著者
須藤 正治 高橋 晴雄 田邊 牧人 長谷部 誠司
出版者
The Society of Practical Otolaryngology
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.91, no.1, pp.23-27, 1998-01-01

Although impairment of middle ear ventilation and subsequent middle ear negative pressure have been regarded as important pathogenetic factors in middle ear diseases, impairment of middle ear ventilation has not been proven to necessarily cause progressive negative middle ear pressure. Toynbee phenomenon is another possible cause of active production of negative middle ear pressure. Accordingly, we investigated the incidence and pathophysiology of Toynbee phenomenon in various middle ear diseases.<br>The incidence of positive Toynbee phenomenon was 75% (18124) in controls. Whereas, the incidence was 14% (8/59) in cases of otitis media with effusion (OME), 50% (13126) in cases of chronic otitis media (COM), 38% (5/13) in cases of adhesive otitis media (Adh), and 30% (3/10) in patients with cholesteatoma. However, the negative pressure induced by the Toynbee maneuver was significantly more profound in cases of Adh (- 116.0±58.6 mmH<sub>2</sub>O) than in normal ears (-8.05±53.9 mmH<sub>2</sub>O, p<0.005). Also the average induced negative pressures in the other diseased ears tended to be more profound than in normal ears; -23.6±37.1 mmH<sub>2</sub>O in OME, -23.1±55.1 mmH<sub>2</sub>O in COM, -45.0±18.0 mmH<sub>2</sub>O in cholesteatoma. Considering that middle ear diseases often accompany nasal diseases and are also often induced or aggravated by upper respiratory infections or nasal allergies (when the nose is congested), and that the eustachian tubes in diseased ears often cannot equalize negative middle ear pressure, Toynbee phenomenon may be related to the pathogenesis of these ear diseases.
著者
大岡 由佳 辻丸 秀策 大西 良 ポドリヤク ナタリア 藤島 法仁 末崎 政晃 津田 史彦 福山 裕夫
出版者
久留米大学文学部
雑誌
久留米大学文学部紀要 社会福祉学科編 (ISSN:13455842)
巻号頁・発行日
no.7, pp.43-56, 2007-03

2004年12月に当事者・遺族,その支後者が待望した「犯罪被害者等基本法」が成立し,そのなかで多岐にわたる施策が現在検討されつつある.今までの犯罪被害者等の抱える問題は多岐にわたっていたが世間に知られることは少なかった.本稿では,それら犯罪被害者を取り巻く問題点を一次被害,二次被害,三次被害に分けて論じ,今後の被害者支援にかかわる諸団体についての現状と課題について明らかにした.
著者
唐 立新 油田 信一
出版者
The Robotics Society of Japan
雑誌
日本ロボット学会誌 (ISSN:02891824)
巻号頁・発行日
vol.21, no.8, pp.883-892, 2003-11-15
被引用文献数
7 2

This paper presents a method of mobile robot's autonomous navigation in indoor environments by a teaching and playing-back scheme using memories of an ounri-directional image sequence and robot's motion. The robot memorizes a sequence of environmental images and robot's poses during a teaching stage. And in the course of a playing-back stage. itt calculates the robot's position difference from the memorized and currently taken images, and then decides a trajectory to track the taught route, so that it can navigate autonomously to follow the given path to the destination. An omni-directional image sensor is used, and vertical edges arc extracted as feature lines in the environment for calculation of robot's position difference. The experimental results show the effectiveness of this method in corridors of bulidings.
著者
江角 周子 庄司 一子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.268-280, 2016
被引用文献数
3

