著者
猪谷 富雄 藤田 琢也 玉置 雅彦 黒柳 正典 藤井 義晴
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.316-323, 1999-12-28 (Released:2009-12-17)
参考文献数
8
被引用文献数
2 2 2

タデ科, カタバミ科, アカザ科, シュウカイドウ科, バショウ科の体内に比較的高濃度のシュウ酸塩を含むことが知られている植物種 (以後, 本論文ではシュウ酸植物と記す) 計53種を供試し, それらの乾燥葉から滲出する物質のレタス初期生育に対するアレロパシー活性をサンドイッチ (SW) 法によって検定した。SW法では供試植物乾燥葉を0.5%寒天中に包埋後, 検定植物の種子をその上に播種し,20℃で3日後の幼根長と下胚軸長を測定し, その伸長程度 (対照区比) によって供試植物のアレロパシー活性を評価した。その結果, ショウ酸植物にはアレロパシー活性に関して大きな種間差異がみられ, 特にカタバミ科とシュウカイドウ科 Begonia 属において最も活性が強く, ほとんどの種で乾燥葉からの滲出物がレタスの幼根伸長を90%以上抑制した。次に, アレロパシー検定に供試したシュウ酸植物のうち18種の総シュウ酸含量 (水溶性および不溶性を含む) を測定し, 上記SW法における幼根長の対照区比との関係を検討した。その結果, シュウ酸植物の総シュウ酸含量には大きな種間差異が存在し, かつほとんどの植物種については総シュウ酸含量とそのレタスの幼根伸長の対照区比との間には有意な負の相関が認められた。従ってシュウ酸植物の示すアレロパシー活性の一因は体内のシュウ酸であることが示唆された。一方, 数種のシュウ酸植物については上記の相関関係から逸脱するものも存在したので, これら植物のアレコパシー活性には, 植物体中の総シュウ酸の化学的形態の違いや他の抑制物質が関与している可能性が推察された。
著者
Stefanie Haberger Michael Hauser Siegmund L. Braun Tibor Schuster Peter Ewert Nicole Nagdyman John Hess Harald Kaemmerer
出版者
日本循環器学会
雑誌
Circulation Journal (ISSN:13469843)
巻号頁・発行日
pp.CJ-15-0348, (Released:2015-09-16)
参考文献数
42
被引用文献数
17

Background:B-type natriuretic peptide (BNP) is an established marker for heart failure assessment, but the prognostic quality of BNP after atrial switch operation (ASO) has not yet been elucidated.Methods and Results:In 89 patients (median age, 24 years; range, 15–35 years) after ASO, BNP was measured. During a 48-months follow-up we focused on critical cardiac events, defined as decompensation, sudden cardiac death or need for heart transplantation. BNP was considerably lower in 81 patients in functional class (FC) I/II (median, 35 pg/ml; range, 3–586 pg/ml) than in 6 patients in FC III/IV (median, 246 pg/ml; range, 14–1,150 pg/ml, P≤0.073). BNP was significantly higher after Mustard than after Senning procedure (P≤0.030). There was no significant difference in BNP between simple or complex transposition of the great arteries (TGA) (P≤0.44). Eleven subjects (13%, 95% CI: 7–22%) had a critical cardiac event within 48 months. On ROC analysis BNP had a high predictive value regarding discrimination of patients with and without critical events (area under the ROC curve, 0.90; 95% CI: 0.76 to >0.99, P<0.001). The cut-off was 85 pg/ml (sensitivity, 88%; specificity, 85%). Additionally, estimated event-free-survival was longer after Senning than after Mustard procedure (P≤0.017). There was no significant difference in outcome between patients with simple or complex TGA with regard to occurrence of critical events.Conclusions:BNP is a sensitive and specific prognostic marker for critical cardiac events after ASO.
著者
加藤 直三
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

