著者
吉越 昭久
出版者
奈良大学
雑誌
奈良大学紀要 (ISSN:03892204)
巻号頁・発行日
no.7, pp.p177-189, 1978-12

地域の水文環境の機構を明らかにするためには,水収支法などによって,水の量的な把握がなされなければならない.そこで本稿では,余呉湖流域をフィールドとして選び,水の循環機構を明らかにするため,その前提となる水の量的な把握に主眼点を置いた研究をおこなった.そこでまず,1961年から1970年までの10ケ年間の月別水収支の考察をおこない,余呉湖流域の水文特性を明らかにした後,流量・水質などの観測から,余呉湖流域への地下水流入量を検討した結果について論ずる.
著者
松林 弘智
出版者
社団法人 物理探査学会
雑誌
物理探査 (ISSN:09127984)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.283-295, 2007 (Released:2010-06-25)
参考文献数
21
被引用文献数
1

時系列解析に用いられる一般的なウェーブレット変換は,変換結果を定量的に解釈するには不適当な性質を含んでいる。例えば連続ウェーブレットでは,ごく短い時間幅の波形データがその前後の変換結果に繰り返し反映される。また離散ウェーブレットでは,同じ時系列データであっても変換の開始サンプルが異なるだけで,変換結果が大きく変化する。 マッチング追跡法(Mallat, 1993)やその拡張である高速マッチング追跡法(戸田, 2001)はこれらの欠点を解決した変換方法であった。しかしこの手法にも欠点がある。マッチング追跡法では,計算資源への負荷と周波数領域での変換結果の偏りの問題が,また高速マッチング追跡法では,変換する波群の処理順の決定方法や,使用するウェーブレットとデータの波形形状との相違による変換結果への影響という問題が存在する。 本研究ではメイエ(Meyer)ウェーブレットの定義より複素メイエウェーブレットを開発した。このウェーブレットにより周波数領域での偏りと,使用するウェーブレットとデータの波形形状との相違の問題に対処した。さらにこのウェーブレット関数と新たに考案したアルゴリズムより,複素メイエマッチング追跡法を開発した。処理順や計算資源の問題に対処したのみならず,波形形状を数値化するパラメータである位相を出力することが可能となった。例えば時期をずらして同じ観測点で同種の地震波について位相を比較した場合,震源の時間変化を反映する情報となる。 本研究では,阿蘇火山南方の防災科学技術研究所広帯域地震観測網の砥用観測点での波形データへ複素メイエマッチング追跡法を適用することで,阿蘇火山の地下活動に伴う超長周期地震波(Kaneshima et al., 1996)が記録されていることを明らかにした。また,期間ごとの波形形状情報である位相の比較を行い,期間によって地震波の震源の状態の変化していることを示唆する結果をえた。
著者
江草 智弘 佐藤 貴紀 小田 智基 鈴木 雅一 内山 佳美
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.127, 2016

森林小流域においては、地下水が流域界を越えて移動し、流量・水質形成に大きな影響を及ぼす。既存の地下水移動量を求める研究の多くは年水・物質収支を用いており、年より短い期間の移動量を求めた研究は少ない。短期水収支法は、「流量が同程度の2時点では、流域内の水貯留量の差は無視できる」と仮定する。その結果、2時点間の損失量(蒸発散量と地下水移動量の和)は期間降水量-期間流量によって算出される。本研究の目的は、短期水収支法を用い、年より短い期間の地下水移動量を明らかにすることである。我々は神奈川県丹沢山地に位置する大洞沢流域(NO1; 48ha, NO3; 7ha, NO4; 5ha)を対象とした。2010-14の5年間、降水量・流量の観測を行い、短期水収支法を適用した。今までの研究により、NO1では年間の地下水移動量が小さいことがわかっている。従って、我々はNO1の損失量は蒸発散量を表すと仮定し、NO3, 4の損失量からその値を減じ、地下水移動量を算出した。夏季を中心に、NO3では地下水が流域外に流出しており、NO4では逆に流入していた。いずれの流域でも期間降水量と地下水移動量に相関があり、降雨に伴う地下水位の上昇による地下水流入量の決定が示唆された。
著者
高橋 強 西口 猛
出版者
The Japanese Society of Irrigation, Drainage and Rural Engineering
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.139-144,a1, 1987
被引用文献数
1

集落排水処理施設において, 地形条件の異なる2ヵ所の施設へ流入する汚水量を観測した結果, 雨水の流入が顕著であり, 計画値として用いられた地下水流入量をはるかに上回る雨水の流入が観測された。<BR>そこで, 雨水の流入経路を探るために汚水管内の送煙試験, テレビカメラによる管内観察を行い, その結果に基づいて, 雨水の流入を防止するための対策について考察した。
著者
辻村 真貴 安部 豊 田中 正 嶋田 純 樋口 覚 上米良 秀行
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.18, pp.31-31, 2005

乾燥・半乾燥地域における内陸河川は,流下にともない水面からの蒸発と地下水への涵養により,徐々に流量を減じていくことが一般に言われている.従来こうした河川と地下水の交流関係は,流下に伴う河川流量の変化という見かけの傾向から指摘されることが多く,実証的な検討はなされてこなかった.本研究では,モンゴル東部ヘルレン川の上流部から中流部に至る本流とその流域を対象に,安定同位体トレーサーを用いた水・同位体収支解析に基づき,河川水と地下水との交流関係を検討した.その結果,上流,中流いずれの区間でも河川_-_地下水交流量は正値を示し,河川に対する地下水の流出が生じていることが示唆された.上流区間において1.0 m3/s(1.7 x 10-2 m3/s/km),中流区間において2.6 m3/s(1.1 x 10-2 m3/s/km)の地下水流入量は,水面蒸発量を上回り,また河川流量の10 %から20 %に相当し,無視し得ない量である.