本研究の目的は, 中学生を対象に聴くことを学ぶ研修を実施し, 研修を通した中学生の聴く行動の変容プロセスを認知面の変化の点から明らかにすることであった。中学1年生から3年生計30名を対象に1回60分の研修を4回実施し, 全てに参加した14名を対象にインタビュー調査を行い, 行動変容プロセスについて認知面の変化に焦点をあて, M-GTAにより分析を行った。分析の結果, まず, 認知面の変化と行動変容を合わせて11概念と6カテゴリーが得られた。つぎに, 聴くことに関する行動変容プロセスを明らかにするため, 各カテゴリーと概念間の関連を検討した結果, 研修における聴いてもらう体験, 聴く体験, 観察体験のそれぞれで異なる行動変容の仮説プロセスが見出された。なかでも, 聴いてもらう体験は他の2つの体験に比べより多くの気づきが得られることが示された。さらに, 聴く行動の変容により, 更なる認知面の変化がもたらされ般化が維持されること, 他者との積極的な関わりが促進されることが示された。
著者
海津 亜希子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.241-255, 2016
被引用文献数
8

早期の段階での算数に焦点を当て通常の学級で実施するアセスメントを開発した。本研究では多層指導モデルMIM(海津, 2010; 海津・田沼・平木・伊藤・Vaughn, 2008)のプログレス・モニタリング(PM)としての機能を有するかについて検証した。対象は小学校1年生400名。MIM-PM算数版を年間通じて定期的に実施した。妥当性の検証では反復測定による分散分析の結果, 実施回における主効果が認められ, 回を経るごとに得点が高くなる傾向が示された。標準化された学力検査算数とも比較的高い相関があった。また, 既存のMIM-PM読み版とテスト・バッテリーを組み, 双方の得点傾向から3群(算数困難群, 高学力群, 低学力群)に分類し, 比較分析を行った。3群の学力検査算数の得点でも差異がみられた。算数困難群は全体の5.15%であった。実施回×学力特性群の2要因混合計画の分散分析を行った結果, 有意な交互作用, 2要因とも主効果が認められた。MIM-PM算数版の実施により把握できた算数困難群や低学力群は, 高学力群のような有意な得点上昇が一貫してみられなかったが, 当該学習に関する直接的な指導が実施されている期間では有意な伸びが確認された。MIM-PM算数版の活用でつまずきの早期把握の可能性が示唆された。
著者
市川 玲子 外山 美樹
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.228-240, 2016
被引用文献数
3

自己愛傾向と対人恐怖心性は, 自己愛性パーソナリティ障害の下位概念との近似性があり, 共通して恥の感じやすさとの関連が考えられる。本研究は, 特に恥が喚起されやすい他者の面前での失敗場面において, 自己愛傾向と対人恐怖心性の高低による5類型間の, 自己呈示欲求(賞賛獲得欲求, 拒否回避欲求)が失敗経験後に生じる感情(恥, 敵意, 抑うつ)に及ぼす影響の差異を明らかにすることを目的とした。大学生を対象とした質問紙調査を実施したところ, 368名が分析対象者となった。分析の結果, 失敗場面は2因子に分類され, "自分の失敗場面"と"他者からの指摘・叱責場面"が抽出された。そして, "他者からの指摘・叱責場面"では, いずれの類型においても失敗経験後の恥が抑うつに寄与するが, 自己愛傾向のみが高い誇大型と, 対人恐怖心性のみが高い過敏型において特に拒否回避欲求が恥に強く影響していることが示された。これらの結果から, 自己愛傾向か対人恐怖心性のいずれかが高い類型では特に, 他者の面前での失敗経験後の恥は評価過敏性の影響を強く受けており, 失敗を自己全体に帰属することで自己評価が著しく傷つけられ, その結果として抑うつが強く喚起されることが示唆された。
著者
湯 立 外山 美樹
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.212-227, 2016
被引用文献数
8