エスキモーロールのなかのショートロールの運動機構の解明を行なうために、まずプールにおいて、被験者の左右の関節部(手首、肘、肩、額)にマーカーを取り付け、運動を水中2台、空中2台のCCDカメラにて撮影を行なった。またカヤックには傾斜計を取り付け、ロール角を計測した。この実験解析から、ショートロールはロングロールに比べ、起き上がる時間が約倍速いことや三次元的なパドルの動きと体の姿勢の変化との関係を明らかにした。次に、エスキモーロールのヒューマン・ダイナミックスの解析を行なった。腰、肩、手の部分にジョイントを設け、その間を直線上のリンクで置き換え、また手から先のパドルをリンクとした。またリンクの先端(エンドエフェクター)にはブレードを置いた。これらのジョイントとエンドエフェクターの位置変化からそれらの速度、角速度を求めた。エスキモーロールの理論解析では、運動系を浮遊物体とリンク機構で置き換えることで、浮遊状態のマニピュレータ付き水中ロボットの運動と等価になる。ロングロールはほぼ2次元平面内での運動と見なされるので、二次元の運動方程式を扱う。逆運動力学および逆運動学を同時に扱い、作業腕の先端の位置の加速度を与えて、各関節の運動を求めた。また、パドラーの腰から肩までを一つのリンクと考え、質量をパドラーの全質量の半分と考え、中性浮力とした。その付加質量は円柱近似で求める。パドルは円柱、ブレードは平板として付加質量を求めた。リンク機構に加わる流体力は各リンクの移動速度から得られる円柱または平板の流体力で近似した。数値シミュレーションはMATLABを用いて0.01sec.毎に行った。数値計算では1.2秒でほぼカヤックは起きあがることがわかる。さらにマニピュレータを模型カヤックに搭載してその復原の制御が可能かどうか試みた。実験で用いた模型カヤックは観察で用いたリバーカヤックの約1/3の大きさである。マニピュレータは3つのリンクとジョイントからなり、ジョイント部には-5.00(V)〜+5.00(V)の電圧により-90°〜+90°まで回転するサーボモーターとポテンショメーターの内蔵されている。重量は電源コードを含み空中重量約1.5kgf(水中では約1/3)。実験では各リンク部に発泡スチロールをつめて水中で中性浮力になるように行った。模型カヌーの時々刻々の角度を調べるためにポケンションメーターを模型カヌーの先端に取り付けた。カヤックモデルとマニピュレータの系について、マニピュレータ先端の加速度および角加速度を与えて、それによって得られる各ジョイントの角度を求め、それらを設定値とした。フィードバック制御則にはPD制御を用いた。マニピュレータの運動を制御することによって、カヤックを転覆状態から復原させることがわかった。
著者
塚田 敬義
出版者
一般社団法人 日本移植学会
雑誌
移植 (ISSN:05787947)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.031-036, 2015-03-10 (Released:2015-03-31)
参考文献数
24

There is a kidney that provides less current from cardiac arrest donors. One of the causes is considered to be in the excessively heavy burden of hospital staffs. In the future, it will become necessary to examine the policy to increase organ donations. Disability injuries to further joining by living donors will also be required.
著者
丸山 裕太郎 竹川 佳成 寺田 努 塚本 昌彦
出版者
Japan Society for Software Science and Technology
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.193-201, 2011

人は音楽を奏でるために古くからさまざまな楽器を開発してきた.西洋楽器を例に挙げると,バイオリンとチェロのように共通する形状・構造・奏法をもち,音域の異なる楽器がある.また,2段の鍵盤をもつ電子オルガンと1段の鍵盤しかもたないピアノのようにミクロの構造は同じでも組み合わせ方が異なる楽器も存在する.一方,電気・電子技術の発展に伴い,アコースティック楽器と同様の見た目や演奏方法をもち,電子的に音を生成する電子楽器が多数開発されてきた.しかし,従来の電子楽器は既存楽器の形状をそのまま模写することが主な目的であった.本研究では,楽器を発音や音程決定などの機能要素(ユニット)の集合であると捉え,それらのユニットを自由に組み合わせることで,音域や演奏スタイルの変化に柔軟に対応できるユニット楽器の開発を目指す.ユニットを組み合わせて楽器を再構築することで,楽器の音域増減などのカスタマイズや,既存楽器の特徴を組み合わせた新たな楽器の創造が行える.ユニットの設定は,本研究で提案するスクリプト言語によって柔軟に記述できる.また,本研究ではユニット楽器のプロトタイプを実装し,さまざまなイベントステージで実運用を行った.
著者
八木 節男
出版者
一般社団法人 資源・素材学会
雑誌
日本鉱業会誌 (ISSN:03694194)
巻号頁・発行日
vol.79, no.901, pp.477-484, 1963-07-25 (Released:2011-07-13)
参考文献数
7

