著者
大木 郁也 大場 司
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2014年大会
巻号頁・発行日
2014-04-07

秋田県南部に位置する三途川カルデラは,約1Ma以前に大規模火砕流を伴うカルデラ陥没により形成した.本地域には,カルデラ形成時に堆積したとされる虎毛山層が分布する.虎毛山層は,下位より虎毛山凝灰岩部層,皆瀬川凝灰岩部層からなる.虎毛山凝灰岩部層は,溶結凝灰岩,火山礫凝灰岩,凝灰質砂岩・黒色頁岩・礫岩の互層からなり,層厚は900mに達する.皆瀬川凝灰岩部層は,火山礫凝灰岩,凝灰岩,礫岩からなり,層厚は450mに達する.虎毛山層は,8層の火砕流堆積物(PDC-1~8),土石流堆積物(DF-1),湖成堆積物(LD-1)から構成される.これらの層序は,下位よりPDC-1,DF-1,LD-1,PDC-2~PDC-8からなる.各層の厚さはPDC-1が20m,DF-1が80m,LD-1が140m,PDC-2が50m,PDC-3が250m,PDC-4が200m,PDC-5が340m,PDC-6が160m,PDC-7が90m,PDC-8が30mである.火砕流堆積物は,塊状無層理の火山礫凝灰岩からなり,軽石と異質岩片を含む.しばしば,炭化木片を含み,脱ガスや柱状節理が発達する.PDC-4, 6は火砕流堆積物の基底部はグラウンドサージ堆積物からなる.このグラウンドサージ堆積物には,低角斜交層理が発達し,デューン構造が認められる.このうちPDC-6は,グラウンドサージ堆積物の下位にグラウンドブレッチャーが認められる.このグラウンドブレッチャーは,最大礫径2.5mの異質岩片を含む基質支持礫岩からなる.また,PDC-1, 3, 4, 8は特徴的に溶結相を伴う.溶結相には,ユータキシティック組織やスフェルライトが認められる.土石流堆積物(DF-1)は,層理が発達し,円礫を主体とする礫支持礫岩からなる.礫は平行に配向し,弱く逆級化する.湖成堆積物(LD-1)は,黒色頁岩及び凝灰質砂岩,礫岩の互層からなる.黒色頁岩にはラミナが発達し,凝灰質砂岩には葉理・層理が発達し,礫岩は塊状無層理である.湖成堆積物(LD-1)の上位のPDC-2は,水中環境での堆積を示唆する.8層の火砕流堆積物の存在は,本地域では火砕流が少なくとも8回発生していたことを示唆する.火砕流堆積物(PDC-4)の流向方向は,グラウンドサージ堆積物のデューン構造から,北東から南西方向であると推定でき,給源位置は滝ノ原火口であると推定した.休止期間を示す湖成堆積物(LD-1)が虎毛山層中部に狭在し,カルデラ陥没が少なくとも2回発生したと推定される.地層の走向は石神山周辺を中心とする半同心円構造をなし,その傾斜は半同心円の外側を向く.この構造は,石神山周辺を中心とするドーム状の隆起構造を示唆する.この隆起構造は,再生ドームであると考えられ,カルデラ中心域にあたる小安岳周辺の基盤岩の高まりの原因の一つである.再生ドームの形成と厚い火砕流堆積物の分布と環状割れ目の存在は,三途川カルデラがValles型カルデラである可能性を示唆している.
著者
島谷 幸宏
出版者
日経BP社
雑誌
日経コンストラクション (ISSN:09153470)
巻号頁・発行日
no.597, pp.56-59, 2014-08-11

とはいえ、様々な意見の人が集まるのだから、当然、初めは議論がまとまりません。最初の3、4回の会合はもめることを覚悟しましょう。行政の担当者が、賛成・反対を含め、四方から責められる場面も多々あります。
著者
中屋 紀子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.52, pp.34, 2009

