著者
長田 拓哉 小澤 龍彦 奥村 知之
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

1、アスナロ精油による抗腫瘍効果:アスナロ精油を胃癌、食道癌、大腸癌、乳癌細胞株とそれぞれ反応させたところ、いずれの細胞株に対しても濃度依存的、時間依存的にアポトーシスを誘導した。腹腔内に胃癌細胞を投与したヌードマウスにアスナロ精油を吸引させたところ、コントロールと比較して腹膜播種転移が有意に抑制された。2、アスナロ精油における抗腫瘍メカニズムの解明:アスナロ精油を分画し、ツヨプセンを同定した。ツヨプセンは抗腫瘍効果を有し、癌細胞にアポトーシスを誘導することを確認した。またツヨプセンが癌細胞内でPKM2と会合することを明らかにした。
著者
神野 由紀
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.197, pp.9-48, 2016-02-29

明治末,日本に誕生した近代的な百貨店では,都市の新中間層を顧客に取り込むために様々な販売戦略を駆使した。呉服柄など流行の人為的操作を行い,呉服以外にも子ども用品や家具雑貨など新たな市場を開拓し,雛祭りや七五三,婚礼といった消費イベントを積極的に活用していく。新たな消費者である中間層は,自らの社会的な地位を顕示するための良い趣味を,商品を購入するという手軽な手段で獲得しようとし,初期百貨店は彼らに対して「良い趣味」を提供する役割を担った。この時期の三越呉服店の活動において特に注目されるのが,江戸的な趣味の影響力の大きさである。地方から都市に流入した中間層は,自らの趣味の欠如を埋めるため,百貨店の周辺に集まっていた好事家たちの趣味を模倣するという行動をとった。好事家たちの江戸的で風流な趣味が,中間層にとっての憧れとなり,彼らの消費傾向を規定していったのである。こうした事実は,明治末から昭和初期にかけて三越呉服店で販売され,人気を博していた人形玩具と風流道具に,最もよく表れている。本論では三越呉服店のPR誌に掲載されていたこの2種の商品に焦点を当て,一部の好事家の趣味が百貨店という場を介して大衆化されていく過程で,商品デザインがどのように変化していくのかについて,考察を試みた。商品を詳細に見ていくと,好事家の人形玩具収集趣味は,百貨店の雛人形販売の中で大衆向けの商品に置き換えられ,また実業エリート達による茶の湯の風流な趣味は,「風流道具」と称される茶道具やその周辺の家具雑貨類を通して,頒布会などで大衆に広められていったことがわかる。どちらにも共通して見られるのは,江戸的な趣味を継承していた一部の私的なコミュニティの美意識は,大衆化とともに,判り易い定型化された表象に置き換えられ,手軽に購入しやすい「商品」として生産されていくという特徴であった。これらは近代以降の大衆消費デザインを考える上で,重要な一側面であるといえる。
著者
金城 厚 久万田 晋 植村 幸生 内田 順子 島添 貴美子
出版者
東京音楽大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

(1)1970年代から80年代にかけて、東京芸術大学が収集した沖縄民謡調査資料(90分カセットテープ1,300巻とそれに付随する調査メモ)をデジタル化し、安定的に保存・試聴できるデータベースとして整理した。(2)沖縄県立芸術大学芸術文化研究所のウェブサイトにメタデータを公開して、多くの研究者が所用の資料を検索できるシステムを構築した。(3)音源データを複数のHDに複製し、協定に基づいて国内の複数の研究機関に配置して、遠隔地の研究者による利用の便宜、また災害への備えを図った。(4)個人研究者でも録音資料をアーカイブ化できる比較的簡易な方法を提唱することができたと考えている。
著者
林茂光 著
出版者
華昌号
巻号頁・発行日
1924
著者
宇野 彰 猪俣 朋恵 小出 芽以 太田 静佳
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.260-264, 2021-09-30 (Released:2022-07-04)
参考文献数
9

