著者
徳永 哲
出版者
日本赤十字九州国際看護大学
雑誌
日本赤十字九州国際看護大学紀要 = Bulletin of the Japanese Red Cross Kyushu International College of Nursing (ISSN:21868042)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.61-72, 2011-12-28

ナイチンゲールの思想は、1842 にプロシアの特使ブンゼン男爵と知り合いになった時点から急速に進歩、深化した。ブンゼン男爵の豊富な知識は、神学者でありながら異端者として火刑に処されたブルーノやエックハルト、さらにネオ・プラトニズムにまで及んでいた。また、ドイツのカイザースヴェルト学園の情報誌などを届けてくれたのはブンゼン夫妻であり、彼を通して知った宗教思想や哲学はナイチンゲールの看護への意志を支え、励まし続けた。1840 年代後半になると、ロンドンにはプロテスタントとカトリック双方の女子修道会が発足し、貧困者の救済に修道女が活躍するようになった。ナイチンゲールは特に看護修道女の活動を知るようになった。クリミア戦争ではナイチンゲールを支えて献身的に働いた看護修道女のフライやマザー・ムーアから、彼女等の看護への意識の高さを思い知らされた。その一方で、キングス・カレッジのボーマン医師の外科手術に立ち会ったことから医療技術の進歩に直面し、病院看護の新しい方向性を見出す切掛けとなった。また、彼女が自発的に習得した公衆衛生学や統計学の知識は近代看護の確立基盤となった。宗教と科学、この矛盾したものがナイチンゲールの思想の中には一体となって存在し、近代看護は生み出されたのである。
著者
二木 宏二
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.30-34, 1970-01-15 (Released:2011-11-04)

清酒業界は5年後の自由化をひかえこれからますます販売力に差が生じて来るものと思われる。販売促進には各人それぞれに秘策をめぐらし活躍されているであろうが, その場合消費者の動向, PRの効果などの実態を正しくつかむ事が大事である。一生懸命販売作戦を展開しても, 的はずれであったリ, 無駄が多いようでは困りものである。ここにマーケッティング・りサーチの必要性が生ずるわけであるが, 私達は別にその道の専門家になろうというわけではないし, また個人として全国的なリサーチを繰リひろげようというわけでもない。手軽に自製品の市場における反応, 特定地域における拡売の可能性, 拡売法=などを検討するにはどうしたら良いかとか, こういう目的にはどういう方法を用いれば良いかかなどを理解しているだけでも非常に大きな武器となる。マーケティング・リサーチの実際をシリーズとして掲載する目的もそこにある。高度な調査はもちろん専門家に頼まなければならないであろう。その場合でもマーケティング・リサーチの仕組みを知っておく事は必要である。マーケティング・リサーチは決して大企業が莫大な資力をもってしてのみなし得るものではないし, 宣伝広告自体もテレビだけではなひ。身近かにいくらでもやる方法のある事を本講座を通じて理解していただければ幸いである。
著者
松崎 賜 吉田 仁士 林 浩俊
出版者
都城工業高等専門学校
雑誌
都城工業高等専門学校研究報告 (ISSN:0286116X)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.29-40, 2002-01

これから紹介するのは,長崎の針尾島出身で,幕末の儒学者の,楠本端山(名は確蔵,後に後覚と改めた,字(あざな)は伯暁,端山は号,一八二八年〜一八八三年)が遺した漢詩集である。日本漢詩は,その価値がまだまだ十分に認識されていない。ましてや儒学者の仕事となると,存在すら忘れ去られているのが現状ではなかろうか。しかし,大方の予想に反して,儒学者のそれは,現代人の鑑賞にたえる魅力的なものが多い。儒学の伝統をふまえた人々の言葉であるがゆえに,かえって趣のある内容となっている,とも言えよう。端山の詩は,そうした優れたものの中でも,とびきりの表現と内容とを備えているのであり,だからこそ,ここに訳注を施すことにしたわけである。
著者
馬場 伸一郎
出版者
THE JAPANESE ARCHAEOLOGICAL ASSOCIATION
雑誌
日本考古学 (ISSN:13408488)
巻号頁・発行日
vol.14, no.24, pp.51-73, 2007

弥生時代の石器生産・流通論はその開始からその後の変化に分析の視角が集中する一方で,生産・流通出現前段階にある物資の流通との関連性については必ずしも充分な研究がなされているとは言えない。本稿の分析地域とした中部高地(長野・山梨県域)の特に長野盆地南部では弥生中期後葉以後,特定遺跡において労働力を集約化した石器生産と流通と,日本海沿岸地域からの玉類の流通が明瞭である。一方,縄文時代から弥生時代中期後葉の間には黒曜石石材の流通が認められる。それ故,異種の物資流通を比較検討するのに中部高地は格好の地域である。しかし,弥生時代の黒曜石研究では,原産地の利用実態,石材中継集落の有無,原産地遺跡と消費地遺跡の石材流通上の関係等,多くの事柄が未解明であり,石材流通の実態を復元することがまず必要である。それを本稿の目的とした。<BR>分析の結果,(1)弥生中期後葉栗林期に原産地組成に明瞭な変化があり,諏訪星ケ台系の石材に加え,和田和田峠系の石材が一定量組成すること,(2)弥生中期後葉は原産地組成が変化する時期であると同時に,佐久盆地の例が示すように原産地組成が遺跡単位で多様化する時期であること,(3)弥生中期後葉の消費地遺跡では諏訪星ケ台系・和田和田系の双方の石材が搬入され,その大半は集落内の石器製作で消費されていること,(4)弥生中期後葉には,屋外石材集積例の欠落,石材の小形化,石材出土量の減少が認められること,(5)弥生中期後葉には原産地遺跡と消費地遺跡の間に石材中継集落が認められないことが判明した。<BR>このように変化の画期の多くは弥生中期後葉に集中し,当該期は原産地での石材採掘活動を含む「集団組織的石材獲得・流通システム」が欠落しているとした。弥生中期後葉の栗林期は水田稲作を基幹生業とする社会変動期であり,大規模集落の形成・遺跡数増加・特定遺跡で労働力を集約した手工業生産にそれは象徴される。そうした社会変動と黒曜石石材の流通の変化は無関係ではなく,管玉・勾玉・磨製石斧といった交換財が新たに登場したことで,互酬性的な集団関係維持のための交換財であった黒曜石石材はその役目を終えたと考えた。
著者
渡辺光祐 小林亜樹
雑誌
第76回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, no.1, pp.379-380, 2014-03-11

本稿では、利用者の嗜好や気分を反映し、心地よく聴取を続けられるような楽曲推薦方式について述べ、試作システムによる評価を行う。本方式では、利用者の嗜好や気分を楽曲のテンポに基づき表現するため、基準となるテンポとして精神テンポを用いる。また、心地よく聴取を続けられるようにするため、楽曲の再生履歴を用いて楽曲間の聴取時のつながりの良さを指標化し、これらを使ってプレイリストを生成する。試作システムでは、音楽プレーヤ内の最終の再生ならびにスキップ日時を用いて、楽曲間のつながり行列を得ておき、これとタッピングにより取得した精神テンポ、つながり情報を反映して楽曲の推薦評価値を求めることでプレイリストを生成する。実験により本手法の有効性について検証した。