(研究目的)教員養成大学において、教育実習と連動した指導が最近特に求められるようになった。大学に入学したばかりの1年生から、実際の家庭科の授業を観察する機会を作り、それを生かした大学での講義作りが求められている。ただ授業観察するだけでは話にならず、せっかくの観察機会を生かすためには明確な「視点」が必要である。しかし、学生たちに授業を観る「視点」をつけることはそれほど簡単ではない。(研究方法および経過)そこで、本報告は「観察」することを重点においた指導を試みた。それをもとにした考察を行う。1.宮城教育大学附属小学校の校内研究授業を3台のビデオ記録したものを編集し、1本のテープとした。授業は2008年6月30日、5年2組、齋藤憲子教諭によって行われた。テーマは「家族と生活」である。2.その映像をCDに焼き付け、資料とした。3.同時に、ストップモーション方式で活字記録化した。ストップモーション方式について補足をすると、以下である。「教師(T)-子ども(C)」の記録に教師や子どもの非言語的な行動についても加えて記述する。その点は「T-C型+ト書き」形といえる。さらに、子どもの非言語的な行動や非言語的なニュアンスも加えた文章を加える。「地の文+発言」である。またさらに、「一時停止」を利用して若干の補足や解説を加える。(藤川「授業記録を書く」『授業分析の基礎技術』(二杉・藤川・上條 編著 学事出版 2002)4.家庭科教育実践研究という授業観察が必須である講義で、受講生各自にCDと活字記録のコピーを配布した。5.CDを再生しながら、活字記録の余白に受講生の「ストップモーション」を挿入させた。6.記入が終わったら、活字記録のファイルを配布し、それに記入させた。7.それを集めて、検討資料とした。受講生各自がどこで、どんなストップモーションを入れたかが分かるように色分けをした資料とした。どんなところにストップモーションを入れるか(視点を明確にする)は、この取り組みの前にレクチュアをした。8.最後に授業者からのコメントを入れて、受講者に返却した。(検討結果)1.受講生たちは教師の教授行為の積極的な側面をしっかり評価することができた。たとえばある受講生は「おへそをこちらへ向けてください」という指示はわかりやすくて子供たちも素直に聞ける指示であると感じた。」と、記していた。2.同時に、教師の教授行為の課題も見つけることができた。たとえば、「発言しない子どもも授業に参加しやすいように、「同じ意見の人は?」というような問いがあると、より多くの子どもが授業に参加できると思う。」と、自らの意見も同時に述べることができている。3.同様のことが教材についても言えた。評価した点として例をあげると「児童が食いつきやすい内容の絵の提示はとても良かった。実際の生活の中で考えられる場面であるのも良い。」と、絵を用いて問題を追及する方法の積極面をあげた。他方、採用したビデオレターについて「ビデオレターというアイディアは良いと思う。しかし、なぜ先生なのかわからなかった。今まで自分自身や家族からの視点で成長をしたことをまとめてきたのなら、親など身近な家族のほうが題材にあっていると思う。」と、ビデオレターに登場した高学年担当の教師について厳しい意見も出せた。同じところにストップモーションをしながら、異なった意見も多々あり、意見分布の多様性も興味深かった。4.いくつか、今後解決したい課題が残った。例をあげる。「授業という場面で、「発表」することができる「力」とは、どんな力でしょうか?それを考えて普通、教師は発問をします。答えやすい問いを投げかけて、たくさんの児童から引き出したいときと、わかる児童が少なくても、答えを引き出したいときの二つに分かれます。それぞれ、教師は何を考えるのでしょうか?」などである。
著者
藤本 知之 杉浦 忠男 長屋 岳志 佐藤哲大 湊 小太郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告バイオ情報学(BIO) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.99, pp.63-70, 2006-09-15
参考文献数
6

これまでに我々はガラス基板上にDNAを伸張固定してGC特異的に蛍光染色し,エバネッセント顕微鏡を用いてDNAを一分子イメージングすることでDNAのGCコンテントの一次元分布を計測できた.しかしガラス基板上に固定されたDNAの単位長さ当たりの塩基数が異なるため,データベースの予測と必ずしも一致しない.そこで,塩基数の違いを較正する新たな解析モデルとその適用結果について報告する.We have analyzed single molecular DNA with single molecular imaging by evanescent field microscope and identified the DNA by comparing measured results of one dimensional distribution of local GC content to estimation from genome database. The number of base pair within the unit length of the DNA fixed on the glass substrates are different from estimation, however, measured results have not matched with genome database well. We report on the new analytic-model and the new application result considering calibration of the difference of the base pair number.
著者
杉浦 忠男 長屋 岳志 佐藤哲大 湊 小太郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告バイオ情報学(BIO) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.13, pp.25-32, 2006-02-09
参考文献数
4
被引用文献数
1

