著者
Hideyuki Katsura Yukio Suga Anna Kubo Hayato Sugimura Kaname Kumatani Kazunobu Haruki Miwa Yonezawa Ayaka Narita Rei Ishijima Hiroaki Ikesue Hitomi Toi Naoko Takata
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Biological and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:09186158)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.98-103, 2024-01-01 (Released:2024-01-01)
参考文献数
20
被引用文献数
1

Hypomagnesemia commonly occurs as a side effect of panitumumab treatment. In severe cases, temporary discontinuation or dose reduction of panitumumab may be necessary. Proton pump inhibitors (PPIs) are reportedly potential risk factors for hypomagnesemia. We conducted a multicenter study to assess the impact of PPIs on the risk of grade 3–4 hypomagnesemia in patients with metastatic colorectal cancer (mCRC) receiving panitumumab. We adjusted for potential bias using a propensity score-matched analysis and retrospectively reviewed the medical records of patients. Hypomagnesemia severity was graded according to the Common Terminology Criteria for Adverse Events, version 5.0. A total of 165 patients were enrolled in this study. The incidence of grade 3–4 hypomagnesemia was significantly higher in the PPI group than in the non-PPI group, both before (20.0% [30/60] vs. 8.0% [8/105], p = 0.026) and after propensity score matching (16.2% [6/37] vs. 0% [0/37], p = 0.025). In the propensity score-matched cohort, the risk of grade 3–4 hypomagnesemia was significantly higher in the PPI group (odds ratio, 2.19; 95% confidence interval, 1.69–2.84; p = 0.025). These findings suggest that concomitant use of PPIs significantly increases the risk of grade 3–4 hypomagnesemia in patients with mCRC receiving panitumumab. Therefore, close monitoring of these patients is imperative.
著者
栄藤 稔
出版者
総務省情報通信政策研究所
雑誌
情報通信政策研究 (ISSN:24336254)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.25-51, 2023-11-20 (Released:2023-12-28)
参考文献数
51

生成AIの技術進化が2022年から急激に加速し、ユーザーを取り込んだ新たなコンテンツ経済圏が形成されようとしている。2014年に発明されたGAN(生成的敵対ネットワーク)という技術により、人が区別できないほど精巧な画像が自動生成されるようになった。さらに、2016年、データを高度に抽象化する深層学習技術、トランスフォーマーが登場した。これは「データを与えさえすれば機械が自動学習する」という教師なし学習の大きなブレークスルーとなった。そして2022年、ChatGPTに代表されるコンテンツを自動生成する技術が登場し、多様なメディアを対象として急速に進化しようとしている。深層学習の進化、音声や画像認識の実用化、そしてこれらの技術組み合わせることで、従来人間が行っていた文章の執筆、絵の描画、楽曲の制作、動画の撮影や編集といったクリエイティブな作業がAIによって置き換えられる時代が到来した。コンテンツ制作の主体がプロのクリエーターから一般の人々へと移行する可能性が出てきた。従来のクリエーター中心の視点から、ユーザー中心の視点へのコンテンツ経済圏のシフトが予見される。AIが作成したコンテンツをAIGC(AI Generated Content)と呼ぶ。それがどのような経済圏を作るかを議論したい。脚本の生成や俳優の演技のデジタル複製・変更が簡単に行えるようになり、これが脚本家や俳優の役割や権利への影響をもたらすことが予想される。このような変化は、クリエーターとして知られる脚本家、アニメーター、俳優などの様々な分野の専門家たちの生態系に大きな変動を引き起こす可能性がある。日本には、ポケモンに代表されるキャラクターコンテンツを中心とした世界的に成功を収めているメディアフランチャイズ事業や、ユーザー主導でのコンテンツの流通を特徴とするコミュニケーションマーケットなどの独自の文化が存在する。その代表例として初音ミクを取り上げる。デジタル技術の進化、ユーザーの積極的な参加、ファンの熱狂、そして柔軟な著作権管理を組み合わせたビジネスモデルが、日本において生成AIを効果的にビジネスに取り入れるための良い土壌を形成している。今後、ソーシャルメディアと生成AIの組み合わせによって、ユーザー生成コンテンツ(UGC)がAIGCと一体化し、世界的に広がっていくことが期待される。一方で、生成AIの技術の利用には、著作権法の問題や倫理的な課題など、様々な問題が伴う。特に、人間の感性や独自性を持つコンテンツの生成に関しては、AIとのバランスをどのように取るかが重要となる。生成AI技術と人間のクリエーターが対立するのではなく、互いに共存し、新しい形のコンテンツを共に生み出すことが、今後のコンテンツ産業の発展の鍵となる。

