きく変容していった時期であることを明らかにした。
著者
武田 貴成
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2017-04-26

本研究課題では、亜鉛欠乏による炎症のメカニズム解明を目指し、主に細胞外アデニンヌクレオチド代謝に注目して研究を進めた。具体的には、当該年度実施した研究により、主に①in vitro系において亜鉛欠乏培養が細胞外アデニンヌクレオチド分解酵素の活性を大きく減弱させることを確かめ、研究課題の仮説を裏付ける基礎を固めた。さらに②この酵素活性の低下によって、実際にアデニンヌクレオチド分解まで影響するのかを調査するため、新たにHPLCを利用した解析系を立ち上げ、亜鉛欠乏培養により正常なATP、ADPの除去、およびアデノシン産生が大きく阻害されていること見出した。これに加え、③in vivo解析においても、低亜鉛食の給餌がin vitroの結果と同様に各酵素活性の低下、およびそれに伴った細胞外アデニンヌクレオチド分解の減退を引き起こすことを見出した。このような当該年度の研究により、亜鉛欠乏によって正常な細胞外アデニンヌクレオチド代謝が妨害されるという仮説を裏付ける解析結果を得た。これにより今後の研究の方針が決定したほか、これまでに亜鉛栄養と細胞外アデニンヌクレオチド代謝との関連を示した報告は知られていないことから、本解析結果は新規性・独立性という点において大きな意義を持つ。また、今回樹立した各酵素活性の測定系、およびHPLCによる定量系は簡便且つ正確であり、今後本研究課題を遂行していく上でも有用な手法となることが期待される。
著者
住川 裕岳 宮代 隆平 中森 眞理雄
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告数理モデル化と問題解決(MPS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.64, pp.5-8, 2007-06-25
参考文献数
9

本研究では、スポーツスケジューリング問題の一種である巡回トーナメント問題を扱う。巡回トーナメント問題とは、ホーム&アウェイ形式の二重総当りリーグ戦を行うスポーツにおいて、各チームの移動距離の総和を最小化した試合日程を構築する問題である。この問題では、巡回セールスマン問題の難しさに加え、あるチームの対戦順序が他チームの対戦順序に影響を与えており、問題の難易度を増している。これまでの研究により、巡回トーナメント問題に対してはシミュレーテッド・アニーリングが有効であることが示されていたが、本研究ではタブーサーチを用いて最適化を行った。計算機実験の結果、既存のアルゴリズムによる結果に匹敵する質の良い解が得られた。The traveling tournament problem is a well known benchmark problem in sports scheduling. This problem has both an optimization aspect like the traveling salesman problem and a feasibility aspect as in many scheduling/timetabling problems. Since the traveling tournament problem was established, a number of researchers have tackled the problem with various optimization techniques. Recent researches indicated that simulated annealing algorithms are effective for the traveling tournament problem, and few results by tabu search are reported so far. In this manuscript, we propose a tabu search algorithm for the traveling tournament problem. Our computational experiments show that the proposed algorithm generates good solutions, which are competitive with solutions by simulated annealing algorithms.
著者
立元 一彦 清水 弘行
出版者
群馬大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2004

アペリンは、1998年に我々がオーファン受容体APJに対する内因性リガンドとして発見した36個のアミノ酸からなる生理活性ペプチドである。アペリンは血管内皮などから分泌され、内皮由来の一酸化窒素(NO)を放出して血圧を降下する。また、アペリンは既知の生体物質の中で最も強力な心筋収縮作用をもち、心不全などの病態生理において重要な役割を担うことが示唆されている。我々は、アペリンが脂肪細胞の産生する新しいアディポサイトカインであることを明らかにし、アペリンが肥満、高血圧症、動脈硬化などの病態生理に重要な役割をもつことを示唆している.本研究では、アペリンの脂肪細胞における生理的役割を検討するため、各種ラットモデルにおけるアペリンの血圧降下作用とマウス脂肪細胞および3T3-L1脂肪細胞におけるアペリンの遺伝子発現とその制御に関する研究を行った。我々は、アペリンが脂肪組織の豊富なラットに対しては強力に血圧を降下させ、脂肪組織の少ないラットに対しては弱い血圧降下作用を示すことを示した。さらに、マウス分離脂肪細胞においてアペリンおよびアペリン受容体の両方のmRNAが発現していることから、アペリンがオートクリンあるいはパラクリン機構を介して作用する可能性を示唆した。また、我々はマウス3T3-L1細胞の脂肪細胞への分化の過程でアペリンmRNAの発現が増加することを見いだした。分化後の3T3-L1細胞におけるアペリンの発現はインスリンにより増加し、デキサメタゾンにより抑制された。また、インスリンによる発現増加はデキサメタゾン添加によって抑制され、デキサメタゾンによる抑制はインスリン添加によって回復した(1)。これらの結果は、脂肪細胞からのアペリン分泌が低インスリンおよび高グルココルチコイド濃度の条件下で低下することを示唆した。一方、脂肪細胞はアンジオテンシンを産生し、グルココルチコイドはそのアンジオテンシン産生を促進することが知られている。さらに、アペリン欠損マウスではコントロールと比較してアンジオテンシンによる血圧上昇作用が増強される。正常血圧の肥満患者における血中アペリン濃度が、非肥満患者と比較して2倍ほど上昇していることなどから、アペリンが肥満において血圧を正常に保つために抗アンジオテンシン作用物質として重要な役割を担っている可能性が指摘される。しかし、ストレスなどが原因で起る高グルココルチコイド濃度の条件下では、血圧降下作用のあるアペリンの産生が抑制され、血圧上昇作用のあるアンジオテンシンの産生が促進されることが予想される。そこで、肥満高血圧患者においてはストレスなどが原因で起ったグルココルチコイド濃度の上昇によるアペリン分泌機能の破綻が高血圧症の一因となっている可能性が示唆される。