著者
沢谷 豊
出版者
慶應義塾大学
雑誌
哲學 (ISSN:05632099)
巻号頁・発行日
vol.78, pp.223-246, 1984

序文I. 「合理的官僚制」への批判 i. 「合理的官僚制」と経験的事実 ii. 組織と社会 : 文化、政治システム iii. 「合理的官僚制」の「内的矛盾」 iv. 批判に関する問題提起II. 問題の検討と提案 i. 二つの「説明」の方法と組織理論 ii. 「官僚制」と規範的志向性 iii. 「内的矛盾」の解釈III. 「合理的官僚制」の「合理性」 i. 支配の正当性の妥当の「合理性」 ii. 「形式合理性」と「実質合理性」 iii. 「形式合理性」と組織の「能率」IV. 終章 : 組織の政治的アプローチへ'Rationality' of 'Weber's rational bureaucracy means that men apply criteria of rationality to their action, irrespective of its relation to organizational objectives. But many theorists of organizations take it as 'effectiveness' or 'efficiency'. Consequently, they have missed that rational bureaucracy is "a model of bureaucracy which permits conflict". Tte conflict would occur between two distinct types of authority : (a) authority which rests on "incumbency of a legally defined office" and (b) authority which is based on "technical competence". And Weber's rational bureaucracy is conceptualized on these two types of authority. Weber made two separate statements about the specific nature of the rationality of bureaucracy : " Bureaucratic administration signifies ,authority on the basis of knowledge. This is its specifidally rational character" ; and "Bureaucratic authority is specifically rational in the sense of being bound to discursively analysable rules"., Althouth it has been suggested that Weber assume the absense of any conflict or tension in rational bureaucracy, the problems which concerned Weber were the contradiction between formal and material rationality in modern society, which is a possible conflict between the growth of formal rules and the application of scientific knowledge in the current organizations. And the problems of the conflict would lead to political analyses of organizations.
著者
平野 孝治
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学会誌 (ISSN:13406531)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.65-73, 2008-11-30

日本で発表された中国メディア研究について,政治コミュニケーションの視座から分析を行い,その傾向と問題点を明らかにした。マスメディアと政治制度,イデオロギー,中央と地方の関係,情報発信の過程をテーマに周囲から内部へと段階を追って考察を試みた。また近年注目されるインターネット研究にも考察を試みた。その結果思想改革を目的とした報道機関の発する情報は,教育的なものであることが明らかになった。しかし,これは政権側の情報統制によって思想改革が成功するであろうという希望であって,実際に成功したかどうかは明らかになっていない。また,中央と地方の枠組みでメディア研究を行なう際には,地政学的,政治経済学的な視座で考察を行わなければならない点を明らかにした。そして,マスメディアと政府の関係が,今まで既存メディアが経済や政治的な要因によって変化が生じていたのとは異なり,インターネットの出現によって,政治エリートとマスメディアの関係が根本的に覆され,お互いの利益のために利用しあう関係へと変化したこと,インターネットの内容に左右される政府という新たな状況が形成されている点を明らかにした。
著者
渡邊 秀司
出版者
佛教大学
雑誌
佛教大学大学院紀要. 社会学研究科篇 (ISSN:18834000)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.55-70, 2011-03-01

本論のテーマはカリスマの検討である。カリスマというと「カリスマ主婦」「カリスマ店長」なる言葉を思い浮かべる人も多い。今更カリスマを問う意味がどこにあるのかという考えもあるだろう。しかし,ある程度の構成員を内包する集団が形成される場合,何らかの形でカリスマが関わる場合が多い。マックス・ウェーバーがカリスマについて論じて以後,特に1970年代から80年代にかけてカリスマの検討がされてきた。それらのカリスマ論はカリスマの担い手に主たる関心があったが,本論では,ウェーバーのいうカリスマの「使徒」という,担い手から見れば外部の存在によってカリスマが作られる事を,二段階の「カリスマの構築」という視点に立って論じる。
著者
鈴木 雅徳 鵜飼 政志 笹又 理央 関 信男
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.139, no.5, pp.219-225, 2012 (Released:2012-05-10)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

