著者
関根 順一
出版者
慶應義塾経済学会
雑誌
三田学会雑誌 (ISSN:00266760)
巻号頁・発行日
vol.110, no.2, pp.167(71)-188(92), 2017-07

本稿は, 『資本論』第1巻第4篇でMarxが提起した大工業論の数学的定式化を行った。数学的定式化の結果, 協業, 分業, 機械体系による生産の間の関係は簡明になり, 大工業論の構造が明瞭になった。本稿の主要な結論は以下の通りである。第1に協業は生産活動の技術的性質に直接に依拠する。第2に, 生産組織内での労働者間の協力関係に注目するとき, 機械体系による生産は最高度に高められた協業と見なされる。第3に分業は必ずしも生産活動の技術的性質のみに依拠するわけではない。This study mathematically considers large-scale industry addressed by K. Marx in volume 1 of his Capital. In this mathematical formulation, the relationships among worker cooperation, the division of labor, and production by means of the machine system is made simple and transparent ; the logical structure of his argument has been maintained. The main conclusions are as follows : First, cooperation directly depends on the technological properties of industrial production. Second, in terms of cooperation among industrial workers vis-à-vis the organization of production, the machine system can be observed to foster cooperation of the highest degree. Finally, the division of labor does not necessarily depend solely on the technological properties of industrial production.特集 : 『資本論』数理化研究の最先端
著者
森本 壮亮
出版者
慶應義塾経済学会
雑誌
三田学会雑誌 (ISSN:00266760)
巻号頁・発行日
vol.110, no.2, pp.145(49)-166(70), 2017-07

セミナーでは, 欧米で近年提起されている労働価値説の新解釈が報告・議論の対象となった。本稿は, 新解釈にも大別して, New Interpretation, Macro-Monetary Interpretation, Temporal Single System Interpretationの三種が存在することを示すとともに, それぞれの労働価値説について検討し, New Interpretationはスミス的な労働価値説であるものの, 資本循環論を基礎とする後者二つはマルクス的な「資本主義社会の労働価値説」として評価すべきだと主張している。Reviewing both old and new interpretations of Marx's labor theory of value and examining recent discussions thereof, which were the central issues in the seminar as well, this study reconsiders the labor theory of value. From the perspective of the history of economic thought, this paper argues that (i) the labor theory of value is a theory of distribution of labor in a society, (ii) the labor theory of value as interpreted by the "new interpretation" school is not Marx's but Smith's, and (iii) the "macro-monetary interpretation" and the "temporal single system interpretation" are labor theories of value in capitalist society that Marx argued in Capital.特集 : 『資本論』数理化研究の最先端
著者
相原 里美
出版者
関西外国語大学
雑誌
研究論集 (ISSN:03881067)
巻号頁・発行日
vol.93, pp.21-39, 2011-03

丁玲は、1941年に短編小説『夜』を発表した。この物語の舞台は、共産党の根拠地であった延安解放区の川口(チュアンコウ)という農村で、主人公は共産党の指導員になったばかりの何華明という農民の男である。その他、地主の娘清子チンズ、十二歳年上の妻、共産党女性幹部の侯桂英の三人の女性が登場する。物語は、二章構成で、何華明が牛の出産のために自宅に戻った一夜の出来事について描かれている。当時は抗日戦争の只中であり、共産党員である丁玲としては、創作活動を通して、抗日を声高に謳わなければならなかった。しかし、女性解放を目指す文学者としての丁玲は、人々の意識下に潜む旧態依然とした封建的意識を看過することはできなかった。本稿では、「覚醒」したばかりの何華明や三人の女性を通して描かれる、共産党員丁玲の女性解放や文学者としての思想的苦悶に迫りたい。
著者
大矢根 淳
出版者
専修大学人間科学学会
雑誌
専修人間科学論集. 社会学篇 (ISSN:21863156)
巻号頁・発行日
no.3, pp.93-107, 2013-03

本稿は東日本大震災二年目、災害社会学(生活再建・コミュニティ再興)を専らとする筆者の取り組みの軌跡・覚書(II)である。前稿(I)では、津波被災地復興に関する筆者のフィールドワーク(宮城県石巻市小渕浜)の端緒を示し、その前提・背景にあった津波被災地復興の古典(山口弥一郎『津浪と村』)再読の経緯を示しながら、筆者自身が参画して組み上げてきた各種調査研究体制を紹介しつつ、年内計11回の現地調査を概観・記録した。本稿(II)では、その後(2011年11月以降)の現地調査の継続過程を記していく。そこでは震災二年目の各種調査研究(実践)体制の展開について、(本務校)専修大学系連携事業(含・学生のゼミ合宿)、(学会加入している)社会学系4学会合同集会、(筆者のプロパー領域の)日本災害復興学会、(長年依拠しているところの)早稲田大学地域社会と危機管理研究所、文化人類学的地域研究、をあげ、次いで前稿以降この一年間の20回余の被災地訪問(現地調査を含む)を概観する。あわせて、当該研究の社会的還元の実情を、当震災に関連して展開を見せる非・未被災各地の防災事業への筆者の参画状況および刊行物をもって示しておくこととする。
著者
アコマトベコワ グリザット
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2015, 2015

