著者
池田 琴恵 池田 満
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.162-180, 2018-06-30 (Released:2018-08-10)
参考文献数
34
被引用文献数
5

本研究では,学校評価は管理職が行うものと考えていた校長の意識が,学校全体で実施しようという意識へと変容する過程,および意識変容を促進する専門家の支援のあり方について検討した。本研究の実践では,協働的で自律的な実践活動を支えるエンパワーメント評価アプローチのツールであるGetting To OutcomesTM (GTOTM)1に基づき,日本の学校評価用に開発された学校評価GTOの導入を試みた。複線径路等至性モデルを用いた分析の結果,学校評価GTOを実施することで,(a)目標設定,実践計画,評価実施までを事前に準備することができ,学校評価の改善が可能であるという気づき,(b)学校全体での取り組みを試みる中で校長自身の学校運営に対する統制感の獲得といった意識変容の過程を経て,学校全体での実施という意識に至ることが示された。さらに校長の意識変容を促すために,校長の問題意識がない場合には導入の必要性を検討し,年度途中での運用上の修正が可能な提案,校長自身が学校教育計画や学校評価報告書に統制感を持つための支援,全校実施をイメージできるような実践ツールの提供,学校の特色に応じて実効性のあるツールへと改良するといった,専門家による支援の重要性が示された。
著者
安藤 亘 門脇 徹治 渡辺 篤史 崔 奈美 加部 義夫 恵良田 知樹 石井 紀彦
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌
巻号頁・発行日
vol.1994, no.3, pp.214-223, 1994
被引用文献数
7

14族典型元素からなるセスキスルフィド(RM)<SUB>2n</SUB>Y<SUB>3n</SUB>(M=Si,Ge,Sn,Y=S)は,アダマンタン構造(IIa)(n=2)又は,まれにダブルデッカー構造(IIb)(n=2)をとることが知られている.これらセスキスルフィドから向かい合っている一対の硫黄を一つずつ減らすとノルアダマンタン(VIIIa),ビスノルアダマンタン(IXa),ノルダブルデッカー(VIIIb),ビスノルダブルデッカー(IXb)と呼ばれる新規なペンタ及びテトラスルフィドが生成する.トリクロロモノゲルマン([1a]と[lb]),トリクロルモノシラソ([8a]と[8b])トリクロロモノスタナン([10a]と[10b])の硫化水素/ピリジン,硫化リチウム,硫化ナトリウム,五硫化アンモニウム,ビストリメチルシリルスルフィドなどによる硫化反応では,トリクロロモノゲルマン([1a]と[1b])のみがゲルマニウム-ゲルマニウム結合を有するペンタスルフィド([5a]と[7b])を副生した.主生成物は,アダマンタン構造のセスキスルフィド([2a],[2b],[9a],[9b],[11a]と[11b])が,トリクロロモノゲルマン,トリクロロモノシラン,トリクロロモノスタナンにおいても生成してきた.一方,テトラクロロジシラン[12]とテトラクロロジゲルマン[15]の硫化リチウムとセレン化リチウムによる硫化ないしセレノ化では,ペンタスルフィドとペンタセレニド([13a],[13b]と[5a])が収率良く生成した.X線結晶構造解析は,ケイ素-ケイ素結合の切断されたノルアダマンタン構造を明らかにした.テトラクロロジゲルマンは,硫化水素/ピリジン,硫化リチウム,五硫化アンモニウム,テトラチオタングステン酸ピペリジニウムなどの種々の硫化剤と反応し,ゲルマニウム-ゲルマニウム結合の切断されていないテトラスルフィド[16]も副生した.その構造は,ビスノルアダマンタン構造であるとX線結晶構造解析により確定した.トリクロロモノゲルマン([1a]と[1b])からのペンタスルフィド([5a]と[7b])の生成は,硫化剤が還元剤として働くことにより,又,テトラクロロジゲルマン[15]からのペンタスルフィド[5a]とテトラスルフィド[16]の生成は硫化剤の求核性の強さに依存しているものと考えられる.
著者
竹内 正之 池田 朋宏 新海 征治 田中 裕行 川合 知二
出版者
基礎有機化学会(基礎有機化学連合討論会)
雑誌
基礎有機化学討論会要旨集(基礎有機化学連合討論会予稿集)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.63, 2007

