著者
小堀 紀子 岩切 宗利 松井 甲子雄
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.595-604, 2001-03-15
被引用文献数
7

電子出版の普及にともない,書籍をパソコンや携帯端末上で読む時代となってきた.これにともない,著作権保護の問題が発生するが,漫画の特長を生かした電子透かし技術は見当たらない.そこで,この論文では,インターネットを介して電子的に取り引きされるデジタル漫画に注目し,漫画を2値画像としてとらえ,そこに電子透かしを埋め込む一方式を提案する.本方式は,漫画の特徴である線画を利用し,線分や絵を構成する黒画素の領域を従来法とはまったく異なる面積としてとらえて透かし情報を埋め込む方法である.この方法によれば,画像の黒画素領域のエッジ部分を一様に拡大または縮小しながら利用するため,視覚的にも画像への影響が少なく,各種の攻撃にも耐えられることを示す.Recent developments of electronic publication enable us toread books on a personal terminal and bring a serious problemof copyright protection on World Wide Web or Internet at the same time.This paper pays attention to a digital comic book in such a style.More robust techniques for comic pictures are not presented toembed the copyright data,yet.We propose a simple scheme of comic watermarking,which expands or shrinks the area of black pixels uniformly so as torepresent a digit of copyright data with pixel distribution.The watermarked comic resists unintentional attacks of JBIG/JPEGprocessing and is robust for intentional attacks such as StirMark,also.
著者
井上 純一
巻号頁・発行日
2005-11-18

既にHUSCAPに登録されている「2004年度グラフ理論講義ノート」の2005年度版です。前年度と比べ、いくつかの演習問題とその解答が新たに加わっております。(誤植も可能な限り直してあります) 今回は講義スライドも利用できるようにしてあります。 当講義の情報は http://chaosweb.complex.eng.hokudai.ac.jp/j_inoue/ あるいは http://www005.upp.so-net.ne.jp/j_inoue/index.html からダウンロード可能です。
著者
今福 輪太郎
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.053-060, 2019-02-25 (Released:2019-08-05)
参考文献数
41

医学教育研究は, 採用する理論的枠組みや理論的考察を記述することが国際的に求められてきている. 本稿では, その理論の選定や研究手法の決定の前段階にある「真実の在りか (存在論) 」「現実のとらえ方 (認識論) 」「現実へのアプローチの仕方 (方法論) 」といった哲学的前提の検討や研究パラダイムの明確化に焦点を絞り, そこからどのように体系的に研究をデザインしていけばいいのかを概説する. 「哲学的前提-研究パラダイム・理論-方法論-研究手法」の流れを意識することで, 研究計画に一貫性を持たせ, 分析結果から実践的な示唆だけでなく理論的な貢献ができるようになると考える.
著者
柏原 悠 松原 崇
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第36回 (2022)
巻号頁・発行日
pp.1F5GS1001, 2022 (Released:2022-07-11)

生成モデルによる異常検知は,正常画像のみで学習したモデルで,入力画像と再構成画像の差異により異常画像であるかどうかを判断する方法が一般的である.しかし,既存の生成モデルでは再構成画像が不鮮明であったり,元の画像から回転するなどの問題がありパッチベースのモデルや潜在変数空間を使用したモデルに比べて異常検知の性能が劣っている.工業用製品における欠陥品の検出など現実世界の異常検知では,検出対象の物体の向きが同一でないことや,再構成画像が不鮮明なことによる微小な傷の見逃しにより,既存の生成モデルでは異常の検出に失敗することがある. そこで,我々は鮮明な再構成が可能であるDenoising Diffusion Probabilistic Models(DDPM)をベースのモデルとして,異常検知で拡散過程を使用しない方法により,画像データの回転に対して頑健な異常検知を可能にした.本研究では工業用製品のデータセットであるMVTeC ADを使用しモデルの評価を行い,既存の生成モデルによる性能を大幅に上回る0.92のAUROCを達成した.
著者
石田 祐樹 畑 千嘉子 高倉 裕 垂水 彰二
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成21年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.1071, 2009 (Released:2009-08-28)

