著者
野村 幸弘
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

平成29年度は、前年度に引き続き、東北・北海道に残る円空作品について、平成29年8月22日から8月30日までの9日間にわたり調査を行った。作品の所蔵者・所有者の許諾を得て、撮影ができた作品は以下の13点である。秋田(龍泉寺の十一面観音像)、青森(延寿院の観音菩薩像、福昌寺の観音菩薩像、正法院の観音菩薩像、普門院の十一面観音像)、北海道(上ノ国観音堂の十一面観音像、旧笹浪家の観音菩薩像、江差観音寺の観音菩薩像、福島町役場の観音菩薩像、広尾町禅林寺の観音菩薩像、根崎神社の聖観音立像、長万部平和祈念館の観音菩薩像、上磯神社の観音菩薩像)。昨年度、調査できなかった秋田、龍泉寺と北海道、上ノ国観音堂の十一面観音像、さらに根崎神社の聖観音立像の詳細な細部写真(眉・目・鼻・口・手・指・足・衣襞)を今回、撮影することが出来、その様式分析の結果、従来の説とはまったく逆に、秋田→津軽半島→北海道→下北半島というように、円空の東北・北海道で辿った足取りの新しい仮説を得ることができた。ただし、この仮説を確証するためには、下北半島むつ市恐山の菩提寺にある十一面観音像の調査を行う必要がある。また、今年度から、北関東に残る円空作品の調査を開始した。調査した場所は以下の通り。日光清滝寺(平成29年4月14-15日)、春日部市小淵観音院(5月3日)、芝山古墳はにわ博物館(9月17日)、埼玉県立歴史と民俗の博物館(10月15日)、中井出世不動尊(10月28日)、蓮田市文化財展示館(12月9日)、甘楽町歴史民俗資料(平成30年2月11日)、茨城県立歴史館(3月10日)。実物を調査することで、円空の北関東における新たな特徴をもった様式展開を確認することができた。
著者
野池 知枝美 飯野 由香利
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.59, 2016

1.研究の背景と目的<br><br> 住生活は生徒にとって身近なものであるが、日常生活において住環境を整えるのは主に家族であり、生徒は日頃あまり意識せずに生活を送っているのが現状である。そこで生徒の住生活への関心を高めさせ、家族との生活の中でも生徒が住環境を整えることができるように指導計画や指導方法の工夫を図りながら授業を進めた。具体的には、生徒間での「協働学習」や専門的な立場から科学的な視点に基づいた「講座」を実践し、家庭での追究活動を行った。<br><br>2.授業の内容<br><br>(1)住生活の学習における導入段階で、住まいの役割や働きを考える際に住生活への興味・関心を高め学習が進められるように、生徒間でのファシリテーションを実施した。グループ毎に住まいの役割や働きについて各自が付箋に記入した事項を分類した。さらに「健康に必要な物」、「過ごしやすさ」、「安全性」などの生活における快適な住まいの条件を考案し、ポスターを用いて発表した。<br><br>(2)考案した快適な住まいの条件の学習を基に、住まいの構造についてワークシートにまとめた。自分の家の見取り図を描き、自分の家にある空間や構造について見直し、快適な住生活を送る上で住まいに必要な基本的な構造や空間及び設備等を考えた。<br><br>(3)快適な住生活を送るために必要な基礎的な室内環境の整え方や家庭内の安全や災害への備えについて調べ学習を行い、ワークシートにまとめた。<br><br>(4)住生活における「涼しく・暖かく住まう」について、専門的な立場から科学的な視点に立ち、原理・原則を学ぶための体感型実験等を取り入れた「講座」を行った。生徒達は身体と周辺環境との科学的なかかわりを理解し、快適に住生活を送るための工夫の仕方を学んだ。「講座」の前後にアンケート調査を実施した。<br><br>(5)上記学習を通して、自分の家庭で快適に安全に住まうために実践できる「我が家の快適・安全プラン」の課題を2~3種類挙げて、ワークシート(計画表)を作成した。<br><br>(6)追究活動として、夏休みに家庭でワークシートに基づいて「我が家の快適・安全プラン」を実践した。実践後プランを評価し、家族からも実践の評価を得た。<br><br>(7)夏休み終了後の授業で、「我が家の快適・安全プラン」で実践したことを発表し合い、互いの実践内容を共有する「協働学習」を行った。なお、(4)と(6)以外の授業において、毎時間家庭科学習カードを用いて授業の振り返りと自己評価を行った。<br><br>3.結果<br><br>(1)家庭科学習カードにおける自己評価<br><br> 毎授業後に振り返りを記述することで、自身の学習の成果や次の学習に向けての課題を考えることができた。積極的に学習に取り組み、授業を通して知識や技術を習得でき、学習活動で創意・工夫することができた。生徒と家族の今後の生活での課題を見出し、生かそうとする傾向が見られた。<br><br>(2)「協働学習」における効果<br><br> 生徒間での「協働学習」を実施することで新たな視点を見出し、住生活に対し徐々に関心を持ちながら学習を進めていくことができた。実践内容を共有することで、生徒や家族の今後の生活の新たな課題や実践方法を見つけることができた。「協働学習」の有効性が示された。<br><br>(3)アンケート調査の結果<br><br>①住生活に関する情報源と興味及び住まい方の工夫<br><br> 約半数の生徒はテレビと家庭科の授業により住生活の知識を得ており、自身の生活と住生活との関連性を約83%の生徒が認めている。住生活への興味は約58%に留まっているものの、83%の生徒は「講座」前の学習からより快適な住まい方への関心を持っていた。<br><br>②「講座」の理解度と意識の変化<br><br>伝熱や気化熱の原理を学習して、人体と周辺環境との熱や水分のやりとりの仕組みについて70%以上の生徒が理解した。「講座」後に、住生活の学習が生活の向上にとても役に立つと思う生徒の割合が高くなった。住生活の学びは学習している現在や将来の快適な生活に生かすことができると74%以上の生徒が回答した。「講座」の実践を通して、生活を科学的にとらえることにより家庭実践に繋がることを確認できた。