5 0 0 0 OA 弥生の石棒

著者
秋山 浩三
出版者
一般社団法人 日本考古学協会
雑誌
日本考古学 (ISSN:13408488)
巻号頁・発行日
vol.9, no.14, pp.127-136, 2002-11-01 (Released:2009-02-16)
参考文献数
23

西日本でも近年,縄文時代の代表的な石製呪術具である石棒類(石棒・石刀・石剣)の研究が盛んになってきた。とくに小林青樹や中村豊らを中心とする研究者によって西日本各地の関連資料の集成作業がなされ,重要な成果が公表された。そのなかで,『河内平野遺跡群の動態』(大阪府・近畿自動車道関連報告書)に収載されていた石棒の一部に関しては,掲載方法の不備(図面・記載の欠如)もあって,上記集成書からは遺漏してしまっている。それらの報告補遺を端緒とし,(旧)河内湖南岸域の諸遺跡から出土している石棒類を再検討する。その結果,この地域の石棒類には,弥生時代に属する遺構からの出土例が比較的多くみられ,"弥生時代の石棒"の存在を確実視できる。さらに,同様の観点で近畿地方各地の関連データを検索するならば,近畿一円に類似した現象を追認でき,それらの多くは縄文晩期末(突帯文)・弥生前期(遠賀川系)土器共存期の弥生開始期~弥生中期初頭(第II様式)という,一定の継続した時間幅のなかに位置付けられることが明らかになった。この現象は,ことに大阪湾沿岸域で比較的顕著で,なかでも近畿最古期の環濠集落を成立させた地域周辺で際立っている。従来の研究において,弥生時代の石棒に関しては,縄文時代の石棒類とは異なる原理で生まれたと評価されることが主流で,縄文時代から継承するあり方で遺存する諸例に対し積極的に言及されることがなかった。しかし,このような石棒類を分析するならば,弥生開始期における縄文・弥生系両集団の接触・「共生」(共存状態)・融合という過渡的様相のなか,両系集団の間にはおおむね当初段階からかなり密接な関係が,使用していた土器の種類や経済的基盤の違いをこえて達成されていたと想定できる。これは,縄文・弥生系集団による隣接地内における共生の前提であり背景であった。さらに,祭祀行為自体の特性から推測すると,このような弥生開始期やそれ以降の普遍的な弥生文化の定着後においても,石棒類が直ちには消滅せずに根強く存続した要因として,弥生文化の担い手の主体的な部分が在来の縄文系集団に依拠・由来していたことによる,という見通しを得ることができる。
著者
田村 朝子 加藤 みゆき 大森 正司 難波 敦子 宮川 金二郎
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.45, no.12, pp.1095-1101, 1994-12-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
13
被引用文献数
2