走査型プローブ顕微鏡を用いた実空間可視化・分光手法は、ナノテクノロジーやナノバイオロジーなど様々な研究分野において重要である。我々は、加熱蒸着できない分子の蒸着手法としてパルス噴霧法を開発することにより、DNAやポルフィリンなどの巨大分子の高分解能可視化および1分子分光を行ってきた。今回、界面に2次元結晶を形成することで知られているダブルデッカーポルフィリン錯体およびトリプルデッカーポルフィリン錯体のSTMによる高分解能STM可視化および分光を行ったので報告する。
著者
及川 尚夫 吉田 一浩 依田 昌子 山廣 幹夫 宮下 徳治
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.289-298, 2010

透明性,耐熱性の高いダブルデッカー型シルセスキオキサンをベースポリマーとして,表面改質効果を有するパーフルオロアルキル基含有シルセスキオキサンを複合化することにより,耐熱・光学コーティング膜を作製した。得られたコーティング膜は,接触角測定による表面特性,分光透過率測定による光学特性,熱重量分析による熱物性評価を行い,表面特性制御効果,及びバルク特性への影響を評価した。その結果,わずかなパーフルオロアルキル基含有シルセスキオキサンの添加により,膜の表面特性をコントロールできることが確認された。また,得られたコーティング膜の透明性,耐熱性は,パーフルオロアルキル基含有シルセスキオキサンの添加による低下は見られず,バルク特性にはほとんど影響しないことが分かった。更に,得られたコーティング膜は近紫外線領域の透明性が高く,近紫外線の吸収の少ないことによる耐光性に優れた膜であることが示めされた。また,得られたコーティング膜の樹脂成分は300℃以上の耐熱性を有しており,優れた耐熱性,透明性を保持しつつ,かつ表面特性のみをコントロールすることができることが確認された。
著者
北垣 忠温 鈴木 登志郎 小池 嘉秀 小野 正博 白川 清美 永田 充宏 小西 良士
出版者
日本毒性学会
雑誌
Journal of toxicological sciences (ISSN:03881350)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.325-343, 1996-07-05
参考文献数
13
被引用文献数
2

MC903の安全性を検討するため,0,0.4,2および10 μg/kg/dayをSlc:SD系雌雄ラットの頸背部皮下に26週間投与した。さらに,2および10 μg/kg/day群について,5週間の回復試験を実施し,以下の結果を得た。1. 死亡例は試験期間を通して,各群の雌雄に認めなかった。一般状態では10 μg/kg群の雄に眼球表面の一部白濁の発生頻度が増加した。2. 体重および摂餌量は,試験期間を通して,雌雄とも対照群とほぼ同様に推移した。10 μg/kg群の雌雄に,摂水量の増加ないし増加傾向を認めた。3. 投与期間終了時に,眼科学的検査で,10 μg/kg群の雌雄に角膜表面の一部混濁の発生頻度が増加した。尿検査で,2 μg/kg群以上の雄に尿中カルシウム排泄量の増加,10 μg/kg群の雄に尿中ナトリウム・クロライド・無機リン排泄量の増加,雌に尿量の減少,雌雄にpHの低下を認めた。血液化学的検査で,2 μg/kg群の雄および10 μg/kg群の雌雄に血中カルシウム濃度の増加,10 μg/kg群の雄に血中ALP活性の上昇を認めた。器官重量で,2 μg/kg群以上の雄に腎臓絶対重量・相対重量の増加,10 μg/kg群の雌雄に副腎絶対重量・相対重量の増加を認めた。病理組織学的検査で,2 μg/kg群以上の雄に角膜・腎臓の鉱質化の発生頻度の増加を認めた。電子顕微鏡検査で,10 μg/kg群の雌雄の腎臓に遠位尿細管上皮細胞の滑面小胞体を主とした小胞体の拡張を認めた。4. 5週間の休薬により,眼球表面の一部白濁,角膜表面の一部混濁および角膜・腎臓の鉱質化は回復しなかった。その他の変化は回復または軽減し,可逆性の変化であった。5. 以上の結果,本試験条件下におけるMC903の無毒性量は,雌雄とも0.4 μg/kg/dayと推定した。