1 0 0 0 OA 日本外志

著者
山本北山 編
出版者
巻号頁・発行日
vol.巻14-15,
著者
神林 翔太 張 勁 柴沼 成一郎 成田 尚史
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2015年度日本地球化学会第62回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.181, 2015 (Released:2015-09-03)

福島第一原子力発電所事故により飛散し,陸上に沈着した放射性セシウム(Cs)は水・物質循環に伴う移動で海洋へ移行するため,今後は海洋への移行予測が重要になる。水・物質循環の経路において,汽水域は河川水と海水の混合領域であり,塩分の急激な変化に伴う吸着・溶脱等により化学物質の濃度が大きく変化するため,海洋への移行を考える上で汽水域での放射性Csの動態把握は重要である。しかし,先行研究では大河川や沿岸域での動態把握に留まり,汽水域での挙動は明らかにされていない。本研究では,汽水域での放射性Csの動態を把握し,「河川-汽水-海洋」の系における移行挙動を明らかにするため,幅広い塩分変動をもつ海跡湖「松川浦」において現場観測を行った。
著者
吉井 潤
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.9, pp.458-461, 2018-09-01 (Released:2018-09-01)

専門紙・業界紙は,情報収集に役立つ優れたレファレンスツールである。その特徴として速報性・内容の深さに加え流通が限定的なことが挙げられるが,様々な人がアクセスできる公共図書館で専門紙・業界紙を提供することでより多くの人が手に取ることができる。どんな新聞があるのかを知ることのできる資料は限られており,長く続いているもの,第三種郵便物であること,発行母体を資料評価ポイントとして収集するとよい。レファレンスにおいては統計・人事情報を得る資料として活用できる。
著者
徳毛 貴文
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.9, pp.452-457, 2018-09-01 (Released:2018-09-01)

「あの時,あの時代に何が起きたか」を調べるには,新聞記事データベースが有用だ。読売新聞の「ヨミダス歴史館」はその先駆けで,明治の創刊号から現代まで140年余りの記事を,図書館などで検索することができる。テキストデータがない活字時代の紙面も検索できるよう,1本1本の記事にキーワードをつけ,新聞広告や連載小説まで検索可能にした,近現代史のデジタル・アーカイブだ。ヨミダス歴史館は毎日,新たな紙面を追加収録すると共に,検索キーワードの見直しも続け,今も進化し続けている。SNSに雑多なニュースが流れ,消費される中,情報を的確に読み解くために新聞記事データベースが役立つことを期待したい。
著者
江村 亮一
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.9, pp.446-451, 2018-09-01 (Released:2018-09-01)

日本経済新聞電子版は2018年6月,有料会員60万人に到達した。2010年3月の創刊当初,月額4000円は「高すぎる」といわれたが,20代,女性層に有料会員のすそ野が広がり,創刊当初の予想を超える成長軌道を描いている。日経電子版は記事を提供するだけでなく,エンジニアと編集部門が一体となって「仕事に使えるツール」を目指し,改良を続けてきた。日経電子版のこれまでの歩みと今後の方向性,デジタルメディアの共通課題に触れながら,デジタルメディアの将来を展望したい。
著者
松本 恭幸
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.9, pp.440-445, 2018-09-01 (Released:2018-09-01)

地方紙のデジタル化の進捗状況は,個々の地方紙の抱える条件が大きく異なり,電子版の有料化についても違った対応をしている。だが今後,紙媒体の購読者が減少する中,単にニュース記事の課金ビジネスだけで乗り切ることは出来ないだろう。本稿では地方紙が今後もローカルジャーナリズムの担い手としての役割を維持していくため,ニュース配信以外にも様々なコンテンツやサービスの提供によるデジタル事業のマネタイズ化,合理化が求められる紙面づくりへの市民参加の可能性の追求,宅配網を維持するための販売店の多角化,地方紙のリソースを活かした新規事業開発等の必要性について,様々な先進的な取り組みの事例をもとに紹介する。
著者
久松 薫子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.9, pp.433, 2018-09-01 (Released:2018-09-01)