【目的】脂質を多く含む食品を加熱調理すると不快臭が一部生成し、調理品の風味劣化や品質低下をもたらす要因となる。特に不飽和脂肪酸の加熱分解により生成する一部の揮発性アルデヒドは不快臭の原因物質とされ、これらの不快臭の発生をいかに抑制できるかが重要である。調理に多用される酒類調味料に含まれる有機酸はアミンなどの揮発性塩基物質と結合して不揮発化することが知られているが、本研究では、脂肪酸に対する各有機酸の酸化抑制効果及び揮発性アルデヒド生成抑制効果を検証した。さらに、魚類や畜肉類などを加熱調理した際の酸化抑制及び揮発性アルデヒド生成抑制効果に及ぼす有機酸添加の影響について検討した。【方法】脂質の代表的な脂肪酸として、リノレン酸、リノール酸、オレイン酸又はステアリン酸をモデル成分として選択した。有機酸は、酒類調味料に比較的多く含まれる、酢酸、乳酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸について検証した。抗酸化はPOV法及びTBA法にて評価を行い、アルデヒドはGC-MSにて分析を行った。【結果】有機酸の中でも特にクエン酸のアルデヒド生成抑制効果が顕著であった。アルデヒド生成量はその脂質に含まれる不飽和脂肪酸量及びその種類に依存しており、魚類では鯖、秋刀魚、鰻の順に、畜肉類では鶏、豚、牛の順に脂質の過酸化が進行していた。これらの食材にクエン酸含有調味料を添加、混合することで、加熱調理時の酸化による揮発性アルデヒドの生成を抑制できることがわかった。
著者
田窪 行則
出版者
日本言語学会
雑誌
言語研究 (ISSN:00243914)
巻号頁・発行日
vol.154, pp.1-27, 2018 (Released:2019-06-04)
参考文献数
27

本稿では言語と認知,言語と思考との関係にかかわる現象について考察する。特に「ところ」という形式名詞の多義性の問題を対象にして言語と推論メカニズム,統語論と意味論,意味論と語用論との関連を考える。初めに「場所」や「位置」を示す形式名詞「ところ」(以下トコロと記す)の空間的な意味・用法を見て,トコロを「基準点を同定する」と特徴づけ,それらがどのように「動作,事態の局面(時間的用法)」,さらには「論理・推論(モーダル用法)」へと拡張されるか,そのメカニズムを詳しく考察することでトコロの様々な用法が説明できることを示す。空間>時間>論理・推論という拡張の認知メカニズムを考えることで,言語,認知,論理の関係についての示唆を得ることが目的である。

5 0 0 0 OA 魯迅全集

著者
井上紅梅 訳
出版者
改造社
巻号頁・発行日
1932
著者
エラリー・クイーン編
出版者
光文社
巻号頁・発行日
1978
著者
Jiro Aoyama Hiroto Iha Mariko Ishikawa Hirotaka Sagawa Sakyo Hirai Kyohei Fujita Shoko Fujii Kazutaka Sumita
出版者
The Japanese Society for Neuroendovascular Therapy
雑誌
Journal of Neuroendovascular Therapy (ISSN:18824072)
巻号頁・発行日
pp.cr.2023-0052, (Released:2023-11-18)
参考文献数
20

Objective: Cerebral venous sinus thrombosis (CVST) is one of the rare and severe complications of coronavirus disease 2019 (COVID-19) vaccines. CVST has also been reported to develop into dural arteriovenous fistula; however, there were no reports of dural arteriovenous fistula associated with COVID-19 vaccine-induced cerebral venous sinus thrombosis. Here, we describe a rare case of a transverse–sigmoid sinus dural arteriovenous fistula followed by CVST due to COVID-19 vaccination.Case Presentation: A 70-year-old patient presented with headache five days after receiving a second dose of COVID-19 vaccine. MRI showed a CVST in the superior sagittal sinus, left transverse sinus, and left sigmoid sinus. His headache improved after the administration of anticoagulant therapy. Six months later, a similar headache recurred, and cerebral angiography demonstrated a dural arteriovenous fistula in the left transverse sigmoid sinus and convexity dural arteriovenous fistulas in the left parietal cortex. The patient was treated twice with two sessions of transarterial embolization, and the shunts were completely occluded. His symptoms improved, and he was discharged with a modified Rankin Scale score of 0.Conclusion: Dural arteriovenous fistula can develop after CVST in association with COVID-19 vaccination.
著者
Taro Yanagawa Aoto Shibata Shinya Tabata Shunsuke Ikeda Toshiki Ikeda
出版者
The Japanese Society for Neuroendovascular Therapy
雑誌
Journal of Neuroendovascular Therapy (ISSN:18824072)
巻号頁・発行日
pp.cr.2023-0055, (Released:2023-10-24)
参考文献数
9

