著者
松田 一成
出版者
大阪大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

本研究はマウス胚エピブラストより単離したepiblast stem cells (EpiSCs)を利用して、神経板の発生における転写制御ネットワークを明らかにすることを目的とする。マウス胚の神経板はE7.5以降、転写制御の異なるいくつかの領域に分かれて発生する。神経板の最前部(anterior forebrainの前駆体)は、Hesx1遺伝子の活性化で特徴付けられる。EpiSCの内在のWntシグナルをDkk1によって抑制すると、最前部神経板細胞を効率よく発生させることを明らかにした。また、Wntシグナルの抑制の効果がHesxlの5'エンハンサーを介してHesx1の発現を制御していることも示した。Dkk1はマウス胚においてE6.5-7.5ではallterior visceral endoderm (AVE)で発現しているが、E7.5-8.5はanterior mesendoderm (AME)で発現している。どちらのDkk1の効果が最前部神経板の発生に重要かを調べた。Episcの神経板細胞の発生がマウス胚の発生ステージに対応していることを利用した。神経板細胞分化条件で、時間限定的にWntシグナルを抑制した。その結果AVEでのDkk1の発現が最前部神経板領域の発生に重要であることがわかった。現在、開発したEpiscの神経板発生モデルを利用して、神経板を発生させる転写制御ネットワークを解析している。具体的にはOct3、Sox2、Otx2、Oct6、Zic2といった転写因子のEpiSCと神経板細胞における結合領域を、ビオチン化転写因子を用いた新しいChIP-seq法を用いて、網羅的に解析している。これまでに発表されたデータ、例えばLodato et al., 2013などのES細胞や神経系前駆細胞でのChIP-seqのデータと比較することで、ES細胞、EpiSCs、神経板細胞での転写因子の結合領域の違いを明らかにしつつある。
著者
高橋 毅
出版者
秋田大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

○研究目的 : 表情・感情認識技術は高度なマンマシン間コミュニケーションを実現するために重要である。そこで本研究では, 情動と身体の生理的変化に伴う顔の表面温度変動に関する知見を得ることを目的とし, 受動的刺激により喚起した“悲しみ”の生起・消失時における顔面温度変動の計測・解析を行い, “悲しみ”の情動検出に関する検討を行った。○実施内容ならびに研究成果 :・データの取得 : 被験者7名に対して情動喚起映像(映画)を用いた受動的な“悲しみ”の情動喚起を行い, 赤外線サーモグラフィ用いて時系列顔温度データを取得した。映画視聴後2日以内に, 強い悲しみを喚起する場面を再度視聴させ, 顔面をサーモグラフィで約9分間(視聴5分, 前後2分の安静)撮影した。撮影後はアンケートを用いて情動の程度や体調などを被験者ごとに調査し, 解析データを取得した。・対象領域の自動設定処理の開発 : 温度データから顔面のグレースケール画像を生成し, Haar-like特徴量とAdaboostを用いた顔面領域の検出手法の開発を行った。各被験者100~600フレームの顔面領域の正解画像をオペレータ1名が手動で作成し, 機械学習で全被験者共通ならびに個人別の検出器を生成した。その結果, 被験者共通・個人別検出器何れも顔領域を検出可能であることを明らかにした。また, 共通検出器はより多くの学習データを必要とし, 350フレーム以上の場合に良好な検出率が得られた。・情動と顔面温度変化の関連解析 : 対象領域における情動の生起と顔面温度の関連について検討を加えた。その結果, 悲しみの情動が喚起された場合, 特定の被験者において頬領域温度の緩やかな上昇ならびに呼吸変化に伴う鼻根付近の温度変動が認められた。また, 悲しみの情動の場合, 情動喚起で上昇した頬領域の温度が比較的長時間保持される傾向を認めた。この頬温度変動の傾向が“喜び”と“悲しみ”の情動判別に有用な指標となるか更なる検討が必要である。
著者
中島 伸一郎
出版者
山口大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

都市水害を抑制する新しい舗装構造として側面流入型の貯留浸透舗装を提案した.本舗装構造の基本的水理特性および力学特性を把握するため,路盤材に対する大型透水試験と舗装模型に対する繰返し平板載荷試験を実施した.透水試験の結果,路盤材の透水係数は粒度分布によらずおおむね10-1cm/secであることを明らかにした.舗装模型に対する繰返し平板載荷試験の結果,浸水時には路面のたわみが大きくなるとともに路床面に作用する応力が上昇するが,これは浸水により路盤の剛性が低下することが原因である可能性が高いことが明らかとなった.
著者
濱田 崇宏 麻薙 峰子 里沢 智美 安楽城 夏子 番場 伸一 東村 紀一 明瀬 智久 平瀬 寒月
出版者
日本農薬学会
雑誌
Journal of Pesticide Science (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.152-158, 2014-08-20 (Released:2014-08-20)
参考文献数
26
被引用文献数
2 28