ゲノムDNA上ではGCコンテントの分布は一様ではない。このことを利用すれば一分子イメージングしたDNAを識別できると考えられる。そこで我々はガラス基板上にDNAを伸張固定してGC特異的に蛍光染色し、エバネッセント顕微鏡を用いてDNAを一分子イメージングすることでDNAのGCコンテントの一次元分布を計測でき、その結果がゲノムデータベースからの予測とよく一致することを確認した。GC content on genome DNA is not uniform. By use of this feature we can analyze and identify single molecular DNA with one-dimensional distribution of local GC content. We propose a method to analyze single molecular DNA with single molecular imaging by evanescent field microscope and to identify the DNA by comparing measured results of one dimensional distribution of local GC content to estimation from genome database. We have performed the method and have confirmed good correspondence with each other.
著者
山田 昌弘 須長 史生 谷本 奈穂 施 利平 羽渕 一代 土屋 葉
出版者
東京学芸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究では、現代日本社会での夫婦関係のあり方を分析するために、離婚研究者に対するインタビュー調査、及び、30才から59才までを対象とする質問紙調査を東京と大阪で実施した。質問紙調査では、離婚対象者のみの質問を質問票に組み込むことによって、離婚対象者に対するランダムサンプリングデータを得た。分析による知見は、主に三つにまとめられる。一つは、日本の夫婦関係の現状に関してのものである。日本の夫婦関係において、40年前の調査結果と比較しても、一緒に出かけるなど共同行動は相変わらず低調である。これは、セクシュアリティーに関してもいえる。しかし、共同行動が少なく、セックスレスだからといって、夫婦の関係性が希薄だと結論づけることはできない。日常会話や困ったときに助け合うなど、愛情を直接表現し合うこととは別の形での愛情関係が維持されうることが分かった。次に、恋愛感情と結婚生活における愛情が分離している様相が観察された。意識において、恋愛感情と結婚を別立と意識している傾向が強まることが分かった。行動においても、カップルを壊すことなくカップル外の親密関係を作るケースが相当数いることがわかる。以上のように、近年の離婚急増を、「夫婦の愛情関係が変化した」という点に求めるという仮説は成り立たないように見える。むしろ、離婚や結婚をめぐる環境の変化によってもたらされた可能性が高い。データ分析を行うと、離婚経験者には、配偶者への愛情表現や経済力(女性のみ)への高い期待が見られた。つまり、相手が提供できうる能力以上のものを相手に求めることが離婚につながる大きな原因となっている。愛情表現に関しては、その基準が高まったという仮説も成り立ち、今後の検証にまたねばならない。一方、経済力に関しては、近年の男性の雇用の不安定化によって、男性の経済力が落ちている。離婚相手の経済力に不満があったという女性の割合が高いことによっても裏付けられる。近年の離婚急増の一因は、経済状況の変化によってもたらされたものであり、少子化の原因とも重なるものであると結論できる。
著者
森田 昂 岡田 隆道 大賀 辰次郎 加納 正 岡田 弘
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.397-403, 1979
被引用文献数
1

系統的アミロイド症を伴つた骨髄腫に2種の癌を併発した希な症例を経験した.またこの例は6年前の喉頭癌の手術時にすでに単クローン性γ血症をみとめ,その後次第にM成分量の増量と共に骨髄腫の病像を完成した点でも興味がもたれた.症例: 70才,男性. 64才時に喉頭の扁平上皮癌で摘除をうけ,癌周囲組織に形質細胞浸潤が目立つた.血清総蛋白7.8g/dl中fast γ域に1.8g%のM成分を認めたが放置. 5年後心不全症状で緊急入院.血清総蛋白10.4g/dl中IgG-λ型のM成分が3.7g%を占めたが,この時期では尿BJ蛋白は陰性.骨髄中の形質細胞は未熟型のものも含めて4.8%で,骨髄腫の診断を確定しえなかつた.その後右足にBowen病を発症し,その切除標本の癌周囲組織には形質細胞浸潤はなかつた.入院7カ月後に至つてBJが出現,すなわちBJ escapeがみられ,さらに血清蛋白M成分の漸増と正常γ-glの著減,骨髄中異型形質細胞の著増をみとめて骨髄腫と診断した. prednisolone, cyclophosphamideの併用治療を開始し著効を見たが,心不全が増強し死亡した.剖検により全身諸臓器の骨髄腫細胞浸潤と,心,肝,脾,腎,副腎などにアミロイド沈着が認められた.本例の検討を通じて単クローン性γグロブリン血症と癌の関係,骨髄腫・アミロイド症・癌の複雑な合併にみられる免疫学的背景,骨髄腫の自然史などについて考察した.なお, Bowen病は種々の悪性腫瘍を合併するが骨髄腫を合併した報告例はない.本例が最初である.
著者
佐藤 政博
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.30-32, 2004-01-01 (Released:2010-02-25)
参考文献数
3
著者
佐瀬 巧 北城 圭一 合原 一幸
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.325-328, 2013-05-01 (Released:2013-09-06)
参考文献数
8

脳波におけるフラクタル解析がどのような特徴を捉えるのかは,いまだ明らかではない.本研究では,脳波をフラクタルの視点から詳細に解析することにより,フラクタル構造の特徴をより詳しく理解することを目的とする.脳波を各周波数帯域に分解し,どの要素がフラクタル構造の基軸となっているのかを解析した結果,ガンマ波がフラクタル構造の根幹をなす主要な情報であることが示された.更に,この結果により,ガンマ波だけでフラクタル構造を再現できる時間帯とそうではない時間帯とに選り分けることが可能になったので,他の帯域がガンマ波に混ざったりガンマ波から分離したりする脳波モデルを提案することが可能となる.