本研究では, 一般的個人興味を測定する尺度を作成し, 大学生の専攻している分野への興味の変化様態について検討した。研究1では, 感情, 価値, 知識の3側面から成る大学生用学習分野への興味尺度を作成した(<i>N</i>=202)。内的整合性の観点から信頼性が確認された。確認的因子分析の結果, 因子構造の交差妥当性が確認された(<i>N</i>=288)。内的調整, マスタリー目標, 自己効力感と正に関連したことから, 一定の構成概念妥当性が確保された(<i>N</i>=268)。研究2では, 大学生新入生(<i>N</i>=499)を対象に, 専攻している分野への興味について, 6ヶ月の短期的縦断調査を行った。潜在曲線モデルを用いて分析した結果, 全体的な変化パターンについて, "感情的価値による興味""認知的価値による興味"は緩やかに減少したが, "興味対象関連の知識"はより急速に増加した。入学後1ヶ月の時点ですでに個人差が存在し, "感情的価値による興味"の変化のパターンは個人差がより大きいことが示された。"認知的価値による興味"の変化パターンにおいて男女差が見られた。今後, 興味の発達における個人差を説明する要因の検討は意義があることが示唆された。
著者
永井 暁行
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.199-211, 2016
被引用文献数
5

本研究では, 大学生の友人関係の取り方の特徴と, 友人関係と学校適応感の関連を検討した。そのために, 友人への援助要請のスタイルと友人からのソーシャル・サポートの受容が友人関係の取り方によってどのように異なるのか, またそれらが学校適応にどのように影響するのかを友人関係ごとに取り上げた。大学生270名(男性140名, 女性130名)を対象とした質問紙調査を行った。分析の結果, 大学生の友人関係は4群に分類することができ, それぞれ友人関係回避群, 接触遠慮群, 積極的関係群, 友人関係尊重群とした。友人関係4群による学校適応感の違いを検討したところ, 友人関係回避群のみ学校適応感が低いという結果が得られた。また, 4群ごとに援助要請スタイルとソーシャル・サポートの受容が学校適応感に及ぼす影響を検討した。その結果, 友人関係回避群ではソーシャル・サポートの受容が負の影響を示し, 援助要請自立傾向が正の影響を示した。接触遠慮群ではソーシャル・サポートの受容が正の影響を示した。本研究から友人関係の違いによってソーシャル・サポートの効果が異なることが明らかになった。
著者
伊藤 大幸 村山 恭朗 片桐 正敏 中島 俊思 浜田 恵 田中 善大 野田 航 高柳 伸哉 辻井 正次
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.170-183, 2016
被引用文献数
8

一般小中学生における食行動異常の実態について, 性別・学年による差異, 併存症状としてのメンタルヘルス指標との関連, リスク要因としての社会的不適応との関連という3つの観点から検討した。一般小中学生を対象に質問紙調査を実施し, 4,952名(男子2,511名, 女子2,441名)から有効回答を得た。独自に作成した小中学生用食行動異常尺度について確認的因子分析を行った結果, "やせ願望・体型不満"と"過食"の2因子構造が支持されるとともに, 性別, 学年段階, 体型による因子構造の不変性が確認された。"やせ願望・体型不満"は, 全体に女子が男子より高い得点を示したが, 特に中2, 中3で女子の得点が顕著に高くなっていた。"過食"では顕著な男女差や学年差が見られなかったが, 女子では, 学年とともにやや得点の上昇が見られた。メンタルヘルスとの関連では, "やせ願望・体型不満"が抑うつと比較的強い相関を示したのに対し, "過食"は攻撃性と比較的強い相関を示した。社会的不適応との関連では, "学業", "家族関係"に加え, 男子では"友人関係", 女子では"教師関係"が食行動異常と有意な関連を示した。
著者
春日 彩花 土田 宣明
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.184-198, 2016
被引用文献数
2