The target site of tolprocarb, a novel systemic fungicide used for controlling rice blast, was investigated. Tolprocarb decolorized the mycelia of Magnaporthe grisea; the decolorization was reversed by adding scytalone or 1,3,6,8-tetrahydroxynaphthalene (1,3,6,8-THN). This result suggested that the target site of tolprocarb was polyketide synthase (PKS), which regulated polyketide synthesis and pentaketide cyclization in melanin biosynthesis. Further, we produced a transgenic Aspergillus oryzae, which possessed the PKS gene of M. grisea, and performed in vitro assays of PKS using membrane fractions from the transgenic A. oryzae. Compared with some conventional melanin biosynthesis inhibitors (cMBIs), tolprocarb only inhibited PKS activity in vitro. These results indicated that tolprocarb’s target protein in M. grisea was PKS, which differentiates this fungicide from other cMBIs.
著者
細谷 陽二郎
出版者
日経BP社
雑誌
日経アーキテクチュア (ISSN:03850870)
巻号頁・発行日
no.898, pp.130-132, 2009-04-27

久しぶりに国立京都国際会館を訪れた。最後に来たのは学生時代なので、もう20年ほど前になる。今回、地下鉄の駅を降りて会館に向かい建物が見えてきたときに「おや」と思った。以前はなかった「アネックスホール」が増築されていたからだ。 本誌では1977年に、開館から11年を経過した同館をリポートした。
著者
南雲 サチ子 松浦 成昭 河口 直正 森 誠司
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

癌細胞の形態学的異型性のうち、構造異型については接着分子インテグリン、カドヘリンの発現の変化が構造異型に重要な役割を果たすことを明らかにした。細胞異型、特に核の異型に関しては、細胞異型の高度ながん細胞にH3K9me3、HP1α(ヘテロクロマチン関連タンパク)の発現亢進が見られた。また、in vitroでH3K9me3の発現を亢進させると細胞遊走能、細胞浸潤能が増加する結果が得られた。核膜タンパク質LINC complex分子については癌細胞の異型度の著明なものにはSUN1、SUN2、Nesprin2の発現低下が見られた。
著者
藤原 郁也 能見 伸八郎 内藤 和世 牧野 弘之 戸田 省吾 中路 啓介 大森 吉弘 岡 隆宏 松田 哲朗 赤木 重典
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.1451-1458, 1992-06-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
37
被引用文献数
1 9

最近9年間に著者らが経験したマムシ咬傷58例の治療について検討した.患者はマムシ咬傷後早期に来院する例が多く,初診の段階では軽症と診断されることが多い.しかし重症例では受傷後3日前後に腫脹の増強,眼症状の出現がみられ臨床検査ではCPK, GOT, GPT, AMLがピークとなり,多くは2週間以内に軽快した.初診時に重傷度を判断することは困難であった.治療は抗血清使用にて5例,非使用にて53例を治療したがそれぞれに1例ずつ重症化症例がみられた.重症例でも抗血清を使用せず治癒し,副作用を考慮すると,抗血清は必ずしも必要とはいえず,厳重な経過観察,全身管理こそが重要であると思われた.
著者
所 浩代
出版者
福岡大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、雇用における障害差別の是正を実効的に行うための仕組みを考察した。雇用における障害差別については、障害差別を禁止する法律を立法し、差別の是正と予防を行うことが一般的である。もっとも、障害差別の規制方法は、国によって異なる。米と英は、障害に特化した差別禁止法を制定し、裁判所により司法救済を個人が求めることができるようになっているが、それとは別に行政機関が差別の苦情を受け付け、紛争の内容を吟味し、解決に向けたアドバイスを行う。本研究では、このような行政による支援の有効性を検証した。また、障害者の雇用機会の拡大という政策目標に、差別禁止法がどの程度貢献しているのかについても検討した。
著者
渡辺 雅彦 若林 敬二
出版者
就実大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

