著者
吉川 徹
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.428-442, 1996-03-30
被引用文献数
1

この研究は, 青少年期における社会的態度形成の過程を計量的に検討するものである。これは従来から蓄積されてきた階層意識の研究の所産に, 社会的地位達成過程のモデルを糸口として, 世代間関係と, 学校教育による態度形成という知見を付加するものと位置付けられる。具体的には1992年に中学生・高校生を対象として実施した調査のデータを計量的に分析し, 出身階層の要因, 両親の社会的態度, 学校教育の諸条件などの関連構造と, これらの態度形成効果の大きさを解明している。その結果, 第一に家庭の階層的要因の効果が必ずしも従来の議論に符合するほど強力ではないこと, 第二に社会的態度の形成要因として学校教育の諸条件が複雑だが一定の有効性をもっていることが確認された。
著者
森田 洋司
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.48-65,144**-143, 1985-06-30

暴走族青少年の性格特性は、極端に高い外向性と高い神経症的傾向を示している。日本の青少年は一般に、発達につれて児童期よりも内向化する傾向がみられ、その生育環境にさまざまな内向化への文化的圧力が介在しているものと推定される。暴走族青少年がわが国の児童期の特性である外向的傾向を異常に高く示すということは、彼らの発達過程にこうした文化的圧力が欠如していたか、あるいは外向性強化要因が作用していたものと思われる。また、こうした彼らの高い外向性は彼らの逸脱行動に人格的な未成熟性をもたらす要因ともなっている。<BR>また、暴走族青少年では学業不振が著しいが、それは現代の学習過程が彼らの極端に高い外向的特性に不適合なるがゆえに生じているものと思われる。したがって、彼らの学業不振は知識の配分過程への不適応と見なすことができるが、それは同時に知識配分過程に潜在的に含まれている「かくれたカリキュラム」としての内向性志向文化への不適応でもある。
著者
高橋 由典
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.2-16, 1980-12-31

日常生活の様々な場面で、他者は「自己」を視つめる人 (オーディエンス) としての役割を演じる。この「オーディエンスとしての他者」の諸相を明らかにすることが本稿の目的である。オーディエンスは「自己」に対して果す機能の違いによって「監視者としてのオーディエンス」と「観客としてオーディエンス」に二分される。また占める〈位置〉の違いによってそれは「直接的なオーディエンス」と「内的オーディエンス」とに分けられる。<BR>これまで社会学の領域では「観客としてのオーディエンス」の側面が比較的閉却されてきた。自己呈示はこの「観客としてのオーディエンス」に対して行なわれる。そのさい観客からの反応を呈示者がどう位置づけるかに応じて、功利的と美的という二つの自己呈示が区別される。前者の場合、反応は専ら功利的目的実現のために利用される。これに対して後者の場合、反応はあくまで自己呈示の美的効果を保証するものとみなされる。内的オーディエンスを観客とする美的自己呈示 (ダンディ的自己呈示) において、呈示者 (演技者) は美的完全性をめざそうとする。けれども彼のその企てには当然困難が伴なう。自己呈示という他者依存的な場において美的完全性 (という他者非依存) を実現しようとすることは、本来自己矛盾だからである。
著者
奥 和義 OKU Kazuyoshi
出版者
関西大学商学会
巻号頁・発行日
2011-12-25

1931年の満州事変以降,日本経済は急速に戦時経済の色合いを強めていった。さまざまな経済統制政策の導入にそれがあらわされており,それは現在の日本の経済システムの源流になったと言われている。本稿では,日中戦争が本格化した1937年から占領下の経済統制をへて高度経済成長が開始されたと考えられる1955年までの時期の日本貿易の発展と構造変化を検討する。その際に,第2次世界大戦までとそれ以降の2つの時期に区分して日本貿易の特徴を分析する。
著者
甲田 烈
出版者
相模女子大学
雑誌
相模女子大学紀要 (ISSN:21891842)
巻号頁・発行日
vol.78, pp.49-62, 2014
著者
KAWASAKI Tsuneomi UCHIDA Mizuki KAIMORI Yoshiyasu SASAGAWA Taisuke MATSUMOTO Arimasa SOAI Kenso
出版者
The Chemical Society of Japan
雑誌
Chemistry letters (ISSN:03667022)
巻号頁・発行日
vol.42, no.7, pp.711-713, 2013-07-05
被引用文献数
22

