著者
岡村 仁
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.3-8, 2011 (Released:2016-04-15)
参考文献数
34

近年,自殺者の増加などを背景に,うつ病への関心が高まっている.しかし,うつ病という言葉は周知されてきているものの,その診断や病態についてはあまり知られていないのが現状である.このため,依然としてうつ病が適切に評価されていなかったり,十分に治療導入されていないケースも多くみられる.本稿ではうつ病の理解を助けるために,まずうつ病の診断基準について説明を行った.次いでうつ病の発症メカニズムに関して,「脆弱性-ストレスモデル」を基本に,状況要因あるいは心理・社会的要因と脳の神経科学的変化について,これまでの報告を中心に概説した.最後に,最近注目されてきているうつ病の脳機能画像研究や脳血流研究を取り上げた.
著者
相木 佐代 安部 晴彦 吉村 麻美 柿本 由美子 交久瀬 綾香 田中 奈桜 西薗 博章 河瀬 安紗美 安井 博規
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.105-108, 2022 (Released:2022-09-26)
参考文献数
5

【目的】当院では,心不全患者の病診連携の強化,およびシームレスな支援体制を目指して多職種Webカンファレンスを実施している.この取り組みについて報告する.【方法】Web会議ツールを用いた多職種カンファレンスの開催概要を後ろ向きにデータを収集しその概要を記述する.【結果】主な対象者は,独居で介護力が不十分,かつ,再入院の予防目的に多職種介入ニードの高い症例とした.多職種Webカンファレンスでは,匿名性に配慮し,退院における課題と問題解決のための方策を共有していた.開催時期は退院が具体化する前段階とし,開催頻度と時間は週1回30分とした.参加職種は循環器内科医,看護師,薬剤師,理学療法士,管理栄養士,緩和ケア医,およびプライマリ・ケア医(以下,PC医)である.循環器スタッフは,患者の病態や診療方針を共有しつつ,多面的なチェックシートを用いて,課題の明確化を行う.緩和ケア医は,価値観に基づいた療養計画や意思決定支援について,PC医は,再入院予防に必要な在宅サービス,薬剤調節,生活指導について提案している.【考察】今後は現行の多職種Webカンファレンスの実施方法に改良を加えることや,同カンファレンスの意義についての客観的評価を行うことが課題である.
著者
本郷 美奈子 大島 郁葉 清水 栄司 桑原 斉 大渓 俊幸
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

成人の高機能自閉スペクトラム症(High-functioning Autism spectrum disorder:HF-ASD)者 は「自分は異端である」などのスティグマを持ちやすく,そのため定型発達者の社会に過剰適応する「社会的カモフラージュ行動」を取りやすいが,その行動はメンタルヘルスに負の影響をもたらすことが指摘されている.本研究では,成人のHF-ASD者の社会的カモフラージュ行動の要因について解明する.その知見をもとに,成人のHF-ASD者に対する新たな対処方略の構築を目的とした認知行動療法を開発・施行し,その効果を検証する.
著者
早瀬 良 坂田 桐子 高口 央
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.104-115, 2013 (Released:2013-03-09)
参考文献数
38
被引用文献数
1