モンシロチョウに存在する分子量98,000の蛋白質、ピエリシン-1、は種々のがん細胞に対して細胞傷害活性を示す。そこで、in vivoにおけるピエリシン-1の抗腫瘍活性を調べる目的で、ピエリシン-1の実験動物に対する毒性の解析を行った後、移植がん細胞に対するピエリシン-1の抗腫瘍効果を調べた。ピエリシン-1を単回腹腔内投与した場合のBALB/cマウスに対するLD50値は約5μg/kg body weightであった。1x10^7個のHeLa細胞を6週齢BALB/c雌ヌードマウスの腹腔内に移植し、翌日、3μg/kg body weightのピエリシン-1を単回、腹腔内投与し、80日目にマウスを屠殺し解析した結果、ピエリシン-1非投与群では全例(10/10)に腫瘍が確認され、その平均重量は1.16gであった。一方、ピエリシン-1投与群では10例中3例に肉眼上腫瘍を認めなかった。また、1例では腹膜に2mmの小結節を認めたのみであった。ピエリシン-1投与群の平均腫瘍重量は0.56gであり、有意に低下していた。以上より、ピエリシン-1はHeLa細胞に対し、in vivoで抗腫瘍活性を示すことが分かった。続いて1,340頭のモンシロチョウさなぎからピエリシン-1の大量精製を行い、47.6mgの精製ピエリシンを得た。さらにピエリシン-1およびその酵素ドメインであるN末端断片の酵素的性質を解析したところ、C末端断片が存在すると、酵素活性が大きく低下する条件が認められた。N末端断片およびトリプシン活性化本酵素による転移反応のturnover numberは55および25、24時間反応における転移数は10^6レベルであり、単一分子によって細胞に致死レベルの付加体が生成し得ることを示した。
著者
河野 紀子
出版者
日経BP社
雑誌
日経ドラッグインフォメーションpremium
巻号頁・発行日
no.162, pp.38-41, 2011-04

処方箋通りに調剤したら、過剰投与で患者が死亡─。虎の門病院で2005年に起きた医療事故をめぐる裁判で、薬剤師に対して処方医と同額の支払いを命じる判決が下された。判決は"漫然とした"調剤や鑑査業務を厳しく戒める内容となった。
著者
山本 俊行 木方 千春 鈴木 美緒
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.I_815-I_822, 2012 (Released:2013-12-25)
参考文献数
22
被引用文献数
1

自転車対歩行者の事故は近年増加傾向であり,自転車運転者に高額な損害賠償が発生するケースも増えているため,より一層の安全対策が求められている.本研究では,自転車利用実態及び自転車の安全制度の現状を把握し,これからの保険・保障制度のあり方を検討するために,自転車に関連する交通事故の補償,すなわち,損害賠償保険制度の現状調査を実施した.さらに,損害賠償保険に対する自転車利用者の意識調査を実施した.調査結果より,自転車利用者の損害賠償保険加入率は低く,損害保険会社も自転車の損害賠償保険から撤退する傾向にあることが明らかとなった.また,加入率の低さは自転車利用者の損害賠償保険に対する知識不足や自転車事故に対するリスク認知バイアスが原因である可能性が示された.
著者
嵩原 英喜 Hideki Takehara
雑誌
人文論究 (ISSN:02866773)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.107-127, 2009-09-20
出版者
日経BP社
雑誌
日経Internet solutions (ISSN:13476580)
巻号頁・発行日
no.71, pp.68-75, 2003-06

ECサイトが決済手段に求める条件は,ユーザーの使い勝手向上やセキュリティだけではない。後払いにも対応したい,キャッシュ・バックなどのキャンペーンを展開したいなど,ニーズはさまざま。決済手数料や,会計処理など運用の負担も抑えたい。こうしたニーズに応えるべく,かゆいところに手が届くサービスも徐々に登場している。
著者
篠原 信
出版者
日本農薬学会
雑誌
Journal of Pesticide Science (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.90-94, 2008-02-20 (Released:2013-12-07)
参考文献数
19
被引用文献数
1
著者
松島 格也
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

不確実な状況における交通サービス消費行動をモデル化し,意思決定の自由度とコミットメントの価値を理論的に導出した.料金支払いのタイミングの違いに着目して,事前料金システムと事後料金システムの導入が家計厚生に及ぼす影響を分析し,事後割引料金システムの方が社会的厚生の観点から望ましい結果をもたらすことを示した.さらに,航空サービスの早割チケットのような通時的差別化料金システムの経済便益評価を実施した.