5-Pyrimidyl alkanol with an enantiomeric excess of up to >99.5% was formed using chiral crystals of achiral tris(2-hydroxyethyl) 1,3,5-benzenetricarboxylate as a chiral initiator. In the enantioselective addition of diisopropylzinc to pyrimidine-5-carbaldehyde, the helicity of the molecular arrangement of achiral tricarboxylate in the crystalline state could be successfully used as a source of chirality to afford enantioenriched alkanol in conjunction with asymmetric autocatalysis with amplification of enantiomeric excess.
著者
岡本 隆 岡田 基央 小泉 翔
出版者
日本古生物学会
雑誌
化石 (ISSN:00229202)
巻号頁・発行日
vol.94, pp.19-31, 2013

To understand the inter- and intraspecies variation and ontogenetic change in shell ornamentation of Polyptychoceras (Cretaceous diplomoceratid), reproduction of shell morphologies was carried out based on the creeping soft-part model and the lazy messenger effect. As a result, we found several constructional rules on this ammonite as follows. (1) The shell surface of Polyptychoceras consists of "striation-" and "smooth-parts", and the former was much more slowly formed than the latter. (2) The changes in shell ornamentation during growth of Polyptychoceras (Polyptychoceras) haradanum were probably caused by change in shell prolongation rate, and were successfully restored if the striation- and smooth-parts were assumed to be formed through gradual expansion and intermittent forward movement of the soft-part, respectively. (3) The formation of the multiple ribs observed in Polyptychoceras (Subptychoceras) yubarense can be attributed to a refractory period for propagation of the morphogenetic signals just after the formation of the continuous smooth-part including ribs. Our conclusion is that the great variability of shell ornamentation developed in Polyptychoceras is the result of compound effect of two factors, i.e. the rate of shell prolongation and the duration of the refractory period for ribbing.
著者
和泉 潔 山下 倫久 車谷 浩一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. AI, 人工知能と知識処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.725, pp.53-58, 2004-03-09

本研究では,資源選択を簡略化したマイノリティーモデルと呼ばれるモデルを用いて,資源割り当て問題の分類を行った.学習の効率性と正確さの異なるエージェントを3種類用意して,獲得した利得の比較を行った.その結果,システムの複雑性と学習への時間的制約という2つの条件に応じて,4つの領域が存在することが分かった.そして,それらの領域にしたがって,実際の資源割り当て問題を分類できた.実際の資源割り当て問題が属する領域に応じて,モデル化を行うときにエージェントの持つべき特徴が分かった.
著者
田村 祐馬 伊藤 健洋 周 暁
雑誌
研究報告アルゴリズム(AL)
巻号頁・発行日
vol.2014-AL-148, no.3, pp.1-6, 2014-06-06

無向グラフ G のフィードバック点集合 F とは,G から F を取り除くと,残されたグラフが林になるような G の点部分集合のことである.また,F が G の独立点集合をなすとき,F はフィードバック独立点集合という.本稿では,与えられたグラフに対し,点数が最小のフィードバック独立点集合を求める問題について研究する.この問題は,平面的二部グラフに対してさえ NP 困難であることが示せるため,我々はいくつかの特別なグラフクラスに着目する.まず我々は,この問題が木幅制限グラフと弦グラフに対して線形時間で解けることを示す.次に,平面グラフに対しては,解のサイズをパラメータとした FPT アルゴリズムを与える.
著者
中前 博久 日野 雅之 太田 健介 鈴木 賢一 青山 泰孝 酒井 宣明 阪本 親彦 長谷川 太郎 山根 孝久 巽 典之
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.216-220, 1998 (Released:2009-04-28)
参考文献数
13