医療機関では,質の高い医療サービスの提供が求められている。本研究では,医療の質の指標の1つである患者満足度について,医療を提供する側である看護師と医療を提供される側の患者の両者の評価を用い,特に職種間の協力によるチーム医療に着目し,患者の満足度との関連を検討した。調査対象者は外来患者290名,入院患者205名,看護師108名であった。分析の結果,以下のことが示された。(1)外来患者は医師の接遇評価が肯定的であるほど,外来診療への満足度が高い。(2)入院患者は,病棟看護師の接遇評価および医療従事者間の連携評価が肯定的であるほど,入院生活への満足度が高い。(3)さらに,看護師が他者と協力して業務遂行しているという自己評価は,医療従事者間の連携に関する患者の評価を介し,患者の入院満足度を規定した。以上の結果から,質の高いサービスを提供するためには,看護師が他職種と連携することで,患者の満足度を高めることが重要である可能性が示唆された。
著者
杉橋 陽一 石光 泰夫 川名子 義勝 長木 誠司 田中 純 一條 麻美子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究においては次のような成果を得た。1.中世の伝説・説話が伝承されてゆく過程における語り手と聞き手の相互作用、および文字による記録がそこに与えた変化の考察、および、中世からルネサンスにいたるポリフォニックな教会音楽における聴取経験と歌唱法の分析をおこなった。そのうえで、宗教による社会統合との協同ないし葛藤のプロセスを明らかにした。2.ルネサンスからバロック時代にかけての、ページェントや祝祭における観衆の役割と「見せ物」の社会的効果の考察、および、オーケストラによるコンサートという聴取形態の成立過程と、そこにおける作曲者、演奏者、聴衆の関係性の変化をめぐる歴史的分析をおこなった。3.ヨーロッパ18世紀の市民文化成立期において、異なる書き手による手紙や日記、文学作品が相互に引用し関係しあってかたちづくっていた、異種混淆した言説空間の双方向的様態を究明した。また、19世紀後半以降のインテリア(私的空間)のデザインをめぐる住文化における建築家と居住者との対立・協調プロセスを、とくにウィーンの動向を中心に分析した。このような西洋の芸術の動向と比較しながら、日本における集団的な競技としての文芸の伝統(連歌、俳句)や茶の湯を、インタラクティヴィティの観点から考察した。4.マルセル・デュシャンやジョン・ケージをはじめとする芸術家たちによる営為が、いかに「芸術」概念の再検討をうながし、鑑賞者の位置にどのような変容をもたらしたかを、その後の現在にいたるインタラクティヴ・アートの動向との関係を視野に収めながら分析した。
著者
石井 僚
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.229-238, 2013 (Released:2014-03-03)
参考文献数
17
被引用文献数
3 4

本研究では, 青年期において死について考えることが, 時間的態度にどのような影響を及ぼすのかについて実験的に検討した。実験参加者である大学生127名を, 死について考える群41名, 生きがいについて考える群43名, 死や生きがいとは無関係なものについて考える統制群43名に分け, それぞれ課題の前後に時間的態度を質問紙によって測定した。時期(課題前・課題後)×課題(死・生きがい・統制)の2要因分散分析を行った結果, 死について考える群においてのみ, 課題後に時間的態度が肯定的になることが示された。死について考えることには, 生きがいについて考えることによっては得られない, 時間的態度を肯定的にするという効果があることが示された。また, 課題に対する自由記述の分析からは, 死について考えることには, 人生の有限性を再認識させ, 時間の大切さについて考えさせるという特徴があることが明らかとなった。以上より, デス・エデュケーションの持つ心理的機能として, 人生の有限性を再認識させ, 現在を中心とした時間的態度を肯定的にするという一側面が明らかになったといえる。
著者
生野 公貴 松尾 篤 吉川 奈々 中原 彩希 庄本 康治 森本 茂 鍋島 祥男
出版者
Japanese Society for Electrophysical Agents in Physical Therapy
雑誌
物理療法科学 (ISSN:21889805)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.69-74, 2014 (Released:2022-09-03)
参考文献数
24

本研究は脳卒中後重度感覚障害に対する経頭蓋直流刺激(tDCS)と理学療法の併用治療の有効性をシングルケースデザインで検討した.症例は左視床出血後約3年経過した50歳代の男性である.表在および深部感覚は脱失で,右上肢に著明な感覚性失調を認めていた.tDCSは左体性感覚野に陽極を置き,刺激強度は2 mAとした.介入頻度は週1回20分とし,続いて40分の上肢練習を行った.練習セッションとベースライン測定に続いて,3セッション目をSham刺激,続く5セッションは真の刺激として,計8セッションの介入を実施した.評価は9-Hole Peg Test, Box and Block Test,感覚検査を実施した.その結果,tDCSによる有害事象はなかった.Sham刺激期間と比較してtDCS期間での全評価項目の有意な改善は認めなかった.感覚障害に対するtDCSは安全に実施可能であったが,本症例の運動および感覚障害に対して明らかな効果を認めなかった.
著者
浅野 智也 伊藤 慎英 大島 埴生 山岡 未奈 池田 直樹 米廣 幸平
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.396-403, 2021 (Released:2021-08-20)
参考文献数
18