1. 目的 <b><br></b>&nbsp;キルギス国有財産管理局の所有である温泉施設オーロラは, 一年中営業し温泉や泥治療を提供している. 夏季にはイシク・クル湖で湖水浴をすることもできる. オーロラのソ連時代の正式名称は,「ソ連共産党中央委員会管理部門所属サナトリウム-イシク・クル湖」であった. 一般人はオーロラの敷地内に入ることすらできなかった. しかし, 1991年のソ連からの独立と国家の体制転換に伴い, オーロラの利用者も変化していった. 本研究は, 社会主義時代と資本主義化以降のオーロラの利用や利用者の属性(集客圏,年齢,性別,職業)および温泉施設での利用形態や利用時期を明らかにすることを目的とする. <br>2. 研究の手続き&nbsp; <br>&nbsp;まず, オーロラ滞在者のソ連時代1989年12月~1990年12月末(1543人)および独立以降の2011年(342人)の「診療・処方カルテ」の分析を行う. 次に, 利用者と温泉施設スタッフへのインタービュー調査や参与観察を分析する. そして, オーロラの過去と現在を照らしわせ,キルギスの観光への影響を考えたい. <br>&nbsp;3. 結果&nbsp; <br>&nbsp;ソ連時代オーロラリゾートの最多滞在者は, ロシアからの滞在者691人(44.8%)であり, オーロラへのバウチャー配給は, モスクワにおいて決定されたが, 原則として全ソ連の地域別面積に比例して配布されていた. <br>&nbsp;オーロラリゾートでは, ソ連時代, 共産党員が温泉や泥治療等を受けていた.しかし, 党員の党内階級レベルにより訪問時期が異なっていた. オーロラに滞在した共産党の書記官115人を所属階級別に分けた結果, 中央の書記官は100%が多客期の夏に滞在しており, 「特権」を利用していたことが伺われる. 一方, 地方レベルの書記官とソフホーズとコルホーズの書記官の多くは, 冬に滞在するという傾向があった. <br>&nbsp;ソ連からの独立後は, オーロラは一般解放されたため, 職業・地位に関係なく利用者が訪れている. しかし, 料金設定が高いため, 滞在できるのは高所得者に限定されている. しかし, 高所得者以外も外来診療で「オーロラ」の温泉治療・泥治療や理学治療を受けることができ, さらにオーロラの湖畔も利用可能である.&nbsp; <br>&nbsp;以上のように, 社会体制の転換は, 温泉施設利用の変化にも影響を与えている. 具体的には, 旧ソ連時代, オーロラは社会主義エリート限定の健康管理施設であったが, 資本主義化に伴って富裕層を中心に国民一般のためのリゾート施設になった. このように社会体制の転換が, それまでの健康管理施設をリゾート施設に変化させることが, ポスト社会主義国の観光の特徴と考えてよいであろう. &nbsp; <br>
著者
秋田 美穂 恒川 和久
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.4_59-4_68, 2018-03-31 (Released:2018-03-31)
参考文献数
27

本研究は、建築の設計教育を受講する学生を対象に、学生が課題提出のために描いたスケッチの描画や記述に注目することで、設計の際に意識している対象を知り、学習成果を得ている事例を把握することを目的とする。 建築系大学において、多くの大学で初期段階に実施されている立体を構成する課題や住宅を設計する課題提出のために描かれたスケッチの描画や記述の数と成績の関係を探った。また、描画や記述を時系列で具体的にみることで、設計の際に意識しているものを調査した。 調査より、学習成果としてスケッチの描画の状態でも幅や奥行きそして高さなどの寸法を表記することや、スケッチの描画に人を表記している傾向がみられた。また、3次元に着想し、立体を構成する導入段階での課題から敷地を設定することで、設計の際に有用な方法とされている敷地や敷地周辺も視野にいれて設計を進めていく事例も把握した。
著者
遠藤 俊英
出版者
金融構造研究会
雑誌
金融構造研究 (ISSN:13406566)
巻号頁・発行日
no.39, pp.37-48, 2017-06
出版者
巻号頁・発行日
vol.[217],