1 0 0 0 OA 平家物語 12巻

出版者
[出版者不明]
巻号頁・発行日
vol.[9], 1628
著者
吉田 一浩 橋本 和美 越智 光一
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.317-324, 2009

分子構造が異なるフェニルシルセスキオキサン(ダブルデッカー型,かご型,ラダーライク型)をベースとするエポキシ樹脂をそれぞれ調製し,テトラエチレンペンタミンを硬化剤に用いて硬化物を作成した。得られた硬化物は熱重量分析と動的粘弾性で熱物性を評価し,引張り試験で機械特性を測定してエポキシ樹脂の構造と物性の相関を検討した。その結果,熱重量分析からは熱分解温度や分解挙動はエポキシ樹脂の構造に依存しないことが分かった。動的粘弾性の測定結果からは,各エポキシ樹脂のガラス転移温度は,ダブルデッカー型,かご型,ラダーライク型それぞれ87℃,80℃,67℃に確認した。貯蔵弾性率はガラス転移温度の前後で変化が小さく,広い温度範囲でゴム状平坦域を有することがわかった。引張り試験で得られる応力-歪み曲線から破壊エネルギーを求めたところ,最小はラダーライク型の1.3kJ/cm<sup>3</sup>,最大はダブルデッカー型の23.6kJ/cm<sup>3 </sup>であり,ダブルデッカー型はラダーライク型に対して約18倍大きい値を示し,ラダーライク型の弱点である脆さを改善できる可能性が得られた。以上の結果から,シルセスキオキサンを骨格とするエポキシ樹脂の構造と物性の間には,熱的性質はほとんど相関が見られなかったが,ガラス転移温度,機械特性はシルセスキオキサンの分子構造に依存することが判明した。
著者
桐生 正幸
出版者
関西国際大学
雑誌
研究紀要
巻号頁・発行日
no.14, pp.243-252, 2013-03

本研究では,身近で発生した殺人事件が,地域防犯への関心や,犯罪に対するリスク認知と不安感に及ぼす影響について検討した。2007年10月に幼女が殺害された加古川市にて活動する防犯ボランティアが研究対象である。この殺人事件は,彼女の家の前にて刃物で刺された未解決事件である。調査は,兵庫県の5市にて行った。加古川市と他の市は,防犯活動が活発な地域である。調査回答者は,全部で361名(女性130名,男性231名。平均年齢67.3歳)のボランティアであった。調査結果は次の通りである。加古川市のボランティアは他の市よりも,1)治安悪化を認識し,2)高い犯罪不安感を感じていた。This study examined the effect of a neighbouring murder case on risk perception, anxiety about crime, and concerns about crime prevention. A volunteer crime prevention group in Kakogawa city, where a little girl murder occurred in October 2007 was examined. This case involved the stabbing of a victim in front of her home, which has remained unsolved. The investigation involved five cities in Hyogo prefecture. In Kakogawa city and other cities, the anticrime activity was active. There were 361 volunteers involved in the survey. 130 are women while 231 are men and the average age is 67.3 years old. The survey results indicated that the volunteers in Kakogawa had higher perceptions than the volunteers in other cities in 1) recognizing that the public peace has worsened; and 2) feeling of anxiety for the increased in crimes.

1 0 0 0 木鐸

出版者
木鐸社
巻号頁・発行日
0000
著者
中牧 弘允 SANTOS Anton MONTEIRO Clo COUTO Fernan ARRUDA Luiz 古谷 嘉章 原 毅彦 武井 秀夫 木村 秀雄 SANTOS A.M.de Souza COUTO F.de la Roque ARRUDA Luiz・
出版者
国立民族学博物館
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1993