【目的】慢性期脳卒中患者を対象に,運動療法と歩行練習ロボットGait Exercise Assist Robot(以下,GEAR)を併用した低頻度練習による効果を検証した。【方法】対象は,47 歳男性で発症後13 ヵ月の脳卒中右片麻痺患者1 名とした。研究はABAB 型シングルケースデザインを用いた。A 期を運動療法と通常歩行練習を行う従来練習期とし,B 期を運動療法とGEAR を用いた歩行練習を行うGEAR 練習期とした。両期ともに週2 回の練習頻度で4 週間の練習期間とした。介入期間は計16 週間とした。評価は歩行速度・歩幅・歩行率,身体・認知機能と歩容とした。【結果】歩行速度は初回GEAR 練習期・2 回目GEAR 練習期に向上し,歩行率は2 回目GEAR 練習期に増加し,歩容は介入期間の前後で改善した。【結論】低頻度条件の運動療法とGEAR 練習の併用によって,慢性期脳卒中患者一例の歩行能力は改善した。
著者
牛沢 信人
出版者
北海道大学
雑誌
北海道大學工學部研究報告 (ISSN:0385602X)
巻号頁・発行日
vol.112, pp.1-13, 1983-01-31

5 0 0 0 OA 東奥年鑑

著者
東奥日報社 編
出版者
東奥日報社
巻号頁・発行日
vol.昭和5年, 1930
著者
富田 望 嶋 大樹 熊野 宏昭
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.65-73, 2018 (Released:2018-01-01)
参考文献数
18

本研究では, 社交不安症における心的視点を測定する尺度を作成し, 信頼性と妥当性を確認することを目的とした. Field視点 (F視点), Observer視点 (O視点), Detached Mindfulness視点 (DM視点) の3因子構造を想定した17項目の尺度を作成し, 学生283名に対して質問紙調査を実施した. 因子分析によって項目を抽出し, 内的整合性を確認するためにα係数を算出した. また, 構成概念妥当性を検討するために, 3下位尺度と, それぞれに類似する概念もしくは異なる概念を測定する尺度との相関係数を算出した. さらに, 再検査信頼性を検証するために2週間の間隔をあけた再テスト法を用いた. その結果, F視点, O視点, DM視点の3因子13項目から構成される質問紙が作成された. また, 十分な内的整合性, 再検査信頼性, 構成概念妥当性が示された.
著者
岡島 義 秋冨 穣 村上 紘士 谷沢 典子 梶山 征央
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
pp.20-025, (Released:2021-06-11)
参考文献数
24

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)禍では、睡眠の悪化が報告されている。しかしながら、海外と国内では感染対策が異なり(ロックダウンvs.外出自粛要請)、また、COVID-19流行後の調査しか行われておらず、流行前後の睡眠状態の比較を行った研究は報告されていない。本研究では、睡眠記録アプリ利用者6,963名のデータを用いて、2020年1~6月の睡眠状態について、2018年および2019年の同時期の睡眠データと比較し、COVID-19禍における睡眠変化について検討することを目的とした。対数線型モデルを用いて検討した結果、2020年4月、5月、6月時の睡眠時間が6時間未満の者の割合が、ほかの年と比べて少ないことが明らかとなった。そのほかの睡眠指標に関しては関連が認められなかった。以上のことから、COVID-19禍の活動自粛期間は、睡眠時間の延長をもたらすことが明らかとなった。
著者
木下 明徳 後藤 功雄 熊野 正 加藤 直人 田中 英輝
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告自然言語処理(NL) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.113, pp.81-86, 2007-11-20
参考文献数
8

NHK の国際放送では 18 ケ国語が使われており,それらの放送用原稿は,日本語の原稿やその英訳原稿が翻訳され作成されている.このような翻訳作業を支援するために,我々は過去の翻訳用例を検索する「多言語用例提示システム」の開発を行っている.精度の良い検索を実現するためには,検索キーワードとなりうる単語,すなわち,内容語の認定が重要である.しかしながら,内容語 (あるいは機能語) を認定するには辞書が必要となるが,様々な言語に対して辞書を用意することは困難である.そこで,本稿では,言語が持つ統計的特徴を利用し辞書を使わない手法について述べる.また,8つの言語 (日本語,英語,フランス語,スペイン語,ロシア語,イタリア語,インドネシア語,マレー語) に対して行った,機能語認定の実験結果について報告する.NHK provides news services in 18 languages, translating Japanese news articles into English and those ones into other languages. To aid such translation work, we have been developing a translation example browser that retrieves examples similar to inputs from multi-lingual news corpora. The browser has to identify function words(or content words) in inputs by using machine-readable dictionaries to retrieve appropriate examples. However those dictionaries are difficult to be prepared for the browser in various languages. This paper proposes automatic identification methods of function words using statistic features common to many languages. We conduct a series of experiments in 8 languages, such as Japanese, English, French, Spanish, Russian, Italian, Indonesian language and Murray language.