本研究では, ひらがな音読に焦点を当て, ひらがな習得困難児の出現頻度, 年長児の習得度, 年長児への指導の効果, 年長時に習得が困難だった幼児の追跡調査結果を報告する。その結果, ひらがな音読困難な小学生児童は 0.2% ( ひらがな書字に関しては 1.4% ) であった。年長児では, 70% 以上の幼児が拗音以外の 71 文字のうち 1 文字読めないだけか, 全て読むことができた。年長児を対象に, ひらがな音読成績を従属変数とした重回帰分析の結果, 認知能力のみが有意な予測変数であり, 環境要因は有意な貢献を示さなかった。別な集団でも同様の結果であった。また, 介入研究として統制した指導をしても, 指導群と非指導群との成績間に有意な差が認められなかったことから, 年長児へのひらがな指導は効果的ではないと思われた。この結果も別の集団にて再現性が認められた。しかし, ひらがな習得度の低い年長児の 90% は小学1 年時の夏休み直後に追いついていたことから, ひらがな習得に関するレディネスはそのころに完成するのではないかと思われた。
著者
吉田 元
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.92, no.8, pp.579-587, 1997-08-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
6

筆者は, 発酵食品を中心とした日本科学技術史を研究しており, 東アジア諸国へ出かけて行った日本人がその国の伝統的な酒をどの様に紹介しているか等, 日本人とアジアの酒の歴史的なかかわり方について興味深い調査を行っている。台湾の米酒は日本人の手でアミロ法が導入され近代的製造法に切り換えられた。筆者は, 本年春再度台湾を訪れて米を原料とする伝統的な地方酒づくりの現場を約1週間にわたり見学し, 詳細な説明を受け新しい知見を得た。本稿ではあまり知られていない台湾の酒造工業の現状について御紹介していただいた。読み物として興味があるばかりでなく, 我が国の製造にも有益なヒントが含まれており参考になると思われる。

5 0 0 0 科学と模型

出版者
朝日屋出版部
巻号頁・発行日
vol.復刊(1), no.173, 1946-06
著者
Yuma Yanase Satoru Iwashima Ken Takahashi
出版者
The Japanese Circulation Society
雑誌
Circulation Reports (ISSN:24340790)
巻号頁・発行日
vol.4, no.9, pp.429-438, 2022-09-09 (Released:2022-09-09)
参考文献数
42
被引用文献数
1

Background: Myocardial work (MCW), estimated using non-invasive pressure-strain loops, is a novel approach for assessing left ventricular function. MCW offers potential advantages over left ventricular ejection fraction and global longitudinal strain (GLS). This study aimed to establish a reference range for MCW in newborns.Methods and Results: Overall, 113 healthy newborns (mean [±SD] birth weight 3,120±378 g) were included in the study. After entering peripheral systolic and diastolic blood pressure (BP) values, global constructive work (GCW), global work index (GWI), global work efficiency (GWE), and global wasted work (GWW) were calculated using EchoPAC software (version 204). Considering a mean [±SD] GLS of −16.3±2.8%, the mean [±SD] GWI, GCW, GWW, and GWE was 698.7±147.9 mmHg%, 1,008.5±200.1 mmHg%, 58.1±28.1 mmHg%, and 93.1±2.9%, respectively. All MCW parameters in newborns were lower than those previously reported in children and adults. However, GWI and GCW were more closely correlated with BP and GLS, as in adulthood and children. Estimation of the correlation between MCW and the frame rate index revealed no significant correlations among MCW parameters.Conclusions: Cardiac function in newborns was evaluated by assessing MCW. With the establishment of reference ranges and normative MCW data for newborns, routine clinical use and rotational mechanics are likely to become increasingly common. Future studies are needed to determine whether MCW is useful in screening for cardiac illness among newborns.
著者
鈴木 崇文 岩見 真吾 竹内 康博
出版者
一般社団法人 日本応用数理学会
雑誌
日本応用数理学会論文誌 (ISSN:24240982)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.473-486, 2008-09-25 (Released:2017-04-08)
参考文献数
18

2005年9月中国で実施された家禽の鳥インフルエンザウイルスに対するワクチン接種政策を例に数理モデルを考える.解析の結果,大変興味深いことに,家禽へのワクチン接種率を上げることが,総感染個体数を増加させうることを発見した.つまり,感染個体数を減少させるための家禽に対するワクチン政策が,感染個体数の増加を引き起こしている.本論文では,こういった「ワクチン政策のパラドックス」について詳しく報告する.