ミラベグロン(ベタニス®錠)は選択的β3アドレナリン受容体作動薬であり,現在,新規過活動膀胱治療薬として本邦で使用されている.ヒトβアドレナリン受容体発現細胞を用いた機能実験において,ミラベグロンはヒトの膀胱弛緩に主に関与しているβ3アドレナリン受容体に選択的な刺激作用を示すことが確認された.ラットおよびヒト摘出膀胱標本を用いた機能実験において,ミラベグロンはカルバコール刺激による持続性収縮に対して弛緩作用を示した.麻酔ラットにおいて,ミラベグロンは静止時膀胱内圧を低下させたが,ムスカリン受容体拮抗薬であるトルテロジンおよびオキシブチニンは明らかな低下作用を示さなかった.また,麻酔ラットにおいてミラベグロンは,律動性膀胱収縮の収縮力に影響を及ぼさなかったが,オキシブチニンは収縮力の低下を引き起こした.ミラベグロンは過活動膀胱モデルラットにおいて,減少した平均1回排尿量を増加させた.尿道部分閉塞ラットにおいて,ミラベグロンは排尿圧および残尿量に影響を及ぼすことなく排尿前膀胱収縮回数を減少させたが,トルテロジンおよびオキシブチニンは,高用量投与時にそれぞれ1回排尿量減少および残尿量増加作用を示した.以上の非臨床薬理試験により,ミラベグロンはムスカリン受容体拮抗薬と異なり,排尿時の膀胱収縮力を抑制することなく1回排尿量を増加させることが明らかとなった.過活動膀胱患者を対象とした米国および欧州第III相臨床試験において,ミラベグロンは過活動膀胱の諸症状に対して優れた有効性および忍容性を示した.口内乾燥の発現率は,ミラベグロン群とプラセボ群で同程度あり,トルテロジンSR群より低かった.以上,非臨床薬理試験および臨床試験の結果から,ミラベグロンは既存薬とは異なる新たな作用機序により,ムスカリン受容体拮抗薬に特徴的な口内乾燥の発現率を低減し,過活動膀胱の諸症状に対して改善効果を示す薬剤であることが示された.
著者
渋江 公尊 原島 伸一 中本 裕士 浜崎 暁洋 稲垣 暢也
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.102, no.7, pp.1794-1796, 2013-07-10 (Released:2014-07-10)
参考文献数
5
被引用文献数
1

水様下痢と嘔吐を繰り返し,膵尾部原発ガストリノーマの診断にて膵体尾部・脾臓・肝外側区域切除術および胆嚢摘出術を受けた.術後2年を経過した頃から低血糖発作が頻発.血清インスリン値高値でありインスリノーマの併発が疑われた.局在診断に68Ga標識DOTATOCを用いたPET/CTを施行し,アログリセムによる治療を試みた症例を経験したので報告する.

1 0 0 0 OA 病題明致

著者
関孝和 編
出版者
沢村写本堂
巻号頁・発行日
1934
著者
Bir Bahadur Khanal Chhetri
出版者
FORMATH研究会
雑誌
FORMATH (ISSN:21885729)
巻号頁・発行日
pp.14.001, (Released:2014-12-26)
参考文献数
43
被引用文献数
2

The paper empirically examines the contribution of forest-environmental income, and its role in well-being outcomes among the forest dependent households in rural Nepal. The results are based on a one-year survey of 303 households that included the detailed information on household demographics, income and assets and the people's perception in the change in their well-being compared to the last five year. To capture likely non-linear dynamics of well-being status, a probit regression model is tested. Overall, forest environmental income contributed an average of 16% of the total household income. Relative environmental reliance decreased with rising income while absolute environmental income increased. The perception of well-being was related to shock exposure and households' endowments to cope with shocks. In particular, households exposed to several consecutive shocks (two or more severe shocks) over the course of five years significantly reported to be worse-off. The limited role of forest in improving the well-beings of the households is associated with their limited access to the resources. Identification of income groups, their expected wealth status, and asset and access constraints that limit economic advance are used to suggest appropriate targets of intervention.
著者
中村 泰三
出版者
一般社団法人 人文地理学会
雑誌
人文地理 (ISSN:00187216)
巻号頁・発行日
vol.13, no.4, pp.312-318, 1961-08-30 (Released:2009-04-28)
参考文献数
5
著者
松川 克彦
出版者
京都産業大学
雑誌
京都産業大学論集. 社会科学系列 (ISSN:02879719)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.249-272, 2014-03