1 0 0 0 OA 須磨誌

著者
上原勇太 著
出版者
上原勇太
巻号頁・発行日
1896
著者
亀井 健史 榎本 雅夫
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科学 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.148-160, 1996
参考文献数
17
被引用文献数
1

地下水位の上昇に起因する地すべりに対し,効果的な対策工のひとつとして集水井工が挙げられる.集水井工の地下水位低下に及ぼす効果に関しては,経験的な設計値は設定されているものの,その定量的な評価手法に関しては確立されていないのが現状である.本研究では,砂および粘性土から構成される四つのモデル斜面を対象に飽和-不飽和浸透流解析を行い,集水井工が斜面内の浸透流挙動に及ぼす影響を明らかにし,集水井工の地下水位低下に及ぼす効果を検討している.その結果,降雨量,上流側方からの地下水流入量が異なる条件下で集水井工が斜面の安定性に与える効果をある程度定量的に明らかにしている.
著者
亀井 健史 榎本 雅夫
出版者
The Japan Landslide Society
雑誌
地すべり (ISSN:02852926)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.10-16, 1996-09-15
参考文献数
12
被引用文献数
3

地すべり発生のメカニズムに関しては, すべり面に作用している間隙水圧の上昇がその主要因の一つとして考えられており, 地すべり斜面の安定性を検討する際には, 斜面内の間隙水圧を定量的に把握することが重要となる。このことから, 本研究では降雨および斜面上流から流れ込む地下水が斜面内の間隙水圧変動に与える影響を調べるため, 砂および粘性土から構成される四つのモデル斜面を対象に飽和-不飽和浸透流解析を行った。その結果, 斜面の土性および地層構成, 降雨量, 上流側方からの地下水流入量が斜面内の間隙水圧挙動に与える影響を定量的な観点から検討している。
巻号頁・発行日
vol.[102] 諸家国産之部, 1000
著者
谷川 卓
出版者
The Philosophy of Science Society, Japan
雑誌
科学哲学 (ISSN:02893428)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.37-51, 2014

David Lewis argues that the thesis of Humility follows from two metaphysical principles; combinatorial principle and quidditism. The thesis has received attention of philosophers because of its skeptical implication, but only by focusing on that point one may underestimate the significance of Humility. Another implication drawn from the thesis pertains to the methodological issue, that is, justification of metaphysical principles. A key for the justification of two metaphysical principles in question is correspondence between our thought and the world, and it is required to develop modal epistemology in the way to oppose to Saul Kripkes view.
著者
二宮 健史郎
出版者
経済理論学会
雑誌
季刊経済理論 (ISSN:18825184)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.25-33, 2010-01-20 (Released:2017-04-25)

There has been antagonism between neo-classical and Keynesian macroeconomics since the 1980s. Neo-classical economists have criticized the IS-LM model for reasons such as lacking a microeconomic foundation and assuming price stickiness. Neo-classical and Keynesian economics also hold differing theories of interest rate. In short, neo-classical economics adopts the saving-investment theory of interest rate determination, whereas Keynesian macroeconomics adopts the liquidity preference theory. Mankiw (1992) proposed a macroeconomic model in the short and long run. He interpreted the IS equation as the saving-investment theory of interest rate and the LM equation as the quantity theory of money. Romer (2000) and Taylor (2004) presented another macroeconomic model in which a monetary policy rule was introduced in place of the LM equation. Romer (2000) and Taylor (2004) abandoned any differing theory of interest rate between neo-classical and Keynesian economics. On the other hand, Minsky (1982; 1986) who was a heavyweight in post-Keynesian economics proposed the financial instability hypothesis, which emphasized how the complicated financial structure underlying the capitalist economy generates business fluctuations and cycles. Many non-neo-classical economists have developed his idea following Taylor and O'Connell (1989) who proved that an economy would fall into a financial crisis when a decline in expected profit rates aggravated the financial condition of firms and increased households' preference for liquidity. Recent studies by Asada (2006) and Ninomiya and Sanyal (2009) have incorporated the dynamic equation of debt burden of firms into nonlinear economic dynamic models to indicate the financial condition. Following Rose (1969) and Okishio (1986), Ninomiya (2007c) adopted the loanable fund theory and discussed financial instability in an oligopolistic (or short run) economy. This paper examines financial instability in macroeconomics in the short and long run. We adopt the loanable fund theory to integrate neo-classical and Keynesian economics in order to evaluate the post-Keynesians' analysis of financial instability.
著者
天野御民 編
出版者
博文館
巻号頁・発行日
1891
著者
若尾 孝博
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告自然言語処理(NL)
巻号頁・発行日
vol.1996, no.65, pp.77-83, 1996-07-18
参考文献数
7
被引用文献数
11

電子化されたテキストからの重要な情報を抽出する技術は近年米国を中心に盛んに研究されて来ている。この報告では米国のARPAが支援するMUC(essage Understanding Conferenc)で行われて来た情報抽出研究の過去9年間の移り変わりと最新のMUC(第6回大会、95年11月)の研究成果について詳しく紹介する。これまでの大会では、予め定められたテンプレートを埋めることが情報抽出作業の中心であったが、第6回大会では作業が4種類に分割され、各作業別にシステムの評価が行われた。Information extraction (IE) has been actively researched in recent years in the United States. In this report, an ARPA-supported US project, the Message Understanding Conference (MUC) is introduced including its 9-year history, and the results of the latest MUC convention (the 6th convention, November 1995) are reported in detail.