TOHO Titanium Co. erected 20 T per month plant of titanium sponge in 1953 and developed it to 150 T per month within 4 years.But the price of titanium has fallen down year by year and the demand for it decreased since 1957. So we have endeavoured cut down the production cost.The methods of rationalization are as follows:1) Improvement of the operation of chlorinato- and recovery of TiO2 from its waste.2) Simplification of TiCl4 purification.3) Diminution of magnesiuem losses at the reduction process and others.4) The reduction of production cost of magnesium by the rationalization of its electrolytic plant.With these above and other several improvements. we have been able to reduce the production cost of titanium sponge about 20% during these 4 years.
著者
田浦 康二朗
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

近年抗酸化活性剤として知られる水素水の肝線維化抑制効果を調べるために、C57BL/6マウスに水素水を飲用させながら、四塩化炭素、チオアセトアミド、胆管結紮により肝臓の線維化を誘導し、コントロール飲水群との比較を行った。その結果、四塩化炭素モデルとチオアセトアミドモデルでは水素水の飲用により肝線維化抑制効果が示されたが、胆管結紮モデルにおいてはその効果は見られなかった。次にそのメカニズムを調べるために、肝細胞および星細胞をマウスから分離し水素含有培地で培養することにより、活性酸素による肝細胞傷害、星細胞の活性化への影響について検討を行った。1μg/mLのアンチマイシンAを分離した肝細胞に投与することにより、肝細胞にヒドロキシルラジカルの発生を確認した。それらのヒドロキシルラジカルは水素含有培地において有意に発生が抑制され、肝細胞死の軽減も観察された。星細胞については水素含有培地においても明らかな活性抑制効果は観察されなかった。水素水は肝細胞でのヒドロキシルラジカルを抑制することで肝細胞死を軽減し、肝線維化抑制効果を呈することが示された。
著者
深谷 翼
出版者
南山堂
雑誌
治療 (ISSN:00225207)
巻号頁・発行日
vol.77, no.7, pp.p2105-2109, 1995-07
著者
福山 佑樹 中原 淳
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.309-319, 2012
被引用文献数
1

現代社会における深刻な問題の一つである社会的ジレンマを体験し,協力行動を促進する心理的要因の向上を目指すゲーム教材である「Connect the World II」を開発した.「Connect the World II」はこれまで広く社会的ジレンマのゲームとして用いられてきた個人レベルを対象とした社会的ジレンマゲームに「集団」の役割を追加し,個人と集団の2つの役割を参加者に担わせるという構造が特徴である.その評価のため,「Connect the World II」と「Connect the World II」から「集団」の役割を除外した個人レベルのみのゲームとの比較実験を行った.結果,本研究で開発したゲームでは,個人レベルのみを扱ったゲームと比較して,社会的ジレンマ状況において他者も協力するという「信頼」の向上が確認され,道徳意識の獲得に繋がるとされる「責任感」の向上の可能性が示唆された.
著者
Thi Hong Van Le Gwang Jin Lee Huynh Kim Long Vu Sung Won Kwon Ngoc Khoi Nguyen Jeong Hill Park Minh Duc Nguyen
出版者
公益社団法人日本薬学会
雑誌
Chemical and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
vol.63, no.11, pp.950-954, 2015-11-01 (Released:2015-11-01)
参考文献数
20
被引用文献数
22

