著者
藤井 仁奈
出版者
文教大学
雑誌
文学部紀要 (ISSN:09145729)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.77-97, 2011-03-15

シェイクスピアの『ハムレット』に登場するオフィーリアは、「恋人への献身を最も完璧に立証する」狂気と死を表現する乙女として、19世紀の多くの画家によって描かれる。同時代に、ランボーは詩「オフィーリア」を完成させる。オフィーリアが(『ハムレット』にはない)百合やヴェールに喩えられ、純潔と死を象徴することは、この詩の1節を中心に読み取れる。続く2節では、彼女の狂気に陥った原因が、自ら夢を求めたことに由来することが明らかになる。彼女は、自ら夢を求めるがゆえに狂気に陥り、「黒い波のうえ」を永遠に漂う、ランボー独自の創造物として描かれる。彼女の狂気の原因が当時の倫理観や価値観から逸脱しているという意味で、ランボーのオフィーリアは、(「狂気の処女」を含めた)『地獄の季節』の語り手と軌を同じくする。この小論では、ランボーの「オフィーリア」の独自性を指摘し、後年書かれる『地獄の季節』へと通じる点を指摘したい。
著者
今村 豊 池田 次郎
出版者
日本文化人類学会
雑誌
民族學研究 (ISSN:24240508)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.311-318, 1950 (Released:2018-03-27)

According to Dr. Kiyono, the modern Japanese are the result of physical change, having developed out of a prehistortc type, through a protohistoric intermediate type, with some Korean admixture. The Ainu, being different from the peoples either of prehistoric or protohistoric periods, had nothing to do with the formation of the modern Japanese. These conclusions are said to be derived, with statistical procedures, from a survey of skeletons of all those periods. Thus, if there were defects in his chronology of skeletons and his anthropometrical methods, his conclusions would be questionable. In the first place, because of insufficient description of the excavations and the relation to other relics excavated, the chronology of skeletons is ambiguous. Furthermore, several errors can be pointed out. In the second place, there are defects in his anthropometric methods. When measurements are compared, the characteristics compared are not always of the same kind, and therefore the basis of comparison fluctuates. The "mittlere Typendifferenz" is calculated only between the most convenient materials, and general conclusions are drawn in spite of the fact that the interrelations between all materials have not been exhaustively worked out. On the basis of Dr. Kiyono's own anthropometrical data, the reviewers have calculated the "Typendiffirenz" between all materials exhaustively, and reached the following results : 1) Though Dr. Kiyono concludes that the difference between the modern Japanese and their adjacent peoples is greater than that between local types of the modern Japanese, his evidence, especially with reference to the relation of the modern Japanese to the Koreans and Northern Chinese, cannot be validated. 2) On the basis of Dr. Kiyono's anthropometrical data, the Ainu, rather than the protohistoric Japanese, would more probably be regarded as the intermediate type between the modern Japanese and the prehistoric people. 3) Statistical evidence as to the mixture with the Koreans is lacking. In short, even provided that the chronology of materials were exact, it would be impossible to draw Dr. Kiyono's own conclusions from his own statistics.
著者
渡邊 淳子
出版者
新島学園短期大学
雑誌
新島学園短期大学紀要 (ISSN:18802141)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.150-145, 2008

更級日記の冒頭には、作者菅原孝標女が上総の国司館で物語世界に引き込まれ、十三歳で念願叶って、物語の待つ憧れの京に旅立つ経緯が、簡潔に纏め上げられている。ただ、「あづま路の道の果てよりも、なほ奥つ方に生ひ出でたる人」という書き出しから事実に反するために、冒頭部分は日記全体の構想論、構造論に絡ませて、様々な"読み"が試みられてきている。冒頭部分は簡潔ではあるが、それだけに重層的に、日記を書く時点で捉え直された、大人の女性としての第一歩を、まさに踏み出そうとする、十三歳の自己が描かれていると言える。以下にこの冒頭部分に対する私なりの読みを纏めてみたい。

1 0 0 0 OA 康富記 36巻

著者
[中原]康富 [著]
巻号頁・発行日
vol.[10], 1000
著者
松井 洋 中村 真 堀内 勝夫 石井 隆之
出版者
川村学園女子大学
雑誌
川村学園女子大学研究紀要 (ISSN:09186050)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.109-122, 2007-03-15