アマゾン河流域の開発は、ブラジル西部以西の西アマゾンにおいて、急速に進展しつつあり、本研究は環境問題と社会問題の鍵をにぎる人物として、シャーマン、呪医、民間祈祷師、宣教師などに焦点をあて、実証的な調査をおこなってきた。研究対象とした民族のいくつかは僻遠の地に居住し、そこへの到達は困難を究めたが、短期間ながらも調査ができ、実証的なデータを集めることができた。1.先住民(インディオ)社会(1)サテレマウエ族 日本側とブラジル側とで最初に共同調査をおこない、国立インディオ基金(FUNAI)やカトリック宣教団体の医療活動の概要を把握し、さらにアフ-ダが保護区内で薬草と保健衛生について調べ、中牧も近接する都市部においてシャーマニズムならびに先住民運動に関する聞き取り調査を実施した。(2)クリナ族(マディハ族) 中牧はジュルア保護区のクリナ族(マディハ族)のすべての集落(6カ村)を訪問し、家族・親族、村と家屋の空間的配置、国立インディオ基金(FUNAI)とブラジル・カトリック宣教協議会(CIMI)の活動などについて調査をおこなった。シャーマニズムに関しては治病儀礼、トゥクリメ儀礼、ひとりのシャーマンの事故死をめぐる言説と関係者の対応などについて、データを収集した。自然観については、子供や青年たちに絵を自由に描かせ、かれらの認識や関心のありようをさぐった。また、うわさ話やデマがもとで女たちの間に集団的喧嘩が発生したが、その推移と背景についても調査した。(3)パノ語系インディオ 木村はボリビア、ペル-と国境を接する地域に住むカシナワ族を中心にシャーマニスティックな儀礼の観察をおこない、儀礼歌を収録した。また、非パノ語系クリナ族や「白人」などとの婚姻をとおして進行する複雑な民族融合の実態についても基礎データを収集した。(4)東トゥカノ系インディオ 武井はサンガブリエル・ダ・カショエイラにおいて東トゥカノ系インディオの神話と民間治療師たちの呪文の収録をおこない、ポルトガル語への翻訳の作業をすすめた。その呪文のなかでは、熱の原因としてプラスチック製ないしビニール製の袋に魂がとじこめられることが言及され、近代的な要素も取り込まれていることが判明した。また、呪文自体も昔とくらべ短くなっているいことがわかったが、今では文字を通して暗唱できることがそうした変化の一要因となっていた。(5)カトゥキ-ナ族 古谷はジュタイ川の支流のビア川流域に住むトゥキ-ナ族の集落を調査した。ここではOPAN(カトリック系インディオ支援団体)が教育・医療活動に従事している。カトゥキ-ナ族にはシャーマニズムそれ自体はほとんど見られないが、クリナ族に呪いの除去を依存していることなどが判明した。また、OPANの活動を通じて、FUNAIとは異なる接触・支援のしかたについても、情報が入手できた。(6)マティス族、カナマリ族、マヨルナ族、クルボ族 アフ-ダはジャヴァリ川流域の諸民族について民族薬学的調査を実施し、マティス族においてはシャーマンがほとんど死亡したという情報を得た。(7)カンパ族 コウトはペル-国境のカンパ族の幻覚性飲料の使用実態、ならびにシャーマンとの聞き取り調査をおこなった。2.非先住民社会(先住民およびその子孫を一部含む)(1)アマゾン河本流域 原はタバチンガ、レティシアにおいて複雑な民族構成とをる社会の民間呪術師を調査対象とし、ジャガ-やアナコンダ(大蛇)のような先住民的表象と、イルカのようにカボクロ(混血住民)のこのむ表象との混合形態をあきらかにした。さらに上流のイキトスにおいても予備的調査をおこなった。(2)ネグロ川流域 サントスはネグロ川流域の住民が利用する薬用植物、とくにサラクラミラについての研究をすすめた。(3)ジュルア川上流域、プルス川上流域 モンテイロはクルゼイロ・ド・スルを中心に幻覚性飲料の摂取をともなうシャーマニスティックな民間習俗について調査し、コウトも幻覚性飲料(サントダイミ)をつかう宗教共同体において、その生活文化ならびに環境保護運動について調査を実施した。日本側研究者も幻覚性飲料を儀礼的に使用するいくつかの集団を訪問し、最新の動向についての情報を入手した。以上の調査をふまえ、サントスを日本に招聘し、ブラジルのCNPq(国立研究評議会)への報告書作成、ならびにポルトガル語による研究成果報告書の作成にむけての打ち合わせをおこなった。

1 0 0 0 OA 曽我物語

出版者
巻号頁・発行日
vol.[2],