後発酵茶の一種である阿波番茶, 碁石茶, 石鎚黒茶それぞれの, 各製造工程から微生物を分離し, 同定を行った.(1) 阿波番茶, 碁石茶, 石鎚黒茶から嫌気性菌, 好気性菌, カビがそれぞれ分離され, その形状, 諸性質より Lactobacillus, Streptococcus, Bacillus, Pseudomonasなどの存在が明らかとなった.(2) 阿波番茶, 碁石茶からの分離菌株 Pseudomonas aeruginosa および P.cePaciaを用いて至適温度, 至適pH, 耐熱性試験を行った.その結果至適温度はそれぞれ40℃, 37℃, 至適pHは5.5, 5.0~7.0, 耐熱性は70℃および80℃までそれぞれ増殖が可能であった.
著者
Masao Ichikawa Haruhiko Inada Kota Katanoda Shinji Nakahara
出版者
Japan Epidemiological Association
雑誌
Journal of Epidemiology (ISSN:09175040)
巻号頁・発行日
pp.JE20220054, (Released:2022-08-13)
参考文献数
16

Background: Since 2011, commercial truck drivers have been required to take alcohol breath tests at the beginning and end of their working hours due to their employers’ legal obligations. However, non-commercial truck drivers are not required to do so. We examined whether alcohol-related crashes had decreased after 2011 among commercial truck drivers.Methods: Using police data, we conducted a joinpoint regression analysis to examine the trend in the proportion of alcohol-related crashes from 1995 to 2020 caused by commercial truck drivers (who were subjected to alcohol breath testing) and non-commercial truck drivers (who were not subjected to testing). The annual percentage change in this trend was also estimated.Results: During the 26-year study period, truck drivers caused 1,846,321 at-fault crashes, and 0.4% of the crashes involved intoxicated driving. A significant decreasing trend in the proportion of alcohol-related crashes was identified among both commercial and non-commercial truck drivers in the 2000s, during which several legal amendments were made against drunk driving. The annual percentage change was –13.5% from 2001 to 2012 among commercial truck drivers, and –14.9% from 2001 to 2011 among non-commercial truck drivers. No decreasing trend was observed afterwards, despite the introduction of mandatory alcohol breath testing in 2011.Conclusions: The effect of mandatory alcohol breath testing on reducing alcohol-related crashes among commercial truck drivers was not evident.
著者
日台 智明
出版者
日本大学医学会
雑誌
日大医学雑誌 (ISSN:00290424)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.167-169, 2020-04-01 (Released:2020-08-14)
参考文献数
8
著者
國島 広之 賀来 満夫
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.101, no.11, pp.3090-3096, 2012 (Released:2013-11-10)
参考文献数
9
被引用文献数
4 1

医療機関は免震性と大量の水,検査体制,物品や薬剤の必要量の確認・在庫の確保が必要である.避難所ではインフルエンザや感染性胃腸炎などの罹患者もみられ,医療機関では市中肺炎を主に対応した.災害時における感染症サーベイランス体制の整備,情報の共有,日頃からの感染症予防などについて更に推進する必要があり,地域における行政・医療機関・大学などの専門機関との連携が極めて重要である.
著者
倉橋 智成
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.59, no.11, pp.568-571, 2011-11-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
4

硫酸はあらゆる酸の中で多方面に使用され続けている化学物質の一つであり,その製造には長い歴史がある。硫酸の製造は当初,窒素化合物や硝酸塩を用いる硝酸法から始まったが,製品の濃度が低く不純物が多い事などから近年ではより高濃度,高品質で安価な硫酸が得られる触媒を用いる接触法が確立された。当時は白金触媒が用いられていたが白金が高価なため,現在ではバナジウム触媒が使用されている。現在では硝酸法は姿を消し接触法での製造に至っている。また公害問題がクローズアップされ多くのプラントでは,吸収塔一塔から二塔への二段接触式が採用され転化率(収率)が97%→99.8%まで向上している。当社での実例を交えながら代表的なプロセス技術を解説する。
著者
松井 洋子
出版者
日本学士院
雑誌
日本學士院紀要 (ISSN:03880036)
巻号頁・発行日
vol.72, no.Special_Issue, pp.273-285, 2018-04-11 (Released:2018-05-23)
被引用文献数
1
著者
吉武 理大
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.27-42, 2019 (Released:2020-07-31)
参考文献数
30
被引用文献数
1 1

