著者
Shunichi HAYASHI Mitsuru TADA
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
IEICE TRANSACTIONS on Fundamentals of Electronics, Communications and Computer Sciences (ISSN:09168508)
巻号頁・発行日
vol.E91-A, no.5, pp.1253-1264, 2008-05-01

In [13], we proposed new decision problems related to lattices, and proved their NP-completeness. In this paper, we present a new public-key identification scheme and a digital signature scheme based on one of the problems in [13]. We also prove the security of our schemes under certain assumptions, and analyze the efficiency of ours.
著者
須藤 明人 張 晨犁 坪山 学 佐藤 彰洋 長谷川 修
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J91-D, no.6, pp.1634-1647, 2008-06-01

ロボットの知能に関する研究の突破口となり得るパターン情報ベースの推論について,新たな手法を提案する.シンボルをベースとした既存の推論機を知能ロボットに適用する際には,( 1 )シンボル化装置の性能に限界があるという問題,( 2 )自律的なシンボルを生成する際に生じる問題,( 3 )シンボル化になじまないタイプのパターン情報が存在するという問題がある.本論文では,これらの問題の解決のためにパターン情報ベースの推論機が必要となることを指摘し,新しいパターン情報ベースの推論機を提案する.提案手法は,「連言,選言,否定を含む任意の形の論理式を扱うことができる」,「パターン情報を多値ベクトルで表現する」,「汎化性能をもつ」,「推論結果の重複を回避する」,「雑音への耐性をもつ」といった知能ロボットに適用する際に重要な機能を併せ持っている.これらの機能を実現するために,提案手法はオンライン教師なし学習手法であるSelf-organizing Incremental Neural Network(SOINN)や連想記憶モデルであるSOINN Associative Memoryを拡張したアルゴリズムを採用している.
著者
大町 真一郎 大町 方子
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J91-D, no.6, pp.1561-1568, 2008-06-01

画像探索はパターン認識やコンピュータビジョンにおける重要な課題の一つである.画像の探索には,計算の高速性や頑健性から,画像そのものをテンプレートとして用いるよりも,色ヒストグラムや特徴点等の低次の特徴が用いられることが多い.しかし,低次の特徴では文字等の複雑な画像を探索することは困難である.本論文では,部分空間法に基づいた,テンプレートマッチングによる新しい画像探索の手法を提案する.提案手法は部分空間の基底を多項式で表すことで,この部分空間と入力画像中の部分領域との類似度を,部分領域の幅と高さを変えながら効率良く計算する手法である.手書き数字データベースMNISTを用いた実験を行い,提案手法の有効性を示す.
著者
鈴木 直彦 平澤 宏祐 田中 健一 小林 貴訓 佐藤 洋一 藤野 陽三
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J91-D, no.6, pp.1550-1560, 2008-06-01

画像センサ・GPS・レーザレーダなどから得られる移動体経路情報に基づいた状況理解として,各種センサから得られる人物動線データ群からの逸脱行動人物検出及び行動パターン分類を行う手法の提案を行う.提案手法では,HMM(Hidden Markov Model)を用いてモデル化した人物動線データを低次元空間上に射影し,クラスタリング及び外れ値検出に基づいて逸脱行動人物検出及び行動パターン分類を行う.また,過去に得られた人物動線データ群の検索とリアルタイム検出した人物動線データの識別を行うためのスキームも同時に提案する.実空間で得られた人物動線データ群を用いた検証を行い,提案手法により有効な結果が得られることが分かった.本論文の提案手法は,セキュリティシステム・マーケティング分析などへの応用が考えられる.
著者
菅 喜岐 森田 長吉 中村 修 岡崎 清
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J85-A, no.5, pp.509-517, 2002-05-01

体外衝撃波結石破砕療法は非侵襲的という画期的な特長をもっているため極めて短期間で一般療法として臨床に定着した.しかし,衝撃波による結石破砕に伴う詳細メカニズムや生体への影響はいまだ完全に解明されているとはいえない.これら未解明の部分を解決するためには人体内超音波パルス伝搬のメカニズムをできるだけ正確に再現する手法を確立することが重要である.筆者らは最近FD-TD(Finite-Difference Time-Domain)法に基づく非線形パルス伝搬の数値解析法を提案した.しかし,この方法には水の非線形パラメータ値を通常知られている値よりかなり大きく設定する必要がある点や小さな振動部分が再現できないなどの問題点があった.本論文は基本式の変更も含めたいくつかの改良によってこのような問題をほぼ解決でき,この手法が少なくとも焦点付近の実験波形に関してはこれをかなり正確に再現できる手法となったことを報告するものである.
著者
関川 浩 白柳 潔
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J89-A, no.3, pp.199-216, 2006-03-01

