著者
滝戸 次郎 中村 雅典
出版者
昭和大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

破骨細胞は、単核細胞の融合により形成される多核細胞であり、その機能は骨を分解することである。その細胞融合に関与する構造として、我々は新規のアクチン超構造体を報告してきた。本研究では、その構造の構成タンパク質の空間配置を決定し、前駆体であるPodosome beltとの違いを明らかにした。また、その構造保持に関与するシグナル伝達経路を解明した。アクチンの動態を観察し、超構造体内で内向きのアクチン流動が起きている事を発見した。これらの知見を統合し、破骨細胞間の接着に働く力の釣り合いを考察した。本研究により、アクチン超構造体は、破骨細胞同士の融合時の接着に寄与することが示された。
著者
池側 隆之
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2007

本研究においては、結果あるいは成果としての情報を如何にして共有するのか、という議論にとどまらずに、個人が抱くアイデアが他者に伝達されるプロセスそのものにおいてどのような工夫が成されているのかを中心に分析を行った。そして異分野をつなぐ情報共有の一つの手段として、視覚情報の連続的提示が有効であるという結論に至った。創造的プロセスの解析を足がかりとして、今後はアニメーションや映像によるシークエンシャル・デザイン(時系列を意識したデザイン手法)が情報共有において果たす役割を考察し、産業-教育-社会での応用を導き出す初期モデルの構築を行いたいと考えている。
著者
与那覇 晶子
出版者
沖縄大学
雑誌
沖縄大学地域研究所所報
巻号頁・発行日
vol.21, pp.25-34, 2000-10-06
著者
水野 誠
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.139, no.6, pp.246-250, 2012 (Released:2012-06-11)
参考文献数
14

高血圧症の治療に関し,血圧を適切なレベルまで低下させることが第一の目標となるが,治療の最終的な目的は高血圧に合併する臓器障害を予防することにある.高血圧症患者の多くは本態性高血圧症に分類され,その原因には多様な因子が関与している.そのため1種類の薬剤では血圧がコントロールできず,複数の薬剤の併用が必要になる患者が多い.その併用を考えるうえでも,臓器保護作用を視野に入れて降圧剤を選択する必要がある.降圧剤の中でも,特に臓器保護作用が強いと考えられているのがアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)とカルシウム拮抗薬(CCB)であり,その臓器保護作用に注目して検討を行った.Dahl食塩高血圧ラットは,高血圧の進行と共に臓器障害を発症し死亡するモデルである.本モデルにおいて,ARBのオルメサルタンメドキソミル(OLM)とCCBのアゼルニジピン(AZL)の血圧に影響を与えない用量を併用したところ,各々の単剤に比べ相乗的な延命作用が認められた.この延命作用は,血圧を低下させない用量でも認められ,血圧を低下させる用量では,延命効果はさらに増強した.OLMとAZLのような降圧剤併用においては,血圧低下に加え,降圧作用以外のメカニズムも臓器保護作用に大きく関与すると考えられる.降圧作用以外のメカニズムとして,抗炎症作用,抗酸化作用,抗線維化作用,抗増殖・肥大作用などが考えられ,そこには薬剤クラスに共通した作用と化合物固有な作用が関与し得る.OLMとAZLの併用により,高血圧に伴う心血管疾患の罹患率および死亡率の減少への貢献が期待できる.
著者
梅本 岳宏 幕内 幹男 武内 聖
出版者
The Showa University Society
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.47-51, 2006
被引用文献数
1

症例は69歳男性.平成14年9月25日右下腹部痛が出現した.痛みは一時軽快したが, 27日夜から28日朝にかけて痛みが増悪し, 近医を受診した.虫垂炎と診断され, 抗生剤を処方されて帰宅した.その後症状は一時軽快したが, 9月30日再び右下腹部痛が出現し再診した.限局性腹膜炎の診断で手術目的にて同日当院に紹介入院となった.腹部単純X線ではfree airや異物陰影は認められず, 腹部CT検査で右下腹部にlow densityの腫瘤を認め, 内部に直線状のhigh densityの異物陰影が認められた.魚骨による消化管穿孔と診断し, 同日緊急手術を行った.開腹すると中等量の膿性腹水を認め。Treitz靱帯から220cmの部位に, 腸間膜側に穿孔する長さ2.5cmの針状の魚骨を認めた.小腸部分切除術と洗浄ドレナージ術を施行した.本症例は患者からの病歴聴取と腹部CT像の注意深い読影によって術前診断が可能であった.
著者
御幸 聖樹
出版者
京都大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