明治期から現在まで,日々発行され情報を発信し続けている新聞は,身近な情報源として多くの購読者をかかえてきました。近年ではインターネットの普及とデジタル機器の発展の影響を大きく受け,読者,特に若年層の減少が多く指摘されています。新聞の情報は,速報性やアクセスのしやすさ・信頼性において,いまどのような位置づけにあるのでしょうか。新聞が今,デジタル情報の発展にどのように対応し,どのようにその情報は人々に届けられているのか,そしてそれらはどのように活きているのか,概観する特集を企画しました。日本大学の石川徳幸氏には,各種メディアが普及しその重要性が高まっていく中で変化した国内の新聞の状況について総括していただきました。続いて,数多くある地方紙の現状や電子化への対応・課題について,武蔵大学の松本恭幸氏に報告していただきました。また,電子化された新聞として,個人向け契約の電子版と図書館等で機関契約する新聞記事データベースについて,それぞれ日本経済新聞社の江村亮一氏,読売新聞東京本社の徳毛貴文氏に解説していただきました。こうして提供される新聞の情報を活用している2つの事例として,図書館における専門紙の提供について図書館総合研究所の吉井潤氏に,神戸大学附属図書館デジタル版新聞記事文庫をその活用の傾向も含めて,神戸大学の末田真樹子氏・花﨑佳代子氏にご報告を頂きました。新聞の情報がさらに活用されるきっかけとなれば幸いです。(会誌編集担当委員:久松薫子(主査),當舎夕希子,長野裕恵,松本侑子)

1 0 0 0 OA 怒りの動機

著者
大渕 憲一 小倉 左知男
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.200-207, 1985-10-30 (Released:2010-07-16)
参考文献数
11
被引用文献数
3 3

We administered Averill's questionnaire on “the everyday experience of anger” to 123 adults and 130 university students who lived in Osaka, Japan. They were asked to rate their recent anger episodes in terms of the instigator, motive, response, etc. It was found that (1) there were two factor dimensions in the motives of anger which were interpreted as hostile and instrumental motives; (2) hostile anger was more aroused when the instigators were not so familiar to them and had authority over them, while instrumental anger was more aroused when the instigators were their loved ones or friends; (3) hostile anger, compared with instrumental, was intensified principally when the subjects perceived their instigators had malicious intent; and (4) the subjects who felt hostile anger, compared with instrumental, were likely to wish to commit aggression against their instigators.
著者
大淵 憲一
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.127-136, 1986-02-20 (Released:2010-11-26)
参考文献数
22

本稿では社会人と大学生を被験者に, Averillの質問紙「怒りの経験」を使って攻撃反応の要因を検討した. まず, 反応11項目の因子分析から, 願望・実行の両水準で同じ4因子が得られ, それらは「直接的攻撃」, 「攻撃転化」, 「非攻撃的解決」, 「怒りの抑制」と解釈された。次に, これらを基準変数とし, 一方, 個人要因 (年令, 性別), 状況要因 (加害者の性別, 被験者との関係, 地位, 被害), 認知判断 (悪意の知覚, 原因帰属), 情緒過程 (敵意的動機, 道具的動機, 怒りの強さ) を説明変数とする数量化分析I類を行った。主な結果は次の通り。(1) 直接的攻撃反応は, 心理的被害が強く, それが不合理な原因に帰属され, 敵意的動機が喚起され, 加害者が身近な人の時に生じやすく, 対象が目上の人だったり女性だったりすると抑制されやすかった。(2) 攻撃転化は, 若年者に多く, 認知的要因が弱いのに情緒的要因が強いなど衝動的性格が認められた。(3) 非攻撃的解決が試みられるのは, 加害者と被験者の間に元々良好な関係があり, 被害が悪意に帰属されず, 敵意的動機が弱く道具的動機が喚起されている時だった。(4) 怒りの抑制は, 被害が個人的な性質のもので他者の共感を得にくく, また, 加害者が明確な攻撃意図を持っていたり目上の人であるなど, 報復の危険が高い時に行われやすかった。
出版者
日経BP社
雑誌
日経エネルギーnext = Nikkei energy next (ISSN:21894795)
巻号頁・発行日
no.8, 2015-09

電力10社の低圧託送料金案が7月末に出そろった。最終的な認可は12月になるが、託送料金のメニューや金額の上限が決まったことで、小売事業者による具体的な商品設計が始まる。 家庭向けで最も普及しているアンペア契約に当たる託送料金は、東京電力の場合で基…
著者
赤祖父 哲二
出版者
筑波大学
雑誌
筑波英学展望 (ISSN:02886383)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.29-40, 2001

1 筑波山には三回ほど登った。いや、ケーブル・カーに乗っていき、山頂から下界を見下ろしたことがある。残念ながら眺望は麓の学園都市どまりであって、関東平野を一望することはできなかった。天気のせいばかりでなく、視力のせいだった。遠景と近景が同時によいというわけにはいかないらしい。 ...