区間多項式 F に対し,与えられた領域D内に零点をもつ,Fに属する多項式が存在するか否かの厳密な判定法を与える.領域 D が実であるときは,有限個の多項式を調べれば十分であることを示す.領域 D が複素であるときは,D の境界が長さ有限な単純閉曲線かつ区分的に有理関数で表現されているという仮定のもと,係数も変数として扱うことにより多変数多項式の零点判定問題ととらえ,この多変数多項式がもとの多項式の係数を表す変数について一次であること,領域の境界が有理関数で表示されていることを利用し,厳密に判定できる手法を提案する.
著者
高田 政明 飯田 幸雄
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J86-C, no.12, pp.1342-1349, 2003-12-01

FDTD法において表面インピーダンス境界条件を用いた実用的な導体境界処理法を提案している.本方法では,導体の表面インピーダンスを集中定数回路の入力インピーダンスで近似する.その近似は広帯域において高精度であることが示されており,本方法の有効性を数値的に確認している.
著者
松田 憲幸 高木 佐恵子 曽我 真人 堀口 知也 平嶋 宗 瀧 寛和 吉本 富士市
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J91-D, no.2, pp.324-332, 2008-02-01

初心者のための鉛筆デッサンの基礎は,対象を見えたまま正確に描きとる写実であり,獲得が難しい技能である.初心者は自己の写実の誤りに気づくことができない,あるいはデッサン画全体に漠然とした違和感を感じることができても,具体的に写実の何が誤りかを判断できず,同じ誤りを繰り返す.反復練習を指導する教師は,写実の誤りを理解させるため,描く対象と異なった立体物をイメージさせるたとえ(比喩)を用いる.学習者は比喩説明を聞く過程で徐々に,明らかに異なるイメージの写実と感じるようになり,ついに自己の写実の誤りに気づくと考えられる.本論文は学習者の鉛筆デッサン画像に含まれる写実の誤りを顕在化した三次元モデルを構築する手法を検討する.本手法は誤った写実による1枚の画像から,誤りを映し出し,かつ直感的に不自然さを感じさせる三次元モデルを構築する.写実の8種の誤りを対象に,デッサン画像の誤りを特徴づける15個の特徴量を用いて三次元モデルのスケーリング変換を定義した.三次元モデルを表示する顕在化ツールを実装した.学習者が本ツールを用いることで,鉛筆デッサンに含まれる写実の誤りに気づきやすくなると期待できる.
著者
真鍋 宏幸 平岩 明 杉村 利明
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.J88-D2, no.9, pp.1909-1917, 2005-09-01

本論文では,声を出すことなく口パク動作を行うだけで発話内容を認識する無発声音声認識を提案し,その基礎実験の結果について報告する.無発声音声認識により,発声行為が周囲の人々に迷惑となるマナー的問題や,雑音環境下において音声認識の認識率が低下する問題を解決することが可能となり,携帯電話への応用が期待できる.無発声音声認識の実現へ向け,筋電信号を用いる方法について検討を行った.まず,日本語5母音の無発声発話動作時の筋電信号を測定した.指輪型電極を用いることで簡便な測定が可能である.次に測定した筋電信号を,ニューラルネットワークを用いて認識し,通常発声時における母音の持続時間よりも十分に短いフレーム長を用いた場合でも,90%以上の精度で認識できることを明らかとし,筋電信号には母音の特徴が見られることを示した.
著者
五島 洋行 増田 士朗
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J90-A, no.3, pp.190-200, 2007-03-01

本論文では,後続ジョブとの資源非競合を考慮したオンラインスケジューリング方法に関する提案を行う.検討対象はMIMO-FIFO型で繰返し処理を行う離散事象システムとする.このようなシステムの挙動は,MPLシステムと呼ばれるmax-plus代数系での線形な方程式で記述できる.従来のMPL表現は,前のジョブとの資源非競合を考慮した定式化を行うもので,途中工程での最早開始時刻が求められる.しかし実用的なスケジューリングを行うには,工程の余裕度の把握や,ジョブの進捗に応じてスケジューリング結果をオンラインで更新する必要があり,各工程の余裕時間やシステムの内部状態の変化まで把握できることが望ましい.最近我々は,単一ジョブの場合についての計算方法を提案したが,後続ジョブとの資源非競合までは考慮されておらず,一度に多くのジョブを処理する場合などには,最適な結果を与えないこともあり得る.そこで本研究では,後続ジョブとの非競合性も考慮した,最遅開始時刻を求めるMPL表現の一般形を導出し,更に,加工開始後にシステムのパラメータに変化が発生したときの,効率的な再スケジューリング方法についても考察する.
著者
米司 健一 田中 正行 奥富 正敏
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J90-D, no.10, pp.2830-2839, 2007-10-01