本研究の目的は, 大学(院)生が力学のプリコンセプションをどの程度有しているかを明らかにし, プリコンセプションから科学的概念への変容過程を検討することである。対象者67名に中学校で学習する力学課題を提示したところ, 多くの者が, 学校で教えられる「科学的概念」と不一致の概念を所持していることが確認された。この結果をもとに, Hashweh(1986)の概念変容モデルに沿って教材を作成し, 全問正答者を除く52名に提示した。概念の変容が比較的容易な課題(課題1)では, 提示された新情報と自分の考えを関連付けて整理する(関連付け)ことで, 科学的概念へ変容し得ることがわかった。一方, プリコンセプションが強固で概念の変容が難しい課題(課題2, 3, 4)では, 新情報に対して疑問を示す(懐疑)ことで受容しなかったり, 新情報を自分の考えと関連付けることでプリコンセプションの不整合には気付いたものの(関連付け), 新情報をそのまま取り入れず再解釈して, プリコンセプションを部分的に変化させたりした可能性が示された。また, 提示された「科学的概念」が他の現象も統一的に説明できることに注目しなかったために, 変容には至らなかった可能性も考えられた。
著者
村上 達也 西村 多久磨 櫻井 茂男
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.156-169, 2016
被引用文献数
10

本研究の目的は, 小学生および中学生を対象とした対象別向社会的行動尺度を作成し, その信頼性と妥当性を検討することであった。小学4年生から中学3年生までの1,093名を対象とし質問紙調査を実施した。探索的因子分析の結果, 家族に対する向社会的行動, 友だちに対する向社会的行動, 見知らぬ人に対する向社会的行動の3因子を抽出した。加えて, 確認的因子分析により, 向社会性という高次因子を仮定したモデルが最終的に採択された。対象別向社会的行動尺度の内的一貫性および再検査信頼性係数は十分に高いことが確認された。中高生版向社会的行動尺度, 共感性尺度, 自己意識尺度, 学級生活満足度尺度といった同時に測定した外的基準との関連が概ね確かめられた。また, 尺度の内容的妥当性についても確認された。尺度得点に関しては, 男女差がみられ, 女子の得点の方が男子の得点よりも高いことが確認された。また, 学年差に関して, 概ね, 小学生の得点の方が中学生の得点よりも高いことが確認された。最後に, 本尺度の利用可能性について考察されるとともに, 今後の向社会的行動研究に関して議論された。
著者
加藤 弘通 太田 正義
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.147-155, 2016
被引用文献数
7

本研究の目的は, 中学校における学級の荒れと規範意識および他者の規範意識の認知の関係について検討することにあった。そのために公立中学校2校の中学生1~3年生906名を対象に質問紙調査を実施した。学級タイプを通常学級と困難学級に, 生徒タイプを一般生徒と問題生徒に分け分析を行った結果, 規範意識に関しては通常学級と困難学級では差は見られなかったが, 他の生徒の規範意識に関しては, 通常学級と困難学級で差が見られ, 困難学級の生徒のほうが学級全体の他の生徒の規範意識をより低く評価していた。以上のことから, 学級の荒れには, 生徒自身の規範意識の低下が関係しているのではなく, 他の生徒の規範意識を低く見積もる認知が関係していることが示唆された。こうした結果をふまえ, 学級の荒れを解決するためには, 従来から指摘されている生徒の「規範意識の醸成」よりも, 実際にはそれほど低くない他の生徒の規範意識を知ることが必要であり, そのための手立てとして, 生徒相互の「規範意識を巡るコミュニケーション」の活性化が必要だろうということが議論された。
著者
伊藤 毅
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 (ISSN:09124047)
巻号頁・発行日
pp.17-26, 2016

Molecular phylogenetic analyses have established most components of primate systematic classiications, which are signiicantly diferent from the traditional morphology-based classiications. This becomes an issue when inferring the phylogeny of extinct taxa, for which molecular data are usually unavailable. Researchers have attempted to extract phylogenetic signals from morphological characters to infer relationships between extant and extinct taxa. One of the most disruptive factors obscuring phylogenetic signals of morphological characteristics is size-related shape variation (i.e., allometry). Although some issues remain, researchers have successfully detected phylogenetic information that was previously hidden by the strong efects of allometry. Recently, the importance of morphological data and fossil evidence has been reconsidered, and the total-evidence approach has been resurrected. This approach incorporates both extinct and extant taxa and uses all available data, i.e., both molecular and morphological characters. The validity of the total-evidence approach should be evaluated under various conditions using simulation studies and tested using the actual data for various primate taxa.