症例は22歳,未婚女性,看護学生,低色素性貧血ならびに不明熱にて入院となった。入院後,鉄欠乏性貧血と診断し,鉄剤の投与を行っていたが周期的に貧血の進行がみられた。特に外泊後に急激な貧血の進行が認められていたことより,われわれはfactitious anemiaを強く疑い,テレビモニターでの監視ならびに所持品検査を行ったところ,患者病室のロッカーならびに自宅より多数の注射器,注射針および血液の入ったボトルが発見された。以上より本症例をfactitious anemiaと診断した。患者は自己瀉血を認め,心療内科医のカウセリングにより貧血の改善傾向がみられたが,退院6カ月後に通院しなくなった。十分量の鉄剤投与に反応を示さない極度の慢性低色素性貧血患者にはfactitious anemiaを考慮する必要がある。
著者
真鍋 義孝
出版者
長崎大学
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
2000

南西諸島における集団史を探るため、地域的変異の調査を続けている。本年度は、南西諸島の南端近くに位置している石垣島に居住する若年者(男64名・女86名)の歯冠に出現する非計測的形質の頻度を調査した。17形質のうち日本の在来系集団と渡来系集団で特に明瞭な差を示す12形質の出現頻度について、日本列島における各時代の12集団と比較した。その結果、石垣島現代人において在来系的特徴を示す形質はわずかに屈曲隆線(LM1)だけであるが、シャベル型(UI1)、斜切痕(UI2)、第5咬頭(UM1)、4咬頭性(LM2)、プロトスタイリッド(LM1)の比較的多くの形質では渡来系的であった。また、ダブルシャベル型(UI1)、舌側面近心辺縁隆線(UC)、舌側面遠心副隆線(UC)、カラベリ形質群(UM1)、Y型咬合面溝(LM2)、第6咬頭(LM1)の多くの形質では在来系と渡来系の中間的特徴を示していた。さらに多変量解析を適用すると、石垣島現代人は沖縄本島と種子島の現代人に最も近く、南西諸島内の地域的変異はかなり小さいことが明らかになった。これらの南西諸島の3集団は1つのクラスターを形成し、東アジアの中では東北アジア型と東南アジア型の境界領域に位置していたが、日本列島の集団の中では在来系よりも渡来系集団に圧倒的に近く位置していた。また、南西諸島の中で厳密に比較すると、種子島が石垣島や沖縄本島よりもやや東北アジア型に近く位置していた。これらの結果は、現代人に限定した場合の「アイヌ・琉球同系説」を否定する。ところが、種子島における時代的変化を考慮に入れた場合、沖縄本島の先史時代にも在来系集団が存在していたと想定され、その後に渡来系遺伝子の流入が起こった可能性を示唆するものである。南西諸島内の地域的変異は小さなものであったが、厳密な比較で認められた南西諸島内における南北のクラインは、渡来系遺伝子の流入が北から起こった可能性を示唆している。
著者
奈良井 武 土井 幸平 水口 俊典 五條 敦
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.697-702, 1991
被引用文献数
3

<p>IN SAITAMA PREFECTURE, THE CITY PLANS OF URBANIZATION PROMOTION AREA (UPA) AND URBANIZATION CONTROL AREA (UCA) WERE MADE IN 1970, AND WERE MODIFIED IN 1977-1979. DESPITE THE DEMARCATION BETWEEN UPA AND UCA, HOWEVER, DISORDERLY BUILDING-UP (SPRAWLS) CONTINUED AND THE DEVELOPMENT PROJECTS WERE NOT PROMOTED IN UPA AS WE HAD EXPECTED. IN ORDER TO SOLVE THIS PROBLEM, 'SAITAMA METHOD', THE FLEXIBLE OPERATION OF THE CITY PLANS OF UPA AND UCA WAS INTRODUCED AT THE TIME OF THE SECOND MODIFICATION OF DEMARCATION BETWEEN UPA AND UCA, IN 1984-1987. THIS STUDY AIMS TO EXAMINE ITS RESULTS AND EFFECTS AS THE MEANS OF URBANIZATION CONTROL.</p>