画像撮影時の手ぶれや,ピンぼけなどによって画像にぶれやぼけが生じる.これらの劣化はPSF(Point Spread Function)と原画像との畳込み積分によって表現される.PSFが既知の場合,劣化画像とPSFから復元用のフィルタを作成し,そのフィルタを用いて原画像を復元する手法はこれまでに多くの研究例がある.しかし,ほとんどの復元手法では,何らかのパラメータを設定する必要があり,この調節が難しい.そこで,本研究では,パラメータの調節が容易な復元フィルタを提案する.まず,復元フィルタのパラメータが容易に調節できるための具体的条件を明確にした後,復元フィルタを設計するための新しい考え方を提案する.この考え方に従って実際に復元フィルタの設計を行う.また,実験を通して,提案手法の効果を確認した.
著者
相良 直樹 砂山 渡 谷内田 正彦
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J90-D, no.2, pp.427-440, 2007-02-01

近年,インターネット上の電子情報が増加の一途をたどっている.我々が獲得できる情報の量は増えているものの,必要な情報すべてに目を通すことは難しい.そのため自動要約を行う手法が開発されつつある.自動要約の手法は大きく,指示的要約と報知的要約とに分けられる.指示的要約は,あるテキストを読むかどうかを判断するために用いられ,報知的要約は,原文の代替物として用いられる.本論文では,ストーリーを理解するために必要な項目を含む文を抽出する報知的な要約生成システムを提案する.本手法においては,テキストの主題を表し,テキストを通じて出現するメイントピックと,テキストの主題に関連してテキスト中で部分的に出現するサブトピックを抽出する.すなわち,サブトピックを抽出することにより,テキストのストーリーを理解する上で必要な項目を網羅した要約を提供するシステムを本論文で提案する.
著者
石井 勇樹 中川 陽介 小松 隆 齊藤 隆弘
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J90-D, no.7, pp.1682-1685, 2007-07-01

カラー画像から抽出した骨格成分とテクスチャ成分に,各々に適した処理を適用することで,効果的な雑音除去や画像拡大が実現できることを示した.
著者
長崎 健 川嶋 稔夫 青木 由直
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.J81-D2, no.3, pp.483-492, 1998-03-25

多関節物体や複数の物体の運動を観測した動画像列から,対象物体の構造のの獲得手法を提案する.本手法では,多関節物体などの自由度の多い物体の構造推定を行うとき,各剛体部分の運動および構造の推定と,各剛体間の拘束関係の2段階の推定を行う.前者は,観測ノイズに対しロバスト性のある因子分解法(Factorization method)を用い,観測される特徴点を各剛体ごとにグループ化し,グループ化された観測情報をもとに,各剛体の構造および運動推定を行う.後者は,各剛体の運動パラメータを用い,剛体間の拘束関係を推定する.本論文では,剛体間の拘束関係を回転関節を取り上げ,拘束関係を線形連立方程式で表したときの係数行列の指数で,関節の有無および拘束関係の次数を分類する.提案手法をシミュレーションおよび手首の運動観測に適用し,有効性の検証を行った.
著者
岡上 久美 鈴木 光夫 富永 隼賢 染矢 和樹 加藤 孝弘 濱崎 勝義
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J90-C, no.6, pp.502-511, 2007-06-01

Bi2Sr2CaCu2Ox (Bi-2212)単結晶を用いた固有ジョセフソン接合の作製法として開発した自己平たん化法,及び固有ジョセフソン特性(臨界電流,リターン電流)の温度依存性について述べる.自己平たん化法では,ジョセフソン接合窓(スタック部)以外のBi-2212単結晶を希塩酸(0.20%, pH 1.40)に浸漬させ,絶縁体へ改質させた層を平たん化層として用いる.作製したBi-2212スタックの臨界電流及びリターン電流の温度依存性Ir(T)を測定した結果,臨界電流は高温(T>40 K)でAmbegaokar-Baratoff理論から上方にずれていた.一方,リターン電流は約40 Kから徐々に増加し始め,80 K程度で極大値をとった後,臨界電流の温度曲線と一致(ヒステリシスが消滅)した.このIr(T)特性を,Zappeモデルを用いて解析した.解析にはBi-2212のc-軸抵抗の温度特性(T>Tc)の現象論モデル(Heineモデル)から推定されるジョセフソンバリヤ層の抵抗の温度依存性を考慮した.このモデルでIr(T)特性の実験曲線の形を良く説明することができたが,パラメータの定量的な議論にはまだ課題が残されている.
著者
ラナトゥンガ ヴィジタ 細川 晃 木下 和彦 山井 成良 村上 孝三
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J90-B, no.6, pp.555-565, 2007-06-01