米国の家族研究では,親の離婚経験が,子どもの教育達成や社会経済的地位達成の不利,成人期の貧困や格差の再生産につながりうること,子ども自身の離婚という形で離婚の世代間連鎖が生じていることが明らかになっている.日本でも近年離婚を経験する者が増加しているが,特に離別母子世帯では,社会保障制度が十分な効果を有さず,貧困が解消されにくい状況にある.日本でも離婚の世代間連鎖が顕著ならば,子どもがいる世帯では母子世帯が世代的に再生産されやすく,貧困の世代的な再生産とも関連しうる.日本では離婚の世代間連鎖を検証した研究はきわめて少なく,そのメカニズムについてはほとんど明らかになっていない.本稿では,米国の研究を参考に,離婚の世代間連鎖の実態と,それを媒介するメカニズムとして子の教育達成と早婚の効果を検討した.「働き方とライフスタイルの変化に関する全国調査(JLPS)」の若年・壮年データを用いた分析の結果,親の離婚経験は自身が離婚を経験する確率を高める効果があり,日本においても男女ともに離婚の世代間連鎖が存在することが示された.また,親の離婚経験の効果の一部は低い教育達成と早婚を媒介していることが示唆された.離婚の世代間連鎖は,部分的ではあるが,教育達成における不利,早婚,自身の離婚を経由し,子どもがいる場合に母子世帯,そして貧困の世代的な再生産が生じている可能性がある.
著者
新田 敏勝 川崎 浩資 芥川 寛 江頭 由太郎 石橋 孝嗣
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.53, no.9, pp.3034-3039, 2011 (Released:2011-11-07)
参考文献数
14

症例は76歳,女性.突然の心窩部痛,嘔吐を主訴に当院救急外来を受診された.上部消化管内視鏡検査所見では,胃穹窿部から索状物が認められ,幽門洞へ引き込まれていた.また腹部造影CT検査では,十二指腸球部に占有する5cm大の腫瘤陰影を認めた.まず,術前に用手圧迫を併用し内視鏡下に整復を行い,胃穹窿部から発生したGISTと診断し,小切開による胃部分切除術を施行した.病理組織学的にもKIT(+)CD34(+)でGISTであった.ball valve syndromeをきたした症例に対し,内視鏡下に嵌頓を解除し,適切な加療を行えた1例を経験したので報告する.
著者
和田 剛明
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.2, no.11, pp.563-580, 2003-11-25 (Released:2018-03-19)
参考文献数
13
被引用文献数
1

家庭用テレビゲーム産業は、日本が国際競争力を持つコンテンツ産業として注目され、コンテンツを生み出すメーカーを対象に、産業構造、およびソフト制作や人事システムといった面からの研究がなされてきた。その一方で、製品を消費者に届ける流通の構造についてはあまり言及されることはなかった。本稿では、まず当初玩具流通をもとに構築されたゲームソフトの流通システムについて、歴史的な変遷の経緯を示す。その後に、小売店の仕入れリスクが大きすぎる現状の構造が、市場の縮小に繋がるという問題点について指摘する。
著者
吉田 巖
出版者
一般社団法人 日本人類学会
雑誌
人類學雜誌 (ISSN:00035505)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.95-103, 1914-03-20 (Released:2010-06-28)
著者
宋 弘揚
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.93, no.5, pp.372-386, 2020-09-01 (Released:2023-02-19)
参考文献数
16
被引用文献数
5

本稿では,渡日中国人技能実習生の増加鈍化期における中国山東省青島市の送り出し機関に注目し,送り出し方針の転換とそれに伴う機関群の再編を考察した.日本に特化した送り出しを行ってきた各機関は,技能実習業務から撤退したり,派遣地域と業務内容の多角化を図ったりした.方針の転換は,大きく「多角化型」と「維持型」の2つに整理することができる.その結果,青島市の機関群の一部では,送り出し方針の多角化・高度化を通じた機関間の「棲み分け」が進行している.