本研究は、行政行為に対する議会拒否権の合憲性を考察するとともに、そのような考察を通じて立法機関と執行機関との抑制・均衡のあり方を問うものである。行政行為に対する議会拒否権の合憲性を検討するための判断枠組みを提示した後、アメリカ及びイギリスの法制度及び議論を参考にしつつ、日本への導入可能性の有無を明らかにした。
著者
伊藤 祥平 但馬 康宏 菊井 玄一郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告数理モデル化と問題解決(MPS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.4, pp.1-3, 2013-12-04
被引用文献数
1

UEC コンピュータ大貧民大会ではモンテカルロ法を用いたクライアントが優勝している.そこでプレイアウト中の相手着手を実際の着手に近づけることでモンテカルロ法によるクライアントの強化を考える.本研究ではゲーム中の実際の相手着手を学習する方法としてナイーブベイズを用いる.これにより高速な相手のモデル化を行う.さらに、学習素性の工夫により精度の向上を行った.この結果,作成されたモデルの精度は過去の優勝クライアント snowl に対し,4 割程度の近似ができた.Monte-Carlo method is also useful for DAIHNMIN and the client using this method has won the UEC computer DAIHINMIN tournament. We try to accelerate the strength of Monte-Carlo method by making effective opponent models which are close to the real opponents' moves. Stronger opponent models, more effective playouts our client has. We use Naive Bayes as the learning method to modeling the opponents. This method is one of the fastest algorithm for learning and classification. In addition, its accuracy is enough to modeling the opponents. In this paper, we show two modeling by Naive Bayes. The first method is the simple modeling, and the second is improved the move data structure. The accuracy is approximately 40% by our improved method to model snowl which is the champion client in 2010.
著者
平松 宏之 奥寺 憲穂
出版者
日経BP社
雑誌
日経レストラン (ISSN:09147845)
巻号頁・発行日
no.320, pp.120-123, 2002-10

◆——いまさらですが、ミシュラン一ツ星獲得、おめでとうございます。改めて、パリに「レストランひらまつ サンルイ・アン・リル」を出されたのは?平松 いつの日かパリに帰ろうというのが、僕が日本に帰ってきた時の願いだったんです。そもそも、僕が1982年にパリから日本に帰ろうと決めたのは、フェルナン・ポワン*の「若者よ、故郷へ帰れ。
著者
島崎 邦彦
出版者
公益社団法人 日本地震学会
雑誌
地震 第2輯 (ISSN:00371114)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.16-23, 1972-07-30 (Released:2010-03-09)
参考文献数
5

A statistical method of detecting unusual seismic activities has been developed. Stationary and random earthquake occurrence is assumed throughout the present study. The probability for earthquakes of which the number is larger (smaller) than m to occur during a time-interval S when n earthquakes occurred during a preceding interval T is calculated. It turns out that such a probability is expressed by a negative binomial distribution. When this probability is smaller than a given significance level, the occurrence of more (less) than m earthquakes during S can be recognized to be unusual.The number of observed micro-earthquakes at the Shiraki Microearthquake Observatory, having the same S-P interval, is analysed. An unusual seismic activity is detected 20 days before the occurrence of the Mivoshi Earthauake Swarm of 1970.
著者
島崎 邦彦
出版者
公益社団法人 日本地震学会
雑誌
地震 第2輯 (ISSN:00371114)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.24-32, 1972-07-30 (Released:2010-03-09)
参考文献数
7

Occurrence of destructive earthquakes in Tokyo area during historical time has been investigated by several authors. Possibility of 69-year as well as 36-year periodicity of earthquake occurrence was proposed on the basis of periodgram analyses. A basis of these hypotheses is Schuster's criterion which is applicable only to any one harmonic term obtained from a random sampling. Although the above periodicities are obtained by applying the criterion to the largest of the harmonic terms, the writer believes that, in order to test the largest, we must adopt Fisher's test.A periodgram of a discrete time series of the earthquake frequency is computed for the Tokyo area. It is shown that the periodicity corresponding to its greatest peak is not statistically significant by Fisher's test at significance level 0.1.
著者
島崎 邦彦 竹内 均
出版者
公益社団法人 日本地震学会
雑誌
地震 第2輯 (ISSN:00371114)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.41-48, 1970-04-28 (Released:2010-03-11)
参考文献数
9

The Chandler wobble can be considered to be a succession of free damped nutations of the earth excited by some unknown causes. Bearing this in mind, we apply a linear filtering theory of multichannel time series to the analysis of polar motions. Designing a 2-channel prediction error operator, we calculate the prediction error time series y1(t) and y2(t) corresponding to the x1(t) and x2(t) terms in polar motions. The occurrence of large earthquakes is well correlative with abrupt changes of the prediction error. To clarify this relation, prediction error changes D(t)=[{y1(t)-y1(t-1)}2+{y2(t)-y2(t-1)2}]1/2 are calculated and shown in Fig. 3. It is suggested that Earthquakes excite the Chandler wobble. In order to confirm this, we must calculate the excitation function from the occurrence mechanism of each earthquake. It will be the subject for a future study.
著者
左近 幸村
出版者
早稲田大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