マルチエージェントシステムでは,クローンエージェントを並列に動作させることで,ネットワーク上の複数のノードでの処理を効率良く実行することができる.そのようなシステムにおいて,ユーザが指定したすべてのノードにクローンエージェントを動作させ,所望の処理を行わせるようなアプリケーションでは,最後のクローンエージェントが処理を完了するまでの時間を短くすることが重要である.しかし,このようなアプリーションにはクラスタコンピューティングやグリッドシステムのような分散システムスケジューリングをそのまま適用することはできないため,一般のOSのスケジューリングを利用することが多い.そこで本論文では,処理中のエージェント数・各ノードの処理能力・エージェントのワークデマンドを考慮した上で,ネットワーク全体で処理中のクローンエージェント数の少ないエージェントに優先的にCPUを割り当てることで,平均応答時間を短縮し,同時に,同一のユーザに生成されたエージェント群に対して与えられるCPU資源の総量を一定にすることで,応答時間の分散を小さくし,公平性を保つアルゴリズムを提案する.最後に計算機シミュレーションによる性能評価を行い,提案方式の有効性を示す.
著者
森山 剛 坂内 正夫
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.J84-D2, no.6, pp.1122-1131, 2001-06-01

本論文では,テレビドラマ映像の心理的内容に基づいた要約映像の生成手法を提案する.従来の映像要約の研究では,カットなどの映像の構造を利用する方法やビデオ中のオブジェクトに基づく方法などがほとんどであった.一方テレビドラマに対しては,映像コンテンツの心理的な展開(盛り上がりなど)を視聴者は重要視していると考えられるが,映像の心理面に基づいた方法はまだ提案されていない.テレビドラマは,物理的構成要素としてトラック構造(カッティング,登場人物のセリフ,BGM,効果音)を有しているが,演出家などは特定の心理的な印象を表現するために経験的知識に基づいてその時間的構造を巧みに操作していると考えられる.そこで本研究では,この経験的知識に基づき,心理的に重要な箇所をそれに対応するトラック構造の時系列パターンとして検出し,要約映像を生成する手法を提案する.実験において本手法をテレビドラマ映像に適用した結果,約14分の1の時間長に圧縮でき,更に主観評価実験の結果,本編内容の保存性能及び切出しの自然性に関しても本手法の有効性が示唆された.
著者
角尾 幸保 岡本 栄司 植松 友彦
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J78-A, no.3, pp.407-415, 1995-03-25

ネットワークセキュリティを確保するための基盤技術の一つに暗号がある.しかし,ビジネス分野での情報の安全性確保のためには,だれもが使いやすい暗号が要求される.米国商務省標準局が公布したDESやNTTから提案されているFEAL暗号は,鍵を秘密とし暗号アルゴリズムを公開した暗号であり,秘密鍵を用いて64ビットの平文を64ビットの暗号文に暗号化するインボリューション型のブロック暗号である.またMAP 1方向性関数は,NTTから提案された,やはりインボリューション型の変換である.本論文では,インボリューション型暗号に対する新たな暗号解析法を検討し,その解析法をMAP 1方向性関数の暗号文攻撃に応用した解析例を示す.インボリューション型暗号は,データランダム化部の構成段数を増加させることにより,各段で使用する秘密鍵を増加させ,秘密鍵の推定に対する計算量的な安全性を確保しようとしている.しかしながら,データランダム化部を構成する関数の特性に注目すれば,秘密鍵に依存しない方法で関数の入出力値を特定した後,逆関数を使って秘密鍵を算出することが可能となる場合がある.この方法を中間メッセージ法と呼ぶ.中間メッセージ法は,従来法と異なり解読に必要なデータ量が少ないことを特徴としている.
著者
鈴木 基志 高橋 耐志 原井 洋明 小関 健
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J88-B, no.8, pp.1411-1421, 2005-08-01

波長変換装置の導入は,ネットワーク全体の装置コストや管理コストの削減につながる可能性がある.経路上の各リンクで異なる空き波長を用いてパスを設定し,波長の有効利用ができるからである.本論文では,近年多くの研究がなされている,波長パスと波長群パスの二階層による階層型光パスネットワークにおいて,波長変換装置の導入によるコスト最小構成を検討する.我々は,複数の波長パスを波長群にグループ化するときと波長群パスを分解するときのみに波長変換を許すこと,及び,それを実現するノード構成を提案する.整数線形計画法により階層型光パスネットワークの最小化問題を定式化し,問題を明確にする.多ノードのネットワークでも適用可能なヒューリスティックアルゴリズムを導入して,提案ノード構成によって有意なコスト削減効果が得られることを示す.その結果,波長変換のコストが光スイッチコストの20%程度であれば全体のコスト削減につながること,及び,ノード数がふえるほど,ノードコスト削減効果を得られることが分かった.40ノードネットワーク,波長多重数16,波長変換のコストがスイッチコストの10%という条件では,提案ノード構成は,波長群を導入しない場合よりも34%のコスト削減効果,波長変換を導入しない場合よりも10%のコスト削減効果が得られることが分かった.