山本五十六提督はアメリカ駐在武官も勤め、同国の実力を熟知していたが故に、アメリカとの間の戦争に反対であったといわれている。したがって日独伊三国同盟にも反対であった。しかしながら、日米関係が緊張してくると、アメリカ太平洋艦隊の基地真珠湾を攻撃する計画を作成、その計画実現に向けて強引な働きかけを行った。 これをみると、山本は果たして本当に平和を望んでいたのかどうかについて疑問が起こってくる。一方で平和を望みその実現に努力したと言われながら、実際にはアメリカとの戦争実現に向けて最大限の努力を行った人物でもある。 本論は山本が軍令部に提出した真珠湾攻撃の計画が実際にどのようにして採択されたのか。それは具体的にはいつのことなのか。またその際用兵の最高責任者、軍令部総長であった永野修身はどのような役割を果たしたのかについて言及する。これを通じて、もし山本の計画が存在しなければ、あるいはこれほどまでに計画実現に執着しなければアメリカとの戦争実現は困難だったのではないだろうかという点について論述する。 日米開戦原因については多くの研究の蓄積がある。しかしながら山本五十六の果たした役割についてはいまだに不明の部分が多いと考える。それが、従来あまり触れられることのなかった山本五十六の開戦責任について、この試論を書いた理由である。
著者
前川 泰之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. A・P, アンテナ・伝播 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.201, pp.1-6, 2008-09-04
参考文献数
5
被引用文献数
5

1986年から2006年にかけて大阪電気通信大学(大阪府寝屋川市)において約20年間測定されたKa帯とKu帯衛星電波の降雨減衰特性について累積時間率分布等の長期統計結果を算出し、ITU-R勧告による予測値等との比較検討を行った。約20年間の長期統計に関しては、同勧告による降雨強度0.01%を用いた予測値と両周波数帯の減衰値はいずれもよい一致が見られたが、各年のそれぞれの0.01%値には約20%程度の変動があることが分かった。この変動は降雨強度の年変動の他に、雨域等価通路長の年毎の変動も大きく関与しており、5月から10月にかけての降雨時の平均地上気温が高い年ほど雨域等価通路長が長くなる傾向が見られた。しかし、雨域等価通路長の増加は単に地上気温の上昇に伴う降雨高度の増加だけでは容易に説明できず、むしろ夏季に発生する夕立や台風等の熱帯性降雨による降雨減衰の年間発生時間率と密接な関係があり、夕立や台風の発生時とそれら以外の降雨時における雨域等価通路長の差とその年間発生時間率の割合で各年の雨域等価通路長がほぼ決まることが分かった。
著者
西村 智行 持丸 義弘
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学會論文集. B編 (ISSN:03875016)
巻号頁・発行日
vol.63, no.611, pp.2309-2315, 1997-07-25
被引用文献数
1 1

A spectral finite difference method with domain decomposition is used to solve the Navier-Stokes equation for incompressible fluids. In the domain decomposition method, some subgrids consisting of multiple orthogonal curvilinear coordinate systems and of overlapping region (s) are adopted, and one-dimensional interpolation is applied to the overlapping region in the case of two-dimensional analysis to obtain neighboring values corresponding to a virtual boundary. Mass conservation on a virtual boundary is assured using a mass imbalance correction. Present numerical analyses for two-dimensional, internal, doubly-connected or triply-connected flow fields consisting of cylindric and elliptic boundaries show good consistency, accuracy and efficiency.
著者
杉山 博一 後藤 茂
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学研究発表会 発表講演集
巻号頁・発行日
vol.39, pp.1695-1696, 2004