4月10~13日にアメリカのコロラド州デンバーで開催されたWestern Social Science Association 55^<th> Annual Conferenceに出席して、"Russian Transatlantic Liners after the Russo-Japanese War : Pssport Issues of Jewish Immigrants"と題する報告を行った。また6月1日に東京大学本郷キャンパスで開催された社会経済史学会第82回全国大会において、「ロシア東亜汽船社と義勇艦隊―20世紀初頭のユダヤ人移民問題との関連から」と題する報告を行った。これら国内外での報告を通じて、ユダヤ人移民問題との関連からロシア海運史研究の意義を広くアピールするとともに、多様な専門分野の研究者から今後の研究方針についての具体的なアドバイスを得ることができた。平成25年度は、9月15日と16日に早稲田大学で行われた社会経済史学会の次世代研究者育成ワークショップの開催に、受入教官である矢後和彦教授とともに尽力し、その中で自身も「帝政期ロシア極東における移民と民族問題」と題する報告を行った。本ワークショップを通じて、自身の研究課題の改善点を見出すとともに、組織者としての能力に磨きをかけ、さまざまな先生方や同世代の研究者たちと交流を深めることができた。出版物としては、拙稿「帝政期のロシア極東における『自由港』の意味」が掲載された『東アジア近代史』16号が刊行された。その末尾で示した20世紀初頭の東アジアとバルカンの東西比較の問題は、今後取り組むべき大きな課題である。現地調査は、8月20日~30日にウラジオストクの国立極東歴史文書館で行い、ロシア極東の海運に関する公文書を閲覧した。閲覧した史料は、上記9月のワークショップの報告で用いたほか、今後の研究発表に活かしていく。
著者
林 宏三 杉本 昌穂
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
テレビジョン (ISSN:03743470)
巻号頁・発行日
vol.20, no.5, pp.303-313, 1966-05-01

NHKでは, オリンピック用として, イメージオルシコンを2本使用し, 1本の撮像管から輝度信号を, 他の1本の撮像管から3つの色信号を取り出す方式のカラーカメラを開発し, オリンピックの開会式, その後は甲子園の高校野球などの中継番組に使用している.このカメラは, 分離輝度撮像方式と点順次撮像方式の特長をかね備えることを目標にしたものであるが, 技術的には, 新しい高度のものが要求された.ここでは, 本カメラについて概説した後, この撮像方式の理論的解析と, 本カメラの心臓部ともいうべき, 順次-同時変換器について記述する.
著者
Kapur Manu
出版者
東京大学大学院教育学研究科附属学校教育高度化センター
雑誌
年報
巻号頁・発行日
vol.2013, pp.49-58, 2014-03-31

主催シンポジウム2: 「失敗を教育に活かす」
著者
易 平
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

20年度において、申請時の研究計画通りに、東アジアにおける国際法受容過程をめぐり研究を進めていた。昨年度の研究実績を踏まえた上で、そのうち最も基礎に当たる部分--戦争観の受容過程に重点を据えて考察を展開していた。本研究は、幕末から明治末期にかけて日本に舶来した欧米国際法書物に示された戦争観を整理した上で、日本国際法学における戦争観の形成過程を辿り、十九世紀末頃から二十世紀初頭にかけての戦時国際法研究の概況を解明した。取り上げる人物は、東京大学、京都大学、早稲田大学、一橋大学などで国際法講座を担当する専門国際法学者-有賀長雄、高橋作衛、中村進午、寺尾亨、千賀鶴太郎の五人-を中心に据えた一方、大学や専門学校で国際法を教える専任教師ではないが、国際法を専攻したことがあり、かつ国際法的戦争観に関する研究書や学術論文を公刊した広義の国際法学者も視野に入れた。研究素材としては、当時の国際法教科書・専門研究書・講義録、そして国際法関連の学会誌や専門誌に掲載された学術論文・時論・講演などを網羅的に取り上げた。暫定的結論として、欧米からの戦時国際法知識の受容は、国家政策に奉仕し、緊迫した国際情勢に活用しなければならないという形而下なる目的に動機付けられることが多く、実用主義的な態度が顕著に現れた。他方、1890年代を境として、輸入された欧米国際法学的戦争観に大きな転換が見られる。それ以前に翻訳された国際法体系書は、戦争原因追究論に立脚する形で説いているものが多かったが、それ以降は、原因不問論や戦争法外視の主張が主流となった。しかし、欧米から受容した国際法知識は、日本の国際法学者の学説形成において重大な意義を有するにもかかわらず、彼等の法観念を完全に規定したものではなかった。専門国際法学者と広義の国際法学者は、自国の状況に応じて欧米学説を解釈し修正を施しながら自らの学説を練り上げていくことが多かったのである。