Chemical and pharmacological studies of Panax vietnamensis (Vietnamese ginseng; VG) have been reported since its discovery in 1973. However, the content of each saponin in different parts of VG has not been reported. In this study, 17 ginsenosides in the different underground parts of P. vietnamensis were analyzed by HPLC/evaporative light scattering detector (ELSD). Their contents in the dried rhizome, radix, and fine roots were 195, 156, and 139 mg/g, respectively, which were extremely high compared to other Panax species. The content of protopanaxatriol (PPT)-type saponins were not much different among underground parts; however, the content of protopanaxadiol (PPD)- and ocotillol (OCT)-type saponins were greatly different. It is noteworthy that the ginsenoside pattern in the fine roots is different from other underground parts. In particular, despite the content of PPD-type saponins being the highest in the fine roots, which is similar to other Panax species, the total content of saponins was the lowest in the fine roots, which is different from other Panax species. The ratios of PPT : PPD : OCT-type saponins were 1 : 1.7 : 7.8, 1 : 1.6 : 5.5, and 1 : 4.8 : 3.3 for the rhizome, radix, and fine roots, respectively. OCT-type saponins accounted for 36–75% of total saponins and contributed mostly to the difference in the total saponin content of each part.
著者
西島 恵介 神山 文子 藤田 米春
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. TL, 思考と言語
巻号頁・発行日
vol.98, no.441, pp.49-54, 1998-12-04

本報告では, 推理小説の記述の感情を含めた論理的関係を表すネットワークを作成し, 論理的構造や常識について考察する。推理小説に現れる情報を, 共通語彙, 設定・定義, 明示的常識, 非明示的常識の4つに分類した。また, 常識の抽出について検討を行なった。さらに, これらの情報を時間的順序関係, 因果関係, 含意関係を用いてネットワーク化し, 論理マップを作成した。
著者
中里 理子
出版者
上越教育大学
雑誌
上越教育大学研究紀要 (ISSN:09158162)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.574-562, 2001

明治後期の小説二〇作品を対象に、和語系・漢語系オノマトペの使用状況を調査し、前期からの流れを考慮しながら両者の関係を具体的に考察した。後期になると和語系オノマトペの割合が増え、漢語・漢字を宛てずに単独で使われるようになったことから、俗語である和語系オノマトペが小説の言葉として抵抗感なく取り入れられるようになったことが窺われた。また、漢語系のオノマトペとしての意識について、和語系に漢語系を対応させる宛て字の面から、特に多く見られたそれぞれのオノマトペの型を中心に考えた。和語系に宛て字されていた漢語系は、和語系が独立すると、一般語彙として「オノマトペ」性を失ったが、音構成が和語系のものと同じ「-々」型は、限られた文脈で多用されたものが音のイメージを連想させるようになり、「オノマトペ」として捉えられるようになると思われる。This paper attempts to discuss how onomatopoeias originated from Japanese are related with those from Chinese in the second half of the Meiji era. For this purpose twenty stories were investigated in the study. In the second half of the Meiji era, a large proportion of onomatopoeias became Japanese origin, and they were used independently without the assistance of substitute character. It means that Japanese originated ones were used more positively even in the novels, although they were considered as slung in those days. Regarding the Chinese originated onomatopoeias, it is neccessary to examine the relations with kana written at the right side of kanji which was those of Japanese-origin, and the main types of onomatopoeias. The onomatopoeias of Chinese origin which were used as substitute character for those of Japanese origin, came to lose the features as onomatopoeias. But one type, which was the same sound type of Japanese origin, obtained the sound image and was possibly recognized as onomatopoeias.
著者
韋 保耀 原 昌弘 山内 亮 上野 良光 加藤 宏治
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.133-138, 1991-12-25

キクイモおよびヤーコンの塊茎からオリゴ糖を80%エタノール溶液で抽出し,Bio-gel P-2 カラムクロマトグラフィーを用いてオリゴ糖の重合度分布を検討した。抽出物のオリゴ糖組成は,キクイモではフラクトオリゴ糖のみであったのに対して,ヤーコンでは,フラクトオリゴ糖とともにフルクトースとダルコースが検出された。塊茎を数ヵ月保存すると,キクイモでは重合度の高いオリゴ糖が減少し,低重合度のオリゴ糖が増加した。一方,ヤーコンでは,すべてのオリゴ糖が減少し,フルクトースとグルコースが増加していた。これらの抽出物中には,いずれの場合にもイヌロオリゴ糖は全く検出されず,このことより,両塊茎中に存在するイフリン加水分解酵素はエキソ型であり,キクイモに比べてヤーコンの酵素は低重合度のオリゴ糖に対して高い親和性を有するものと推定した。本研究結果は,ヤーコン塊茎に比べてキクイモ塊茎が,フラクトオリゴ糖の工業生産原料に適することを示している。