Objective: The trans-cell technique in stent-assisted coil embolization is a common treatment method for intracranial aneurysm. However, despite the frequency of its use, reports discussing its complications and their management are few. We describe a case of stent and microguidewire entanglement, which could not be removed, during treatment using the trans-cell technique. We discuss the mechanism of the entanglement and its management.Case Presentation: A woman in her 40s was found to have an unruptured cerebral aneurysm with a maximum diameter of 5.9 mm located in the paraclinodal anterior process of the left internal carotid artery during a close examination of a headache. The aneurysm had an irregular shape and wide neck. Stent-assisted coil embolization was planned. Initially, the coil was embolized using a jailing technique, but the microcatheter was pushed out of the aneurysm during embolization. Thus, we attempted to switch to a trans-cell technique. However, during the process, the stent and microguidewire became entangled and could not be removed. Finally, when the stent slipped off, the entanglement was resolved and the microguidewire was retrieved. Fortunately, the patient was discharged home without postoperative complications.Conclusion: Once a stent and a microguidewire become entangled, safely releasing them is difficult. Thus, it is important to avoid this scenario from occurring.
著者
花房 規男 阿部 雅紀 常喜 信彦 星野 純一 和田 篤志 菊地 勘 後藤 俊介 小川 哲也 神田 英一郎 谷口 正智 中井 滋 長沼 俊秀 長谷川 毅 三浦 健一郎 武本 佳昭
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.55, no.12, pp.665-723, 2022 (Released:2022-12-27)
参考文献数
22
被引用文献数
10

日本透析医学会統計調査(JSDT Renal Data Registry:JRDR)の2021年末時点における年次調査は,4,508施設を対象に実施され,施設調査票に関しては4,454施設(98.8%),患者調査票に関しては4,251施設(94.3%)のほぼ例年通りの回答を得た.わが国の透析患者数は年々増加し,2021年末の施設調査結果による透析患者数は349,700人に達し,人口百万人あたりの患者数は2,786人であった.患者調査結果による平均年齢は69.67歳で,最も多い原疾患は糖尿病性腎症(39.6%),次いで慢性糸球体腎炎(24.6%),第3位は腎硬化症であった(12.8%). 2021年の施設調査結果による透析導入患者数は40,511人であり,2020年から233人減少した.患者調査結果による透析導入患者の平均年齢は71.09歳であり,原疾患では糖尿病性腎症が最も多く40.2%で,昨年より0.5ポイント少なかった.第2位は腎硬化症(18.2%)で,昨年同様慢性糸球体腎炎(14.2%)を上回った.2021年の施設調査結果による年間死亡患者数は36,156人であり,年間粗死亡率は10.4%であった.主要死因は心不全(22.4%),感染症(22.0%),悪性腫瘍(8.4%)の順で,昨年とほぼ同じ比率であった.2012年以降,血液透析濾過(HDF)患者数は急増しており2021年末の施設調査票による患者数は176,601人で,維持透析患者全体の50.5%を占めた.腹膜透析(PD)患者数は10,501人であり2017年から増加傾向にある.腹膜透析患者のうち20.3%は血液透析(HD)やHDF との併用療法であり,この比率はほぼ一定していた.2021年末の在宅HD患者数は748人であり,2020年末から3人減少した.2021年は,施設調査として災害対策調査,また本年も引き続き,新型コロナウイルス感染症,悪性腫瘍,生体腎移植による腎提供の既往が調査された.これらのデータはそれぞれの疾患・患者に関する基礎資料となり,その結果から,より治療効果の高い日常臨床パターンの提案が期待される.
著者
井口 貴紀
出版者
公益財団法人 情報通信学会
雑誌
情報通信学会誌 (ISSN:02894513)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.67-76, 2013 (Released:2013-12-25)
参考文献数
25
被引用文献数
3