日本とトルコの中学生,高校生,大学生,親,3820人を対象に,恥意識について調査を行い,日本とトルコの文化比較と世代間比較を行った。親に対する質問項目の因子分析の結果,「他律的恥意識」,「他者同調的恥意識」,「自律的恥意識」の3因子を抽出した。この3因子構造は,生徒とほぼ同一であった。この3因子を基に層別の分散分析の結果,3つの恥意識について,グループ間に有意な違いがあった。自律的恥意識は,トルコの父母とトルコの中学生女子,それに日本の母が高く,日本の若年層で低い。他律的恥意識は,おおむね,大人,女子,男子という順になった。他者同調的恥意識は,日本の女子とトルコの中学生が高く,日本の父親が最も低かった。以上のことから,恥意識の強さは文化と世代によって質的に異なると言える。つまり,世代や文化によって,恥を感じる場面が異なる。日本の親は,自律的恥意識と他律的恥意識が強く,子どもは他者同調的恥意識が強い。また,女子は他律的恥意識と他者同調的恥意識が男子より強い。このようなことは,日本の若年層で問題行動を抑止する恥意識が弱いことを示している。このことは,わが国における恥意識の質が変容した可能性を示していると考えられる。
著者
清水 貴史
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.74, no.6, pp.338-344, 2018-06-01 (Released:2018-12-01)
参考文献数
24
著者
苗川 博史
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.241-245, 2004-05-25
参考文献数
10

本研究は,モンゴル遊牧体系における二地域の夏営地のヒツジ母子間100組を対象に,音節の組み合わせによる発声タイプと行動型を,母子間距離,母子が遭遇するまでの時間,授乳および吸乳時間との関係について検討した.音節の組み合わせによる母子間の相互作用については,子ヒツジがイニシアチブを有した8タイプと母ヒツジがイニシアチブを有した5タイプに分類された.母子ヒツジともに口の開および閉による発声の割合は,約9 : 1と開いた方が多く,また,母ヒツジが双方向(75%),子ヒツジは一方向(46%)と発声なし(31%)を示す特徴があった.子ヒツジがイニシアチブを有した発声タイプ8(母子双方に発声なし)は,母子間距離と母子が遭遇するまでの時間との間に有意な正の相関が,また吸乳時間と母子間距離の間には有意な負の相関があり,母子間距離によって母子が遭遇するまでの時間,吸乳時間に関連性があることを示唆した.子ヒツジがイニシアチブを有した発声タイプ5(子ヒツジの発声/eee/と母ヒツジの応答なし)は,食草移動時に71.4%,休息行動時に28.6%出現した.この発声タイプ5は,発声タイプ2(子ヒツジの発声/eee/と母ヒツジの応答/nnn/)との間に,母子が遭遇するまでの時間および母子間距離において有意差があり,母子が遭遇するまでの時間,および母子間距離によって発声タイプが異なることが示唆された.子ヒツジの発声タイプ8は,食草移動時に28.6%,休息行動時に71.4%出現し,食草移動時間および休息時間の割合が発声タイプ5と対称的であった.この発声タイプ8は,子ヒツジがイニシアチブを有した発声タイプ1(子ヒツジの発声/eee/と母ヒツジの応答/nnae/),発声タイプ2(子ヒツジの発声/eee/と母ヒツジの応答/nnn/),発声タイプ3(子ヒツジの発声/nee/と母ヒツジの応答/nnae/)との間に母子が遭遇するまでの時間および母子間距離において有意差が見られ,母子が遭遇するまでの時間,母子間距離によって発声タイプが異なることが示唆された.母ヒツジがイニシアチブを有した発声タイプIII(母ヒツジの発声/nnae/と子ヒツジの応答/nee/)は,子ヒツジがイニシアチブを有した発声タイプ8との間に,母子が遭遇するまでの時間,母子間距離において有意差が認められ,母子が遭遇するまでの時間,母子間距離によって発声のタイプが異なることを示唆した.今回の結果から,母子間距離,母子が遭遇するまでの時間,授乳および吸乳時間は,発声時における音節の組み合わせによるタイプと行動型によってそれぞれ異なることが示唆された.
著者
佐藤 方彦 佐藤 陽彦 勝浦 哲夫 津田 隆志 原 田一 山崎 和彦 安河 内朗
出版者
The Anthropological Society of Nippon
雑誌
人類學雜誌 (ISSN:00035505)
巻号頁・発行日
vol.85, no.1, pp.23-28, 1977 (Released:2008-02-26)
参考文献数
15
被引用文献数
3 4

4人の成人男子により,それぞれ4強度段階のエルゴメータ作業とトレッドミル作業を実施し,_??_o2の,HRあるいは安静値を基準としたHRの増加率に対する回帰式を,両作業をこみにした場合と作業別について,個人別及び全員に関して算出した。これらの回帰式にもとついて,HRあるいはその増加率より_??_o2を推定するとともに,最大下作業より_??_o2maxを推定した上で%_??_o2maxとHRの直線関係に依存して算出した推定式の成績を検討した。最も優れた成績は,個人毎に_??_o2のHRに対する回帰を求め,これを求めたその種目の作業について推定した場合に得られたが,ここに新たに提示した推定式による算出法は,なお実用化の条件についての検討は要するが,推定成績が比較的よく,一般化を行う上でも利点があることが認められた。