設計時におけるトンネルに作用する浮力の取り扱いは、安全側と便宜を考え、鉛直方向の水圧の差を浮力とし、トンネル上半部に鉛直荷重として入力している。しかし、トンネルの大断面化に伴い、より合理的な設定方法が必要となってきてる。そこでトンネルが剛体的に浮上するという前提においてトンネル上半の地盤反力としての土圧の増加分と、トンネル下半の土圧の減少分の和によって浮力がキャンセルされると考え、慣用計算法を応用したモデル化を試みた。この方法による地盤反力の分担比率を変えた試算結果と現場の覆工応力の計測結果を比較したところ、上半の地盤反力の増加分と、下半の土圧の減少分が同じと考えた場合に計測結果と一致した。
著者
金丸 友 中村 伸枝 荒木 暁子 中村 美和 佐藤 奈保 小川 純子 遠藤 数江 村上 寛子 Kanamaru Tomo Nakamura Nobue Araki Akiko Nakamura Miwa Sato Naho Ogawa Junko Endo Kazue Murakami Hiroko カナマル トモ ナカムラ ノブエ アラキ アキコ ナカムラ ミワ サトウ ナホ オガワ ジュンコ エンドウ カズエ ムラカミ ヒロコ
出版者
千葉看護学会
雑誌
千葉看護学会会誌 (ISSN:13448846)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.63-70, 2005-06-30
被引用文献数
2

本研究は,慢性疾患をもつ学童・思春期患者の自己管理およびそのとらえ方の特徴と影響要因を明らかにし,看護援助に有用な枠組みを構築することを目的とし,Patersonのmeta-studyの方法を用いて26文献を分析した。その結果以下のことが導かれた。慢性疾患の学童・思春期患者の自己管理のとらえ方には,「本人の望む生活」と「疾患の理解・適切な療養行動」のギャップの大きさが影響していた。ギャップが大きな患者は,生活と療養行動の両者を大切なものと考え葛藤を感じており,ギャップが小さい患者は肯定的・葛藤のないとらえ方であり,ギャップが不明瞭な患者は受け身・不確かにとらえており,「疾患の理解・適切な療養行動」を受け入れられない患者は,否定的にとらえていた。葛藤を感じている患者は,親や友達からのサポートを得て「主体的・問題解決」の自己管理を行っており,療養行動を適切に行いながら本人らしい生活を送っていた。肯定的・葛藤のない患者のうち親や友達からのサポートを得ている患者は,時間の経過により自己管理に慣れ療養行動を適切に行っていたが,親や友達からのサポートが不足していると,「受け身・逃避・否認」の自己管理となり,不適切な療養行動によって症状が悪化したり生活に不満をもっていた。受け身・不確か,または否定的にとらえていた患者は,親や友達からのサポートが不足しており,「受け身・逃避・否認」の自己管理となり,不適切な療養行動によって症状が悪化したり生活に不満をもっていた。「本人の望む生活」と「疾患の理解・適切な療養行動」のギャップの大きさと,親・友達からのサポートをアセスメントし,看護援助を行っていく重要性が示唆された。The purpose of this study was to investigate the characteristics of self-care and associated perceptions among Japanese school-aged children and adolescents with chronic conditions and influencing factors, and to develop a framework for effective intervention, analyzing 26 articles using meta-study. The following results were obtained: 1) Perceptions of school-aged children and adolescents with chronic conditions were affected by size of the gap between 'The daily life desired by the child' and 'Performing self-care properly'. Children displaying a large gap experienced conflict, those with a small gap were no conflict, and those with an unclear gap were passive and uncertain. Children denying 'Performing self-care properly' were negative. 2) Children who got support from parents and friends could live as they wished, continuing self-care properly with or without conflict. 3) Children with an unclear gap and children denying 'Performing self-care properly' were unable to get support from parents and friends, and were unsatisfied with their life and displayed poor self-care. Assessments of size of the gap between 'The daily life desired by the child' and 'Performing self-care properly', and support from parents and friends appear important.