現代日本ではゲームが社会に浸透して、代表的な娯楽メディアとなっている。これまでゲーム研究はゲームによる身体への影響や、暴力的ゲームの悪影響など送り手側の視点を取った効果研究が中心だった。だがゲームは能動性の高いメディアであり、他メディア以上に受け手側であるユーザーの立場を取った研究が必要である。本研究では若者のゲーム利用動機に注目し「利用と満足研究」の手法を用いて大学生1503名を対象にした量的調査を行った。調査の結果、分類された動機は「空想」「承認」「趣向」「達成」「友達」「学習」「気晴らし」の7つである。その中でも「承認」には競争の要素が含まれていることがわかった。加えて「気晴らし」以外の6つの動機が高いほどゲームへの没入度が高くなることが明らかになった。
著者
宮入 暢子 森 雅生
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.206-213, 2021-05-01 (Released:2021-05-01)

2012年10月にレジストリサービスの提供を開始したORCID(Open Researcher and Contributor ID)は,世界中で各種の学術情報システムやサービスに広く実装され,総登録者数は2020年末までに1,000万人を超えている。本稿では,運営組織としての非営利団体ORCIDや,研究者情報基盤としてのORCIDの特徴と提供サービスについて概観し,1,000を超える機関メンバーや23のコンソーシアムによって支えられるORCIDコミュニティの現況について解説する。
著者
金 鮮美 寺井 弘高 山下 太郎 猪股 邦宏
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.77, no.12, pp.805-810, 2022-12-05 (Released:2022-12-05)
参考文献数
32

超伝導量子ビットは,電子や原子,イオンや光子といった微視的粒子からなる量子ビットとは異なり,巨視的な電気回路上に発現する量子力学的重ね合わせ状態やエンタングルメントの制御を可能とした「人工原子」の一種である.これは主にアルミニウム(Al)ベースのジョセフソン接合により構成され,回路設計の改良や作製プロセスの改善・工夫など様々な研究を経て,コヒーレンス時間は20年程かけて当初のそれよりも約5桁向上した.しかしながら,超伝導量子ビットの心臓部であるジョセフソン接合には,酸化絶縁膜として非晶質酸化アルミニウム(AlOx)が含まれるため,そこに存在する欠陥二準位系がデコヒーレンス源として作用することが懸念されている.したがって,さらなるコヒーレンス時間の改善に向け,ジョセフソン接合材料の改良が必要不可欠と考えられる.このようなジョセフソン接合材料の筆頭候補となり得るのが,窒化物系超伝導体である窒化ニオブ(NbN)と絶縁膜となる窒化アルミニウム(AlN)の組み合わせである.エピタキシャル成長技術によって作製される全窒化物NbN/AlN/NbNジョセフソン接合では,絶縁膜として機能するAlNも結晶化しているため,非晶質AlOx中に存在するような欠陥二準位系に起因するデコヒーレンスの抑制が期待される.また,NbNの超伝導転移温度は約16 Kであり,Alのそれ(約1 K)と比較して一桁高いことから,Alベースの超伝導量子ビットよりも高温動作が期待できること,さらに,デコヒーレンス源の一つである準粒子の励起に高いエネルギーが必要となるため,その要因となる熱や赤外光に対する外乱に強固になると予想され,より安定動作可能な超伝導量子ビットの実現が期待できる.異種材料間におけるエピタキシャル成膜技術では,格子定数がほぼ等しいという条件が前提となる.つまり,NbN/AlN/ NbN接合を基板上にエピタキシャル成長させるためには,NbNとほぼ同じ格子定数を持つ酸化マグネシウム(MgO)基板を用いることがこれまでの定石であった.ところが,MgOは高周波領域における誘電損失が大きく,MgO基板上のNbN/AlN/NbN接合を用いた超伝導量子ビットでは,コヒーレンス時間が0.5 μs程度とMgO基板の誘電損失に大きく制限される結果となっていた.我々は,今回,この問題を解決するためにTiNバッファー層を用いることでシリコン基板上に全窒化物NbN/AlN/NbN接合からなる超伝導量子ビットを実現し,平均値としてエネルギー緩和時間(T1)16.3 μs,位相緩和時間(T2)21.5 μsのコヒーレンス時間を達成した.これはMgO基板上に作製された従来の全窒化物超伝導量子ビットと比較して,T1は約32倍,T2は約43倍と一桁以上の飛躍的な改善を示す結果である.窒化物系超伝導体薄膜のエピタキシャル成長技術と積層型ジョセフソン接合作製プロセスは,斜め蒸着によるAlベースのジョセフソン接合作製プロセスでは実現不可能な三次元積層構造も比較的容易に作製可能となり,高度な半導体プロセスとの相性も良いことから,量子回路の設計に大きな自由度と可能性をもたらすことが期待される.